望まぬモノ   作:チャリ丸

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ほんますんません(土下座)

いや、土下座してばっかりでホントに…。騎馬戦書くの難しすぎん?

ヒロアカ二次作者様達しゅごい…。


騎馬戦、決着

 

「白本。お前の作戦は分かった。馬力のあるお前と軽い峰田。それに、即席チームプレイには持ってこいの個性の相性。それで撹乱して爆豪の点をもぎ取ろうってことだろ」

「流石に、組んだ理由までも当てられるとはね、轟君」

 

僕の前に現れたのは、轟君の騎馬。

他の騎馬も周囲にはいるが、巻き込まれたくないのであろう。僕達2組にあまり接近はしていなかった。

 

「まあ、あの戦い方見てりゃ誰でも分かるだろ。俺でも、爆豪でも、もちろん緑谷でもあの戦い方はできねぇ。個性のデメリット以前に、その速度で動けねぇからな」

「多少は周りより速く動ける自信があるからね。アドバンテージは使わないと意味無いだろう?」

「確かにな」

 

くだらない会話。互いに、間合いを測らんとするために時間を稼いでいることが、手に取るように分かる。

じわりじわりと体勢を少しずつ変えながら数秒。

轟君の表情がより真剣なものへと変わった。

 

「でも、機動力だけが全てだと思わねぇほうが良いぞ」

「…というと?」

「こういうことだ」

 

轟君の右手から、『個性』の氷が放たれる。

薄く、だが高く。広く広がったそれは、あっという間に僕達と轟君達、2つの騎馬を包み、僕の脚を捉えた。

 

「さて、どう防ぐ?」

「どう防ぐって言っても…っ、まさか…!」

「流石に気づいたか」

 

見れば、轟君の騎馬である3人は全く凍えていない。恐らく、轟君の右による放熱で凍るのを防いでいるのだろう。

僕も、全く問題は無い。

これ以上に強い氷結を使う相手と闘ったこともあるし、何より素で耐えきれない程の寒さではない。

問題は、僕の背中の峰田君だ。

 

「お前がどうでも、峰田がこれに耐えきれねぇ」

「さ、さみぃ…。…す、すまねぇ、白本」

「…それが狙いか」

 

著しく体温が下がった峰田君は、身体がシバリングをする程に凍えていた。

直接騎馬を崩す目的ではなく、大まかに見れば峰田君の『もぎもぎ』と同じ、拘束のための個性使用。

綺麗な形では無いが、轟君らしいやり方だ。

そして、その餌食になったのは、峰田君の背中だった。

 

「どうした、解除してみろよ。…やっぱり、出来ねぇみたいだな」

 

足の方は一瞬で消せる。が、問題は峰田君の背中を捉える氷壁だ。

確かに、僕の技を使えばこんな氷の拘束は一瞬で解除できる。

しかしそれにはリスクがある。もし、僕の消滅波の一部が峰田君の髪に触れてしまえば、たちまちハチマキが解け、飛んでいってしまう。

 

「考えたね、轟君」

「あぁ。お前1人の身体への拘束なら解かれるが、峰田が狙いなら別だ。…卑怯だとは言わせねぇ」

「言わないよ」

 

峰田君の背中が氷の壁と一体化している以上、僕はここから動けない。

…ならば、運に任せるしか無いか。

 

「上鳴、八百万、飯田。警戒しながら進んでくれ」

 

ジリジリと、僕達と轟君達の距離が縮まっていく。

どうせ、このままだと峰田君の体力的にもマズイのだ。それに、他方からも接近する音が聞こえる。

 

「貰うっ―!」

 

轟君の手が、峰田君へと伸びる。

僕の個性の妨害の可能性も視野に入れているのだろう。氷結の個性を混ぜた轟君だけの突破法。

 

「後ろ、回り込んで!」

 

僕らの後ろにある、氷の壁。その更に後ろから、緑谷君の声が聞こえた。

二人騎馬の背の高さに合わせた氷の壁の上から、『黒影』が峰田君の頭を狙う。

 

「オレが倒すッつってんだろが!」

 

右から、爆豪がホバリングで接近してくる。

騎馬からは離れすぎないように距離は保っているものの、やはり暴走的なところはこいつらしい。

かなり速く動きながらも、的確に峰田君のハチマキを狙っているのが良くわかる。

 

