異世界転生したカズマは召喚師になりました。   作:お前のターン

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ああ……やっぱりこのすば最高だな~と思う今日この頃。
めぐみんは可愛いしめぐみんは可愛いしめぐみんは可愛いし最高ですね!
※大事な事なので3回言いました。

今回は、御剣とデュラハンが出ます。
このすば見たく、簡単にデュラハンは倒れませんよ!



ソードマスター 御剣編

冒険者においてお金が無いというのは日常茶飯事らしい。

※カズマの悪友ダスト談

俺は、日頃一番飲み食いする張本人であるジャンヌに相談を持ちかけていた。そう、出費が著しく激しいからどうにかしてくれないか、とな。

 

「あのさ……毎日飲み食いばかりで飽きないか?」

「飽きない。なに、あんた。私のお母さん?」

「いや違うけど……。少しはお金の使い方を考えようぜ?」

 

昼間から酒とつまみをテーブル一杯に広げて一人宴会をしている自堕落なこいつに一言申したのだが、やはり効果はいまひとつのようだ。

 

「カズマ、あんたはまだ酒の味を知らないからそんな事言えるのよ。いい?これを見てみなさい」

「なんだよ……?」

 

シュワシュワと柿ピー、焼き鳥を摘まんでみせる。

 

「想像してみなさい。あんたはいま、シュワシュワを飲んでいる。それも仕事終わりに。夏の時期にキンキンに冷えた旨いやつをごくりと……そして、潤った喉に塩が利いた焼き鳥を味わって通すの。どう?想像しただけで涎が出ない?」

「…………ごくり」

「そして、味が終わる前にもう一度キンキンに冷えたシュワシュワを…………んんっ!?ぶはー……旨いわぁ」

「……って、リアルタイムで食ってんじゃねぇ!?」

 

こいつ、俺を諭す次いでに飲んでやがる……。つか、周りがざわざわ言ってるんだけど…………?

ざわざわ……ざわざわ……

 

「お、おい……あれ、旨そうだな」

「の、飲むか…………?」

「…………おい、ジャンヌ。お前のせいで周りにまで伝染したぞ」

「ゴクゴクゴク……んん、ぷはっー!!……あん?何だって?」

 

酔ってるし…………。どうしてくれよう、この酔っぱらいは?

 

「カズマさん。ジャンヌさんは酔っぱらているので、私達でクエストに行きましょう?」

「そうです。私は早く爆裂魔法を撃ちたくて仕方ないのです。さぁ、行きましょう?」

「う~ん、そうだな。いつもジャンヌに頼ってばかりだしな。今回は俺達でやるか」

 

という訳で、今日はジャンヌ抜きでクエストを受けることにした。当然報酬は俺とゆんゆん、めぐみんの3人で分ける。間違っても今夜のジャンヌ用の酒代に当てることなぞありえない。

とりあえずは手頃なクエストを探すべく掲示板まで見に来た。レベルが上がった今の俺達ならばおおよその討伐クエストは楽勝だろう…………若干一名だけ不安が残るが。

 

「カズマカズマ!これなんてどうでしょう?」

「何々……一発熊の討伐?まぁ、いけなくもないが……」

「カズマさん、これはどうですか?」

「伐採の手伝い?いや、農家のお手伝いはちょっとダルい……報酬はいいけど、ろくなものが無いな。討伐クエストにするにせよ、もっと簡単で儲かる依頼とかないか?」

「うぅ……カズマ、どうしてやればできる子なのに面倒くさがるのですか?」

「やれば、な?だがやるのが面倒くさい。だから断る」

「め、面倒くさい人ですね……」

 

世の中面倒くさくない人間なんていないと思うけどな。俺は元よりジャンヌだってそうだ。社畜だの干物女だのうるさいし、めぐみんは爆裂魔法に関すると駄々こねる。ゆんゆんは…………定期的に接してやらないと病む。ほら、みんな面倒くさいだろ?

