お久しぶりです(
とりあえず生きてるので、出来る限り投稿します。まだ時間的な余裕はないですけど……
屋敷を移動しながら、俺はコウに問いかける。
「コウ。イノベーターの目的はこのアキレスに内蔵されているものなのだろう?」
「はい。CPUに隠されたデータが必要だそうです」
CPUに隠されたデータ。それは確か、この世界最高クラスの科学者、山野淳一郎が発明した永久機関のデータだった筈だ。
イノベーターに渡らぬようにデータだけでも持ち出した。
だが、あの一件でそのデータを狙っているのはイノベーターだけではない可能性が出てきた。
「……デスサイズも俺を狙っていた。そのデータがほしかったのか?」
「だろうな」
そう答えてくれたのはレックスである。レックスは頭を掻きながら、データの正体を告げる。
「エターナルサイクラーの設計図。それがアキレスのCPUに隠されたデータだ」
「エターナルサイクラー……いわば永久機関だね。大雑把に言えば」
レックスの後を継いで、エターナルサイクラーが何であるかを先頭を歩く紫苑が教えてくれる。
その言葉はどこか苛立ちが混じっているように感じられた。
「僕としては、エターナルサイクラーはただの基礎だ。それをどの方向に発展させるかは使い手次第さ」
「戦争か、平和か。どちらの方向を目指させるかということか」
「そうだね。兵器にもなるし、生活を支えるエネルギーにもなる。今の人類には早過ぎる代物だよ」
「早過ぎる……か」
確かにエターナルサイクラーは理想的なエネルギー装置だ。でも使い手が未熟ならば、どんな理想的な道具でもそこらへんの道具と変わらなくなる。
いや能力がある分、ひどい結果を引き起こすのは目に見えていた。
階段を下りながら、無限のエネルギーがどんな災厄を引き起こすのかを想像し、体を震わせそうになる。
「っと、着いたね」
階段を下りきった先には色々な機材が置かれた空間が広がっていた。
「……凄いな。これ全てがお前個人のものなのか?」
「はい、私が独自にLBXを改造するためにジャンクパーツを流用した機材です。我々の仮拠点としては申し分ないでしょう」
我々……つまりはここをこちらに明け渡すという事。俺はかなり広い部屋に所狭しと並べられている機材を確認して判断を下す。
「のようだな。紫苑博士。貴方はここで活動できるか?」
「うん、流石にこの程度の機材でアキレスとかルシファーを超える機体は作れはしないだろうけど。LBXの改造パーツとか搭載する部品とかなら作れるだろうしね」
機体そのものは作れずとも、それを強化するものは作れる。流石にジャンクパーツから作られた機材ではそれが限界らしい。だが、それで充分だ。
「そうか……なら槍の武器を作れないか?今までのランスではメイスとの相性が悪い」
「ほう、なるほどね。じゃあ、質量で押しつぶすのはメイスに任せて、薙ぎ払いや刺突に特化したものを作るかな例えば薙刀とか」
腕がなるねぇ。と紫苑は呟く。それから、紫苑はレックスとコウに目を向ける。
「あ、良ければだけど、使えそうな機材が手に入ったら持ってきて」
「何故こちらに言う?」
「いや、君たちなら顔広いでしょ?」
結構な無茶振りだが、コウは少し思案してから頷き。レックスもまた紫苑に了承の意を伝える。
「わかりました。企業のものでも中古ならば市場に出回っているでしょうし」
「ふむ、いいだろう。こちらもあてはある。だが期待はするな」
その反応に紫苑は満足そうに頷いて、俺へと視線を戻す。いや正確には俺の持っているCCMにだ。
「あと、そのCCMを調べさせてもらったよ」
「なに?」
それは一体どう言うことなのか、紫苑は俺に指を突きつける。
「プロトグルゼオンとの戦いで、君とアキレスが再起動した理由がCCMの中にあると思ってね。色々と確かめてみたんだが、サイコスキャニングという技術が使われている」
「サイコスキャニング……って」
確か灰原ユウヤの使うLBX『ジャッジ』に搭載されている機能のはずだ。
「サイコスキャニングというのはLBXと使用者を直接神経接続することでより自由な操作性を会得しようという試みの元に作られたものだ。本来これはまだ試作段階のはずでイノベーターと懇意の組織がCCMスーツを実験段階に移したとか入ってたが、どうやら山野博士は既に完成させてたみたいだね。調べた限り使用者がCCMに皮膚接触する事で擬似神経を構築してるみたいだよ」
「擬似神経を触れただけの間に作るのか?」
「うん、そうだね。
あとこのCCMには脳でイメージされた動作を電気信号として受信するためのナノコンピュータが組み込まれてるんだ。