―まあ、

 

「バ・スプリフォ」

「んだと…!」

「ムリ!ナニコレ!」

「ア゛ァ゛!?」

 

全て感知出来ているから全く問題は無いのだが。

『バ・スプリフォ』

スプリフォを身体全体から放ち、多方面からの攻撃を一気に防ぐ防御技。

肉体による直接攻撃は防げないものの、このスプリフォの光に触れている限り、 僕以外は個性が使えない。

轟君の氷が消え、黒影はスプリフォの光に触れることすら出来ず、爆豪はただ落ちていくのみ。

 

「あっ!し、白本!上!」

「了解」

 

もちろん、僕がそれを使ってしまったせいで、ハチマキは宙に投げ出される。

しかし、杞憂だった。自信を持って言えるのだ。僕が、この中で最高の運動能力を持っていると。

 

「くそっ…、結局意味ねぇじゃねぇか…!」

「落ち着け轟君、まだ混戦の中だ!」

「っぶね、落ちんなよ爆豪!」

「クソがァ!」

 

宙に飛ぶハチマキを、まだ散らない内に片手で掴む。

峰田君は普通に背負うしか無くなったが、この際もぎもぎでの固定作戦は使えないだろう。

一瞬だけ『バ・スプリフォ』を使っただけなので、爆豪も騎馬に戻り、轟君が作った氷壁も消えている。

そもそも、後数分しか無い。固定のために時間を取るのなら、自分から取りに行こう。

 

「落ちないようにね、峰田君」

「お、おう!でもどうすんだ!?」

 

峰田くんの焦り、それは作戦の失敗ではなく、その後の展開によるものだろう。

僕達の作戦は、峰田くんを固定してからの自由な行動による無差別奪取。

その大元が崩れ去った今、爆豪の1000万や轟君のポイントなどを取るのに、少々手間取ってしまう。

 

「なに、簡単さ。僕らは動かなくていい。なぜなら」

 

確信があった。

緑谷君、轟君らと違い、あいつは僕に敵対心を持っており、かつ先ほど適当にあしらったのだ。

試合終盤、仕掛けてくるのは、実力差を見せつけるにはうってつけの条件が揃った、ここだ。

 

「クソ白髪ァ!」

「向こうから、来るからね」

 

爆豪が再び騎馬から離れ、飛びかかってくる。

空中で取ったハチマキを峰田君に手渡す。峰田君の身体を固定することは出来なくても、頭の『もぎもぎ』は健在だ。

 

「避けんじゃねえぞ!クソブドウ!」

「ヒィィィ!!」

 

だが、今の爆豪は僕達のポイントにしか集中していない。

僕自身に敵対心を持ちつつも、僕達のポイントを取ることで自分の強さを分からせる。恐らくそういった考えなのだろう。

確かに、爆豪の個性なら、峰田君の『もぎもぎ』に触れて爆破するだけでハチマキのみを取ることが出来る。

爆破出来れば、の話だが。

 

「峰田君、爆豪の方を!」

 

僕の両手が塞がっている以上、峰田君に頑張って貰わざるを得ない。

 

「お、おぉ!俺だって!」

 

よし、いける。

峰田君の声色が、いつものような震えるものとは変わり、ハッキリとした物言いになっている。

これならば、やれる。

 

「『スプリフォ』!」

「んだコレ…!」

 

左手だけで峰田君を支え、右手を前に突き出す。

狙いは爆豪の身体。ハチマキを狙う右手と、体勢を整える左手。その両方の爆破を消滅させる。

 

「よっ」

「おわっ!」

 

その隙に、爆豪の隣を通るように強く跳ぶ。

急な衝撃に驚いたのか、峰田君から声が漏れる。

 

「どうだい?」

 

爆豪から少し離れた地点に降り、峰田君に確認を行う。

今の通り際に取ってくれなければ、時間的にも少々マズイのだが。

 

「へ、へへへ…。安心しろよ白本。オイラこれでも、反射神経には自信あんだぜ?」

 

少し震えながらも、そう返す峰田君。

しかしそれは、何かに怯えるようなものではなく、喜びに打ち震えるようなものだった。

 

「元あったのは取られちまったけど…。取ってやったぜ、1000万!!」

 