 

「あの~、ちょっとよろしいですか?」

「あ、はい。なんでしょう?」

 

面倒くさい人間の定義を考えていると、美人受付嬢が話しかけてきた。

 

「実は相談がありまして……」

 

相談?ギルド側の人が、俺に?依頼ではなくて?

 

「近頃、付近の廃城に魔王軍幹部らしき人物が住み着きまして……」

「さようなら、お姉さん。また会う日まで」

「ちょ、ちょっとカズマ!?いきなり何故逃げるのですか!?」

「ちょ、やめろ、引っ張るな。服が伸びるから!」

「せめて話だけでも……ね、カズマさん?」

 

嫌だよ。どうせあれだろ、魔王軍の偵察もしくは撃退か討伐しろってんだろ?阿呆か、俺達はまだ駆け出しだぞ?俺ら程度で倒せるならとっくに魔王軍は滅びてるっての。何が相談だよ、思いっきり厄介事じゃねぇか!?

 

「佐藤さん、どうかお話だけでも聞いていただけませんか……?」

「は、はぁ……。まぁ、話程度なら?」

「ありがとうございます!」

 

受付嬢が礼をし、頭を思いっきりあげると胸が上下に激しく揺れた。俺は、自分でも無意識に自然とそこへ視線が吸い寄せられた。

 

(よく見ると、この人エロい服着てるな……)

「……ごくり」

 

思わず固唾を飲んでしまう。仕方ない、致し方ない事なのだ。だって男の子だもん!エロい事に敏感になっちゃうもん!

 

「この男……思いっきりお姉さんの胸を見てますよ?」

「えっ……?」

「ちょ、ばっかお前!?何デタラメいってんの?俺がそんな事……って、待てゆんゆん!早まるな!?」

「カズマさんはどうしてこうも年上のエッチな女性にばかり寄っていくんですか。あれですか、思春期ですか?エロいのは結構ですけど人様の前でそういうのはどうかと思うんですよ。え?男の子だからしょうがない?…………切り落としますよ?」

「た、頼むから正気に戻ってくれ!…………な?」

「……………………っは!?わたし、今何を……?」

 

どうにか正気に戻ってくれた。正気に戻すのに必死であまり事細かに聞いてなかったけど、この子最後に切り落とすって言わなかった?アレを、俺の聖剣エクスカリバーを切り落とすって。

 

「それで、話って……?」

「魔王軍幹部の偵察、もしくは討伐を――」

「おーい、ジャンヌ!俺も今日は飲んだ暮れるわ!!」

「あ、あのっ……!?」

 

ほらみろ、やっぱりこれだ。異世界から来たチーターがいるのに、どうしてジャンヌを除けばただの冒険者の俺に頼む?なに、俺のこと好きなの?それともお前ら暇だろ的な感じで厄介払いですか?

 

「あの……どうして俺達に?」

「実は他にも有力な変わった名前の方々に頼んだのですが……」

「…………全滅したと?」

「…………はい」

 

…………馬鹿かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?それなのに俺に頼みに来るとかどういう神経してんだ?ああ?無理だろ、どう考えたって無理だろ。武器や防具、能力等の異能を貰った他のチーターでも無理なら俺でも無理だ。

 

「お姉さん、残念ですが他を当たって―――」

「よろしい!この私が引き受けましょう!!」

 

やめろ馬鹿あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!一日一発しか魔法を撃てないお前がなにいってんだよ!!?

 

「本当ですか!?では、よろしくお願いします!!!」

「あ、あの!?…………ああ、行ってしまった」

「ふっふっふ、紅魔の血がたぎります!」

「頑張ろうね、めぐみん!私達なら絶対出来るよね!?」

「当然です!この日のために我が最強魔法を鍛え上げてきたのですから!!必ず仕留めてみせますよ!!!」

 

それフラグだから、絶対に成功しないフラグだから。やめろよ、そんな期待な眼差しで見てくんな。俺は今絶望してるんだよ。無理ゲー押し付けられてなに喜んでんの?ドMなの?ぼっちにロリにヤンデレツンデレに爆裂狂に百合に腐女子に加えてM属性まで加えるのかよ?アピール項目豊富で良かったな。

 

