とある科学の超兵執事 【凍結】   作:陽紅

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 あけましておめでとうございます!

 陽紅です。

 お正月から少し経ちましたが、新年のご挨拶を。

 
 そして――はい。サブタイトルからご理解いただけるように、クリスマス企画でございます。
 第一期の科学サイドまでの方々で行います。

 では、どうぞ!


番外編 とある科学の聖夜祭

 

 

「諸君――この季節が……! 忌々しいことに我々の努力も空しくこの季節が! やってきてしまった!!」

 

 男――否、(オトコ)はその力強い相貌に僅かな涙をにじませ、万感の想いを握り締めた拳を、掲げることを振るうこともせず。

 目の前に並ぶ数十名を前に、その言葉を発していた。

 

 

「世界は無情だ! 神など! いないのだ! 平等など!! ロマンチストどもが掲げる夢物語でしかないのだ!!!!」

 

 

 

 並ぶ者たちの中には腕を目元を覆うものや、歯を食いしばって耐えているものなど――その漢の想いの同調しているもの『しか』いなかった。

 その集団の中には、僅かではあるが女子も混ざっており――暑苦しいだけけの集団ではなく、混沌とした集団といえるだろう。

 

 

「だが俺は! 俺たちはそんなものに屈しはしない! 何度絶望しても立ち上がる! 何度でもだッッ!!」

 

 

 掲げられた拳。それに呼応し、乱立する握り拳。掻き揚げられた雄たけびは、地平の果てまで揺るがさんと響き渡った。

 

「さあ同士よ! 志をともにする戦友よ! 今こそ我らの凱歌を響かせるぞ!! その歌の名は……っ!!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「『シ』ングル・ベル(独り者賛歌)!!!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「……なによあれ」

 

「少なくともワタクシ達にはご縁の無い集団ということに間違いはないですの。――深音さん? どうなさいましたの眉間を押さえて……」

 

「……疲れているみたいです。今青い髪のピアスをつけた人がチラッと見えまして――いえ、大丈夫です。気のせいです絶対」

 

 

 

 シングルベル、シングルベル。鈴鳴らせ。

 

 今年も一人でクリスマス《チクショー!!》

 

 シングルベル、シングルベル。鈴鳴らせ。

 

 彼氏彼女持ち家帰れ。

 

 

 

 ……以下、リピート。時折誰かの名前を混ぜているものが居たりいなかったりするが。

 

 

「すっごいシンクロしてるんですけどあの人たち……それにしても歌詞が酷い」

 

「――アレを本気で歌えるってある意味凄いことですよねー。しかも屋外の人通りの多いところで」

 

 

 時折吹く冷たい風に体を振るわせる美琴たち。そして、その四人の風上に立って服装以外で寒さを微塵にも感じさせない深音だ。

 

 女の子達はそれぞれ可愛らしい格好で何度か少年・青年を振り向かせ、そのたびにすぐ隣を歩く深音に怨念じみた視線を送らせている。

 その逆もあり、深音はこのまま大人のデートコースに連れて行かれるのでは!? と少女達に妄想させるほど、落ち着いた格好良さをにじませているのだ。

 

 ……深音を見て、自身の連れを見て。また深音を見て――深いため息をつく彼氏持ちたちが後を絶たなかった。

 

 

『うぉらぁ!! そこのボッチども!! なに天下の往来で迷惑大合唱やってんだ!! せっかくのクリスマス・イブに出動させんじゃないじゃんよぉおお!!!』

 

「ぼ、ボッチちゃうわ!!」

「そうだ! 格式高く孤高とかソロとか――」

 

 

 ものは言い様である。美琴たちは突撃してきたアンチスキルの車両から慣れ親しんだ声と口癖が聞こえたので、心の中でお疲れ様ですとねぎらっておいた。

 そのまま合唱団は散り散りに解散させられ、やっと、色鮮やかな電球で彩られた街が元に戻った。

 

 

「やっぱり、いつもと大分雰囲気が違いますね――見てるだけで、なんといいますか……ウキウキして来る、というのでしょうか」

 

 

 突如として広場の中央に出現していた巨大なモミの木には、いっそう力を込めて飾り付けされている。

 無数の色彩光で輝くツリーを眼を見開いて見上げている深音は、その装いから考え付かないほどに少年の顔をしていた。

 

