一瞬でも日刊ランキングの乗ったことがビックリです。この小説を見つけ、そして読んでくださりありがとうございます。少し短く、かつ変更点もありますが、今回もよろしくお願いします。
次話から雄英高校編です!
あらすじ〜
将来の就職活動のため、雄英高校ヒーロー科の特特待生として入学を決めた白本君。うっかり街とヒーロー達をまとめて消滅させかけたけど、許して貰えたよ!
「何!?ほ、本当か白本!お前本当に…」
「えぇ。雄英高校の特特待生制度を、受けさせていただくことにしました」
「ゆ、雄英の!?」
「特特待生制度って、オールマイトとかエンデヴァーのアレ、なのか…?ほ、本当にそんな制度あったんだな…」
「そんな子がウチの中学から出るなんて…夢でも見てるのかしら」
僕の発言に、職員室がざわめく。
根津校長ら雄英高校教師陣が僕の家に来てから数日後、僕は再び学校へと赴いていた。
理由はただ一つ。先日引き受けた雄英高校特特待生制度の件である。一週間前に先生に『ヒーロー』にはならないと言った手前、少し恥ずかしいのだが受けるのならば、ということでここに来たのだ。
「気持ちが変わったのか?」
「それはまだ分かりません。ただ、他の高校よりも圧倒的に良い待遇で迎えてくれるので」
「そうか。まあ何にしろ、良かったな」
「はい」
「にしても、3年になったばかりなのにもう動いているんだな」
「えぇ。僕も驚きましたが、新年度が始まると同時に勧誘するらしいです」
流石は天下の雄英と言ったところか、新年度が始まると同時に全国の新3年生の『個性』を調べあげ、めぼしい生徒に声を掛けるらしい。
未だざわめく職員室と、どこか安堵した表情を浮かべる先生に、一つだけ言っておかなければならないことがある。
「先生方。申し訳ないですが、僕の特特待生の件は出来れば公開しないで欲しいのですが…」
「分かった。ま、お前にも色々あるんだろうし、何より爆豪が、な…」
「あ、あはは…」
正直な話、ただ下手に注目されるのが嫌で言ったのだが、先生の不安は別のところにあったらしい。僕の特特待生の話を聞いた途端に、『あァ!?なんで俺じゃなくて他の没個性が選ばれてんだクソがァ!!』と怒鳴り散らして、巡り巡って緑谷君に被害が及ぶのが目に見える。
「おっ、そうだ白本。お前緑谷と仲良かっただろ?」
「えぇ。…それが、何か?」
「いや、あいつ何を思ったのか、雄英の、それもヒーロー科一本に絞るって言ってきたんだよ。お前なら何か知らないかと思ったんだが…知らなさそうだな」
「はい、初耳です。前から、行きたいというのは聞いていましたけど」
『無個性』である緑谷君が、僕と同じ雄英のヒーロー科を受ける事にしたという報告に、面には出さないが、思考が止まってしまう程の衝撃を受けた。
『無個性』であるということは、誰でもない彼自身がコンプレックスに感じていたはずだ。更にいえば、近くにいる雄英高校のヒーロー科志望は爆豪ただ一人。なのに、なぜ―。
そんな思いを数秒張り巡らせるも、意味の無いことだと切り捨てる。
「まあ、何かがあったんでしょう。僕のような」
「うぅむ…良く分からんのだがなぁ。担任としても勧めにくいし、何よりアイツ、ノイローゼ気味になって授業中ブツブツ独り言を言うもんでな…」
「いつもじゃないんですか?」
「それはそうなんだが、最近のは目が虚ろなんだ。見てて怖い」
授業中に虚ろな目をしながら一人ブツブツと呟く緑谷君。
…うん、何故だろう。もの凄く想像しやすいのだが。
「ま、何はともあれ、良かったな白本」
「はい。でも、まだまだこれから精進あるのみです」
しかし、その話の真実が分からずとも、友人が合格目指して頑張っているのだ。
