とある科学の超兵執事 【凍結】   作:陽紅

36 / 85
思い そして 願い   10-2

 

 もしアナタが望みや希望を失って、深く暗い場所に落ちていくつもりでも――

 

 

 ――そんなことはさせないってたくさんの人の手が、その体を支えてくれるから大丈夫ですよ。

 

 

 

 

 私? 私はもちろん、『おかえりなさい』っていうのが役目ですから。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ――意識の無い人を運ぶことは、意識のある人を運ぶときよりも数倍力が要る。

 

 体重が大きく変動するわけでもないのに運び手がそう感じるのは、ひとえに重心というものが大きく関係してくる。

 

 

 意識があれば人は無意識に自らの重心を変え、運びやすいようになるのだが――眠っていたり意識を失っていたりする場合には全体重がそのまま負荷となるため、体重以上に重くなるのだ。

 

 

 それをいつかどこかで聞き学び、そして何度か経験したことのある固法は、その事実を嫌というほど再確認していた。

 

 

 気絶したアンチスキル二十余名。重犯罪対策のフル装備。元々の体重+数キロ。

 

 なるべく引き摺らないように心がけながら安全な場所――横倒しになったアンチスキルの車両の陰などに運んでいった。

 

 

 

 

「……これがっ! 終わったら……! 一週間休むわよぜったいッ!」

 

 

 

 ……息を荒げ、汗を拭おうとせず流しっぱなし。

 

 顔をゆがめてまで踏ん張る姿は、年頃の女の子とはとても思えるものではない。

 

 

 固法はジャッジメントとして行動力はあるかもしれない。しかし、行動力=筋力ではないのだ。70キロや80キロはあるだろう人間を運ぶなど、普通ではやらないであろうし、とてつもない重労働だ。

 

 それを二十数人分。途中で投げ出したとて、誰も責めはしないだろう。しかし彼女は、『最後の一人をあと少しのところ』まで運びきっていた。

 

 

 高架下で続く爆発音は、木山と美琴の戦闘の激しさを物語る。どんな状況か能力を使えば確認できるだろうが、そんな暇などないとばかりに歩を進める。爆発のたびに歯を食いしばり、振動のたびにより速く動こうとする。

 

 

 ――下で戦っているのは、美琴。怪我を負ってまで暴動の鎮圧に努めた黒子。友人が倒れても気丈に事件の解決を望んだ初春。

 そして、初春をかばい倒れ、事件の核心へいたる手がかりを残した深音。

 

 

 一般生徒であり、ジャッジメントの後輩たちが頑張ったのだ。そして今もなお、美琴は頑張っているのだ。

 

 今固法を突き動かすものは先輩としての意地であり、また彼女達の友人であるという矜持からだった。

 

 

 

「これっで! ラストぉ!!」

 

 

 数えてみれば二十六名。ところどころから唸るような声が聞こえていることから、目を覚ますのも直だろうと判断する。

 

 彼らアンチスキルが目覚めれば、下で奮戦している美琴の援護が出来る。いかに木山が複数の能力を使役できるイレギュラーな存在であるとしても何とかなるはずだ。

 

 

 ――と、そこまで考えて――アレだけ激しかった戦闘の音が止んだことに気付く。

 

 

「っ、まさか!?」

 

 

 自分たちの出るまでもなく事件解決――とはなぜか全くと言っていいほど思えず、最悪の予感のみが胸中を占める。

 

 自分の能力である透視能力を用いて木山と美琴が戦っていたであろう場所を探り……土砂に埋もれた美琴と、それを数秒見つめ――歩き去ろうとする木山を視た。

 

 

 ――このままでは、間違いなく木山はここから逃走する。悠々と、遮るものも追う者もなく。

 

 

 

「――やるしか、ないわね」

 

 

 

 この場で唯一、動けるものは自分だけ。

 

 レベル5の電撃使いである美琴を下した相手である。高々透視能力者であり、しかも疲れきっている自分が勝てる、などとは欠片も思えなかった。

 

