#1 0から1へ
予備予選が終わり、私たちは無事通過することができた。
私たちは安堵と喜びで胸がいっぱいになっていたけど、鞠莉さんの一言で
ある問題の深刻さが浮き彫りになった。
千歌「また0…。」
私たちの通う、浦の星女学院は統廃合の危機に瀕しているということだ。つまり、学校が無くなってしまうってことになる。
鞠莉ちゃんやダイヤさんは、Aqoursの力でそれを何とか防ごうとしている。Aqoursの人気が上がれば、学校の入学希望者が増えると考えているみたい。
でも予備予選を通過しても、学校説明会の希望者は0人だった。
ダイヤ「あ、ありえませんわっ!私たちは予備予選を通過したのですよ!?かなりの宣伝になったはず!」
鞠莉「でも、0は0。それ以上でもそれ以下でもないわ…」
ルビィ「そ、そんなぁ…」
この0という数字が私たちに重くのしかかる。つまり、今のところ誰もうちに入学しようと考えている人はいないってことになるから。
花丸「マル達の学校、無くなっちゃうの…?」
善子「誰も入ってきてくれない学校がやっていけるわけないでしょ。」
ダイヤ「私たちは精一杯やりましたのに。なぜ……」
ラブライブの予備予選は通過したのに、重い空気が部室の中に立ちこめた。
果南「ショックではあるけど、切り替えていこ?まだ、ダメって決まったわけじゃないし、ここでクヨクヨしててもしょうがないって!」
千歌「果南ちゃん……」
鞠莉「果南……」
ダイヤ「そうですわ……。ここで立ち止まる私たちではありません!何としてでも、入学希望者を増やさないと!」
ルビィ「そ、そうだよね!まだここからだよね、うん。」
花丸「諦めちゃ、ダメ。ずら!」
善子「ふっ。与えられし魔界からの奇跡的蘇生という役目。
中々、堕天使に相応しいじゃない。」
果南ちゃんの一声でみんなの目に光が灯った気がした。
曜「まだまだこれから!自分のできる限りのことをしていこう。」
果南「そうだね。そうと決まったら、ここにいない私たちの仲間を迎えに行かなきゃだね。」
千歌「梨子ちゃん!」
そうだ。私たちには大切な仲間がいる。梨子ちゃんとまた歌えるチャンスをもらえただけでも感謝しないとかな。
鞠莉「そうね。とりあえず、梨子が帰ってくるまではゆっくり休まない?」
ダイヤ「予選までそれほど時間はないですわよ?」
果南「私は別に鞠莉の意見もアリだと思うよ?色々考えを整理させたりできるしさ。」
花丸「マルも少し休みがあると嬉しいな……。」
曜「千歌ちゃんはどうしたい?」
千歌「うん。私もちょっと考える時間が欲しいかも。」
ダイヤ「わかりましたわ。それでは、梨子さんが帰ってき次第、練習をしていきましょう。」
ということで、梨子ちゃんが内浦に帰ってくるまでは練習がOFFになることが決まった。
その日、家に帰ったあと、千歌ちゃんからグループ通話をすることが提案されて、Aqoursのみんなのグループで通話することになった。
私が通話に参加したときには、千歌ちゃんと梨子ちゃん、一年生の3人が既に話をしていた。
千歌『あ、曜ちゃん。』
花丸『こんばんはずら〜。』
曜「遅かったかな?ごめんね。」
ルビィ『大丈夫だよ。』
梨子『曜ちゃん、また今度改めて伝えるけど、本当にありがとう。そして、予備予選通過おめでとう。』
曜「うん。ありがとう!梨子ちゃんは?」
梨子『うん。弾けたよ。私の弾きたい音を。』
ルビィ『梨子ちゃん、賞を獲ったんだって!』
曜「え、すごい!確かに、いいメロディだったよね。」
千歌『うん!だって、梨子ちゃんは今まで私たちの曲を作ってくれてたんだよ?いい曲ができるに決まってるよ!!』
善子『リリーの天界的旋律によって、この下界のものたちは…』
鞠莉『Chao〜☆』
千歌『鞠莉ちゃん!』
ルビィ『こんばんは。』
善子『ちょっと!私の話を切らないでっ!!』
鞠莉『Oh!よしこデーモンちゃんの話を遮っちゃった?Sorry』
善子『善子言うなー!』
梨子『お願いだから2人とも落ち着いて。』
