おかしい、もっと簡潔にバトルをまとめるつもりだったのに……なんか決着までいかなかっただと?
脳内でノリで考えてるのがダメなのか? 教えて! 戦闘描写の上手い方!!
歓声の中、決戦場へと足を進める。自分の双肩にかかる世界の危機という重圧と、これから相まみえる強敵とのバトルへのワクワク。不謹慎かもしれないが、実はとても楽しみだったのだ。彼、海道ジンとの勝負は。
強化ダンボールのジオラマを挟んで睨み―――いや、見つめ合う。
「山野バン、とても不思議だ。こうして向き合うと、今まで考えていた義務やしがらみがどうでもいい事のように思える」
「俺もだ、今はただひたすらにお前と戦いたい……いいや勝ちたい!」
『両者、己がLBXを手にせよ!』
進行役のアナウンスに従い『アキレス・リュカリオン』を握る。興奮と旋律で武者震いをしながらも、自然と笑みがこぼれる。
『アングラビシダス決勝戦! バトル、スターーートッッ!!!』
「果てなく征け、アキレス!」
「行くぞ!
双方のLBXがフィールドにて対峙する。そしてバンは内心にて
「(あっるぇぇー!?)」
滅茶苦茶困惑してた。
最初に動いたのは『エンペラーM2』、突如としてハンマーを地面と平行に構え、頭頂部からミサイルを発射した。『ジ・エンペラー』の発展機である『エンペラーM2』の専用兵装のハンマーは、ミサイルランチャーとの複合兵装でもある。その威力は絶大で、物語で初登場したアルテミスにて猛威を振るった。
来襲するミサイルたちを目前に、『アキレス・
『【アドバンスド・V】!』
CCMからの機械音声と共に、ミサイルの前から『アキレス・
「っ!」
ジンは咄嗟にハンマーを横に構え防御の姿勢を取った。その瞬間に、『アキレス・L』のメイスが叩きつけられ、『エンペラーM2』は城壁へと弾かれた。
片腕で城壁を支えにバランスを取り直す『エンペラーM2』はレンガの隙間を取っ掛かりとして、はねるように城壁の上に跳躍する。飛来したメイスが城壁を砕き、破片が周囲に弾丸のようになってまき散らされた。
『エンペラーM2』は破片をマントでいなし、下方向の『アキレス・L』ミサイルを打ち下ろす。
その反動と爆風でうまく城壁に着地した『エンペラーM2』は爆心地に目を向けるが、そこにメイスしか残っていなかった。悪寒を感じたジンは咄嗟にバックステップでその場から回避する……がわずかに遅く上空より飛来した『アキレス・L 』がランスでマントをレンガの地面に縫い留めた。
行動が制限されたわずかな時間、その瞬間に蹴り飛ばす。メキリとわずかな音と装甲に喰い込むハンター譲りの脚部の爪。マントを千切れさせながら、城壁の上を転がる『エンペラーM2』に追撃をかまそうとして、転がる勢いのまま振るわれたハンマーに薙ぎ払われた。
城壁の下へと墜とされた『アキレス・L』は受け身を取りつつ、ランスで急制動を行い、対する『エンペラーM2』は床に転がった状態のまま、相手にハンマーを向け、ミサイルを撃ち放ってくる。
「必殺ファンクション!」
バンの叫びと共にエネルギーが発生、発射前の段階として槍を手首ともに回転させる。その回転とエネルギーで発生した力場がミサイルを防ぎ、続けて攻撃へと転じる。本来なら爆風でダメージを受けるが、ハカイオーアームの頑強さに物を言わせほぼ無傷で防ぎきった。
『Attack・Function/ライトニング ランス!』
放たれた光の槍が城壁ごと『エンペラーM2』を打ち砕く。破砕による土煙によって『エンペラーM2』の姿は見えなくなる。
『決まったか!?』 と周囲から興奮の声が上がるが、バンは冷静に次の行動に移り始め、それを静止する様に煙の中から上空に向かってミサイルが撃ち放たれた。
降り注ぐミサイルの雨を見上げ、バックステップで回避する『アキレス・L』の背後に『エンペラーM2』が出現する。『アキレス・L』は持ち前の反射の良さで振るわれたハンマーをランスで弾く。
「やるな。流石だ」
「そちらこそ……ちっ!」