僕も、今よりも強くならなくては。
「って、もうなる気満々じゃないか」
「ん?どうしたんだ?」
「いえ、何でもありません」
◇
「んで?今日はどうすんだ?」
「今日、というよりしばらくは修行だね。前のやつで近接戦闘が弱いことが分かったから、鍛えないと」
「ハハッ!なる気満々じゃねぇか」
「僕も驚いてるよ。まさか、本当に
その日の昼、僕はヴィノーと共に我が家のリビングで昼食を食べていた。今日は僕手作りのサンドウィッチだ。うん、我ながら上出来だな。
「なら、
「そうかもね。嫌かい?」
「全然。寧ろ、戦うお前の隣なんて、どの職場よりも楽しそうだ」
「ガキの癖に世界を知ってる口振りだな」
「てめぇもな」
サンドウィッチを口に運びながら、軽口を叩き合う。全く、ウチの同居人は見た目は赤ん坊のように幼いのだが、口は悪くて性格も悪くて、しかも力があるのだから扱いが面倒極まりない。
「雄英から、課題かなんかは出てねぇのか?」
「何も無いよ。特特待生だからね。一般入試で入学する子達には山ほどあるらしいが」
「どんだけ可哀想なんだよ。まるで、てめぇの踏み台みてぇな扱いだな」
「…さあ、それはどうなるかな」
『無個性』にも関わらず、雄英高校ヒーロー科一本に絞った友人を思い出しつつ、そう言葉にする。
自分で分かっていながらそうする、ということは、何かしらの解決策を見つけているということだ。
「今から入学するのが楽しみだよ」
「…やっぱ、なりてぇんじゃねぇか」
「今になってそれも出てきたが、大半は興味だよ。どんな『個性』が、どんな施設があるのかが楽しみでね」
「なるほどなぁ。…ん?てめぇが学校に行くんなら、俺はどうすりゃいいんだ?」
「ネット通販で適当に暮らしてなよ。金ならある」
「ハッ!これまた貧乏が聞いたらぶっ殺しに来そうなセリフだな」
安心しろよヴィノー。もしそんな輩が来たら僕が消し去ってやる。証拠も何も無く、完璧にな。
「で、だ。どこでやるとか、決めてんのか?」
「いいや、まだだ。裏山の山頂はこの前消し飛ばしてしまったし、他に修行に使えそうな場所なんてそう無いからね」
「ロッキー山脈にでも行ってきたらどうだ?」
「行ってきたよ。お前と出会う前にね」
そこで『異形型』の個性を持つ者と知り合えた。世界でもなかなかに珍しい能力だとは思うが、彼は元気でやっているだろうか。
「お前、行ってねぇ国とかあんのか?」
「中東の方はまだだね。まあ、それ以外なら行ったかな。フランスで知り合った奴とも、アマゾンやら北極やら砂漠やらに行ったし」
「てめぇもだがそいつ何者だ?」
「今は向こうでプロヒーローをやってるらしいよ」
「…それ、アイツか?」
「あぁ」
ほぼ同い年にも関わらず、高校に行きながらヒーロー活動をしているアイツは、本当に凄いと思う。まあ、あいつの相棒としてやっているあの娘もあの娘だが。
「んじゃ、話を戻すがもう山の開拓ついでにやるしかねぇな」
「おいヴィノー。お前まさかこの山から金を掘り出せなんて言わないだろうな」
「言わねぇし消しちまうだろ?」
「違いないが…」
一人サンドウィッチを食べ終えたヴィノーは、ケタケタと笑いながら話を進めていく。
願わくば、こいつに何も起こらないまま過ごしたいのだが。
◇ ◇
それからあっという間に時は流れ、年も変わり、卒業式を間近に迎えた3月。
既に雄英高校への入学を決めている僕は。
「街、じゃないか」
雄英高校の実技試験会場の一つに、一人ぼっちで立っていた。
今朝、いきなり呼び出された時に相澤先生から言われた言葉を思い出す。
