うちの父はLBX開発者です   作:東雲兎

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あけおめ!(4ヶ月遅れ)
取り敢えず先に書き上がっていたものを投稿。
本編も書いてはいるのですが、なかなか納得いかずに書き直しているといつのまにかこんなに経ってました。仕事が辛いねんな。

多分近くに次の話は投稿できると思います。多分……きっと、メイビー


幕間《レックスは苦労人》

 辛うじて原型がわかる程度まで破壊され尽くしたキラードロイド2機(・・)を足蹴にして、レックスはため息を吐く。

 

 

「こんな玩具もどきで、オレを倒せると思っているのか?」

 

 

 言外にこんなものは玩具にも劣る出来の悪い粗悪品でしかないと言い切り、目の前の操作者、死神部隊のメンバーとLBX。そしてキラードロイドを使っていた下部組織構成員たちを睨んだ。

 

 

「対LBX兵器をこうも容易く……!」

 

「これが伝説か!」

 

「聞くに堪えん、さっさと失せろ」

 

 

 貴様らが囀る称賛など耳が腐るとばかりにGレックスが拳を振るう。地面へと叩きつけられたそれは必殺ファンクションにも劣らぬ程の衝撃波となって敵を吹き飛ばす。しかし相手も百戦錬磨の猛者である死神部隊のひとり。特に狼狽えた様子もなく受け身をとって、無様に転がる手下へ命令をくだす。

 

 

「撤退!」

 

 

 既に目的は達成しているが故にこれ以上化け物に付き合う必要などないと、その場の面子を引かせる。逃げる者らを後目に、死神部隊の女は挑発するように薄ら笑いを浮かべる。

 

 

絶対強者(レックス)。今度はまともに戦うとしよう」

 

「吐かせ、死神気取りの獣畜生(テロリスト)風情が。獣と語らう口などない」

 

 

 言葉を先ほど砕き作った礫に乗せて文字通りたたきつける。

 

 相手も素直に当たってやる気もないとLBXに防がせ、そのまま回収に来た車輛と共に死神部隊たちは離脱して行く。

 

 レックスはその気配が消えるまで睨みつづけ、それから力を抜いた。

 

 

「あんな物を作っているとは、奴らめ。何を隠している?」

 

 

 脳裏によぎるは先ほどの対LBX用兵器(キラードロイド)だ。

 これまではなかったであろう考え方から生まれたLBXを壊すための兵器。

 

 今回戦った物については雑も雑、技術士の檜山蓮としては到底認められるものではない出来であった。だが処理する中、読み取れた根底の設計思想は素晴らしいとも感じていた。

 設計者の怒り、憎しみ、そして深い絶望。どれほどの悲劇を経験すればこれに到達できるのか。想像も出来なくもないが、思わず憐憫を抱いてしまった。

 そしてそれをあろうことか獣どもに穢され、使われている事実にレックスは気が狂いそうになるほどに嚇怒する。

 その冒涜を許してはならないと怒りを燃やし原動力とする。 

 

 

 そうして怒りに呑まれそうなとき、一人の危なっかしい少年を思い出す。

 尊敬する人の息子にして、どこか思いつめた顔をする子ども。その顔がかつて父や妹がそんな顔をしていたという後悔から放っておくことのできない相手。その姿を思い出し、奴に怒りに呑まれないように頭を冷やす。

 

 彼が本来計画していた各国首脳の暗殺、それはこの状況下ではやってはいけないと判断した。なにせワールドセイヴァーが既に表に出てきている。

 世界のトップ達が消えることで人々に考えさせるのが目的であるはずなのに、それを果たせないに加え、世界の主導者をワールドセイヴァーにとって代わられる事態になりかねない。

 

 奴らの天下になってしまえばどれだけの人が犠牲を強いられるか、想像するだに恐ろしかった。

 

 さて思考を巡らせるのは終わりだと、背後に庇っていた子どもたちへ目を向ける。

 あっけにとられた様子の三人のうち、唯一の顔見知りへ声をかける。

 

 

「無事だったか、川村アミくん」

 

「ひ、檜山さん? どうして……」

 

 

 アミがあっけにとられているのはおそらく、まだバーテンダーとしての顔しか見せていなかったからだろうとレックスは推測し、早めに慣れてもらわねば困るなと、これからかかる面倒にちょっぴり憂鬱になった。

 

 

「アミちゃん、知り合い?」

 

「う、うん。ミソラ商店街にあるブルーキャッツっていう喫茶店のオーナーさん、のはずなんだけど」

 

 

 戸惑うアミ、後ろからの問いかけはオタクロスからの依頼、そのターゲットたる少女。容姿は知っているので、それだけはわかった。

 

 

「ていうかさっきレックスって言われてたよね!? あの伝説のLBXプレイヤーのレックス!?」

 

 

 『レックス』の名に対して一気に燃え上がるのは、知り合いでも保護対象でもない赤髪をポニーテールに纏めた少女だ。

 顔立ちが幼く、アミよりも年下であるように見える。が重心のブレが少ない。格闘技の経験者かとレックスは推測し、己が駆けつけるまでの間に奴らから逃げきれていた要因のひとつであると感じ取る。

 その興奮に首を傾げたのは依頼対象の少女。

 

 

「伝説って?」

 

「うん!」

 

「さてな、それに関してはお前たちの想像に任せるとするさ。でだ。オレは檜山蓮、カフェのバーテンダーをしている。お前たちを助けたのは依頼されたからだ」

 

「えっとぉ、依頼、ですか?」

 

「ああ、オタクロスというハッカーから君を助けてほしいというな」

 

「お、オタクロスさん!? オタクロスさんもこっちに来てるんですか!?」

 

 

 依頼における保護対象の少女は半信半疑といったように首をかしげ、レックスの口から出た名前に目を白黒させる。

 さらに事情を聞こうと詰め寄ろうとする彼女だったが、赤髪の少女は両手をグッと握り、興奮を最高潮にした事で遮られる。

 

 

「うー! さすが伝説! 漫画の中の話みたいでカックイィー!」

 

「ら、ランちゃん、落ち着いて落ち着いて!」

 

「なにいってるのリコさん! あの伝説のレックスだよ!? 全LBXプレイヤーの憧れ! 最強のLBXプレイヤーなんだよ!? 興奮しないなんてある!? いやないに決まってる!」

 

「そうなんだ……ところで伝説って?」

 

「うん!」

 

「落ち着け、会話でドッジボールをするな……すまんが自己紹介を頼む」

 

 

 興奮する赤髪の少女を宥めようとして、名前すら知らないことに気付く。そもそも急ぎだったというのもあり、貰った情報が少ない。

 

「はいはいはーい! あたし花咲ラン! サインください!」

 

「ぶれないわねラン……」

 

 呆れるように、いやある種の尊敬すら込めたアミの呟きを無視して詰め寄るラン。

 

「子どもに元気があるのはいいことだ。だがサインは諦めろ」

 

「えー!?」

 

 

 ぶー(不満を)垂れるランを宥め、レックスはグラサン越しに、残る少女を見やる。どうやら相手も知っている名前(オタクロスのこと)を口にしたレックスに一応の信用を、降って表れた蜘蛛の糸もとい頼みの綱に頭を下げて

 

 

「えっと、信じてもらえないかもしれないんですけど! 私、この世界の人間じゃないんです!」

 

 

 名前の前にとんでもない爆弾をぶち込んできやがったのである。

 





???「伝説って?」

???「ああ!」

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