 それに、可愛いなぁと頬を緩めるか、しょうがないわねぇとやはりを頬を緩めるか。数秒見蕩れていた深音を眺めていた四人だが、「……でも」と不思議そうな顔をしている彼を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『クリスマス』って――何なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声は、にぎやかな街の中でやたらと響きわたり――都市全体が止まったのではと思えるほど、ピタリと静止していた。

 『何言ってんだコイツ』と、総じて同じ意味合いの視線に貫かれている深音は――『クリスマス』なるものが、根幹的なところにある常識なのだとすぐに理解した。

 

 

 しかし、空気がやばい。空間が死のうとしている。

 

 

「なんて! 冗談ですよ! びっくりしましたか? 本気にしないでください」

 

 

 

 ……世界よ見よ。深音はここまで成長したぞ。

 

 見事な空気読み(エアーリーディング)を発動した深音のやや大きい声がまた響き、「なんだ冗談かよ」といった気配とともに、集中していた視線の霧散に成功する。

 

 ――街が、再び動き出す。

 

 

 

 

 だがそれでも、動き出そうとしない四人がいた。

 

 深音の出自を知っている。

 知っているからこそ、知らなくてもしょうがない、というのも理解できる。

 

 だが、今日この日……『クリスマスイブだから遊ぶ』という名目で深音をつれまわして、半日は経っているのだ。つまり――

 

 

「……アンタ、クリスマスが何なのか分からないのに着いてきたってこと……?」

「あ、いえ……皆さん楽しそうでしたので、それでいいかなぁ、と」

 

 

 なんとも深音らしい考えである。

 街全体がきらびやかで、浮ついている。いきなりの現象に戸惑ったが、美琴たちがいつも以上に笑顔で――楽しそうにしていたのだ。その結果だけで彼には十分なのだろう。

 

 四人は苦笑も浮かべているが……それは、懐かしい感覚であった。もうほとんどなくなっていた、深音の世間知らずさ。それを教えるとき、何故か分からないが、嬉しいという気持ちが湧き出てくるのだ。

 

 

「ったく。アンタは……良い? 深音。クリスマスってのはね。クリスマスって言うのは……」

 

 

 美琴は指をピッと立てて、深音に向ける。

 自信満々に説明でもしようとしていたのだろう。しかし、自信に満ちた笑顔から笑みが消え、視線を空にさまよわせて――手を口に当てて考え出す。

 

 

 

「クリスマスって、どう説明したらいいの? これ……?」

 

 

 アレ? ……アレ? と何度か首をかしげているが、明確な『クリスマスとは何ぞや』の答えが出てこない。

 

 

「もう御坂さん! アタシが説明しますから! いいですか深音さん! クリスマスって言うのは――えっと……ん?」

 

「佐天さんだって言えてないじゃない!!」

 

 

 美琴と同じく、首をかしげてあっれぇ? とつぶやいている。

 

 分かってはいる。クリスマスというものは、『こう』いうものなのだ、ということは。分かってはいるのだが、言葉にして説明するのがこんなにも難しいとは思ってもみなかった。 

 

 

 ――頭を抱え、唸り出す二人を呆れ顔で眺める黒子と、苦笑を浮かべる初春。

 

 

「……はぁ。まあ、とても簡略的に説明いたしますと、クリスマスという世界規模のお祭り――とでも思ってくださいな。12月25日をクリスマス。その前日である今日は、クリスマス・イブ、とそれぞれ呼び方があるんですの」

 

「お祭り、ですか」

 

 

 黒子の言葉に、なるほど、と納得の表情を見せる。先ほどの黄泉川の私恨交じりの怒声も納得が出来た。

 

「そして、今深音さんが見上げてたのはクリスマスツリー、っていう……なんていうか、クリスマスの象徴みたいなものですよー。まぁ、他にもいくつかあるんですけど」

 

 ほんのり付け足す初春の言葉にも、納得を示す。確かに、これだけ鮮やかに、鮮明に視界を捉えるものならば象徴となるだろう。そう実感して改めて見れば、何人かは態々足を止めてツリーを見上げている。

 

 それは恋人であったり、家族であったり。友人同士ではしゃぎながらと――老若男女の違いはない。

 

 

