須川亮とRe:文月学園二年生生活   作:森野熊漢

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なんというか、前の話からどう進めていく予定だったかを忘れている自分がいます。



まだこの小説の続きを待ってくれてる人、いてくれたりするんですかね……?(ぼそっ)


負ければ賊軍って言われてるけど、末路はそれぞれで違うよね

根本の(召喚獣の)首が宙を舞った少し後のこと。

 

「せっかくだし可愛くしてあげて」

「それは無理、土台が腐ってるから」

 

俺は今、ゲスイことをし続けてきた戦争の敗者の真の末路というものを目の当たりにしてるんだと思う。

 

具体的に言うと。

 

・敵からの容赦ない責め苦

・仲間の裏切り行為(←自業自得だと思うが)

・人間としての尊厳の喪失

 

うん、センソウ、コワイ。

 

「須川さん、手紙ですが吉井さんにお任せしてきましたよ」

「そうか、ありがとう」

「いえ、吉井さんに渡すだけでしたから……」

 

いち早く持ち主の特定をしたのは吉井だったのだが、クラスに数少ない女子の手紙ということで、中身が気になって仕方ないうちのバカ共が吉井を殺しにかかったのだ。

そこに雪下が介入。奴らを説き伏せ、無事吉井に姫路へ返還させることができたということらしい。

前に何やら大事に持っていたのを見たとか言っていたから、よほど印象に残っていたのだろう。

根本の制服から手紙が出てきたときの吉井の表情が今まで見たことないものになっていたからな。

 

まあ前世の記憶から、姫路の様子がおかしかったこと、そして後々になって吉井からその事実を聞き出していたことが功を奏したというべきか。姫路の方へ根本の注意を向かせないことに、偶然とはいえ成功してたし。

 

 

最終的な結果として、根本は女装させられた上に撮影会を行われ、その格好でAクラスに戦争の意思と準備があることを伝えに行くという黒歴史を作成することになったのだが、まあ自業自得だな。

 

「さて、帰るか……」

 

あまりに見苦しいものが視界に先程からチラチラ映るので、さっさと帰ることにした。教室に鞄を取りに行くと、吉井が何やら坂本の机で何かしていたのだが、まあまたしょうもないことでもしているのだろう。

 

「あ、須川くん。もう帰るの?」

「ああ、もう今日はすることもないだろうしな。吉井はどうするんだ」

「そうだね、僕もしばらくしたら帰るよ」

 

そういえば、今回の吉井は壁を壊してないから特に教師陣からのお咎めはないんだったな。

 

「須川さん、私も一緒してもいいですか?」

「……お前、ほんと気付かないうちに後ろにいることが増えてないか?まあいいけどさ」

 

雪下が背後から声を上げたのだが、俺の気付かないうちに背後に回ってることが多い気がする。

なんというか、うん。これでFクラス連中並の殺意やらなんやらを持ってたらやばかっただろうな。

 

「じゃあね二人とも」

「おう、吉井もほどほどにしておけよ? まあ早い時間帯だから坂本と熱い追いかけっこを少しでも長く楽しみたいっていうのなら止めはしないが」

「……やっぱり吉井さんってそういう」

「なにその物凄い勘違い!? それに雪下さん、やっぱりってどういうこと!? 僕をどういう目で見てたの!?」

「いえ、その、はい。人それぞれ価値観は違うと思うので、別に私は否定はしませんよ、はい」

「やめて! 違うから!断固あり得ないから!」

 

そう言いながら吉井は坂本の鞄に教科書を入れた。ああ、落書きでもしてたんだろうな。

 

「ってことで、僕も帰るよ!いいよね!」

「……吉井さん、須川さんにまで」

「そういう意味じゃないからね!?」

 

知らない間に雪下がかなり残念な思考になってしまっているんだが……やはりFクラスは彼女には合っていないんだろうな。

 

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点数補給のテストを受けた翌日。

 

「失礼します」

「急になんだね、クソジャリ」

 

俺は学園長の元へと来ていた。第一声が相変わらずのこのババアにイラッとするも、表面だけは取り繕っておく。

 

「いえ、学園長にお願いがありまして」

「……ふん、なんだね、言ってみな」

 

さて、この先の俺の活動に影響する頼みだ。しっかりと交渉せねば。

 

「実は……」

 

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そしてさらに翌日。

 

「一騎打ち?」

「ああ、俺たちがAクラスに勝てるとすればこの方法が確実だと思うんだが……須川、お前の意見も聞きたい」

 

昼休みに坂本に呼び出されたところ、吉井、木下、土屋、姫路も同席していた。どうやら俺が来る前に同じ話を聴いていたらしく、驚いた顔を見せてはいない。

 

「まあ坂本や他のやつらが納得してるなら別にいいんだが」

「……須川、悪いがありのままの「お前自身の意見」を聞きたい」

 

珍しく坂本がマジな目でそんなことを言ってきた。

気持ち悪っ。

 

「気持ち悪っ」

「おい、思っても直接口に出す奴があるか」

 

あれ? 俺の口って存外正直者?