騒いでいる2人を梨子ちゃんが制止しようとするけど、鞠莉ちゃんのノリに善子ちゃんが乗ってしまって収集がついてなかった。
ダイヤ『ルビィの電話から話を聞こうと思ったら、一体何の騒ぎですか?』
花丸『いつものことずら。』
ルビィ『今思ったけど、3人でギューギューかもぉ…』
ダイヤ『同じ会話を隣に居るのに、違う電話で聞くなんて可笑しいでしょう?』
千歌『うん?花丸ちゃんもルビィちゃんと一緒なの?』
花丸『今日はルビィちゃんの家にお邪魔させてもらってるんだ♪』
曜「へぇ〜。面白そうだね。」
ルビィ『あっ。音が大きくなるようにスピーカーにすればいいんじゃないかな!』
ダイヤ『さすがルビィ。いい方法を思いついたわね♪』
花丸『すぴーかー?』
ルビィ『えへへ。それじゃあ、えいっ』
善子『まったく、この姉妹コントは…』
花丸『み、みらいずらぁ〜!?善子ちゃんの声が離れててもこんなにもはっきりと!』
鞠莉『……ダイヤのせいでso noisyよ?』
ダイヤ『わ、私のせい!?』
曜「あははっ!」
果南『待たせてごめん。ちょっと片付けに時間かかっちゃってさ。』
梨子『ようやっと常識人が来てくれたよ……』
ダイヤ『その言い方だとまともな人が今までいなかったみたいではないですか!?』
果南ちゃんが来て、Aqours全員が揃う。
千歌『えーと。みんな揃ったよね?』
曜「意外とみんな早く集まったね。」
鞠莉『みんな、Aqoursの仲間のことがダーイスキ♡だからよね♪』
果南『鞠莉は相変わらずというか、平常運転で何よりだよ…』
梨子『あの、ちょっといいかな?』
ルビィ『うん?』
花丸『どうしたずら?』
梨子『みんなには今回の予備予選で迷惑をかけちゃってごめんなさい。』
梨子ちゃんはまだ気にしているみたいだった。好きなことに打ちこむことは悪いことじゃないのに。みんなだって承諾したんだし。
曜「それは気にしない!みんなだって、いいよって言ったんだから。」
千歌『そうだよ!梨子ちゃんはもともと海の音を求めていたわけだし!』
果南『梨子ちゃんは求めていた音は見つかった?』
梨子『うん。おかげさまで。』
ダイヤ『それなら何よりですわ。』
梨子『本当にみんなありがとう。』
鞠莉『礼にはおよびまっせーん!』
善子『リリーが満足できたなら良かったわ。』
梨子『私が言いたかったことはそれだけかな。あとは、千歌ちゃんからだけど。千歌ちゃん?』
そう。千歌ちゃんが集めたんだから、何か話したいことがあるはず。
千歌『え?あっ!うん。あの後、ちょっと考えたんだけど、μ'sってなんで廃校を阻止できたのかな?って。』
花丸『それはスクールアイドルで音ノ木坂が有名になったからじゃないかな〜?』
ルビィ『でも、ルビィたちも予備予選は通過したわけだから、多少は有名になっててもいい気がするけど……』
ダイヤ『私たちには足りないものをμ'sは持っていたとしか考えられないですわ。』
μ'sが持っていて、私たちに足りないもの。
果南『それで?考えた結果、何か答えは出た?』
千歌『わかんなかった。』
善子『ちょっ。』
ダイヤ『わかんなかったって、なんですの……?』
千歌『だから東京に行こうと思うんだ。』
曜「東京に?」
花丸『また東京に行くずら!?』
鞠莉『梨子を迎えにいくついでにってことかしら?』
千歌『うん!ほら、やっぱり見てみないとわからかいかなって。100分は一貫にしかる!って言うでしょ?』
ダイヤ『百聞は一見にしかず、です。』
千歌『ありゃ。』
果南『あははっ!
いいんじゃないかな。私は賛成だよ。千歌がちゃんと考えて出した答えなら、私は反対しない。』
鞠莉『私も、ちかっちの意見に乗るわ!』
曜「千歌ちゃんがそう思うなら、私も行こうかな。」
梨子『私はみんなに任せるよ。』
花丸『おらもみんなに任せようかな。』
善子『同じく。』
ルビィ『ルビィは…』
ダイヤ『私は断固反対ですわ!』
ルビィ『ピギィッ!?』
花丸『ずらぁ!?』
千歌『ダイヤさん?』
なんでダイヤさんは反対したんだろう?