「……それじゃあ、頑張って」

「「えっ!?」」

「俺はジャンヌと飲んでるから……。適当に偵察済ませたら帰るんだぞ?」

 

俺は、問答無用で戦略的撤退を試みた。

俺は悪くない。そう、俺はな。勝てないことを理解して退くのは正しいことだ。命を無駄遣いできるほど、俺はまだ長生きもしなきゃ満足もしてないのだ。

結論を言おう。

カズマ、オウチカエル。

 

「カズマさん!どうして帰るですか!?あれほど夢見ていた勇者になれるかもしないんですよ!?言ってたじゃないですか。『俺、強くなって勇者になる。それで、モテモテになるんだ。ハーレム王に俺はなる』って!」

「やめろよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?お前、俺を呼び止めるにしてももっとマシな言い方あるだろ!?なんで公衆の面前で恥ずかしい夢暴露してくれちゃってんの!!?」

「まったく、すでに美少女に囲まれているというのに……贅沢な夢ですね」

「えっ?少女はノーカンだろ」

「ぶっ殺!!!」

「いてててててて!!!?おい、やめろ!無駄に力だけは強いんだから手加減しろよ!!?」

「ふふふ、どうです?カズマの大好きな美女とふれ合っているのですよ?もっと喜んでいいのですよ?」

 

羽交い締めされながら喜ぶとか無いわー。

流石に美女が好きでも、羽交い締めしてくるような女には堂々と反撃するぞ。男女平等を謳う俺は、女だからとか男の癖にとか言う輩は許さない。例え、めぐみんだろうと反撃して―――

 

「私の胸の感触で興奮しているのでしょう?全くカスマは嫌らしいですね」

「はぁ!!?」

 

なにこの子?ありもしない胸の感触でナニを楽しめと……?

 

「めぐみん、カズマさんもそろそろ……ね?」

「そうだぞめぐみん。ゆんゆんの揺るがなき境地『クリアマインド』が発動するぞ?」

「うっ……あれは軽くトラウマになるのでこれ以上はやめておきましょうか」

 

めぐみんもようやく納得したのか解放してくれた。

 

「失礼、ちょっといいかな?」

 

俺が安堵していると、後ろから鎧姿の男が話しかけてきた。

 

「君が佐藤和馬君かな?」

「あ、ああ……そうだけど?」

「僕の名前は御剣響夜。ソードマスターを生業としている者だ」

 

何だこのクソイケメンは?なに?ソードマスターヤマト?とりあえず一言言っておく。

 

「殴りたい……この笑顔」

「えっ?今なんて……?」

「いや、何でもないよ。ただ、全世界のイケメン滅びないかなってな」

「何でもないのかな、それ!?」

「出ましたよ、カズマの僻み癖……」

「大丈夫ですよ?カズマさんは中の上ぐらいですよ?」

「うるせぇ!哀れんでじゃねぇよ!?」

 

全く……俺の顔が中の上だって?…………お、おう。思ったより好感あるのか、よし、今度ジャンヌに聞いてみるか。

※掘られそうな顔をしているとたげ言われました。

 

「それで、このクソイケメンは何のようだよ?」

「そ、その言い方はどうにかならないかな……?ま、まぁ今はいいか。良かったら僕とパーティーを―――」

「すまん、無理だ。他を当たってくれ」

「即答!!?」

 

当たり前だろう?俺のパーティーに他の男はいらんのだ。まして、イケメンとか…………滅びればいいのに。

 

「頼む!君は噂のスーパールーキーだと聞いた。どうか、この僕と一緒に魔王軍幹部デュラハンを討ち取ってはくれないか!?」

「え?何で?お前一人でやればよくね?」

「え?あ、いや……ちょっと難しいそうというか、不安と言うか……」

「お前ほどのチーターがびびるやつのところに俺も行けと?なに?俺を殺したいの?」

「決してそんなことはっ……!?それに、君も同じだろう!?」

 

同じ、というのは異能のことを指して言っているのだろう。名前から転生した事は分かる。だが、自らの能力も明かさず、見返りも、危険度も分からない相手に共に挑もうだと?……馬鹿かこいつは。