競技も終盤。

爆豪達と僕達の騎馬のポイントが入れ替わったことが、峰田君により、声高らかに告げられた。

 

 

「…」

「お、おい爆豪?だ、大丈夫か?」

「ま、まだ終わってねぇぞゴラァ!」

「そうだって!まだ時間はあるし」

「黙ってろカス」

 

爆豪勝己は、冷静だった。

白本に1000万を取られたにも関わらず、だ。

持ち前の反射神経で、高速で通り過ぎる相手のハチマキを、『もぎもぎ』ごともぎ取ることには成功したものの、一気に戦況は不利になってしまったのに、だ。

 

「やる事はもう、決まってんだろが…!」

「お、おう?」

 

手に付着するもぎもぎを爆破し、ハチマキのみを掴む。

他の点を取りつつ、1000万も取り返す。

そう心では思いつつも、爆豪の中には否定的な意見も生まれていた。

 

「まずは余りモンからだ」

「おぉ!…え?」

「あぁ!?はよ行けクソ髪!」

「わ、分かったって!暴れんな!」

 

やられっぱなしで終わるなど有り得ない。

しかし。ここで1000万にこだわり、予選通過を逃すなど愚の骨頂だということは、彼も理解している。

 

「デクと半分野郎、クソ白髪以外の残りのポイントは全部俺が掻っ攫う!そっから全部奪い取って俺ら以外ここで叩き落とす!」

 

そこからの爆豪は、冷静そのものだった。

狙いすまし、一切の無駄の無い動きで3騎以外のハチマキを一瞬の内に掠め取っていく。

騎馬である切島達ですら追いつけない程の速さで動く彼だが、地面に落ちることは無い。

爆破を連続で使用し、ホバリングで浮いているのだ。

 

 

―そんな爆豪を、観客席から見る者が2人。

 

「うぉっ。まるで曲芸っすね」

「…才能と、少しの努力。高校一年生であれほどまでに力の使い分けが出来ているとは…。大したものだ」

 

雄英高校教員席。

13号やスナイプ、トゥルーフォームのオールマイトらが座るそこに、生徒達が見慣れない2人の男が腰掛けていた。

 

「ってイヤイヤイヤ!2人とも、よく来てくれたね!」

「あぁ、すんません。挨拶も無しに」

「構わないさ。何せ、こちらから呼んだんだからね。アメリカNo.1ヒーローアシュロンとその相棒、リーン・ヴィズ君」

「ただ、件の視察がてら、優秀な人材が居ないか確かめに来ただけだ」

 

アメリカNo.1ヒーローと、その相棒。アシュロンとリーン・ヴィズ。

2mを軽く超える巨体のアシュロンは、相棒のリーンと共に少し余裕のある服に身を包み、腰を落ち着かせていた。

先ほどまでアメリカにある事務所に居た2人が、たった数分でどのようにしてここまで来たかを知っているのはオールマイトを含め数人しか居ない。

故に、突如として現れたトップヒーローに、雄英高校の教員すらも驚きを隠せなかった。

 

「…また、速くなったようだね」

「あぁ。俺も、トップヒーローの端くれだからな」

 

騒がしい観客席の中にある、横続きの椅子。

その端に腰掛ける3人は、周りに聞こえない程度のボリュームにまで声量を下げた。

 

「そっちはどうだい?」

「変わらん、と言えば嘘になる。…ここ最近、強い力を持った敵が増えつつある。それこそ、俺達のような力だ」

「…魔物か」

「…知ってたんすね、オールマイト」

「勿論さ。…日本にはまだそれほど出ては居ないが、世界で、特に欧州の方で多く出ているぐらいはね」

 

日本とアメリカ。

それぞれのトップヒーローが周りに聞こえないように気をつけながら話す内容は、近年の敵についてだった。

 

「『雷帝』ゼオン・ベル、『王様』ガッシュ・ベルのベル兄弟、そしてその相棒、デュフォー少年に高嶺清麿少年。『道化』のキャンチョメとパルコ・フォルゴレ。…彼らは、ヒーローとして働いてくれている魔物、で合ってるかい?」

「あぁ。デュフォーと清麿の『答えを出す者(アンサー・トーカー)』、フォルゴレの『鉄人』。どれもが普通にヒーローとしてもやっていける個性だが、それを相棒として使っている。魔物側との相性も良い。並の敵には負けんだろう」

