向日葵に憧れた海   作:縞野 いちご

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#12 仲直りしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、ちかちゃん。

 

 

うん?なぁに?

 

 

わたしね、ちかちゃんといっしょにいるとうれしいんだ!

 

 

ちかといると……?

 

 

うん!なんか、ちかちゃんがいればなんでもできちゃうきがする!

 

 

それなら、ちかも!

ちかもよーちゃんといっしょにいるとうれしいし、なんでもできるきがする!

 

 

 

……えへへっ

 

 

えへへっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちかちゃん。やくそくする!

わたし、ちかちゃんのまえではもうなかない!

 

 

なかない……?

 

 

ちかちゃんもにっこりできるように、わたしもにっこりする!

 

 

……それなら、ちかはよーちゃんとずっといっしょにいる!

 

 

ほ……ほんと?

 

 

だってちかといっしょにいれば、よーちゃんがにっこりできるでしょ!

 

 

ちかちゃん……ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちかちゃん……ほんとにやめちゃうの?

 

 

うん……

 

 

何かイヤなことがあるなら私に言ってよ。ちかちゃんのためなら、私…

 

 

そうじゃないんだ……。イヤなこととか、きらいだからとかじゃないんだよ……

 

 

じゃあ、なんで……

 

 

……あき、ちゃった。

 

 

え……。

 

 

なんか、あきちゃったんだ!

 

 

……あき……ちゃった?

 

 

うん。それだけだから、ちかのことは気にしないで!

 

 

…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飽きちゃった

 

 

 

あの時の千歌ちゃんの気持ちはどんな感じだったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

ラブライブ東海地区予選。

 

大会が行われる名古屋まで私たちは来ていた。

 

 

 

 

千歌「〜〜。〜〜〜!〜〜。」

 

果南「〜〜。」

 

 

 

駅の前でみんなはそれぞれ思い思いのことをしていた。

 

 

 

 

ダイヤ「曜さん。」

 

曜「ダイヤさん?どうしましたか?」

 

ダイヤ「……ライブの前にしてほしいことがあるのですが。よろしいですか?」

 

曜「してほしいこと?」

 

ダイヤ「はい。」

 

 

 

ダイヤさんの瞳には明らかな懇願の色が見えた。

 

 

 

曜「私にできることならもちろんやるよ。」

 

ダイヤ「では……」

 

 

 

そうして私は駅前の噴水の近くに連れてこられた。

 

 

 

ダイヤ「仲直り……してください。」

 

曜「!」

 

 

梨子「……。」

 

 

 

噴水の前には梨子ちゃんが立っていた。きっと梨子ちゃんもダイヤさんに連れてこられたんだと思う。

 

 

 

ダイヤ「このまま本番を迎えるのは心苦しいではありませんか?」

 

曜「……っ。」

 

 

私は背を向けて荷物を取りに行こうとした。

 

 

ガシッ

 

 

曜「!」

 

 

ダイヤさんがその場から立ち去ろうとした私の右手を掴んでいた。

 

 

 

ダイヤ「…本当に梨子さんのことが嫌いなのですか?」

 

曜「……。」

 

ダイヤ「そんなわけないでしょう?

あんなに仲が良かったのに、そんなわけが!」

 

曜「…うるさい。」

 

 

 

……またやってしまった。

 

 

 

ダイヤ「……それで私が怯むとお思いですか?」

 

曜「……。」

 

 

ダイヤ「私はルビィとは違いますわ。ルビィのように意思が弱くはありませんの。」

 

 

 

ルビィとは、って強調してくるなあ……

 

 

 

ダイヤ「なぜ……

なぜ私がわざわざ反対側にあった右手を掴んだかわかりますか?」

 

曜「なぜって…………!

る…ルビィちゃ」

 

ダイヤ「許しませんわ。」

 

曜「っ!」

 

 

ダイヤさんの目は静かに燃えていた。それはもちろん怒りの炎だ。

 

 

曜「ルビィちゃんにしたことはごめんなさい。」

 

ダイヤ「もちろんルビィに黙っているようにしたことについても怒っています。ですがそれ以上に…」

 

 

ダイヤさんは私の肩を掴んで、私と視線が合うような体勢をとった。

 

 

 

ダイヤ「私を頼ってほしいと言ったではないですか……」

 

曜「……。」

 

 

 

ダイヤ「なぜですか?」

 

曜「ダイヤさん……」

 

ダイヤ「私はただの部活の先輩ですか?」

 

 

そんなこと思ってない。先輩後輩の関係よりももっと大切に思ってる。

 

 

 

 

 

本当に?

