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行き当たりばったりな展開になるやもしれませんが、今後もお付き合いいただけると幸いです。感想等もお待ちしています!
それではお待たせしました。3話目です。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」
さて、廊下側から自己紹介が始まったのだが……まずは木下か。
確か木下優子のおとうt……妹で、本人が今言っていたように演劇部に所属していたはずだ。
試召戦争の時、陽動やらなんやらにその演劇能力を活かしていた……やらなんやら。
「……須川。わしは妹ではなく弟じゃからな」
「「「「嘘だああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!」」」」
「……嘘じゃないのじゃ! れっきとした男じゃ!」
さらっと俺の心を読んでいきやがった。あとこのクラスの大半に打撃を与えていった。
「わかってるわかってる。弟ではなく妹。もう間違えないからな」
「そうそ……ってさらっと間違えておる!気が付いてくれ須川!」
うんうん、お前が男に見られないってのをいじるのはこのクラスでの恒例行事だからな。許してくれ。
クラスの大半がおふざけではなく本気で女と思っているあたりたちが悪いとは思うが。
「……土屋康太」
ん? 次は土屋か。ってそのまま座ってしまったんだが。あれだと名前以外何もわからないと思うんだが。
まああいつは口を開けばおそらくボロが出まくるから、それを避けたんだろうな。
あいつは情報収集能力が凄まじく、またとある一教化に特化しているというやつだ。
Fクラスでは一教化でも特化していればエースだから活躍していたな……。
そこから先は朝倉や横溝といった元FFF団メンバー(この世界だと元ではないが)であるFクラスの面々がしばらく続く。
……男しかいない空間だからか、すごく自分の赤裸々な趣味を語って、その場で同志を作るというイベントになりかけていたがそこは割愛。
「では、次……須川君ですね」
「ああ、はい」
俺の番が来た。と言ってもそれほど何か言わないといけないことがあるわけではないんだが。
「須川亮だ。まあ仲良くしてくれ」
ほんと、話すことなんて何もない。
赤裸々なことは前世の俺なら言ってただろうから、今回はいいや。
「ええっと、須川君。後で私から少し訊きたいことがあるのですがよろしいですか」
「え、あ、はい。わかりました」
何も言われないと思っていたのにまさかの福原先生だと? しかもわざわざ後で、ということらしいが。
(どういうことだ、須川)
(わからん)
坂本がアイコンタクトでそう送ってきたので、俺は首を振って返す。
「すみません、では次の方」
そうしてしばらく続き。
「趣味は吉井明久を殴ることです」
平然と暴力への欲求を話す奴にまで行き着いた。
「うっ、島田さん……」
絶賛標的にされた吉井はその声の主に嫌そうな顔を向けた。
「はろはろー吉井、ウチの顔を見てなんでそんな嫌そうな顔するのよ、殴るわよ」
嫌そうな顔をされても仕方ない発言をした相手に何故そんな理不尽なことを言えるんだ、島田。
面倒だが、一応注意はしておくか……。
「暴力沙汰はやめておけ、島田」
「うるさいわね須川。あんたには関係ないでしょ」
カチンとくる答えが返ってきた。
「そうか、別にいいけどな。だが一言言っておくがな」
にっこりと微笑み。
「お前が吉井にするようなことをお前がされても文句は言えないってわかって言ってるんだよな?」
あくまで穏やかな声音で話す。
「前々から見てたが、お前は何か気に入らないことがある度に吉井に暴力を振るってたな。明らかにお前が悪い時もそうだ」
「あ? 何よ? ウチと吉井の間のことに口を突っ込まないでよ!」
「ああ、別にお互いが納得してるならいいんだがな。だが吉井からは俺も相談されてるからな」
「なっ! 吉井! あんた何勝手に話してるのよ! 殴るわよ!」
「あ……えっと……」
「吉井、そこで謝るな。お前は悪くないからな」
吉井のことだから謝りそうだと思っての一言。しかし謝らせるわけにはいかない。吉井のために。
島田のことはどうでもいい。前は気付かなかったが酷く理不尽な人物であることがわかったからな。
……前世の俺も同じようなことをしていたからってのもあるから、同族嫌悪みたいなところはあるのだが。
「そこ、喧嘩しないでください。次の方どうぞ」
福原先生に注意されてしまい、俺と島田の口論は一旦収束した。
「須川……あんた覚えておきなさいよ」
「ん? ああ、はいはい。何のことか知らんがな」
「っっっっ!!!!」
もう正直関わるのも面倒だから適当に流そう。今はとても面倒だ。
さてさて、次は吉井か。たしかあいつの自己紹介は覚えてるぞ。
「えーっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んでください」
「「「「ダァァ――――リィィィ――――ンンン!!!!」」」」
うん、やっぱりこのクラスの順応力というか、適応力というか。そういったものがおかしいと思う瞬間だな。
見ろ、予想以上の返しに吉井自身吐き気を催してるじゃないか。俺も大変気分が悪い。
「失礼、忘れてくださいよろしくおねがい……うぷっ」
(吉井なりにジョークを飛ばしたんだろうが……ドンマイだな)
すごく気持ち悪そうな表情をしながら席に着く吉井に、同情の念を禁じえなかった。
さて、吉井が終わったしあとはまたFFF団メンバー「遅れて、すみ、ません……」だなって思ったが、誰だ?