しかもご丁寧に強化ダンボールと同じ技術で作られた組織によって保護されている。
流石に山野博士は強化ダンボールの製作者じゃないからか本家ほどの強度はないが、壊れる心配はほぼないと言っていいだろうさ」
けどね。と紫苑は一度言葉を区切る。
「山野博士にもこの前のような使い方は想定外だったろうさ。なにせ君に合わせて作られたはずのアキレスが君の使用速度に追いつけずに自壊を始めたんだから。今回の改修はその速度になんとか耐えれるようにしたいわば応急的なものだ。だからあまりサイコスキャニングの使用は避けるように。わかったね?」
「わかった。武器を壊すほど雑な人間ではないさ」
アキレス・リュカリオンを見ながら、紫苑の説明でその歪なフォルムが無理な操作によって壊れないように負担を極限まで減らす為だとおぼろげながら理解する。
「ところで、君は目があまり良くないんだね?」
「ん、ああ。視力はいいとは言えないな」
紫苑の指摘は的を射ていた。俺は目が悪い。のでLBX戦では基本的に音で判断することが多い。視界は音の情報が正しいかを判断する為に使っている。
眼鏡をかければいいという話なのだが、山野バンは中学生では眼鏡をかけていなかった。だからこそ俺もかけてはいない。
「君はどうやら眼鏡をかける事になんらかの忌避感を持っているようだが、これから先、それは致命的なものになる。本当の意味で世界に喧嘩を売るようなことをするなら視力を補助する器具を着けることを進めるよ」
「……わかった。考えておく」
「欲しければ言ってくれ。こっちで作るからさ」
用意するではなく作るというところに少し疑問を抱いたが、その疑問を出す前にレックスが口を挟んだ。
「で、これからどうする。山野博士がどこに連れていかれたかはまだわからんのだろう?」
「一つ案がある。レックス、日本にルール無用のLBX大会は無いか?」
「……無いことはないが、それを聞いてどうする」
俺の意図を察しながらも、あえて問いかけてくるレックス。コウと紫苑も俺の考えに至ってようで、こちらに目を向けてくる。
「俺が出場する。この意味、わからないわけじゃないだろ」
「……自らを囮にするか」
「しかし、それでどうする?」
「イノベーターの目をこちらに向けさせる。そうすればコウに動いてもらいやすくなる」
「成る程、では私はその間に……」
「ああ、頼む。次に紫苑博士。博士はアンドロイドの制作は可能だろうか?」
話を次のものへと移す。俺の問いかけに紫苑は一度考えを巡らせた。
「んー、パーツさえあればこの設備でも可能だね。ここにある機材はどちらかといえば人間大の機械を作るのに適してるし」
「なら皮をかぶせれば人間として通用するものは?」
「あー、ちょっと待って。できないことは無いだろうけど……結構な無茶振りだよそれ。まあやるけど」
めんどくセー。と仰け反る紫苑だが、出来るのならやって貰う。お前にはボロ雑巾になるまで働いて貰うぞ。さながらとあるソシャゲの花の魔術師が如く。
「うぉう。なんだ今の悪寒」
「気のせいだろう。さてレックス、一度ミソラタウンに戻ろう」
「ああ、今ここにいる理由は無いからな。しかし、問題はどうやってここに戻るかどうかだ。恐らくミソラタウンに戻ればイノベーターの監視がつくだろう。ここを拠点にするならば、その監視をかい潜る必要があるぞ」
「ああ、俺はここには近づかないようにする。コウとの繋がりもバレないように暗号変換での通信のみにしよう。幸い俺のCCMは特別製らしいからな。だからそんなショックを受けたような顔をするなコウ」
「い、いえ……大丈夫です、大丈夫。大丈夫……」
「およそ大丈夫とは言えない顔だねそれ」
「会えないとなるとこんなになるのか……お前、何したんだ」
「言うな、レックス」
数分後になんとか持ち直したコウは思い出したかのように、バンへと詰め寄る。
「バン様。お会いしていただきたい方がおられます」
「わかった、わかったからそんなに顔を寄せるな。必死か」
「わー、これまた綺麗な時間稼ぎを見たよ」
コウに引っ張られて部屋から連れ出される。どうやら俺に人権はないようだ。
ふと、CCMがメールを受信する。メールボックスを開くと、そこには夥しい数のメールとバナーに表示されるのはこれまた数え切れないほどの不在着信。
————あ、忘れてた。
って、YouTubeでダンボール戦機が何やら配信されてるようで……ストーリーを思い出すのにとても助かります公式さん。
ジ・エンプレスのプラモデル化はありますか?(純粋な眼差し)