 しかし、それでも固法は覚悟を決める。せめて一分一秒を稼ぐために。軽い怪我で済むとは到底思えないが、それでも僅かな可能性を後に繋ぐために。

 

 そして木山のもとへ向かうべく立ち上がるが――瓦礫に埋もれて気絶しているだろうと思っていた美琴がソロリと立ち上がり、油断している木山の背後に近づき……零距離から電撃を炸裂させた。

 

 それが殆ど一瞬の出来事である。

 

 

 

 

「――敵を騙すにはまず味方から……にしても心臓に悪いわよ、ほんと」

 

 

 

 零距離の電撃は防ぎようがなかったのだろう。ゆっくりと地面に倒れていく木山を確認し、固法も透視能力を切る。

 

 あわや、という緊張感からか、脱力してその場に座り込み深い深いため息をつく固法。アンチスキルの何人かが目を覚まし、頭を振って意識を正そうとしているのだろう。それに苦笑を浮かべつつ状況を伝え――

 

 

 

 ――ようとして、今までで一番大きな揺れに遮られる。

 

 

 

 地震ではない。短く腹部の底に響くような重低音とともに、何かが起きている。

 

 

 

「一体何が――……」

 

 

 地震ではないとすれば原因と思えるものは一つしかなく――再び透視能力を発動させ、美琴たちを視る。

 

 気絶してそのまま倒れていると思われた木山は倒れてはおらず――しかし、頭を抑えて苦しんでいるではないか。それを前にしている美琴も動揺していることから、彼女が何かをしたわけでもないだろう。

 

 そして、散乱した瓦礫が宙を無秩序に飛び交い、火やら水やら出ては消え――明らかに能力を制御できていない。先ほどの揺れは、巨大な瓦礫が柱を直撃した際のものだろう。

 

 

(レベルアッパーの暴走!? ……でもアレは彼女の脳波を元にしているんじゃないの……?)

 

 

 そんな状態で木山は美琴に向かって何かを叫び、訴え――……そのまま、糸が切れた人形のように倒れ伏した。

 

 

「なんで――……能力が暴走したままなの……?」 

 

 

 物は砕かれ、切り裂かれ。

 持ち上げられて叩きつけられ。

 

 倒れ付す木山を避け、美琴が必死に飛び避ける中。

 

 

 

 

 ――それが止むと同時に――……『ソレ』は現れた。

 

 

 

 いや――それの姿を考慮して的確に表現するならば――『生まれ出でた』が正しいだろう。

 

 

 

 全身が総毛立つ。歯が上手くかみ合わず音を立てる。

 

 固法は本能から、ソレがとてつもなく危険であると、直感した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 『木山先生』

 

 

 と、何人もの子供達が呼び慕う光景。

 

 悪戯好きの男の子達にからかわれヤンチャされ、それを女の子達がたしなめたり心配してくれたり。

 

 それは、どこにでもある教師と生徒の何気ない日常だろう。しかし、それは幸せそうで、笑顔に満ちていた。いずれ彼ら彼女達が、卒業という必ず来るであろう別れの時まで、その光景が続けばいいと、赤の他人にも思わせるほどに。

 

 

 

 

 しかしそれは――ふざけた実験により、粉々に、ぶち壊された。

 

 

 

 

 眠っているのとは違う。力なく担架に身を沈める教え子たちの変り果てた姿。 

 

 教師は目の前の光景を、すぐには受け入れることが出来なかった。ただただ膝を突き――夢であれ、早く醒めろと願うばかり。

 

 

 

 そしてそれは夢ではないのだと。現実なのだと自覚し……遮二無二に研究を重ねた。

 

 

 

 深い眠りに付いてしまった生徒を目覚めさせるために。許されなくてもいい……それでも謝るために。――なにより、あの笑顔をもう一度見るために。 

 

 

 学園都市最高を誇る演算装置――『樹形図の設計者』の使用さえできればずっと早く、解決策を得られただろう。しかし、通算して二十三度。嘆願を出そうともそれが通ることはなかった。