「――不思議ですね。寒空の下なのに……なんだが、あったかい気がします」

 

 

 風が吹けば、誰もが身を震わせる。しかし、そんな些細(・・)なことに構おうともしない。

 深音の素直な感想に、少し柄じゃないですが、と思いつつも同意する黒子と、ですねぇ~とホッコリした顔で同じ光景を眺めている初春。

 

 

 ――何とも、ほのぼのとした空間ではないか。

 

 

 

 

「クリスマスプレゼントはサンタさんからでしょ普通!!!」

「いーえ! 恋人同士のプレゼント交換に決まってるじゃないですか!!!」

 

 

 ――訂正。

 一部を除き。――何とも、ほのぼのとした空間であった。

 

 

 夢見る乙女と恋する乙女が、いつのまにやら激突していた。

 

 

「――黒子さん、クリスマスプレゼントとサンタ、さん? というのは何、いえ、だれですか?」

「おねーさま……いくらお子様趣味でも科学最先端の学園都市でサンタさんって……」

 

 がっくり肩を落としている黒子は、深い深いため息以外に口を開くことは無かった。

 

 

「はいはーい、私が説明しますねー。えっとクリスマスプレゼントっていうのは言葉のまんまですね。クリスマスに贈る贈り物のことですよ。ご家族だったら子供に。佐天さんが今言い合ってるみたいに、恋人さん同士でお互いに渡しあったりするんですよー」

 

 

 いまだ美琴と激論を繰り広げる佐天。美琴も美琴で白熱してきたのか、頭からパチパチと微電流がもれている。深音がひそかに自身の方に向かうように誘導しているため、万が一にも佐天に当たることはないが。

 

 それにしても、美琴が能力制御を怠るほどに熱くなるサンタなる人物はだれか。

 

 

「あとは、サンタさんですね。本当は『サンタクロース』って言うんですけど――」 

 

 

 

 みんな頼りないから私が説明しますよー、と胸を張っていた初春なのだが――突然深音から響いた、澄んだ鈴の音に遮られた。

 

 クリスマスのベルとは、また違う。 

 強いて例を挙げるなら――。

 

 

「……すみません。はい、御坂です」

『休み中にすまないな、深音くん。だが、執事対応で応じるようにお願いしたはずだが……』

 

 

 さる位の高い人物が、使用人を呼ぶ際に鳴らす、呼び鈴の音だった。

 あと、お願いとのたまっているが、口調と声から感じられる声音は、もう脅迫ものである。

 

 

「――失礼いたしました、寮監様。ご用件を承ります」

 

『うむ。いや、少し頼みたいことがあってな――深音君』

 

 

 

 

 

 ――サンタを、やってみないか?

 

 

 

 携帯からもれ聞こえたその声は、雑踏に負けることなく、深音を含めた五人全員の耳に、しっかりと聞こえた。

 

 

 

***

 

 

 白い髭。

 大きなお腹。

 赤がメインの服。

 おおきな、夢をつめこんだ袋。

 

 優しげな笑み。

 

        ――ドカタン…! ズドン!

 

 

 

 おおよそ、サンタを想像すればこれで大体あっているだろう。これに何かしらの+αがあったとしても全く構わない。赤鼻のトナカイにソリを引かせて空を飛んでいれば間違いなくご本人だ。

 

 世には、『みにすかさんたこす』なる――赤よりも白よりも、肌色がやたらと目立つ女の子専用衣装があるそうだが――この際、大変気にする方々が多いかも知れないが、どうかどうか、スルーしていただきたい。

 今回スポットを浴びるのは、男性なのだ。

 

 

         ――ガシャン…! ドコン…!

 

 

 ……の前に。

 

「無理寒い!! 死ぬから、絶対凍死するよこれ!?」

「冷え性なのになんで着るんですか佐天さん……。しかも私たちまで、巻き添え――」

 

 温かそうな材質だ。しかし、悲しきかな。それに防寒性能は無い。肩から先は惜しげもなく晒し、常盤台と比肩するほどの丈の短さ。靴や手袋はモコモコで暖かそうだが、意味があるのかと聞きたいほど肌面積が多い。

 

 

 サテン・プレゼン。

 『あるよ』店員の提供品だけあり、可愛らしさ全開なのに、男性をドキッとさせる何かがある。

 

 

         ――ベキッ、ベキベキベキッ…! パリーンッ…!

