向日葵に憧れた海   作:縞野 いちご

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#4 壁は壊せるものさ

 

 

 

 

練習が終わって、部室でルビィちゃんと衣装を作っている。

私はジャケット、ルビィちゃんはスカートやパンツを担当していて、日に日に衣装作りのペースが速くなっていた。

 

 

曜「ルビィちゃんは手先が器用だね。」

 

ルビィ「そうかな?」

 

曜「今まで小物だったり、簡単な部分しかやってもらってなかったのに、そこからここまでできるなんてすごいよ!」

 

ルビィ「それは曜ちゃんの教え方が上手だからだよ。」

 

 

顔を上げながらルビィちゃんはそう言った。

 

 

曜「っ!///

そう言われると、なんだか照れちゃうね///」

 

ルビィ「えっ、あっ……曜ちゃんを困らせるつもりはなかったんだけど。ご、ごめんなさい……」

 

落ちこませちゃった!?

 

 

曜「いやいや!褒められて悪い気がする人なんていないから!ちょっと恥ずかしい気持ちになっただけだよ?」

 

ルビィ「そ、そっかぁ……」

 

曜「変な反応してごめんね。」

 

ルビィ「ううんううん。今のはルビィが悪いの。だから曜ちゃんも気にしないで。」

 

曜「ありがとう。」

 

 

そうして、私たちはまた作業に戻る。

ミシンが小刻みに糸を縫う音がまた聞こえ始める。

 

 

タン、タン、タン、タン、タン

 

 

私は作業をしているルビィちゃんの姿を黙って見ていた。

 

真剣な目。大好きな物に没頭する目。本当にスクールアイドルのことが好きだって伝わってくる。

きっと『輝きたい』と思っているのは千歌ちゃんだけじゃない。Aqoursのみんなが願ってること。自分の大好きなことで最高に輝く。その努力だって惜しまない。そう思っているんだ。

 

ルビィ「えっとぉ……」

 

曜「う、うわぁっ!?」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

考えに耽っていたせいで、ルビィちゃんが近くにいるのに気がつかなかった。

 

というかこの展開、何日か前に同じことがあったよね?

 

 

曜「わ、わ、ごめん!考え事してて、ルビィちゃんが近くにいること気づかなかった!」

 

ルビィ「ルビィは小ちゃくて、目立たなくて……」

 

曜「はいはーい。ネガティヴな事言うの禁止ー。」

 

ルビィ「え、えぇ。」

 

曜「ルビィちゃんは十分に可愛いし、目立たなくないから!」

 

ルビィ「……わかったよ。」

 

曜「それでどうしたの?何か話があったんじゃない?」

 

ルビィ「あ!小物の話なんだけど、みんなの色を決めて、それぞれをそういうモチーフにすれば良くなると思うの。」

 

曜「そうだね。イメージカラーは自分自身で決めてもらおうか。」

 

ルビィ「うん!」

 

曜「よし、じゃあ今日の分の作業は終わったし、終バスが無くなる前に帰ろう。」

 

ルビィ「出来上がりが楽しみだね!」

 

曜「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「私たちの色?」

 

曜「ルビィちゃんからの提案でね?」

 

果南「いいね。みんなの個性を出すことにもつながるよ。」

 

花丸「さすがルビィちゃんずら。」

 

ルビィ「さすが、なんてほどじゃないよぉ///」

 

 

 

次の日にみんなからイメージカラーを聞くために、私はみんなを集めて相談をした。みんなのそれぞれの色を聞いてから私とルビィちゃんは、さっそく小物を揃えに行った。

 

 

 

 

曜「ルビィちゃん、今日はみんなに褒められてたね。」

 

ルビィ「ルビィはみんなで、って思っただけだから…。」

 

曜「でも、ルビィちゃんが何も言わなかったら、また私が勝手な小物を揃えるところだったよ?」

 

ルビィ「曜ちゃんの選んだものは可愛いから、そっちの方が良かったりして…」

 

曜「ルビィちゃんが居てくれて良かったんだよ!自信持って!」

 

 

そう言って私はルビィちゃんの背中を叩いた。

 

 

ルビィ「ピギャッ!?……ありがとう。」

 

ルビィちゃんは顔を赤くして俯いた。

 

 

 

曜「みんなの色をおさらいしよっか。」

 

ルビィ「えっと。千歌ちゃんがみかん色?」

 

曜「千歌ちゃん……。

その言い方好きだなぁ。それって、オレンジ色のことね。」

 

ルビィ「なるほど。梨子ちゃんが桜色。」

 

曜「薄いピンクね。なんだろ、二年生は凝った言い方が好きなのかな?」

 

 

ルビィちゃんから言われた色を頭の中で整理していく。

 

 

ルビィ「果南ちゃんがエメラルドグリーン。お姉ちゃんが真紅で、曜ちゃんが水色。善子ちゃんが黒だって……」

 

曜「よーしこーだけは白に変えておこう。」

 

ルビィ「えーっと……花丸ちゃんが黄色で、鞠莉ちゃんがバイオレットで、ルビィがピンクです。」

 

曜「なるほど。わかったよ。

とりあえず、行きつけのお店があるから、そこで探してみようか!」

 

ルビィ「はい!」

 

 

お店に入った私とルビィちゃんは、みんなから確認した色と衣装に合いそうな大きさの小物を探していた。

 

 

ルビィ「うわぁ。いっぱいアクセサリーがある!」

 