 

 

 

 科学の最先端を誇る都市。

 

 そのお題目を守るために非人道的な実験でさえ容認するというのか――と。

 

 

 

 そこであの研究が、学園都市上層部の息のかかったものなのだと察した。

 

 

 

 ――だから、どうした。と。

 

 学園都市が阻むというのなら、学園都市そのものを敵に回してやろうと。

 

 

 ――木山 春生は誓ったのだ。

 

 

 

(後少し、なんだっ……! あの子たちの未来をっ……!)

 

 

 

 先ほど受けた電撃が何らかの悪影響をもたらしたのか、それとも『無能力者』ですらない身で能力を使役した副作用か。原因は定かではないが、今までで経験したこともない頭痛が起きているのは確かだった。否、全身を通しても感じたことのない激痛だろう。しかし木山はその痛みに耐えながらも、制御しようと試みていた。

 

 だが試みれば試みるだけ、加速度的に痛みの強さは増していく。

 

 つい先ほどまで相対していた美琴のことすら気にかける余裕もなく、喉が裂けんばかりに叫びをあげて。

 やがて立つこともままならず、頭を抑えうずくまる。それでもなお制御しようと演算を繰り返し――

 

 

 しかし、精神論とは裏腹に――木山の体が、脳が限界を迎えてしまう。

 

 

 『制御しきれない巨大な力の塊』は木山の体を抜け出し、その姿を、一万人の能力者の演算力と能力レベルに物を言わせて『姿』を構築していく。

 

 

 

 

 

「――何よ、これ……」

 

 

 

 

 ……その姿は、皮肉としか言いようがなく。人から生み出された故か――母体の中で成長をしていくだろう、胎児に見えた。

 

 フワリと重力を無視して浮かびあがるそれは、半透明の外側と白い塊の内側。体面は粘液に濡れ、不気味な肉感があり――形容しがたいおぞましさを体現して……。

 

 

 

 

 その両目がギョロリと開き、美琴を捉えた。

 

 

 

 

―――――――――――――ァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaa嗚呼嗚呼嗚呼ア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 その叫びは人間が――生物が出せるであろう『音』を逸脱していた。音だけコンクリートの柱にヒビを入れ、瓦礫で不確かだった足場を一掃できる者がいるなら話は別であるが。

 

 

「――なんの能力よこれ……肉体変化でこんなこと出来るなんて聞いたことがないわよ……!?」

 

 

 理解のできない存在。しかし、レベル5としての勘が、人としての本能が。最大警鐘をかき鳴らし続けているのだ。それだけ危険な存在であることは確信できる。

 

 そしてその直感が正解だとでも言うように、異質な胎児は木山の能力暴走時以上の力を持って、美琴へと襲い掛かった。

 

 

「ッ! なめんなぁ!!」

 

 

 飛来してくる氷塊は電撃にて、炎弾は砂鉄の鞭で。破壊し、相殺していく。

 

 

(能力の力は強いけど考え無し……! これなら!)

 

 

 無数の能力と、その乱用攻撃。それは確かに脅威だろう。しかし冷静になって見れば、狙いも甘く、また時折攻撃同士がぶつかり合って無駄になっている場合もちらほら。威力もレベル3、よほど強くてもレベル4の下位。

 

 美琴(レベル5)の電撃での迎撃は容易かった。

 

 勝てる要素もあり、また自信が美琴の中に生まれ――反撃に出た。人ではなく、手加減も必要ない相手であるために容赦はない。10億ボルトの最大電圧の雷を放つ。

 

 

 木山が最初に使ったバリアのようなものと、何らかの能力でかなり威力が減じたが、それでもその胎児の半身を吹き飛ばした。

 

 ――拍子抜けするほどにもろかったのか、美琴は少し唖然としていたが、それでも『勝てる』と確信を抱き――……グチョグチョという気色の悪い音と共に吹き飛んだ部分が再生……いや、寧ろ肥大化していく様を見て、握った手を解いた。

 

 

(どこの怪獣映画よ……っ!?)