 

「言っておくが、俺の能力は『召喚師』だ。おれ自身はただの冒険者。どうしても戦いたいならあそこの飲んだくれを説得しろ」

「か、彼女を君が呼び出したのか?……いいだろう。説得して、共に行くと誓う」

 

はっ、罠にかかったな!今のジャンヌはただの飲んだくれだぞ?普段でさえ面倒事は回避する癖があるのに、今の状態で説得なんて―――

 

「いいらしいよ。二つ返事でOKしてくれたよ」

「な、なにっ!!?」

「さぁ……共に行こう」

 

え?なんで……?

俺は、チラッとジャンヌの方へと視線を移した。

 

「……ふっ」

 

あいつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!?いま、笑いやがった!嘲笑いやがったぞ!?自分は動かない癖に、他人に押し付けやがって…………く、くそぅ。

どうする?逃げ道が無くなったぞ……。

 

「カズマ、僕と一緒に―――」

「俺に触れるな。息を吹き掛けるな。顔が近いんだよ気持ち悪い」

「き、きもっ……!?こ、コホン!…………ぼ、ぼくと―――」

『潜伏』

「なっ……!?」

 

秘技『NIGERU』攻撃!

これは、某モンスターゲームで有名な選択肢だ。

・戦う

・道具

・ポ○モン

・逃げる

俺は、迷うことなく逃げることを選んだ。

 

「甘いよ、僕の俊敏性を舐めないことだ」

「なっ……んだと?」

 

このクソイケメンは、俺の行く手に憚った。まるでおれの行動を予測していたかのように。

すぐさま機転を利かし、『クリエイトウォーター』で顔面を濡らして目潰し効果を与えてやろうかと思ったが、瞬時に右腕を掴み、もう片方の腕で壁へと押される。そして、勢いのままに壁へとぶつけられ、御剣は壁に勢いよく手をつき、こういい放った。

 

「僕と一緒にやらないか!!?」

「ほ、掘られるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!?」

 

もうやだこのクソイケメン!クソイケメンのくせに男の方に気があるとか変態過ぎるだろ!!!こいつ、分かっていってのんか!?分かっていってたとしたらまじでヤバいぞ!!?

 

「か、カズマさんと謎のイケメンさんが…………あ、あわわわわ…………じゅるり」

「ゆんゆん!お前、変な妄想するなよ!?」

「し、してませんよ!?勝手に変態扱いしないで下さい!!!…………じゅるり」

 

いや、口だよ口。言葉で否定して見せても、涎が垂れてるから誤魔化せてないから。

 

「カズマ、僕と一緒に!!!」

「あー、もううるせーな!!!分かったよ、やればいいんだろ!!!」

「本当かい!!?」

「分かったから!!!分かったからこれ以上顔を近づけるな!!!?」

「そ、そんな……!?誤解だ!!」

 

何が誤解だ!?お前、本当にそういう趣味でもあるのか……!?

身の危険を感じ、そそくさと離れた。

御剣は、満足と言った感じでニッコリしてやがる。…………危険だ、こいつからは危険な臭いがする!

その後、納得のいかない俺だったが……このクソ変態イケメンを連れて4人で廃城へと行くことになった。

ジャンヌは案の定酔っ払っているため、連れていける状態にはなかった……。

…………イケメン滅びないかな。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

道中、俺は群がる敵を全てクソイケメンに任せて進んだ。本人は嫌がるどころか本番前のいい肩慣らしだとか言って喜んでいた。いよいよこいつの頭は涌いてるのではと思い始めた俺だが、それを口に出すと今度は俺の人格が疑われかねないのでやめておいた。

 

「カズマさん。あの人、本当に強いですね……」

「そうだな。ほんと、一人で逝けばいいのに」

「カズマさん?互換がおかしくないですか?」

「いや、あってる」

「なおのこと悪いですよ……。全く、元気出してください!カズマさんだって割とイケメンに近い部類ですよ!?……それに、私の好みのタイプ……ですから」

「えっ?イケメン?俺が?…………ていうか、最後何て言ったんだ?」

「な、なんでもないです……!」

 

ううむ……顔を真っ赤にして俯いてしまつった。

これは、アレか?フラグか?