『まあ、念のためって奴だ。お前の他にも特待生が2人、他の試験会場に行くことになっている。学力面はお前を含め3人とも問題は無いが、本当に『個性』を扱えているのかを、一般入試の連中と比較する意味でも受けてもらう。…まあ、結果が悪ければどうなるかは、分かっているとは思うが』
つまりは、最後の実力確認テストということだ。最後の最後でやたらと中学生っぽいものが出てきたな。
『はいスタートー』
「っ、いきなりか」
相澤先生の話を聞く限り、ここでの成績が悪ければ、落とされることは無くとも特特待生としての待遇が無くなってしまうのだろう。それは困る。
そんな僕の不安を煽るかのように、プレゼントマイクが、点在する実技試験会場の中心にある建物の屋上から開始の合図を送り出す。各地からまだ騒がしい音が聞こえていないということは、まだ動けていない者が多いのだろう。
「ロボット…アレか。というより、競争相手がいない僕は何を判断基準にされる…ってもう、分かりきってるか」
他の試験会場では、決められた数のターゲットを、いかに多く倒すかが鍵になっている。他の受験生もいるのだ。その中で、敵を早く見つけ、奪われることなく倒す。その能力を問われているのだろうが、僕にはその競争相手がいない。
なら、何を持って判断されるのか。簡単だ。全ての仮想敵であるロボットを行動不能にする時間。それが、僕に求められていることだろう。
「ラディス」
大きな通りを走りながら、脇道から湧いて出てきた仮想敵の頭部を消滅させる。
ふむ、なるほど。やはり仮想敵というだけあって、頭に脳となる部分があるようだ。…なら。
「リア・ウルク」
近くにあったビルを、肉体強化をかけて一息に駆け上がる。
事前に、建物の倒壊などは減点しないと言われている。
そう言われれば、やる事は決まっている。
「ラージア・ラディス」
眼下でたむろする仮想敵を、数個のビルごと消し去る。
他の道に潜んでいた者も全て消したが、好都合だ。
「どこにいるのか分からない敵に使える程、僕の技は使い勝手が良くないからね。っ、テオ・ラディス」
身体の高度が下がり始めるが、それと同時に背面へと攻撃するのも忘れない。うじゃうじゃと沸いているのだから、見ずに適当に放っても問題ない。
「実際の人間相手なら、ダメなんだけど…」
もしこれが、本当の人間相手のものなら完全にアウトなのだが、生身の人間にこれを放つ危険性は僕が良く分かっている。でも、
「ただのロボなら、本気で潰せる」
かろうじて消えていなかったビルを、再び駆け上がり、高く飛び上がる。ふむ、大方の位置は掴めたな。
「フェイ・ガンズ・ビレルゴ」
僕の手から、凶暴な魚の頭のような形をした無数の槍状の消滅波が、超高速で放たれる。街を瞬時に駆け巡ったそれは、凄まじい轟音と共に仮想敵を消滅させた。
◇ ◇ ◇
「うわ。もう終わっちゃってんじゃん」
「流石に、早すぎるんじゃないのか?」
「あの個性ですし、なんら不思議では無いでしょう」
雄英高校内にあるとある部屋の中で、全てのヒーロー科の教員が数多のモニターに齧り付いていた。
それらのモニターでは、仮想敵が爆破され、浮かされ、溶かされ、電気でショートさせられ、凍さられ、テープで拘束され、巨大な拳で破壊され、レーザーで貫かれ、ブドウの実のようなもので動けなくなったりなど、様々な形で行動不能へと陥っている。
しかし、乱立するそれらのモニターのさらに上に映る5つのモニターの内の一つ。特特待生の姿を映したモニターが、異質な雰囲気を放っていた。
「他の特待生も決して弱い訳じゃない。でも、流石に戦闘能力と破壊力に差がありすぎるね!」
手元の時計で、僅か17秒。過去、オールマイトが記録した6秒という数字に次ぐ、歴代2位の順位。