『Attack・Function/インパクトカイザー!』
『Attack・Function/ライトニング ランス!』
いきなり至近距離で放たれた必殺ファンクションを、『アキレス・L』はV系のモード達の特徴であるCゲージ上昇による必殺ファンクション連射で対応する。
二つのエネルギーが激しいぶつかり合いの末、周囲に破滅をもたらし、大きなクレーターを生み出し両者を城壁にの上にはじき出した。双方空中で勢いを殺すために一回転し、しっかりとした様子でと城壁の角へと降り立った。
仕切り直しと言わんばかりに互いに武器を構え、城壁の縁から相手に向かって跳躍した。
「バーン! がんばれー!」
「ジーン! ふぁいとー!」
「うるせぇ! 俺の横で叫ぶな! せめて挟むな!!」
「仙ちゃんうるさい、応援しにくいよ」
「だれが仙ちゃんか!?」
高度高密度な技の応酬し合う会場のふたりに会場のボルテージは最高潮だ。そこかしこで「ぶっこわせ」だの野蛮な言葉が飛び交っている。わからないでもないとミカは内心ワクワクしながら会場の戦いを見つめる。LBXプレイヤーならばこの世界でも高レベルであろう戦いを見てワクワクしないなんてできるはずがない。
ミカの隣に移動してきた仙道も一秒たりとも見逃すものかとばかりにバトルの様子を睨んでいる。この会場で数少ないあの二人に挑むことを、勝つことを諦めていない一人である彼は、二機のLBXの動きを吸収しようとしている。
対してリュウとユウヤのバカ二人組は呑気に応援している。リュウはどちらかと言えばバトルが本職ではなく、実際バトルもあんまり強くはないが、バンを中心した友人グループ内では技術的な面で秀でている。事実、とある組織にその腕を買われ、勧誘されるほどだ。なので呑気に応援するのはミカにとっても特別気にはならない。 しかしユウヤのほうは別だ。
ミカはバンと海道ユウヤの戦闘を参考に『イノベーター』の手先である可能性の彼女を仮想敵として、何度も脳内で戦いをシミュレートしていた。きっとリュウの隣で呑気にしているのもこちらを油断させるためだろうと見当をつけ警戒を厳にしている。
いつ戦ってもいいように、何度もバンとユウヤの戦いをリフレインし……
「(……あれ? バンは彼女の名前をなんて言っていた……?)」
わずかな違和感。しかし喉に刺さった小骨が如く主張してくるそれに、ミカは視線を下げ必死に思い出そうとする。
「確か……ハイバラ、ユウヤ……」
小さく呟き、そのまま目線を海道ユウヤに上げると、ミカを瞬きせずにジッと見つめるユウヤの姿があった。視線がぶつかるとユウヤはニコリと笑顔を見せ、会場へと注目を戻した。
ミカの背筋に寒気が走る。一体いつからこちらを見ていた? いつからこちらを見つめていた? こちらを何故見ていた? もしかしてこちらの考えを読んでいた? 理解のできぬ正体不明な恐怖にポケット内の『アマゾネス』を握りしめ必死に自分を落ち着かせる。
やることは変わらない。敵ならば打ち倒すだけだ。
「そこっ!」
「っく!」
一瞬だけ出来た攻撃の隙間にねじ込むがごとく槍を突き出す。『エンペラーM2』は首を捻り、回避するも僅かに遅れたのか頬を掠め、装甲の一部が削り取れた。
「(やはり、LBXが海道ジンに追いつけていない!)」
先ほどの一撃は、海道ジンは反応できていた。それでも躱しきれなかったのは、『エンペラーM2』がジンの操作に追いつけていないからだと推測できた。彼に追いつけるLBXなど現行の中には存在しえないだろう。
そこは少し残念なのだが、せっかくの弱点だ。突かない選択肢はないとバンは次の一手の準備をする。
『アキレス・L』の黄金の輝きが徐々に収まっていき、Vモードの持続時間が終わる。つまりジンが防御に徹する時間が終わるということであり、ここからが本当の勝負だ。とバンは一度大きく呼吸した。
大きく後ろへと飛びずさり、城壁に刺さっていたメイスを回収する。と同時にランスを投げつける。