 

「…………あんなこと言っておいて、やっぱり少女趣味じゃないですか。これだから優柔不断は……」

「え?なんで俺が揶揄されるんだよ?何にもしてないだろ」

「……ふん、別に何でもないですよ」

「君も罪な男だね……」

 

なんだろう、このクソイケメンに言われると物凄く腹立つ。

 

「おっと……みんな止まるんだ。見えたよ、あれがデュラハンの城だ」

 

いかにも、というか完全に薄気味悪い城が崖っぷちに立っていた。元々はどこぞの貴族がすんでいたらしく、今はデュラハンとかいう家賃滞納者が我が物顔で使っているわけだ。全く、立ち退きするなら城ごと消えろってんだ。だから、魔王軍幹部なんぞが居座るんだろうが……。

 

「ああ……嫌だな。帰りたいな…………よし、帰るか」

「ダメだよ!?カズマ、僕たちが何故かここにいるのか思い出すんだ」

「敵情視察だろ?」

「それだけじゃない。可能なら打ち倒すんだ。それが、ぼくたち異世界から来た勇者に託された使命なんだから」

 

ぷっ、こいつ何痛い事いってんの?

使命?勇者?知るか、んなもん。なりたきゃ勝手になれ。なんなら推薦までしてやる。

 

「カズマ……あの、ちょっと聞いてもらえませんか?」

「なんだよ……帰るんだから後でも」

「物凄く爆裂魔法が撃ちたい衝動に駆られて押さえられません!!!」

「やめろ馬鹿ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

いつの間にか詠唱を終えためぐみんは、俺達の前に立ち、杖を廃城へと向けていた。

 

「ふっふっふ、我が究極の攻撃魔法を喰らうがいい!!!」

 

そして、最大火力でぶっぱなした。

 

『エクスプロージョン!!!』

 

轟音と爆炎が廃城を包んだ。遅れてやってくる衝撃波が皮膚をピリピリっと伝っていく。

どうするんだよ、これ?どう考えても宣戦布告にしか見えないぞ?え?俺ら魔王軍幹部に喧嘩うってんの?…………まじやばぁい。

 

「す、すごい……」

「よし、ゆんゆん。帰るぞ」

「え?で、でも……いいんですか?」

「ゆんゆん。冷静に考えるんだ。こっちにはめぐみんという負傷者がいる。……正しくは魔力切れを起こした仲間だけど、それでもこの状況で幹部と戦うのが不味いのは分かるな?」

「は、はい!そうですね、この状況で狙われたら大変です。すぐに戻りましょう!」

「そういうことだ、それじゃあ頼んだぞ。御剣」

「……え?せめて君だけでも……」

「は?何いってんだ。こんな痛い気な少女二人に獣道を戻れって言うのか?」

「あ、えっと……ううん、いやそうではなくてだね」

「じゃあな」

 

戸惑う御剣を後目に迷わず退散する。めぐみんも、魔力切れを起こして疲れたのか何も言わない。黙って俺におんぶされている。

とはいっても、元々は先制攻撃を仕掛けたのはこいつなのだから罪悪感が無いわけでもない。すまん、御剣。俺の代わりに生け贄となってくれ。

きっと助けに行く!ギルドの仲間を連れて……んじゃそう言うことで。

 

「ふっ……いいやつだったよ」

「いや、あの……まだ僕死んでないんだけど」

「はぁ!?お前なについてきてんだよ!?」

 

何故か俺達に合流して逃げ帰っている。

おい、いくら廃城からここまで距離があるからってお前まで逃げたら……。

 

「すまない、カズマ……」

「んだよ!?謝るくらいなら――」

「アンデットは管轄外だ……」

「はぁ……!?」

 

振り向くと、無数のゾンビ共が走ってきていた。

怖えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

おい、なんだよあれ!!あれか?あれがリアルバイオハザードか!!?怖すぎて吐きそうなんだが!!?