 

 

「お姉様。お願いですからそのトナカイさん着ぐるみから意識を戻してくださいですの。……それよりお写真を!! さあ、ポージングですのお姉様!! お御足を伸ばして、さあ!」

「い、いや、だって寒いじゃん! ほら、こっちのほうがあったかいし! そ、それに! 着るやつもいないんだしさ!」

 

 つぶらな瞳と、ちょこんとある角がなんとも可愛らしい。だが、明らかに美琴には合わないサイズだろう。黒子のカメラがまぶしくフラッシュをたくが、美琴はそれどころではないとばかりにトナカイさん着ぐるみに心を向けている。

 

 サテン・プレゼンの、明らかな男性用の着ぐるみ。それも、それなりの長身の人物用だ。

 ……まあ、『それ』が深音専用に用意された、ということについてはご理解いただけているだろう。トナカイとはサンタを送迎する役目があり、ソリがなければ必然的に抱えるか背負うかしなければならないので――。

 

 

 ――ほんのり不機嫌そうな、冷え性少女が居たりいなかったり。

 

 

 ではでは、その肝心の深音はいずこか……なのだが。

 

 

           ――………………。

 

 

 

 BGMと化していたなんらかの破砕音(戦闘音でも可)は、いつの間にか止んでいた。滅多に使用されることの無い常盤台寮の『客室』と掲げられたネームプレートは金色に輝き――今やその威容で滅多に人を近づけることは無い。

 

 

 ――ガチャリ、と。その扉が……開いた。

 

 

 そこから現われたのは……寮監と、ピンクの髪の幼――もとい、小萌。

 二人揃って出てきたことに、疑問を感じるものはいない。何故なら、彼女こそが今回の首謀者なのだから。

 

 ちなみに、寮で堂々と制服着用義務のある美琴や部外者の佐天達が着替えられたのは一重に彼女のおかげ? だからだ。

 

 

「おー、みなさん可愛いのですよ~! よくやったのですよ佐天ちゃん!」

 

 小さなその手で親指を立てる。佐天も笑顔でサムズアップ。

 

「お褒めに預かり恐悦至極! それで、深音さんはどんな変身を!?」

 

 

 先ほどの騒ぎである。相当の死闘が繰り広げられたに違いない。深音が女性に手を上げるとは考えづらいので防戦一方・孤立無援。しかも二人が勝ち誇って出てきたのだから――。

 

 ――こっそり、慰めてやろうと考えていた義妹がいた。

 

 

 

「私たちは考えた。深音くんという逸材を、どうやったら活かしきれるかと」

 

 いきなりなに語り出してんだこの寮監()。が四人の一致意見だ。怖いので口には出さないが。

 

「従来のサンタコスでは、ずんぐりむっくりのオッサン感がどうしてもぬぐえない。せっかくのボディラインが損なわれてしまう」

「寮監ちゃん? 全国のサンタさんに心から謝罪するのですよー?」

 

 

 前置きは良い! とばかりに、佐天が二人越しに部屋を覗き込み――携帯を取り出し、カメラモードに切り替え、ピントを合わせて、最高画質で激写した。その後、自宅のパソコンに送信保管。……無意識かつ三秒の出来事である。

  

 

「……」

 

「みるがいい。これが、サンタの『新時代』だ……!」

 

 寮監が、片方割れたレンズを光らせて、断言した。

 いまだ激写を続ける佐天に首をかしげて、三人も後に続き――。

 

 

 

 

 赤と、白。

 とりあえず、従来のサンタコスと似ているのはそれだけだ、と理解した。

 

 佐天たちと違い、肌色はほとんど無い。僅かに除いている目元だけが唯一だろう。

 

 しかも、赤と白よりも強く存在感を示す『黒』が、今までとは違うのだと理解させる。

 

 

 黒い、指先まで完全に覆う全身タイツ。

 その上に、腹部腰周りが欠如し、袖が二の腕辺りの真紅のジャケット。肘上まである赤いフィンガーレスグローブ。

 下半身は、まるで袴だ。赤い布地に白いラインが存在を主張し、頑丈そうなこげ茶のブーツがかすかに見えている。

 