「他にも居ますぜ、オールマイトのダンナ。ブラゴ、ウマゴン、ティオ…。特例と認められずとも、非合法で活躍してる奴もいるって話でさぁ」

「…それほどまでに、増えていたか」

 

日本のトップヒーローであるオールマイトですら知らない程に、『魔物』というものは世間に認知されていない。

良くも悪くも情報社会となってしまった現代で、各国は必要以上に自国の情報を他国に漏洩することをとことん嫌っているのだ。

 

「雄英を1年で卒業した高嶺少年が、イギリスで相棒をしている事は知っていたんだが…。魔物も増えてきているという事か」

「…あぁ、そうだ。それはそうとオールマイト」

「白本少年のことかい?」

「っ―!」

「へぇ…」

 

アシュロンが別の話を切り出そうとした瞬間、そのセリフにオールマイトが言葉を被せてきた。

その一言にアシュロンは目を見開き、リーンは感心したように声を上げた。

 

「…彼も、魔物なのだろう?あの個性の制御は見事だとは思っていたんだが、あそこまで具現化出来ると疑わざるを得なくてね…」

「気づいていたか」

「あぁ。彼が『シン』と名のつく技を編み出していたからね。私も、間近でその威力を見たんだ。確信したよ、彼が普通の『個性』とは違う何かを持っているとね」

 

オールマイトの脳裏に浮かんだのは、先日の敵襲撃事件。

その最後、オールマイトが脳無を吹き飛ばそうとする直前に白本が放った、超巨大な砲身が頭から離れなかったのだ。

 

「で、どうするつもりだ」

「もちろん、他の生徒達と変わらずに指導していくつもりだよ。彼は伸びる!間違いなく!」

「…それは、間違いですよ。オールマイトのダンナ」

「…というと?」

 

自身の主張を、あっさりと、かつ冷静に返されたオールマイトは、怪訝な表情でリーンに問う。

 

「簡単な話です。既に、オールマイトやダンナ、下手すりゃそれ以上の力を、奴は持ってる。…これから奴に必要なのは、成長ではなく制御ってことっす」

「さらに言えば、こと破壊力に関しては俺やお前を凌駕している」

「そ、それは言い過ぎでは…」

「では、こう言えば分かるか?本来、俺たち魔物は、相棒の力を本を通して借りる事により、普通の『個性』よりも高い威力で放つことが出来る。だが奴は、本の力を一切借りること無く、かつ保護した子供を守るために力の半分を封じた状態であの力を振るっている」

「なん―」

 

言葉を失くした。

白本の個性の強さは、オールマイト自身が身をもって知っている。自宅を訪問した時に戦闘能力の高さを知り、敵襲撃事件の時にその限度を知った…つもりでいた。

今のアシュロンの話が本当であれば、白本は力の大半が使えない状態で、あれだけの力を出していたということになる。

プロヒーロー顔負け、否、プロヒーローを遥かに凌ぐ力である。

 

「だから、あいつの事は良く見てやって欲しいんす。戦闘に関しては教えることはほとんど無いでしょう。…でも、あいつにはヒーローとしての心構えがてんで無い」

「リーンに賛成だ。…お前の、日本のプロとして第一線で活躍してきた経験、戦い方というものは、あの金髪の子供のような、自分の個性の内容しか知らん生徒達に教えてやれ」

 

アシュロンの双眸が捉えるのは、爆豪、緑谷、轟の3名。

3人共が、騎馬戦という動きづらい状況の中、他に比べて比較的マシには動けている。

だが、まだその域でしかない。

そうアシュロンは評価を下していた。

 

「1年のこの時期で早いと思うかも知れん。だが、外では確実に勢力を強めている組織がある」

「分かっているさ。巻き込みたくないとは思いつつも、将来を考えると託すしか無いからね」

 

オールマイトはいつまでもトップではいられない。

それは、本人が一番良く理解している事だ。

緑谷出久に『ワン・フォー・オール』を譲渡し、自分には残り火程度の力しか無い。まだ1時間弱の活動時間は残っているものの、残されたヒーローとしての活動期間はそれほど長くはない。

だからこそ、後継の育成に励みたいのだが、微妙に時間が足りないのだ。

 