 

「か、カズマさん!どうしましょう!!?流石にあの数は私のライトオブセイバーでも捌ききれません!」

「お、おおおおお落ち着けゆ、ゆゆゆゆゆんゆん!!!」

「カズマさんも落ち着いて下さい!!!」

 

無我夢中で走り抜ける。

ここはまだアクセルの街から離れた草原だが、流石に街まで引き連れて帰るわけにはいかない。それこそ、被害が甚大に広がりかねない。

 

「そこまでだ!貴様ら!!!」

 

突如、辺りに黒い霧が発生し辺りを包んだ。そして、その中から男の声が響いてきた。恐らく、こいつらの主であるデュラハンだろう。

漆黒の馬に乗り、全身をガチガチのフルアーマーで守っている。常人では持つことも叶わないであろう大剣を難なく片手で握っている。

 

「で、出たな……!」

「ど、どうしましょう……?」

「僕が切り込む、カズマは間髪いれずに僕に続くんだ。ゆんゆん君は援護を頼む!」

「おい、イケメン。一言言っておくがな……」

「なんだい……?」

「俺は冒険者だ。だから、多彩なスキルを持ってるし、敵のステータスを見るスキルも持ってる」

「そ、それで……?」

「結論を言おう。レベルが違いすぎる」

「な、なんだって……!?」

 

魔王軍幹部デュラハン

首なし騎士として有名なアンデットモンスターだ。だが、その力加減はべらぼうだった。

 

「ふ、ぶさけんなよ……中級魔法以下は無効とか。それに加えて剣士スキルも高すぎだろ……!?」

「ちなみに、カズマからみて彼はどのくらい強いのかな?」

「…………わからん。魔力にかんしてはゆんゆんの3倍はあるだろうな。近接戦闘も得意らしいから勝機は限りなく0に近いかもな」

「…………ふっ、どうやら此処が僕らの死に場なのかもしれない」

「…………冗談じゃねぇ」

「…………え?」

 

腰に据えた剣を握り、アンデットの群れへと向ける。

 

「ふざけるな。せっかく異世界転生したんだ。こんな小物ボスごときに殺されてたまるかってんだ!」

「……はは、君は不思議な人だね。さっきはあんなにも戦いたくないと言っていたのに」

「…………お前みたいな真人間には分からねぇよ」

「そうだね。…………カズマ、僕の背中は君に任せる」

「…………はっ、馬鹿言うなよ。俺の背中はゆんゆんに託すぞ」

 

それぞれの得意の獲物を構え、御剣はデュラハンへ、俺はアンデットの群れへと向く。

 

「ほう、この俺に挑むか?いいだろう、こい!雑兵風情、軽く捻ってやろう!!!」

「うおおぉぉぉぉ!!!」

 

まずは御剣が突撃した。その隙に俺はゆんゆんへと指示を送り、めぐみんを草影に隠す。この間にもアンデットの群れは近づいて来ているが、そんな事は関係ない。

 

「行きます!」

『ライトオブセイバー!!!』

 

眩い閃光の剣を振りかざし、アンデットの群れへと横凪ぎで払う。聖属性では無いが、上級魔法で攻撃をくらった事により即時復活はしない、そのインターバルを利用して俺はスキル『憑依』を発動させる。

 

(この前憑依したクーフーリンじゃ駄目だ。相性が悪い。ここは、御剣に近接戦闘を任せ、後方支援ができるアーチャーだ)

 

だが、前回と違いこれと言った目星はない。なので今回は完全に運に任せる形になる。

 

『憑依』

 

 

 

「はぁ!」

「ふん、その程度か!?」

 

カズマがスキルを唱え、ゆんゆんがアンデットを一掃している間にも御剣とデュラハンとの戦いは始まっていた。

御剣が握る剣はチート性能を兼ね備えた魔剣『グラム』だ。だが、相手は騎士。剣技においてひとつもふたつも上をいっている。

思い切り力を込め振りかぶっても片手で握っている大剣で軽く防がれる。しかも、相手はわざと馬から降り、上方であることと移動性の優位を捨てている。ハンデはすでにもらっているのだ。

 

「くっ……どうして!?」

「ふはは、何故攻撃が通らないか、と言いたそうだな?」

 

今度はデュラハンが反撃に転じる。防いだ剣を勢いをつけて上に振り上げがら空きにする。そして、瞬時につきの構えに変え、踏み込みと同時に突き上げる。

 

「ぐはっ……!?」

「簡単な話だ。…………レベルの差だよ」

「ぐはっ……はぁ……はぁ……くっ!」

(これが魔王軍幹部の実力……!?)