 

「まあ言っていいなら、俺は別に問題ないと思うが……そうだな、いくつか俺の方でも対策は考えておく。だからその案で行こう」

「そうか、助かる」

 

まあその対策のうちの一つ目は、今後の活動のことを意図してのものではあるが、結果的に既に昨日行っている。

 

「あと……坂本、きちんと勝負を想定している教科の勉強はしておけよ」

「っ!ああ」

 

あの野郎、また危うく同じ過ちを……ってそうか、あいつにとってはまだ一度目だったな。

 

「さて、それで木下はもうCに対して動いていたんだったか?」

「ああ、姉上の振りをして喧嘩を売ってきたぞい。というか、昨日のうちに結果が出てたではないか」

「そういやそうだったな」

 

どこか遠い目をして木下が答えた。

そういや半日くらいでCクラスが試召戦争をしかけて返り討ちにあったって話が出てたっけ。

若干前回と流れが違うし、このあたりのことはあまり覚えてないから仕方ないよな。

 

俺にとって重要なのは、結果よりもその前。

 

「木下が姉に変装してCクラスにケンカを売る」という出来事だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

そして、Aクラスとの取引が終わり。

 

「では、両名共準備は良いですか?」

 

Aクラスとの試召戦争の時がやってきた。

場所はAクラス。Fクラスだと設備やらなんやらが脆いからまずいとのことでこうなった。

……まあ俺もこの案には賛成だ。なんせうちには観察処分者がいるのだから。

……嫉妬に狂った狂戦士共も一応心配の種ではあるか。

 

そして立会人をするのは高橋先生。Aクラスの担任で学年主任。ハイスペックな先生だが、鉄人とどっちがハイスペックか比べたりしたら多分鉄人だろうな。鉄人だし。

 

「とうとう、ここまで来ましたね……」

 

感慨深そうに雪下がつぶやく。

 

……まあ確かにみんなにとってはとうとうって感じなんだろうな、うん。

 

「それでは、一人目の方、どうぞ」

「あたしから行くわよ!」

 

高橋先生の声に応えるように出てきたのはAクラスの方の木下。通称木下姉。

木下秀吉と双子だから、すごい似てるんだよな。

 

「さて、わしが行くかの」

 

対するこちらも木下。秀吉の方だが。

ここまでは過去の通り。

 

そして、

 

「ところでさ、秀吉……、Cクラスの小山さんって知ってる?」

 

当然、このイベントも起こるわけで。

 

「……知っておるには知っておるが…それがどうかしたかの?」

 

ポーカーフェイスでそう答える木下。

 

「いえね、ちょっとあんたに訊きたいことがあって……こっちに来てくれる?」

「訊きたいこと? それならこの場で……あっ、姉上!なぜそんなに力を込めるのじゃ!?」

 

むんずと木下(弟)の腕を掴み出て行った木下(姉)。

 

すまん、木下。お前の犠牲は忘れない。

 

しばらくして。

 

「秀吉は用事があるから帰るってさ。代わりの人、出してくれない?」

 

帰ってきた木下(姉)が平然とそんなことをのたまった。

あれだな、木下は今現在どこかで倒れ伏しているのだろう……。合掌。

 

……さて。

 

「ああ、なら少し俺に提案があるんだが」

「あなたは……確か、須川くん、だったっけ」

 

ここからは俺の計画を進めさせてもらおう。

 

「ああ、木下の代わり、といったな。なら、今この場にはいないのだが、呼んできたいやつがいる」

「その人に代わりを頼むって? でもクラス外の人はなしよ?」

「安心しろ、一応Fクラス所属ということになってるから」

「……一応?」

 

訝しむ木下。うーん、若干ゴリ押さないとダメか?

 

「木下秀吉に乱暴して帰ってこれないようにしたって高橋先生に言ってもいいんだが?」(小声)

「……! な、何を証拠に……!」(ぼそっ)

「ほら、これ」

 

懐に入れていた。土屋お手製の盗聴器からの音声を木下に聞かせてやる。

どうやって録音したかって? そりゃ土屋は学内のありとあらゆるところに盗聴盗撮用の機器を設置しているからな。土屋の許可さえもらえれば俺にもこういった情報は手に入れることができる。

 

「……わかったわ。その代わりの人の参入を認めるわ。だから」

「わかってる、あとでお前にこのデータを渡そう」

 

取引が成立した。

さて。

 

「高橋先生。木下との戦争は後に回してもらえますか」

「いいでしょう、ですが勝負が決まってしまっていた場合は執り行いませんよ」

「わかりました、では……雪下、頼む」

「え、え? 須川さん?」

 

突然指名され、動揺する雪下に俺は笑いかける。

 

「勝てなくてもいい、時間を目いっぱいかけてくれ」

「……別に、勝ってしまっても構わないのでしょう?」

「うん、その一言で雪下が勝てる気が全くしなくなったわ」

 

死亡フラグ建ててくれちゃって、まったく……。

 

「じゃあちょっくら行ってくるわ」

 

そう言い残して俺は駆けだした。

 

どこへって? 学園長室だよ。

 


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