エジプトというLBXの武器がアキレスを壊さんと迫る。バンはそれをかろうじてアキレスに躱させるけども、反撃に移ろうとしない。
それはそうだろう。何せ相手はカズなのだ。一体なぜ、彼がこんなことをするのか、私にはわからなかった。
カズは今日、新しいLBXの下見に行ってくると連絡してきたので、てっきり会えないものだと思っていたのだが、彼はいきなり私たちの前に現れて、新たなLBX、エジプトを取り出し、バンに勝負を挑んできたのだ。それをミカと一緒に見ていた私はてっきり、仲直りのバトルだと思ったのだ。しかしその実、カズは狂ったようにアキレスを破壊しようとし始めた。
「バン!」
「わかっている!」
バンもこのままではジリ貧だと理解しているのだろう。切羽詰まったように返事をした。
アキレスは槍を両手持ちにする。なぜなら盾は既にエジプトの刃によってふたつに斬られてしまったのだ。
「やれ!エジプト!アキレスをぶっ壊せ!」
「くそ、やりずらい!」
そして、本来バンの方がLBXの操作は上手いというのに、こうも追い詰められている要因に、足場が砂であることが挙げられた。砂に足を取られ十分なスピードを出せていないのだ。対してエジプトはもともと砂の上での運用が想定されていたのか、全く砂という障害を感じていないようだった。
私とミカはそれぞれLBXを取り出して加勢しようとするも、バンに静止させられた。
——手を出すな!——
そう言われているように思えた。
その間にも戦況は変化し、エジプトはアキレスに馬乗りになる。そして、そのまま刃をアキレスに突き立てようとして……
いきなりエジプトが吹き飛ばされた。
「「え?」」
「クソ!」
私とミカはいきなりのことに目を白黒させる。なぜならやられそうになったアキレスはエジプトを吹き飛ばす瞬間に黄金に輝きはじめたのだ。そして、いきなりエジプトを圧倒し始めた。
これは本当に突然のことだったけど、バンはこれも予期していたようだった。
彼はずっと隠し事をしている。それはずっと昔からだった。そう、初めて会った時、彼は嬉しそうな、そして悲しそうな顔をしながら、私と握手をした。
なんでかはわからないけど、とっても重要なことだと思う。それをバンは隠し続けている。
彼は決して、それを話してはくれないだろう。だから私はいろんな手を使ってそれを調べ続けている。言ってくれるのを待つミカとは違う。それをストーカーと呼ばれようとも、絶対に彼の隠していることを知って、共に背負いたい。傲慢だけど、私は彼を救いたい。
いつも一緒にいてくれて、いつだって私たちを導いて、必死に生きている彼を救いたいのだ。
彼の秘密がたとえパンドラの匣だとしても、その先に地獄しかなくとも、私は喜んでその道を進み、その匣を開けよう。
そう改めて決意したと同時にエジプトは爆発四散した。
そして、何かから解放されるようにカズが地面へと倒れこむ。それに急いで駆け寄るバンに、私たちは続く。
チラリとバンの横顔を盗み見て、私はカズになぜそこまでバンに固執するのかを聞かれたことを思い出した。
その時の答えを私ははっきりと覚えている。
だって私はバンの幼なじみだもの