 

実力差は歴然だった。剣を交えて僅か数分で御剣は息を上げていた。傷こそないが、いつ一太刀入れられてもおかしくない。もし、仮にデュラハンの一撃を受ければどうなるか……。例え上物の防具をまとっていたとしても無事では済むまい。

 

「負けて……たまるかあぁぁぁぁ!!!」

 

乾坤一擲。ダメージ覚悟で突っ込む。だが、そんなことなど恐るるに足らないとばかりに仁王立ちで迎え撃つ。

 

「その心意気、嫌いではないがな……。だが――」

「っ!!?」

 

一閃。御剣が振り上げるよりも早く、デュラハンの剣が襲う。間一髪剣を盾に防ぐ事に成功したが、少しでも力を緩めれば貫きそうな力が込められていた。

 

「貴様では役不足だ。その程度の力で勝てると思うなよ?」

「……ふっ、それはどうかな?」

「なに……?」

 

剣を捌き、体制を屈めて懐に飛び込む。

 

「き、きさま……!?」

「喰らえ!これが僕の渾身の一撃だぁ!!!」

 

剣から溢れんばかりの閃光を放ち、最大火力で渾身の一撃を放つ。油断していたデュラハンの心臓部に見事一撃が入った。衝撃と共に弾き飛ばされていく。そして、光の剣の放った魔力が爆発を起こし、辺り一面を吹き消した。

 

「はぁ……はぁ……や、やった……のか?」

 

文字通り渾身の一撃を放った御剣は魔力切れを起こし、その場に崩れた。

 

「うっ……体が」

「その程度か……?」

「なっ……!?」

「ふん、がっかりだな。やはり貴様も他の輩と同レベルか」

 

渾身の一撃を喰らったはずのデュラハンは、無傷でたっていた。

 

「どうして……!?」

「言っただろう?レベルの差だよ 」

「くっ……くそっ!」

「遺言くらいは聞いてやろう。さぁ、早く貴様の断末魔を聞かせるがいい」

「その必要はないぞ、御剣 」

「……なに?」

「か、カズマ……!?」

 

振り向けば、変わった柄の両手剣を握ったカズマが立っていた。

 

(さっきまでと雰囲気が違う……?)

「貴様は……?」

「名前?ああ、そうか。自分を倒す奴の名前ぐらいは知っておきたいのか?」

「ふん、そういうことにしておこうか」

「俺の名前はカズマ。駆け出しの冒険者だ」

「冒険者……しかも駆け出し。はぁ、そんなに死に急ぎたいか、小僧?」

 

問答が終わる前に、デュラハンは血相を変えて襲いかかった。

だが、その刹那にカズマが呟いていたのを御剣は見逃さなかった。

 

『憑依完了ーエミヤー』

 

圧倒的な魔力を込めて振り抜かれたデュラハンの一撃。到底カズマ程度の冒険者では防ぎ切れない。そのはずだった。

 

「なっ……!?」

「痛っつ……だけど、防げないほどじゃないな」

「カズマ、君は一体……!?」

「俺?……ただの元引きこもりだよ!」

「ぐっ!?」

 

短い両手剣を活かし、絶え間ない攻撃を加える。デュラハンは、予想だにしない反撃を受け耐えの一手だった。

 

「はぁ!ふっ!はあぁ!!」

「ぐっ!?馬鹿な……!この俺が、このような駆け出し冒険者風情に!!?」

「確かにお前の方が魔力量も力量も上だろうさ。だがな……今の俺は英霊を憑依している。例えお前が無茶苦茶な強さだったとしても、小回りで機転の利く俺の方が、近接戦闘で上を行く!!!」