曜「ここのお店に来れば、可愛いものがいっぱいあるよ。他にも文房具とか、ぬいぐるみとか!」

 

ルビィ「あまりルビィは沼津まで出てこないし、お姉ちゃんもこういうところには連れてきてくれないから、新鮮だよ…」

 

 

曜「じゃあ、それぞれでみんなに合いそうなものを見つけよう。」

 

ルビィ「うん!」

 

 

ルビィちゃんは目をキラキラさせて、お店の奥へと行ってしまった。

 

 

曜「あんなに喜ぶと思わなかったなあ。これは一緒に来て正解だったね。」

 

 

ルビィちゃんが奥に行ったから、私は手前から見ていこうかな。

 

 

曜「あっ」

 

 

私は入ってすぐに置いてあるぬいぐるみに目が止まった。

 

曜「か、かわいい!」

 

イルカのぬいぐるみが棚の上に座っている。パステルカラーが基調になっているみたいだった。

 

 

曜「この子……」

 

 

ルビィ「曜ちゃん!」

 

曜「はいっ!」

 

背後からルビィちゃんに呼ばれて、咄嗟に敬礼をしてしまった。

 

ルビィ「っ!?」

 

なぜかルビィちゃんも敬礼ポーズ、と同時にルビィちゃんの手に持っていたものがバラバラと落ちていった。

 

 

ルビィ「ああっ!?」

 

曜「あはは……」

 

 

うん。これは私のせいだ。

 

 

 

私がぬいぐるみを見ている間に、ルビィちゃんが全員分のアクセサリーを見つけてくれた。

 

 

曜「いやはは……。ルビィちゃんが真面目に選んでくれてるのに、なんか恥ずかしいことしちゃったよ。」

 

ルビィ「ルビィは好きで選んだだけだから……。それに、ぬいぐるみを見てる曜ちゃん、いつもと雰囲気が違ったんだ。」

 

曜「雰囲気?」

 

ルビィ「いつもは頼りになる感じでかっこいいんだけど、今日はとっても可愛かったよ。」

 

 

か、可愛い!?

 

 

曜「……よ、よ……」

 

 

ルビィ「よ?」

 

 

曜「ヨーソローー!///」

 

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

後輩に可愛いと言われて動揺した私は、思わず街中で叫んでしまった。そのせいで私たちは周りからの冷ややかな視線を浴びながら帰ることになった。

 

ルビィちゃんは今日はなんかごめん。

 

 

 

駅前から内浦行きのバスに乗ってルビィちゃんと帰る。とりあえず、迷惑かけたから謝っておこう。

 

 

曜「今日はごめんね?」

 

ルビィ「ううん。ルビィが落ち着きなかったのもいけなかったから。」

 

曜「お詫びと言ったらなんだけど、荷物は私が預かるね。家も私の方が近いし。」

 

ルビィ「本当?ありがとう。」

 

 

まあ、そんなに運ぶのが大変な大きさじゃないんだけどね。

 

 

ルビィ「今日は楽しかったなぁ。」

 

曜「また足りないものがあったら、一緒に買いに来ようよ。」

 

ルビィ「うん。次も楽しみだね♪」

 

曜「なるべく不備がない方がいいんだけどね。」

 

ルビィ「あっ。そっか……」

 

曜「でも、楽しかったなら何よりだよ。」

 

ルビィ「えへへ。」

 

 

会話が落ち着いたところで、私が降りるバス停の近くまで来た。

 

 

ルビィ「曜ちゃんの家ってこの辺りだっけ?」

 

曜「そうだね。」

 

ルビィ「あのね。」

 

曜「うん?」

 

ルビィ「お買い物だけじゃなくて、今度また遊びたいなぁ……って。」

 

曜「!」

 

 

飛び込みがあったりして忙しかったから、今までは千歌ちゃんや果南ちゃんとしか遊んでなかったから、素直に嬉しかった。

 

 

曜「もちろんだよ!

よーし、今度出かける時は遊ぼう!」

 

ルビィ「うん!」

 

 

曜「あ、着いちゃった。

それじゃ、またね。」

 

ルビィ「バイバイ。」

 

ルビィちゃんは私に手を振ってくれた。私も手を振ってバスを降りる。

 

外からバスを見ると、ルビィちゃんがこっちを見てニコニコしていた。

 

 

 

 

 

なんというか、かわいいよね。

 

 

バスを見送った私は、少しの間楽しかった余韻に浸っていた。でもスマホの画面を見て現実に引き戻される。

 

 

 

曜「……飛び込みの大会まで、あまり時間がない。」

 

 

この前の調子だと、次の大会は突破できない。もう少し練習しないと。

 

 

でも、衣装作りもあるし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回はルビィちゃんに任せちゃう?

 

 

 

 

 

 

曜「……。」

 

 

 

 

まだ決断するには早いか……

 

自分ができる限りはやらないと。

 

 

 

 

悩んでるとき、私はμ'sのある曲を思い出す。

 

 

 

曜「壁は 壊せるものさ

倒せるものさ

自分からもっと 力を出してよ」

 

 

 

『No brand girls』

 

千歌ちゃんから勧められたμ'sの曲の中で、特に私が好きな曲。

 

 

曜「壊せるものさ 倒せるものさ

勇気で未来を見せて」

 

 

 

 

 

 

 

曜「そうだよ。覚悟はしたんだよ。」

 

 

私は自分に言い聞かせるように、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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