「「「え?」」」
おお、ここでもクラス全員の声が被った。
まあこれは仕方ないよな。というか俺も今の今まで忘れてた。
「姫路瑞希といいます。よろしくお願いします」
姫路がうちのクラスだとわかったの、この時だったな。
彼女は一年の時から優秀な成績だったからAクラスは確実だと誰もが考えていたんだった
「はいっ!質問です!」
ん?あれは……朝倉?
「なんでここにいるんですか?」
成績優秀な彼女がここにいる理由なんて、それこそ本人にはどうしようもなかった理由しかないだろう。
そんなことくらい考えてみてもいいとは思うが……まあ、それでも気になるものは気になるか。
……こいつらがそんなところまで考えてるかどうかは知らないが。
普通気を遣って、こんな場面で尋ねないだろうが……まあ、Fクラスだしな。俺もそうだったしな。
「あ、その、振り分け試験の最中に高熱が出てしまって……」
ほらな、本人ではどうしようもないことだった。
振り分け試験中の途中退室は例外なく0点扱いになる。いくら普段優秀でも本番で退室してしまえば意味が無いってことだ。
……まあ、地力の低さが如実に表れてここにいる奴らよりかは、よっぽどましな理由だとは思うが。
その証拠に。
「そう言えば俺も熱(の問題)がでたせいでFクラスだわ」
「俺は弟が事故に遭ったという聞いて全力を出し切れなくて」
「俺は世界マダムコンテストのことが頭から離れなくて」
「ああ、木下優子さん。あなたのことを思っていたらテスト時間が終わっていたよ。よし、この後告白に」
「おい、みんな殺る用意はいいか」
「「「さー、いぇっさー!」」」
「すみませんでした!」
このざまだからな。俺もあの中に入っていたのか……。外野から見るとすごく異質だな。
ってか、FFF団とか関係なしにこいつら既に暴走しそうなんだが。
「一年間、よろしくお願いします!」
このような様子のFクラスにさすがの姫路も苦笑いしつつ空いている席に向かって行った。
直後に吉井と坂本に何か話しかけられているようだが……まあ仲良くやってくれ。
何やら吉井が騒いでいるが……いつものことか。
「はいはい、そこの人たち、静かにしてください」
その様子を見かねたのか、福原先生が教卓を叩くと。
ガラガラガラガラ……
「「「………………」」」
クラス一同唖然としていた。そりゃそうだろうな。
「えー、新しい教卓を持ってきますので少し待っていてください」
何より壊した福原先生が何事もなかったかのように振舞っているのに俺は唖然としているんだがな。
福原先生が出て行ったあと、「雄二、ちょっと」と吉井が坂本を連れ、廊下へ出て行った。
これは前も同じ流れだった。そして今回もその流れになぞらっている。
ということは、このあと試召戦争を起こすとか言い始めるのだろうな。
何かできれば、とは思うが、現時点で俺が試召戦争に対して何かできるかと聞かれると、特に思いつかない。
他にやることはいくつかあるが……これはもう少し日を置いてからでも構わないだろう。
「須川が何やら考え込んでおるのう……」
「……似合わない」
「いや、ムッツリーニ、その評価はどうかと思うぞい」
遠くから何やら失礼な話し声が聞こえてきた気がするが別にいいだろう。
ん?吉井と坂本が戻ってきて、福原先生も戻ってきたな。
ってことは、自己紹介が残っていたのも坂本だけだったし、この流れで戦争をすることを宣言するはず。
「では、坂本君、残ってるのはあなただけなのでお願いしますね」
「おう」
そして坂本が話し始めようとした時。
「失礼する。須川、いるか」
「……は?」
…………おいおい、なんでこのタイミングで鉄人がここに来る?