 

 

 攻撃すればすぐ再生し、それどころか大きくなっていく。最大電力で放った一撃で、半分。それだというのに、さらに大きくなっていく。

 

 美琴が子供の頃にみた映画のワンシーンを想像し、舌打ちをして――……視界に、アサルトライフルやランチャーを構えたアンチスキルの面々が、橋の上にいるのを捉えた。

 

 

「ちょっ!? まっ「――総員発砲を許可する!! 撃ちまくれぇ!!」」

 

 

 待って、という叫びは爆音の中であっけもなくかき消されてしまう。爆発で標的が見えていないにも関わらず撃ち続け――……。

 

 

 

「最悪ね――これ」

 

 

 

 十数階分のビルを優に超える巨体となったソレが、煙を切りながら姿を現した。いたるところにギョロリと目を創り、鞭のように振る数え切れない『腕』を持ってアンチスキルを一人ひとり薙ぎ払い、容易く打ち倒していく。

 

 勝利の雄たけびか……全体の各所に開いた『口』が、先の叫びとは比べ物にならない絶叫を掻き上げる。

 

 

 ――胎児の時にかろうじてあった『生き物』らしさは完全に消えていた。

 

 

 

「(攻撃してもでかくなるだけ……でもこんなやつが都市部に入りでもしたら!)どうしろってのよ……!?」

 

 

「――……まさか、AIM拡散力場の暴走の果てが、あんなものになるとは、ね――……学会に発表でもすれば、なにかしらの賞がとれそうだな……さしずめ、『AIMバースト』、とでも名づけるか? キミは、どう思う?」

 

 

 

 皮肉にも胎児――『バースト』の肥大化していった体躯が銃弾や爆発の盾となったのだろう。吹き飛ばされても瓦礫も少なくなった地面で特にぶつけることもなく、転がって受身を取れたのだろう。服はボロボロだが軽傷の木山が、唯一痛めた腕を抑えて美琴の後ろにいた。

 

 

 見当違いも甚だしい――まるで全てを投げ出し、自暴自棄なったような言葉とともに。

 

 

 

「そんなことどうだっていいわよ!! アンタの能力で生まれたんでしょアレ!?」

 

 

 暗に何とかしろ、と言っているのだが、木山は首を横に振り。瓦礫のひとつに背を預け、ゆっくりと座りこんでしまった。

 

 

「――AIMネットワークは完全に独立している。もはや私にも、誰にも制御は出来はしない……これで唯一の可能性が消えてしまった。すべて終わりさ……」

 

 

 

 木山のいう可能性とは、当然かつての教え子達を救う手立て。

 

 それを『視て』しまった美琴はその絶望に、同情してしまいそうになる。たった一人で何年も。先ほど向けられた慟哭も、生半可のものではなかった。

 

 

 

 ……だからこそ、その胸倉を掴む。

 

 

 深音の様に持ち上げるほどの腕力はなくとも、立ち上がらせるだけの力なら美琴にもある。

 

 

 そして、立ち上がらせるだけの『言葉』を、告げることも出来るのだ。

 

 

 

 

 

「アンタ、さっき言ったわよね……? 『学園都市(このまち)のすべてを敵に回してでも』って――『あの子たちの未来を諦めるわけにはいかないんだ』って……!」

 

「…………」

 

「だったら何こんなところで諦めてんのよ……!? あの子たちの『未来』を取り戻すんでしょ!? あんなのに止められて、悔しくないの!?」

 

 

 木山が強く、揺さぶられる。

 

 体以上に、その心が。

 

 

「だが……だがどうすればいい!? 唯一の手段であるAIMネットワークも私の手を離れた! あれは一万にも及ぶ能力者の力の集合体なんだぞ!? ネットワークがなければ何も出来ない私にどうしろというんだ!?」

 

 

 

