ゴレイヌさんに会いに行こう!   作:丸焼きどらごん

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Gorilla24,なんか増えた

「ねえねえお兄さん。そんな冴えない女より、私たちと遊ばない?」

 

 派手なメイクにイカしたファッション、おまけに出るとこでて引っ込むとこ引っ込んだナイスバディー……絵にかいたようなイケイケギャルの姉ちゃん2人が、私の横に立っていた美形の男に声をかける。しかし男はその誘いに揺らぐことなくこう答えた。

 

 

 

「三次元の女に興味は無い」

 

 

 

 しばらく沈黙が支配する空白の時間を挟み、お姉ちゃんたちは薄い笑みを浮かべると「あ、そうですか。失礼しましたすみません……」と言ってすうっと波が引くように去っていった。実に賢明な判断である。

 私はこめかみをほぐしながら目をつぶると、カッと見開いてから隣に居る男……ミルキの横っ腹を蹴り飛ばした。

 

「いってぇ!? 何するんだよ!」

「もっと他に断り方なかったの!? 一緒に居る私まで恥ずかしいじゃない!」

「知るか!」

「ついて行けばよかったのに! 可愛いし体もボーンできゅっでバーンだったでしょ!」

「俺はあんな姦しそうな三次元の女ごめんだね!」

「ああそうかよ贅沢ものが! イケメンになったからって調子こきやがって!! っていうか、そもそも何でお前がここに居るんだよ引きこもり!!」

「仕方ないだろ! ママとパパとじいちゃんの3人から鍛えてこいって放り出されたんだから! お前んとこにはママから連絡いってるだろ!?」

「たしかに「よかったらうちのミルキちゃんを鍛えてくださる? もちろんお礼はしますよ」って言われたけど! 疑問形なのに決定事項みたいな雰囲気で、返事する前に電話切られたわよ!」

 

 そう、クラピカと別れ天空闘技場に向かった私だったのだが、その途中でキキョウ先輩から連絡が来たのだ。ミルキを向かわせたから私にダイエットの時のように鍛えてほしいとのことだったが……何故だ。せっかくクラピカの師匠で無くなったのに、何故また元豚のトレーナーに返り咲かなければならないんだ。

 けどキキョウ先輩にはお世話になったし、お礼まで用意すると言われたら断り辛い。というか、多分キキョウ先輩の中ではもう決定事項だから断れない気がする。あの人押し強いんだよな。

 ミルキ本人もいきなりのことだったらしく不満そうだが、意外なことに鍛える事に関しては拒否感は無いらしい。痩せた豚は運動に目覚めたのだろうか。

 

「だいたい、鍛える意欲がわいたなら実家でいくらでも鍛えようがあるでしょ? 何で私なのよ」

「………………それだけどよ」

「何?」

 

 ミルキが途端にげっそりした顔になって言い辛そうに切り出したので、私もなんとなく身構える。……嫌な予感がする。

 

「最初は俺も親父に鍛え直してもらってたんだ」

「え、お前マジで鍛え直すつもりなの? ついこの間まで全身から「動いたら負けだと思ってる」感放ってたのに?」

「お前はいちいちムカつくな! つーかお前のせいだよ! カルトまで雇うくせに俺を除け者にしやがって……!」

「ああ……一応お前にも悔しいとか感じる精神あったんだ。悪かったよ」

 

 私が謝ったのが意外だったのかミルキは切れ長の目を少々見開くが、すぐに不機嫌そうな表情に戻った。

 

「フンッ。……まあ、それは今いい。…………でさ、ママにお前に鍛え直してもらえって言われた時は、俺も反発したんだ。見返したい奴に鍛えてもらってどうするんだよって」

「ふーん。それで?」

「鍛えるのはサブの目的だからそれより何より落として来いって言われた」

「何て?」

 

 思わず聞き返した。

 

「落として来いって言われた」

「どういう意味で何を?」

 

 嫌な予感が強くなる。

 

 

 

 

 

 

「男として女のお前を恋愛的な意味で落としてこいって言われた」

 

 キキョウ先輩ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!

