「ちょっと!あんた、カバーパットの癖に強すぎない⁉︎」
リコがそう叫ぶ。いや、俺が強いんじゃなくて、カズの指示が的確すぎるだけなんです。
カズが、原作よりもとんでもなく強くなっている件について。
これ、もしあるとすればエジプト戦は難易度ルナティックになってるんじゃなかろうか?
とりあえず、CCMを高速ポチポチする。来たるべき山野バンのライバルとの戦いに向けて鍛えなければならない。
「とどめ」
鋼鉄棍を振るい、リコのクイーンを屠る。その間にアミがナズーを、ミカがマッドドッグを屠っていた。
はは、圧倒的じゃないか、我が軍は。
……なんて言ってる場合じゃないか。
「引き上げるよ!」
逃げだしたリコ達。
それにアミは憤慨する。
「ちょっと!郷田の場所を教えなさいよ!」
「やーだねー!」
その間にも、リコ達は走り去っていく。
それを追いかけようとする他のメンバーを俺は制した。
「……まずはLBXのリペアだ。この先に、恐らくは郷田がいるだろうしな」
原作と違えばいないだろうが、それこそ決定的な事をしでかさない限り、変化はないと思われる。何せここがカズにとっての分岐点になるからだ。
「……わかったわ」
納得させて少しの間リペアと休憩をとった。
「……しかしカズ、どれだけ練習をしたんだ?あんなに的確な指示を出せるとは……」
「おう!少しでもお前に追いつきたくてな。役に立ったぜ」
いや、俺に追いつくって、とっくに追い越してませんか?
異常に強いですよ?いや、他のメンバーもだけども。もしかして、俺だけ弱いまま……?
◆
「……さて、先に進もうか」
奥に進めば何やら大きな扉があり、その中に入れば、何やら他とは違う部屋に出た。
そして、その奥でこちらに背を向けている男がいた。
「……お前が……郷田だな?」
「そうだ……」
振り返りながらその男は答える。
「俺が郷田だ」
木刀を持ち長ランを着込んだ漢、郷田は肩にLBXを乗せながら、こちらを見据えていた。
「お前達か、俺の事を嗅ぎまわっているっていう一年坊主は」
「……随分と耳が早いな。ならば俺たちの目的も知っているのではないか?」
「さてな。心当たりはあるが、確信はねぇな」
「……ならば言おう。アキレスを返してもらう」
「これの事か?」
見せびらかすようにアキレスの入った箱を持ち上げる。
アミはそれに激昂する。いや、原作よりもずっと強めに。
「返しなさいよ泥棒!」
「人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ。俺はこいつを守ったんだよ」
「「守った?」」
カズとアミが声を揃える。
「ある人から頼まれたんだよ。悪い大人やお前たちみたいなガキに使われないようにな」
「ガキって……」
「あなたも同じ中学生でしょう!」
郷田に対して、怒るアミとカズを制して、俺は一歩前に出る。
「……そのアーマーフレームは俺が貰い受けたものだ。返してもらおう」
「ほらよ」
郷田はアキレスの箱を投げてくる。それを既に予測していた俺は片手で受け止める。
「「え」」
「俺のハカイオーにはそのアーマーフレームは合わなかったんでな。そいつを使って俺と勝負しろ」
郷田は自身のLBXを見せびらかす。
「あの分厚いアーマーフレーム、それにヘビーソード。相当なパワーが必要。つまり郷田さんはパワータイプ」
「……ああ、その通りだ」
ミカの推測を聞いて、恐らくは原作通りだと理解した。俺は片目があまり効かないもので、郷田のLBXを認識する事が出来なかったのだ。
背後の扉には先ほどの三人組が配置されている。つまりは
「戦わない限り、帰さないと」
「みたい」
郷田はニヤリと笑って、条件を提示する。
「勝ったらそいつをやる。代わりに、俺が勝ったらコアスケルトンごといただく」
「……いいだろう」
「ハンディとして四対一で良いぜ」
「不要だ。これは俺の戦いだ。お前との戦いにこいつらを巻き込む必要はない」
ここで一人で戦わなければ、カズだけでなく他のメンバーのLBXも壊されてしまうかもしれない。それは嫌だ。
「待てよバン」
しかしそんな決意に待ったをかけたのはカズだった。
「ここまで来てのけ者はヒデェぜ?俺たちも最後までやらせろよ」
「そのとおり、私たちも、戦う」
「ここでバン一人で戦わせたら私たち、絶対後悔する。だから一緒に戦わせて」
「カズ、ミカ、アミ……」
「友情ってやつか。はっ、纏めてぶっ壊してやるよ」
郷田との対決はもうすぐ幕を上げる。
俺も決断した。彼らと共に戦うと。