 首と口元を、赤い超ロングマフラーで隠し、後ろに流した余りは地面に着きそうになっている。

 頭のサンタ帽が、唯一のサンタの名残といえるだろう。

 

 

 

「いやー、ナイス腹筋。まさかのクリスマスプレゼントなのですよー」

 

 

 よほどぴったりした素材なのだろう。くっきりと浮かび上がっている腹筋や、後ろに回れば背筋などなど。――ジュルリと聞こえたのは、きっと気のせいだろう。

 

 

「では、頼むぞ、深音くん」

 

 と、寮監はどこから取り出したのか、白い大きな袋を二つ深音に渡し――深音はそれを左右の腰にくくりつけ、動きやすいように配置した。

 

 

 そのまま深音は、呆然とする美琴たちに一度会釈をして――窓から、その身を躍らせる。

 

 

 

「「「「いやいやいやいやいや!!!!」」」」

 

 

 

 慌てて窓に駆け寄るも、既に深音の姿は何処にもなく――変な静けさが、部屋に残った。

 

 

「……えっと、深音のヤツ、何処いったんですか?」

 

「異なことを言う。サンタのすることなど、一つしかないだろう?」

「深音ちゃんには、ボランティアでチャイルドエラーの子供達にプレゼントを配るお手伝いをしてもらうのですよー」

 

 

 ごちゃごちゃになった部屋。それは、深音が抵抗した――のではなく。

 寮監たちが身もだえしてそれを発散させた名残らしい。

 

 

「さ、私たちも行くのですよー。子供達がサンタさんが来るのを心待ちにしているのです!」

 

 そのまま、美琴と佐天の手を掴んで急ぎ足で外へ――。

 

「ちょ、ちょっと待って……たち?」

 

 良い予感がしないのは、サンタコスの少女達だ。よくよく見れば、小萌の服は茶色が強く、後ろ腰には尻尾のようなものがついており――フードも、なにやら突起が着いている。

 

 ――やられた。

 

 

「ソリじゃあないですが! トナカイさんは子供達のところへ可愛いサンタさんを連れて行くのですよー♪」

 

 

 逃げ場が無い。後ろには寮監がいて、にやりと笑っている。

 前には小萌がいて、既に美琴と佐天は鹵獲されていた。

 

 

 

 

 

 

 ――清し、この夜。

 

 

 学園都市にあるいくつものチェイルドエラーの子供達に、小さな奇跡が起きたそうな。

 

 

 

 

 

 ――そして、これは余談だが。

 

 

 

 クリスマス・イブの夕方。チラリチラリと雪が落ちる街を、縦横無人に駆け巡るサンタらしき人物が目撃されたという。

 

 服装は従来の名残をほとんど残さず、スタイリッシュなサンタの衣装を身に纏い、壮絶なアクロバットで都市に歓声と拍手の爆発を連発させたサンタ。

 

 

 

 

 やがて、人々はかのサンタを一般のサンタとは別モノと考え、こう呼び出す。

 

 

 

 『スタイリッシュ・サンタ』

 

 

 

 ……新たな都市伝説が、今年のイブから。学園都市に広まっていったそうな。

 

 

 

《 おまけ 》

 

 

「やはり小萌先生のが採用されたか――」

 

 全員が出動し、静かになったその部屋で、『赤い服』を手に取る寮監。

 

 

「赤い執事服でもいけると思ったんだがな――むう」

 

 

 

 

 満足したが、どこか不完全燃焼な執事萌がいた。

 

 

 

 

《 NGおまけ 》

 

 

「まって! なんで深音君がここにいるのよ!?」

「ボランティアでサンタを……それより、固法さん……」

 

「っ!? こ、これ、小萌先生に渡されて!! 全然なんにも聞かされてなくって!!!」

 

 衣装以上に、顔を茹蛸りんごにしていた、ジャッジメント某支部長と遭遇していた。

 その格好は、深音の、女性版といっても過言ではないほどに。

 

 

 

  ――ペアルック、ご馳走様でした。 

 

 

 




読了ありがとうございました!!

 今の今までシリアス続きだったのでなにやら爆発した感がありますかが――。

 もういくつか書いてから、魔術編に突入する準備を始めたいと思います。……原作タグに、魔術も銜えたほうがいいのでしょうか……? 

 誤字脱字・ご指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

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