「少しお前に話がある。ついてきてくれ」
「……わかりました。福原先生、行ってきます。」
まあ、鉄人の頼みだから断ることはできないからついていくしかないんだが。
「すまんな、急に呼び出して」
「いえ、構いませんよ。で、どうしたんですか鉄人」
「西村先生と呼べ。っと、ここだ」
そう言って連れてこられたのは学園長室だった。
「失礼します、西村です。須川を連れてきました」
「待ってたよ、おはいり」
「失礼します」
「失礼しやーす」
中から聞こえたしゃがれ声の言うとおり、鉄人と俺は部屋に入る。
おお、学園長室ってよく考えたら、入るの初めてなんじゃないか?
若干感動しながら目を向けた先には。
「西村先生、ご苦労様だね。わざわざ呼びにいかせたりして。さて、あんたが須川だね」
「…………年老いてはいるが割と美人な部類?」
「失礼さね! 割とは余計だよ!」
「あ、すみません。悪気はなかったんです」
「ふん、あんたみたいな若造に何がわかるさね」
すみません、見た目に反して人という生き物の生を体験するの、二度目なんです。
……もしかしたらこのおばあさんがマジもんの妖怪で150年くらい生きていたりしたら話は変わってくるが。
「で、僕みたいな普通の一生徒をわざわざ呼ぶなんて何かありましたか」
「ふん、西村先生の話によく出てくるあんたが普通の一生徒を自称するのは間違いさね」
なんて失礼なババアだ。少なくとも今回はある程度きちんと過ごしてるわ!
「須川、気にするな。あれが学園長なりのコミュニケーションの取り方だ」
「鉄人、あの人学園長やめさせた方がいいと思いますよ。人格に難ありです」
「聞き捨てならないね!」
「いや事実でしょ。生徒に対してそこまで面倒な態度とるのはどうかと思いますが」
こんなのが学校長だからこの学校はおかしいんじゃないのかと、今更ながらに思い始めた。
「学園長、前から申しておりますが……」
「いや、わかっているよ西村先生。アタシも少し熱くなってしまっただけさね。須川、すまなかったね。少しあんたという人となりをアタシなりに見ようとしただけさ。気分を悪くさせたなら申し訳ない」
なんか急に殊勝な態度になったんだが、なにこれ。
普段の集会とかで見せる態度と違いすぎるだろ!
「いや、別にいいですけど、集会の時もさっきのような感じでしたよね」
「あれはああでもしないと人の話を聴かないだろう? 高校生になってもガキみたいな態度な生徒が多すぎるさね」
「……お気持ちはわかりますが」
きちんとしている生徒からも反感を買ってしまいかねないのは理解しているのだろうか。
「話がそれたね。須川。あんたに頼みたいことがあって呼び出させてもらったよ」
「俺に、ですか」
「ああ、西村先生が信頼できる生徒として一番にあんたの名前を出したからね」
……意外すぎる言葉に思わず鉄人を見てしまった。
「須川。お前は少々変わっているが、人間として信頼のおける奴だと俺は思っている。だからこそ学園長に話したんだ」
そう言われてしまっては、「面倒なことしてくれやがって」とか言えないじゃないか。ずるいぞ鉄人。
「で、俺は何をすれば」
「ちょっと待ちな。……ほら、入っておいで」
「はい、失礼します」
学園長室内にある、俺たちが入ってきたのとは別の扉。
そこから女の子が入ってきた。
原作では出てこなかった子を少し出してみようと思いました。
須川君のヒロインになるかどうかは決まってませんが……。