「行きなさいルシファー!」
純白の堕天使が戦場に舞い降りた。
そして、死神は純白の堕天使すらも汚さんとサイスを構えた。
そうして開幕したのは殺し合い。先ほどまでと違うのは互いを殺そうとする意志だけ。それ以外は全て同じだった。
「……このままではあの娘に勝ち目はないな。どれだけ維持できるかはわからないが、あの状態になられたら必ず負ける」
だからこそ紫苑が出来ることといえば……
「試作品だけど、使ってみるか……?」
手元にある動作点検すらしていないLBX。射撃特化型に改造した、試作品アヌビスと呼ばれる機体だった。
「使えるかはやってみなきゃわかんないよな」
盗んできた端末を即席のCCMに改造する作業を始めた。一分もあれば充分で、紫苑はいとも容易く一時的なCCMを作り上げた。
そして操作法を勘で掴みながら、両手銃のスナイパーをアヌビスに持たせる。
「援護するよー」
「……好きにしてください」
「そうさせてもらう」
狙撃で死神の行動範囲を狭めた。これで堕天使の少女も戦いやすくなったことだろう。
「時間稼ぎ……にもならないかもだけど」
やらないよりかはマシだと自身に言い聞かせながら、紫苑は狙撃を続ける。
山野バンの事を考えないようにしながら。
○○○
意識が朦朧としている。そうだ、俺はさっきまでプロトグルゼオンと戦ってて……それで、何も出来ずに……負けたんだ……
畜生が、情けない……畜生……
アキレス……山野バンのLBX……俺が使いこなせないばっかりに破壊された。情けない事に、山野バンがやってのけたことを早々に失敗してしまった。
アキレス……すまない……
俺は、何を言っている……?
負けた?まだだ。まだ負けてない。アキレスはまだ動ける。何がすまないだ。それこそ共に戦う同志に失礼だろうが。
戦え、戦うんだ。体の負傷がなんだというのだ。そんなもの我慢すればいい話だろうに。
さぁ、立つぞアキレス。お前はまだやれる。いいから寄越せよ、お前の全部を……!
刹那、アキレスのツインアイが赤く光った。
○○○
「ちっ! 退がれ眼帯少女!」
「言われなくとも……!」
圧倒的な動きで二体のLBXを翻弄する死神。
アヌビスとルシファーはなんとかそれぞれでカバーしあいながら辛うじて戦いという形を保っていたが、崩れるのは時間の問題だった。
「このままじゃ嬲られてやられる……」
「恐れるな……死ぬ時間が来ただけだ」
壮絶な笑みを湛えて、二人を見据える男が一番最初にその異変に気づいた。
そして、その様子からただならぬ気配を感じた二人も後ろを振り返る。
そこには、山野バンと半壊のアキレスが存在した。
ただし、アキレスはふらつきながらも、何かただならぬオーラを放っている。
「駆け抜けろ、アキレス……!」
そうしてアキレスは疾走を始めた。