「全く…、困ったものだよ。今年に限って次から次へと問題が湧き出てくる」

「そんなもの、俺のところでも同じだ。毎日アホのように敵が出ては、国を西へ東へ往復するからな」

「…お互い、トップは辛いという事だね!」

「この座を狙っている者に聞かれれば、背中から刺されるようなセリフだな」

 

日本とアメリカ。それぞれ五万といるヒーローを抱える国の、紛うことなきトップヒーロー。

オールマイトにはオールマイトの、アシュロンにはアシュロンの考え、悩みがある。

 

「では、そろそろこの競技も終わる頃だ。…少し、奴と話すとしよう」

「あ、じゃあ私もちょっとお暇しようかな」

 

そんな2人は少しの癒し、というか心の安らぎのために腰を上げる。

オールマイトは『個性』を渡した教え子に。

アシュロンはかつて命を奪われかけ、左胸に大きな傷跡を付けられた因縁の相手に会うために。

 

「っ、おぉ!緑谷少年…勝ち抜いたか…」

「奴は…1位。まあ、当然か。強い個性を持つ騎手が揃ったな」

 

観客席から内部へと入る通路。そこを曲がる寸前に、プレゼントマイクが試合終了を告げた。

 

1位、峰田チーム

2位、轟チーム

3位、爆豪チーム

4位、緑谷チーム

 

競技が終わり、歓喜し、落胆する生徒達。

そんな彼らを、子どもを見守る親のような目で眺めるオールマイトと、その中の1人を注視するアシュロン。

 

「それにしても、あの、緑谷…と言ったか?周りの使い方が上手いな」

「あぁ。彼はね、誰よりも人の個性を研究しているんだ。だからこそのあの人選、そしてあの判断力が、周りと差を付けた」

「…確かに、攻め時も分かっていたな」

 

騎手である緑谷と、騎馬のである常闇と麗日。42人の中でも上位で一次予選を通過した3人のポイントは、轟チームとまではいかないものの、周りの騎馬と比べればかなり高かった。

 

「まあまあアシュロン!今は互いに、労いに行こうじゃないか!」

「あぁ」

 

意気揚々と、通路の奥へと姿を消していくオールマイト。

アシュロンは未だ、険しい表情のまま、白本を見つめていた。

 

 

◇ ◇

 

 

「クソッ…!」

 

爆豪は1人、苛立っていた。

いつもの事だと言われるが、今のこれは、いつものそれではない。

 

「クソが…!…んで…ッソ!」

 

拳に力が入る。

周りからの茶化しが鬱陶しいため、わざわざ生徒控え室の側に来て良かった。

真剣に考えている所に邪魔が入るのは、本当に気分が悪くなる。

 

「負けてねェ…!俺は、まだ…!」

 

言葉では否定しつつも、爆豪は、心の中で自分自身の事が嫌になっていた。

先の騎馬戦。爆豪は落ち着いて決勝へ進むための道を選んだ。

選んだように見えた。

 

「次は、負けねェ…。絶対ェ俺が勝つ…!」

 

しかし、爆豪の中での自身への評価は、白本に負けた、というものだった。

身体能力、個性の使い方、容量、戦術…何から何まで負けていたと、そう思っていた。

 

「特特待生だとか、んなもん関係無ェ。あいつの『個性』諸共、上からぶっ潰してやる…!」

 

強力な個性、素晴らしい身体能力、キレる頭。

周りが白本に下す評価が、爆豪の神経を逆撫でし、苛立たせる。

轟にしても、緑谷にしてもだ。

自分の中でも、そして周りからのその評価も、自分がトップでいるはずなのだ。

だが、ここに来てその考えは少し変わっていた。

 

「オレが、1位になる…!」

 

周りからの評価など、最早どうでもいい。

この学校に、このクラスに所属している以上、誰にも負けたくない。

完膚無きまでのテッペン。

自分がそれを取ったと思えないと、気が済まない。

 

「…ッし」

 

決意新たに、幾らか憑き物の落ちた表情を浮かべる爆豪。

まだ戦いは残っているのだ。

 

「行くか」

 

否、これからが、本番だ。




デクくん、かっちゃん、轟くん。3人共に、原作とは少しだけ違う心境でこの体育祭に望んでいます。
そこを、次話で書きます。…出来るだけ早くに。

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