多くの仮想敵を葬った多数の攻撃を放った後、彼がかつて教員の1人に撃とうとした技で、仮想敵どころか作った街諸共、文字通りその破壊され、消えた。
その後、そのモニターは更地と砂埃、そしてその中央に立つ白髪色白の男子生徒を映すだけだった。
「YEAH!ちとヤバすぎんじゃねぇの!?イレイザー!」
「黙れ山田」
「ちょ」
「あいつは多少なりとも分かってるだろう。自分が個性を使うことで、周りにどんな迷惑が掛かるかっていうのはな。でないと、『消滅』なんて個性で技なんて編み出せねぇ。普通のやつは、そんな個性だと分かった途端に敵になるか、ビビって引きこもる、もしくは永遠に使わねぇだろう」
既に彼を受け持つことが決まっている相澤が、同期のプレゼントマイク―本名、山田ひざし―にそう説明する。
凝視することで『個性』の発動を止める相澤や、暴風のような声量を出すプレゼントマイク。それぞれ、凝った使い方をしなければ人は殺せない。しかし、オールマイトの『個性』や白本の『消滅』など、どう使っても凄まじい破壊力を持つ『個性』は、使い手次第で兵器にすらなってしまう。
「てことはアレか。あのリスナー、相当昔からあの個性と向き合ってるってことか?」
「だな。まあ、ヒーロー志望の奴は大体そうだろうが、あいつの場合は違うんだろ。普通に生きるための個性の制御のために、死にかけるなんざザラにあったそうだ」
「そいつァシヴィー!イッツァバイオレンスッ!」
「うるせえ」
彼の家に訪れてから今日まで、何回か話す機会があったが、中学生とは思えない程の壮絶な人生だった。
個性の発現と共に特訓が始まり、最初は自爆をすることなども多かったらしい。色々ある個性の中でも、『消滅』による自爆など、考えるだけでも嫌になる。
そんなものを、4才の頃から続けているのだ。
「まあ、言うことは聞いてくれそうだしな。問題児よりかは扱いやすいだろ。無駄を嫌う、良い性格でもある」
「お?年の離れた友達発見か?」
「てめぇ新学期始まったら覚えてろよ…」
「ねえちょっと、アレ!」
同期2人で軽く談笑していると、ミッドナイトが声を上げた。彼女の方に目をやると、避けるべきステージギミックとして各ステージに配置していた大型仮想敵に向かって、飛び上がる1人の少年を映すモニターを指差していた。
「オイオイオイオイマジかあのリスナー!」
『
声の質、そしてド素人丸出しのフォームなどはまるで違うが、セリフと破壊力だけはオールマイトと似た少年の攻撃が、大型仮想敵を吹き飛ばした。
「YEAH!やりやがった!」
「おぉ!なんだあの力、アレをぶっ飛ばしたぞ!」
「てかアレ、あのままじゃ落ちちゃうんじゃない?」
「あ」
顔は涙で溢れ、大音量の叫び声を挙げながら落ちているであろうモニターの上では、特特待生が余った時間を技の開発に当てていた。
「まるで正反対だな」
生まれつき強すぎる個性を持ちつつ、ヒーローにはなろうとしないものの、必要以上に扱えている者。
そして、凄まじいパワーを扱いきれずに自爆しているものの、誰よりもヒーローに憧れ、そのために努力に明け暮れる者。
「レスキューポイント…60ってことは、筆記試験でのあいつの成績も考えると…」
隣で審査基準となる札を挙げている教師陣を見やると、全員がほぼ満点を彼に与えていた。
手元の資料を漁り、彼の情報が乗った紙を見つける。そこには、筆記試験のずば抜けて高い点数が載っていた。
「この2人を、同じクラスで見ることになるのか…」
どうするか、と相澤は一人、表情を変えること無く呟いた。
正直、中3の秋と冬に書く事無いよね!原作でもほとんど書かれてないし!←おい
てことで次から雄英編です!ホントだよ!