「……アキレスの槍と盾が破損か」
「んー、ここまで粉々だと新しくタイニーオービットに頼んだほうがいいな」
エジプトとの戦いで、アキレスの槍と盾が完全に壊れてしまった。
これでは修復まで他の武器を使うしかないだろう。
次の事件は確か財前総理の暗殺であったはずだ。あれはカズの強化イベントとも言えるから、俺の活躍は殆どないはずだ。
けれどLBXアサシンと直接対決をすることになるだろうから、確かな武器が欲しい。
「……店長、その繋ぎの間に使える武器はないだろうか?」
「お、任せとけ。ちょっと待ってな、カタログを出してやる」
そう言って、店長は店の奥に入っていった。
途端、カズ、アミ、ミカが詰め寄ってきた。
「バン、金はあるのかよ?」
「……一応持ってきてはいる」
「足りなかったらお金貸すよ?」
「……流石に悪い」
「私たち、親友だから、大丈夫」
「そうね、親友だものね」
そこ、アミとミカ。俺を挟んで睨み合わない。すっごく居心地悪いから。
そしてカズ、やれやれといった具合の目で見るな。見るくらいなら助けろ。
あと沙希さん、ニヤニヤしてないで助けてください。
そこへ店長がカタログの本を持ってやってきた。
「ほれ、これだ」
「……意外と分厚いな」
「あったりまえだろう?うちで扱ってる武器の全てが書かれてるんだぞ?」
早速、手にとってページを開く。そこにはよりどりみどりの武器や盾が並んでいた。
「バン、ナックルなんてどう?」
「やっぱり、使い慣れた槍」
「銃も捨てがたいぜ?」
「……む」
いまいちピンとこない。なぜだろう?心が折れて自然と原作に忠実になろうとしているからか?
そんな感じで俺にはあまり良いと思えるものが見つからなかった。
暫くして、とりあえずこの話題は置いておくことにした。そして他のメンバーにバトルするように促した。
バトルを見てれば、何か思いつくかもしれないし。
「クノイチ出陣!」
「行ってアマゾネス」
話し合いの結果、アミとミカの戦いになった。そして、火花を散らすふたりはとんでもない闘志でバトルに臨んでいる。
ふたりの戦いを見守りながら、ふと、店の上のほうの隅に目をやる。
そこに、台座に寝かせられたとある武器があった。
「……店長、あれは?」
「ん?お、あれを忘れていた」
店長はそちらへと向かって、その武器を取る。
「この前アキレスと一緒に入荷した武器、メイスだ。一点ものだったからこうして飾ってたんだよ」
「……メイス……か」
黒いメイス。柄頭には4枚のブレードが十字に配置されており、そのゴツゴツした感じがまた重厚感を醸し出している。
「先端部にニードルの射出機構を備えているんだ。射出回数は限られているけどな」
「……店長、これいくらですか?」
「ん?さて、考えてなかったな。バン、1000クレジットでどうだ?」
「買います」
即答だった。ていうか一点ものなのにすごく安い。店長が気を使ってくれたのかも知れない。
○
「……良い買い物をした」
「よかったの?メイスなんて、ハンマー系はあんまり使ったことがないでしょ?」
「……何とかして見せる」
「豪胆だなぁ」
「そこが……いい」
そんな会話をしながら店の外に出る。そこには1人の男が立っていた。
「山野バン君」
「……そうですが?」
それを聞いた男は体をこちらに向けて、自己紹介を始めた。
「俺は宇崎拓也。優秀なLBXプレイヤーの君たちに、見てもらいたいものがあるんだ」
どうやらすでに事は動き出していたようだった。
という事で、一時的にアキレスの武装がメイスに変更となりました。
なぜそうしたかって?作者が好きだからさ!