流石に動きがバレバレだったのか余裕をもって弾かれるが、二の矢として『アキレス・L』そのもので突貫する。メイスを横抱きにしながらの突進。
『エンペラーM2』はハンマーを盾にしてきた。即座に対応してくるのは流石だが、どうやらVモードでの猛攻を捌き切るのにかなりCPUを酷使したようで、僅かにだがジンの指の動きと『エンペラーM2』の動きがかみ合っていない。
ハンマーとメイスが火花を散らし、出力勝負になる。そうなれば当然パワーが上の『エンペラーM2』が押し勝つのは当然だった。
そのまま押し込もうとしてくるジンにバンは力を下に逃がし、ハンマーが地面に激突すると同時に、ハンマーを支えに跳躍する。
ここは瞬発力の高い『アキレス・L』だからこその動きだ。故にジンは反応できても『エンペラーM2』は反応できない。
「ようやく一撃!」
背後に着地し『エンペラーM2』にメイスを振るう。それまで防御を崩せなかっただけあって決定打になりうる一撃を漸く放てたとバンは歓喜し、すぐに冷や水を浴びせられる。
『エンペラーM2』は地面に振り下ろしたハンマーからミサイルを発射したのだ。爆風でロケットのように背後の斜め上へとすっ飛び、『アキレス・L』に激突し、道ずれにすっ飛んだ。メイスもインパクトの瞬間を外され、ミサイルでの自爆のほうがダメージになっているほどに無力化されたのだ。
「判断が早いなおい!」
少し考えれば致命になりうるメイスよりダメージにしかならない爆風がマシなのは当然なのだが、先ほどから存在するジンと『エンペラーM2』のラグを考えるとほぼノータイムで判断し、行動に移したのだと考えられた。これを判断が早いといわずして何と言うのか。
とある地点までは上昇し、次に墜落を始める2機。示し合わせたかのように、空中で互いに武器を不格好ながらも振るい、反動でそれぞれの方向に吹っ飛んだ。
「距離をッ!」
距離を取られたと歯噛みをし、着地後すぐに回避できるよう体勢を取る。如何せん相手のハンマーミサイルはまともに受ければ一瞬で体力が消し飛ばされる。
ジンも同じように体勢を整え、発射準備を終えた。息つく暇も与えないとミサイルの引き金を引く。
「!?」
「は、女神がこちらに微笑んだか!」
しかし、トリガーが沈み込もうとも一向にミサイルが解放される気配はない。
―――先ほどのミサイルの自爆で射出機構に不具合が出たらしい。必要経費だったとはいえ、牽制もできる遠距離武器がつぶれたのは痛かろうとバンは笑う。
回避の姿勢から突撃へ切り替え、即座に狼が如く地を駆け突進する。
ジンもすぐに持ち直して近接戦の体勢に移る。直後に始まる衝突はハンマーとメイスが火花を散らして何度も行われる。その度に互いに姿勢が崩れるが、『エンペラーM2』は力で強引に、『アキレス・L』は運動性を生かし、互いに立て直しては激突を繰り返す。
ハンマーの上段からの振り下ろしに勢いをつけたメイスの刺突で迎撃する。その瞬間、ジンの目にメイスの先が映った。
「必殺ファン―――」
「一手遅い!」
わずかなラグ、それがメイスより発射された鉄針の直撃を招いた。穿たれた『エンペラー・M2』の頭部が半壊し、コアスケルトンまで深々と突き刺さっている。
LBXの頭部はパーツの中でもかなり重要な位置に当たり、コアスケルトンまで損傷すれば一気にブレイクオーバーまでなだれ込むような大事なパーツ。
これで決着だと、その知識を持って判断し―――
「クション!」
『Attack・Function/インパクトカイザー!』
「!?」
だからこそ その判断を覆すように、そのまま損傷が広がるのもかまわず大技を放ったジンに驚愕した。ほとんど無意識で指が動き、回避行動に移る。
しかし、至近距離からの必殺ファンクションに対して完全に致命的なほどに遅い回避。
振り下ろされた皇帝の一撃が『アキレス・L』の半身をえぐり取った。
戦闘描写は苦手なので、上手くなりたいなあ……
あともうちょい仕事を早く終わらせて時間が欲しい。