ダイヤ『東京など、大事な用が無いのに行くべきところではありません。』
果南『ダイヤ?』
鞠莉『あと、大事な用ならあるじゃない。廃校を阻止するための鍵はなにかを探すこと、ね?』
ダイヤ『くっ。
わ、私は軽はずみな気持ちで東京に行くと、恐ろしい思いをすると忠告しているのです。』
千歌『恐ろしい?』
果南『ああ。なんか前にダイヤからそんな話を聞いたことあるような……』
善子『まさか東京には漆黒へと導く巨大ホールでも!』
花丸『絶対にないずら。』
ルビィ『おねぃちゃん……。ルビィ、千歌ちゃんの言う通り、東京にもう一回行ってみたいなぁ。』
ダイヤ『うっ!』
何かがダイヤさんに突き刺さった。
ダイヤ『し、仕方ありませんね。私だけのワガママで団結力を乱すわけにはいかないですから。』
ルビィ『ありがとう、おねぇちゃん!』
花丸『さ、さすがルビィちゃん。』
鞠莉『これで一件落着!あとは梨子を迎えにいきましょ〜♪』
曜「そしたら、梨子ちゃんはまだ東京に残ってくれるかな?」
梨子『うん。わかった。』
千歌『結局、ダイヤさんの恐ろしことってなんだったんだろう?』
果南『ああ、気になるんだったら今度教えるよ。』
ダイヤ『果南さんっ!』
ルビィ『えーと、みんなとはまだまだお喋りしたいんだけど……』
ダイヤ『そうでしたわ。家の決まりで、あまり遅くまでは通話してはならないので。これで私たちは失礼しますわ。』
果南『そっか。それじゃ、詳しいことが決まったらまた教えるよ。』
ダイヤ『ありがとうございます。それではまた。』
そう言って、ルビィちゃんの表示がオフラインになった。
千歌『なんだか、一気に寂しくなっちゃったね。』
鞠莉『いじられ担当がいなくなっちゃったわね。』
善子『それ、ダイヤさんに言ったら怒られるんじゃないの?』
鞠莉『ダイヤはおこりんぼだわ。』
梨子『鞠莉さんにも原因はあるかと……』
果南『それで、具体的にはいつ行くことにする?』
千歌『明日いきなり、っていうのは厳しいかな?』
曜「うーん。無理ではないかもしれないけどね。」
鞠莉『沼津からトーキョーは日帰りで行けるものね。』
果南『じゃあ、明日にする?』
善子『明日、魔都に向かうのね?』
善子ちゃんの一言で、数秒の空白ができる。
梨子『花丸ちゃんがいないから、誰もツッこんでくれる人がいないんだね。』
善子『ボケてない!』
曜「それじゃあ、ダイヤさんや花丸ちゃんには私が連絡しておくね。」
千歌『ありがとう、曜ちゃん。』
果南『決まりだね。よし!それなら、明日は早く起きられるように、もう寝ようか。』
曜「そうだねー。」
梨子『……あ”っ!?な、なんとかしないと……。ごめんね!ちょっと片付けしないとだから、これで切るね!』
千歌『……?
梨子ちゃん。なんで焦ってたんだろう?』
善子『まさか天界への入り口となるヘヴンズゲートの鍵を……!』
鞠莉『Good night☆ 果南はまた後でね〜♪』
果南『え?この後通話するの?』
善子『って、誰か何か言ってよ!』
千歌『あはは…。』
曜「ツッコミ不在だもんね。」
善子『なら、私も別れを告げなければならないわ。
生きていたら、また会いましょう。』
果南『善子ちゃんは終始そのキャラだったね。おやすみ。私も鞠莉から文句言われそうだから切るね。』
千歌『はーい。果南ちゃんもおやすみ〜。』
みんなは通話を終わらせていった。
残ってるのは私と千歌ちゃんだけ。
曜「久しぶりに9人で喋ったね。」
千歌『そうだね。楽しかったなあ。』
曜「みんなが集まってるとき、千歌ちゃん、楽しそうだもんね。」
千歌『それはそうだよ!だって、同じ目標に向かっている友達と一緒にスクールアイドルの話をしてるんだよ!』
千歌ちゃんの声はイキイキしていて、これが千歌ちゃんの求めていたことなんだとわかる。
曜「千歌ちゃんが嬉しそうでよかったよ。」
千歌『えへへ。』
さて。あまり長電話してると、ダイヤさん達に教えられなくなりそう。
曜「私もそろそろダイヤさん達に知らせないといけないから抜けるね?」
千歌『わかった!
じゃあ、また明日。』
曜「うん。またね。」
そうして私は通話を終わらせた。
千歌ちゃん、本当にスクールアイドルが好きで、Aqoursのみんなが好きなんだなあ……。
さてと、ダイヤさん達に知らせないと……
prrrrr
私がかけたわけじゃないのに、スマホが鳴ってる?
誰からだろ……
曜「もしもし?
はい。あ、最近はすみません。
はい。はい。
……えっ……。」