 

 

 

 

 

 

 思わず(いきどお)るあまり近くにあった壁に拳を撃ち込み破壊してから地面に崩れ落ちた。尊敬する先輩のまさかの裏切りである。

 

「何で!? 私キキョウ先輩に好きな人が居るからその人のために頑張りたいって言ったよね!?」

「そこら辺はどうでもいいんだろ。お前何だかんだ拷問耐性あるし毒耐性あるし馬鹿と紙一重だけど度胸もあるし力もある。俺たちを雇う財産を築く甲斐性もあるってんで、まあ平たく言ってママが引きこもりがちな俺を押し付ける相手に選んだってわけだ。お前に分かるか?「ミルは頭がいいけど私は兄弟の中であなたの将来が一番心配です。早めに頼れるお嫁さんを迎えておいて損は無いでしょう? 安心して! エミリアさんは今でこそガサツですけど、私が完璧な淑女に育てますから何も心配いらないわ!」とか言われて、切々と俺がいかに他の兄弟に比べて劣っていて心配なのかを語られる気持ちが」

「うわぁ……」

「ママに悪気が無いのは分かってるんだ。他の兄弟とは可愛がり方が違うだけで、本心から俺の事を想ってくれてる。でも、いくらなんでも俺にだって選ぶ権利くらいある! 手頃そうな相手が現れたからっていきなりこれは酷くないか!?」

「ああ、うん」

 

 憐れみに加えてヒートアップする元豚の勢いに飲まれて曖昧に頷くと、元豚はなおも続けた。

 

「パパもじいちゃんも「これもいい機会だし、外で社会経験を積みながら鍛え直してこい」って言うし、ママは薬使ってでもいいから好きでもない相手を落として来いって言うし、なんなんだよ!! みんなキルには甘いくせに何で天才の俺に対して扱いが雑なんだ!?」

「おいちょっと待て今聞き捨てならない単語あった。薬って何だよ」

「あ? ……聞くなよ言いたくも無いんだから。使う気無ぇし」

 

 非常に引っかかるものの、少なくともミルキ本人にキキョウ先輩の言葉を実行しようという気は無いらしい。

 そりゃそうだろうな。私はもちろんゴレイヌさんの嫁になるべく今の自分の持てる全てを捧げて女子力磨きしてるから相手がミルキでなくともごめんだし、ミルキも私みたいのは嫌だろう。少なくともこいつは嫁にするにしても巨乳かつおめめキラキラの童顔系が好みと見た。私とは正反対のタイプだな。

 そしてそのロリ巨乳が好みであろう男は、酷く老け込んだ雰囲気で深くため息をついた。

 

「とりあえず、帰るに帰れねぇ…………」

「そう……」

 

 なんというか、疲れ果てた様子の元豚を見ていたらついてくるなとは言えなくなってしまった。これはもうキキョウ先輩の思惑は互いにガン無視して普通に鍛えてお返しするか。お礼もくれるとのことだしな。

 

 

 ともあれ、そんなわけでお互い不本意ながらしばらく行動を共にすることになってしまった。……ゴンさんとキルアさんになんて説明すればいいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だけど元豚の案件なぞ吹っ飛ぶ案件が帰ったら転がってた件。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはーっ! もう食べられないや……」

「ガハハハッ、だから2人がかりで来いって言っただろ? もともと体のデカさが違うんだ。そのちっこいなりで俺に勝とうなんざ無理ってもんだぜ!」

「むう……悔しいなぁ。あ、エミリアさん! お帰り。もう用事は済んだの?」

「お前何処行ってたんだ? って、兄貴!? なんでお前がエミリアと一緒にいるんだよ!」

「おう、エミリア! 邪魔してるぜ!」

 

 天空闘技場の近くに借りた宿に戻ったら大食い勝負らしきものをしているゴンさんキルアさんウボォーギンが居た。おいちょっと待て前者二人はともかく最後の奴!!

 

「何でお前がここに居るんだよ!」

「お? 何だよ俺とお前の仲なのにつれねぇな」

 

 黙れ。

 とりあえず一息に距離を詰めてウボォーの顔面に右ストレートを叩き込む。

 

「おい、あれお前の絵に描いてあったげんえ……」

 

 黙れ。

 余計なこと口にしようとした元豚の鼻には裏拳をくれてやった。

 

 

 私の立て続けの攻撃にゴンさんとキルアさんは驚いたようだけど、今の私に彼らに何か話しかける余裕は無かった。早くなる動悸に胸を押さえて深呼吸を繰り返す。そんな私に「エミリアさん大丈夫?」と言って水を差しだしてくれたゴンさんはやはり天使であった。

 