 年齢も、経験も。大人であるはずの木山が、美琴にすがった。

 

 

 ……子供達を助けると誓い――その時より初めて、誰かにすがった。

 

 

 

「考えなさいよ! アンタが生み出したアレを! アンタが止められないわけがないでしょ!?」

 

 

 

 ――美琴の言った言葉は、暴論である。なんの確証もない感情論である。

 

 だがそれでも、それをクスリと笑うだけの余裕を、木山に与えた。

 

 

「はは――……やれやれ、レベル5も所詮は世間知らずのお嬢様、か」

 

「なによ!?」

 

 

 美琴の顔は赤い。自分で暴論だという自覚はあるようだ。 

 

 照れ隠しに木山をゆする美琴――という、なんとも場に合わず緊張感のない二人である。

 

 

 

「――ひとつだけ、可能性がある。私が花飾りの少女に渡した幻想御手のアンインストール装置……それをアップデートして昏睡患者全員に聞かせればあるいは……」

 

「アレを止められるの!?」

 

「しかし、時間がない。今此処でデータを再入力し、ソレを学園都市中に流す。しかもその間、都市部へ向かうアレを足止めしなければならないんだぞ?」

 

 

 

 データを入力する機材もなければ、学園都市にその音を流す手立てもなく――美琴の攻撃でも足を緩めることは出来ても止めることは難しい。

 

 不可能、とは考えない。その考えを否定し、美琴は思考をめぐらせる。

 

 

 

「っ!? マズイ、避けろ!!」

 

 

 

 ……その思考の没頭が、致命的に隙となる。

 

 アンチスキルを一掃し歓喜していたバーストは、近くにいる強力なAIM力場に反応し、無数の腕と能力による攻撃を殺到させた。

 

 

 木山の警告に反応するが、遅過ぎた。電撃は間に合わない。砂鉄も当然。

 

 二人は全身を襲うだろう痛みを想像し、条件反射で目を閉じ、頭をかばい――。

 

 

 

 

 

 サンッ……というあまりにも淡々とした音を耳にした。

 

 

 

 

 

 同じような音が幾度も幾度も聞こえるのみで、痛みどころか衝撃すらなく。美琴より早く目を開けた木山は、その光景にしばし呆然とした。

 

 

 

「なん、だあれは――学園都市の新型の警備ロボか何かか――? なんにせよ助かっ……?」

 

 

 

 

 美琴も目を開いている。見開いている

 

 

 

 切り裂かれ、本体から離された無数の腕。両断された瓦礫や氷塊。なおも切り裂かれ続け、二分割の山を築いていく。

 

 

 ……自分達とバーストの間、そのバースト寄り――流線型の多い人型が、空中にて重力を無視した鋭角過ぎる変則機動と、両腕から伸びる刃で殺到し続ける攻勢を防ぎ続けていた。

 

 

 

 

 垣間見える右肩の装甲に刻印された――『NEXT』の四文字と、左肩の装甲に『310』の番号()を刻まれたその姿を――美琴は誰よりも、誰よりも知っていた。

 

 

 

 

 休んでいるはずである。しかし、いて欲しいとも、どこかで願っていた。

 

 

 

 ……事前に察知し迎撃しても、美琴では凌ぎきれなかっただろう攻撃の嵐を完全に攻略し――バーストがその事実を前に初めて警戒する。

 バーストに警戒された相手は攻勢が止まったと同時に高速で距離を取り――美琴と木山の目の前に、地面も削るようにして盾のように立ちふさがった。

 

 

 

 

 そして美琴はその隣りに、当然のように歩み立つ。

 

 

 

 

 

「――まだ、呼んでないわよ……深音……!」

 

『――では、呼ばれた気がした、私の勘違いですね』

 

 

 

 

 美琴は笑う。不敵に、力強く。

 

 もう目の前の相手からは、一切の恐怖を感じないのだから。

 

 

 




読了ありがとうございました。

 

誤字脱字・ご指摘などございましたらよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。