 

 

 

 

曜「ち、ちが……ちが………」

 

 

鞠莉「ザッツオール!」

 

ダイヤ「ま、鞠莉さん……。」

 

鞠莉「ほら、もうすぐ移動の時間よ。」

 

ダイヤ「ですがっ!」

 

鞠莉「梨子はすでにみんなのところにいるわよ?しかもダイヤは三年生なんだから、みんなをまとめることがマストでしょ?」

 

ダイヤ「……はい。」

 

 

 

そのままダイヤさんは私に背を向けて歩き始めた。

 

 

 

鞠莉「ダイヤって物事を急いで進めようとするのよね。」

 

 

ただ私にはダイヤさんを非難することはできない。

 

 

鞠莉「今はライブのことに集中しなさい。」

 

曜「はい。」

 

 

 

 

 

その後みんなと合流したけど、結局私の頭からはダイヤさんの言葉が離れなかった。

 

 

ダイヤ『私はただの部活の先輩ですか?』

 

 

自分の中で大事な仲間だと思っていたAqoursメンバーの存在が揺らいでいた。

 

本当に自分はみんなのことを大切だと思っていたのか…って。

 

 

Aqoursは私にとってかけがえのないものだったはずじゃなかったのかって……

 

 

 

 

 

みんなは会場入りして控え室に着いて準備を始めている。

 

 

三年生の3人は控え室から一緒に出ていくのが見えた。

 

一年生の3人はみんな固まっている。お互いを励ましあったりしてるのかな。

 

 

 

私たち二年生は……

 

 

曜「なにを……してるんだ。」

 

 

 

なにを迷ってるの?

なにをためらってるの?

なにを怖がってるの?

 

 

 

 

曜「……梨子ちゃん。」

 

 

梨子「!」

 

 

私が話しかける前から強張っていた梨子ちゃんの顔が一層引き締まった。

 

 

曜「ごめんね。」

 

梨子「……。」

 

曜「今さら何を言っても許せないとは思う。でも、私は梨子ちゃんのことが嫌いなんて思ってないってことは言いたかったの!」

 

梨子「……。」

 

曜「だから……だから……

今日は私と協力してね……。」

 

 

 

梨子ちゃんの言葉を聞く間も無く、突風のように私の言葉を梨子ちゃんにぶつけた。

すると座っていた梨子ちゃんは立ち上がり、私の目の前に立つと

 

 

 

梨子「……よかった。」

 

 

と、ひとこと言って笑顔を私に見せてくれた。

 

 

曜「え……」

 

梨子「もちろん協力するよ。少しでも曜ちゃんの負担が減るようにね。」

 

曜「……梨子ちゃん。」

 

梨子「今まで頑張ってきたんだもん。最後までやり切らなきゃ後悔するに決まってるよね。」

 

 

梨子ちゃんはライブに対して前向きに考えてくれてるんだ。

 

 

梨子「ケガが悪化しないようにだけど、今日のライブは全力でやろうね。」

 

曜「うん!」

 

 

 

さっきまでギクシャクして、笑ったりなんか絶対にできなかったのにこんなに簡単に解決する話だったんだ……。

 

だからダイヤさんは無理にでも合わせようとしてたんだね。

 

 

 

鞠莉「曜。」

 

曜「ま、鞠莉ちゃん……」

 

 

 

後ろから鞠莉ちゃんが現れた。

 

そういえばライブ前に梨子ちゃんとのことを考えるなって言われてたんだったよね。

 

 

曜「ごめんなさい。鞠莉ちゃんとの約束破っちゃった。」

 

鞠莉「良かったわ。」

 

曜「え?」

 

鞠莉「仲直りできるなら、それがベストよ。」

 

曜「それは……」

 

鞠莉「私が考え過ぎてたみたい☆

……まさかダイヤがちゃんと考えてるなんてね。」

 

曜「ダイヤさんが?」

 

 

梨子「私、実は昨日ダイヤさんに会ってるの。」

 

 

そうだったんだ……

 

 

梨子「その時にね、仲直りさせるタイミングを必ず作るって先に言われてたんだ。」

 

鞠莉「随分とヘヴィーなやり方だったけどね。」

 

 

曜「それでも、ダイヤさんにはお礼を言わなきゃだね。」

 

 

 

ダイヤ「ライブの準備は済みましたか?」

 

鞠莉「ナイスタイミングね。」

 

ダイヤ「なんの話ですか?」

 

曜「ダイヤさんには頭が上がらないなって言ってたんだよ。」

 

ダイヤ「……ルビィを困らせた分、いいパフォーマンスをお願いしますわ。」

 

 

鞠莉「照れちゃってダイヤってばキュートね。」

 

 

千歌「……曜ちゃん?梨子ちゃん?」

 

梨子「千歌ちゃん!」

 

 

そうだ。千歌ちゃんには一番心配かけちゃったよね……

 

私は2人の手を右と左のそれぞれの手で掴んだ。

 

 

千歌「わわっ!?曜ちゃん!?」

 

梨子「……ふふっ♪」

 

 

曜「今日は精一杯楽しもうね!」

 

 

私たちのライブを楽しんでもらう。それが私たちがすべきことであり、そのためには私たちが全力で楽しまなきゃいけないんだ。

 

 

 

私が叫んだことに千歌ちゃんは驚いた千歌ちゃんは、最初は目を見開いていたけど、しばらくして口元を緩ませて満点の笑顔を見せてくれた。

 

 

 

千歌「うん!!」

 

 

 

 

 

 

大丈夫。

 

 

 

今日のライブは最高になるよ。

 

 

 

 

 

 


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