うちの父はLBX開発者です   作:東雲兎

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取り敢えず仕事の繁忙期が漸く終わりつつあるので、書き溜めに肉付けする作業を開始しておりまする。

頑張るDeath


どうでも良いであろう間話

 

◎ミソラ商店街路地◎

 

 

「またおまえ達か……」

 

「またとは何だい! あんたと顔を合わせるのは一応これが初めてさね!」

 

「嘘、だろ……?」

 

「……あの人たち、隠れられてたつもりだったんだ」

 

「てか他にもいたような気がするけど、今回はいないんだな」

 

 

 ゲーセンからの帰り道、俺たちはイノベーターのへっぽこ三人組こと仮面の工作員。時折追跡されていたのをみんな知っており、いつの間にか馴染んでいたので忘れていたが、こうして相対するのは初めてだったかもしれない。

 

 

「すでにあんたのLBX……えっと何て名前だっけか」

 

「アキレス、アキレスっすよ姐さん!」

 

「そう! アキレスがボロボロってのはわかってんだ! つまり飛んで火にいる夏の虫ってやつ!」

 

「使い方……あ、いや……まあ間違いでもない、のかな?」

 

「……大丈夫じゃないかな、多分」

 

 後ろのカズとミカのなんとも言えないゆるふわ会話を聞き流して、Dキューブを放る。

 

「おや、殊勝な心がけじゃないか。行きな、デクーエース!」

 

「行くっすよ、デクー改!」「了解、行けデクー改!」

 

「果てなく征け、アキレス・リュカリオン」

 

 パノラマ内に展開するLBX達、真紅のボディを持つデクーエース。青い装甲のデクー改のバズーカを持った方とハンマーを持った方。そして欠けた方の腕の代わりにブロウラーフレームの片腕がついたアキレス・リュカリオンだ。

 

 

「「「へっ?」」」

 

「ハカイオーの腕、どんな動きになるか試させてもらうぞ!」

 

 

 以下、蹂躙。もはや語るのも躊躇われる程度には酷かったとだけ記すとしよう。

 

 

 

「ハカイオーの腕っていつ着けたんだ?」

 

「仙道と意見交換をしてる際に、郷田がな、よけりゃ使いなと」

 

「……へぇ、流石郷田さん……カッコいい」

 

 

 うんうんと後方理解者面をするミカに対して、呆れた顔を見せるカズ。Dキューブに残されたデクー改の残骸を拾いあげたかと思うと懐に仕舞いつつ、俺に問うてきた。

 

 

「この後、つうかこの時間だと明日か。明日はどうするよ?」

 

 赤く染まり始めた空を見上げ、カズはそろそろ帰宅するべき時間だと判断した。確かに今日は激戦とも呼べる戦いだった。みんな疲れているし、解散でもいいかもしれない。

 

「確かにな。で、明日からだが。アングラビシダスに向けて調整するとも。ブロウラーフレームの腕にも慣れておきたい。暫くは模型店に通い詰めになると思う」

 

 

 頭の中で描いていた予定を拙いながらも口に出す。意外と言語化が難しいねんな……

 

 対してカズは「ほーん」と頷いて、

 

 

「そっか。なら俺は別行動をしてもいいか?」

 

 

 珍しくそんな断りを入れてきた。なんとなしに一緒に準備してくれるだろうと思い込んでしまっていた俺には寝耳に水であった。ホント、ビックリしてハカイオーアームでロケットパンチできそう……ロケットパンチ? って違う違う思考があさっての方向に飛びすぎだ。ロケットだけにってか、やかましいわ

 

 

「構わないが、何処へ?」

 

 

 親友のつもりだし、頼もしい仲間であるカズが自分から別行動をするというのは実は初めてでは? アミもいないし寂しい。もしかしてミカもいなくなる? むむむ、そうなったら仙道を呼ぶか? 連絡先教えてもらったし。

 

「ギンジさんに頼まれごとをされててな。それをこなしてくる。ミカは?」

 

「……私、バンに付き合う。アマゾネスの強化、したいし」

 

「そっか、じゃあ俺はここで。また今度な」

 

「ああ、またな。カズ」

 

「お土産期待してる」

 

「いや、遠出する訳じゃねえっての!」

 

 

 カズの別れ際の叫びについ噴出した。

 

 しかし良かった。ミカがいてくれるならボッチにならずに済みそうだ。それはともかく郷田……はハカイオーを直すために離れてるから、仙道は呼ぼう。ツッコミ役として不足はないだろうし、賑やかな方がいいに決まってる。―――ふむ、存外に俺は寂しがりであるらしい。なんか恥ずかしいな。やっぱり仙道を呼ぶのはやめておこう。今思うと友達が少ないな俺。ん? 友達? なにか忘れているような?

 

 

「……バン、CCM 鳴ってる」

 

 

 ん、あ、リュウからだ。そういえばゲームセンター突入前連絡したのが最後だっけ?

 

 

「連絡忘れてた……!」

 

 

 

 

 

◎神谷家別荘LBX『アヌビス』音声ログ◎

 

 

 

「で、結局のところ。あなたは何者なの? 紫苑博士」

 

「唐突だね。まあ、想定してなかったかと問われれば、していたけどね」

 

「寧ろ遅いくらいじゃないかな」

 

「そうかい。どうでもいいけどね」

 

「それで? こちらとしては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……はまた今度として」

 

「おや、今度でいいのかい?」

 

「今のそちらには答える必要性がないでしょう? なら必要性がある質問をしたほうがいいと考えるのは普通の思考だとおもうけど?」

 

「そうかい、ならばその質問とはなにかね?」

 

「あなたの目的、その根底にあるもの」

 

「ふむ、そうきたか」

 

「ええ、あなたとこちらが利用しあう間柄であるのには動機の方向性が重要だから」

 

「なるほど道理だね。たとえ道が交わらずとも方向さえ同じならば利用できるがそもそも向いた方向が違えばそれすらできないという訳か」

 

「ミステリーの探偵と犯人みたいに一つの事柄に矛先が向いているのか、か、そもそもゴールが別の方向なのか。それを判断させ得る返答を」

 

「―――そうだね、ならばまず行動原理からだが、単なる私怨だよ」

 

「私怨……?」

 

「そうだとも、その怨恨を晴らす為になさねばならない事柄があるのだが、その前提として君たちにこの事件の解決をしてもらわなくてはならない」

 

「だから協力すると?」

 

「そうだとも、そしてその期間は決して裏切ることはしないと約束しよう。なんなら誓約書でも作るかい?」

 

「意味ないでしょう。特にあなたは。その顔だって別の人間のものなんでしょう?」

 

「ふふ、やはり君は優秀だ。お察しの通り、この顔はどこかの誰かのコピーだ。名前だって私怨をもじって紫苑というくらいには適当だとも」

 

「胡散臭いのだけど」

 

「今戻った」

 

「む、檜山君。おか~」

 

「後ろの娘は? 誘拐?」

 

「お、おじゃましまーす」

 

「誰がするか、客人だ、もてなしてやれ」

 

「自分でやってよ……」

 

「ほう、君は……なるほどなるほど。来訪者か」

 

「そ、そんな、なめまわすように見なくてもぉ、助けてくださいよぉレックスさぁん……」

 

「あきらめろ、そいつは変態だ」

 

「人聞きが悪いぞ檜山君!?」

 

 




次話からアングラビシダス突入。ガトー戦はカットじゃ。

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