 とりあえずミルキにウボォーギンが幻影旅団であることは間違っても今口に出すなよと言い含めてから、何やらウボォーギンと仲良さそうにしていた少年二人の手前なんとか取り繕ってお土産に買って来たケーキを出して茶を入れて場を整えた。

 さあ速やかに説明しろ。

 

「9月くれぇにデカイ仕事があるっていうからよぉ。その前にお前と戦って鍛え直そうと思ったのに、お前家に居ねぇじゃねーか。しかも今度は引っ越しじゃなくて引き払って旅に出たときてる。シャルに飛行船の渡航記録と天空闘技場周りの宿泊名簿調べてもらってここまで来たはいいが、ここにもまた居ねぇ。部屋の前でどうするかと思ってたら、合鍵持ったこいつらが来たってわけだ」

「エミリアさんからもうすぐ帰るって連絡あったし、折角だから一緒に待とうと思って! 友達なんだよね?」

「友達じゃない」

「え、そうなの?」

「だから言ったろ、ゴン。宿とはいえ簡単に部屋入れちまっていいのかって」

「う~……。でも凄く親しそうな雰囲気でエミリアさんのこと話してたからてっきり……。でも、知り合いなんだよね?」

「ああ。……まあ、そうだな。知り合いだが友達じゃねぇ。言うなれば好敵手、ライバルってとこか?」

「へえ、好敵手……ね。たしかにあんた凄く強そうだよな。天空闘技場の体ばっか大きい奴らとは違うよ」

 

 キルアさんの言葉に機嫌を良くしたのか、ウボォーギンは大きな声で笑いながらキルアさんの背中を叩いた。

 

「おお、見る目あるじゃねぇか坊主!」

「いってぇ!? 力の加減しろよ! こちとらいたいけな少年だぞ!?」

「いたいけぇ? 謙遜すんなって! ちょいと興味あってここに来る前闘技場も見てきたが、そこらの雑魚よりお前らのがよっぽど強そうだ。それにお前ら念使えるだろ? その年でたいしたもんだぜ」

「…………べ、別に。まだ覚えたばっかだし……」

 

 手放しで褒めるウボォーギンに対してどう反応していいのか迷ったのか、結果ちょっと照れくさそうにするキルアさん。……おい、あの警戒心強そうなキルアさんと距離詰めるの早すぎないか。私が戻ってくるまでの間に何があったし。

 

 それにしても、まいった。

 

 どうやらウボォーギンはいつものごとく私と戦うためにここに来たようだけど、まさかゴンさんキルアさんと面識を持たせてしまうとは。今までぼっちだった私の友達というだけで興味湧いてそうなのに、見た感じ個人的にもゴンさんとキルアさんを物凄く気に入ったっぽい。

 おいお前仲良くなるなよ! 私だってまだ友好を深めてる途中なのに羨ま……じゃなくて! 少なくとも9月にはお前殺すつもりなんだから、あんまり仲良くなるなよ!!

 

 いっそこの場で殺したいが、協力者の居ない状態(元豚は当然ノーカンである)でやりあっても完璧に勝つのは難しいだろう。それに今の段階で旅団員一人死んだって事で9月のヨークシンに変な影響あっても困るしな。新しいメンバーとか増えても能力なんぞ知らん。

 

(とにかく帰らせよう。速やかに)

 

 そう結論付けると、一刻も早くウボォーギンをこの場から引き離すために私は「戦ってやるから終わったらさっさと帰れよ!」と言ってウボォーギンを外に連れ出そうとした。しかしいつもなら簡単に……むしろ喜々として誘いに乗ってくるウボォーギンは、何故か首を横に振った。

 

「それだけどよぉ。少しばかりやりたいことが出来たから、しばらく泊めてくんねぇか? お前と()りあうのは最後の楽しみって奴にしてーんだ」

「はあ? 嫌よ。何がやりたいのか知らないけど、何で私がお前を泊めないといけないの。っていうか早く帰れよ」

「つれねぇなぁホント……」

「煩い。……で、やりたいことって何よ」

 

 一応聞いてみる。くだらない用事ならさっさと済まさせて追い返そう。

 

 

 

 

 

「いや、ヒソカって気にくわねぇ奴がいるんだけどよ。そいつもこの天空闘技場に居るらしいから、ついでにぶん殴っていこうと思ってな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ウボォーギン 天空闘技場闘士に登録】

 

 

 




(テッテレ~) ブタとやじゅうが なかまにしてほしそうに こちらをみている

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