 

二刀の剣でデュラハンの大剣を弾いた。

 

「くっ……!おの、れ……!?」

「はああぁぁぁぁ!!!」

「圧倒している!?あのカズマが?……そんな、ただの冒険者なばすじゃ?」

「カズマさん、準備できました!」

「よし、ゆんゆん。頼んだ!!」

『カースドライトニング!!!』

 

「ぐはぁ!!?」

 

黒い稲妻がデュラハンの腹を抉る。本来は貫通性の魔法なのだが、やはりここでもレベルの差が出ているのか貫通には至らなかった。

 

「……けど、上出来だ!」

「小癪な……!」

 

当然この隙を見逃す事はしない。勢いよく飛び、両手剣へと魔力を込め、形状を変える。

 

『オーバーエッジ』

 

「ぐはぁ……!!?」

 

巨大な大剣と化したそれを振り抜き、見事デュラハンの鎧を切り裂く。だが、それでも致命傷になってはいないらしく、すぐさま大剣を振りかざしてきた。

 

「あっぶな……!当たったら死ぬぞ、それ……」

「殺すきでやっているからな!」

幾数の剣撃を交え、少しずつだかカズマの方が押され始める。

 

「くそっ……魔力多すぎだろ!」

「ふんっ!結局はその程度か!?死ぬがいい!!」

「させません!」

「ふっ、また先の魔法か―――」

『インフェルノ!!!』

 

豪炎がデュラハンの体を包む。元より、中級魔法以下はほとんどゆんゆんは覚えていないのだ。駆け出しの連れ程度に思っていたデュラハンは完全に油断し、大火傷を負った。

 

「くっ!!?なん足る事だ……!この俺が、この様な小娘と小僧に!!?」

「あっそ、そのまま寝てろよ!」

「何をっ!?」

 

デュラハンはすぐにカズマの方へと向きやった。

だが、それも一瞬遅かった。

 

「俺の渾身の魔力だ。食らいやがれ!!!」

「きさま―――」

偽・螺旋剣』(カラド・ボルグ)

 

投影された弓を使い、螺旋状の刀を放つ。更に、その矢として放った刀に渾身の魔力を込めた。

デュラハンに直撃し、それは爆発した。爆炎で姿は見えないが、恐らくは命中し、確実に命を削ったはず、そう確信していた。

 

「はぁ……はぁ……これで生きてたらもう知らねぇ。逃げる……つっても、走るのもダルいわ」

「いや、これならやったんじゃ……!?」

「…………と、思ったか?」

「「っ!!?」」

 

仕留めたはず……だった。

だが、かすり傷こそあるが、デュラハンは最初と変わらず大魔力を放ち、凄まじい闘気を放っていた。

 

「途中までは良かったがな。……やはり、お前らではレベルが足りんのだよ」

「く……そがっ!」

 

即座にデュラハンへと切りかかる。

だが、それはいとも容易く凪ぎ払われる。

 

「ほう?まだやるか……そこの雑兵とは違うな。だが、これまでだ」

「ぐっ!!?」

 

今度はデュラハンの大剣がカズマを襲う。両手剣でどうにか受け止めるが、威力を殺しきれていない。

 

(くそっ!くそくそくそくそくそ!!!何でだ!?何が足りない!!?どうして勝てない!!?)

「どうした?足りない頭で知恵でも絞っているのか?……だとしたら、滑稽だな。既に答えは出ていると言うのに」

「うるせぇ!真実はひとつとは限らないだろうが!?コ○ン君だって推理を間違えることもあるだろ!!」

「誰だそれは!!?」

 

後ろへと飛び退き、どうにか攻撃をかわした。

だが、まだ追撃が来ようとしている。

 

(もっと……もっとだ!もっと早く!もっと正確に!!もっと強く叩き込む!!!)

「はあああぁぁぁ!!!」

 

もはやカズマには手がなかった。出来うることはやった。後は、剣撃で勝ることだけだ。

だが、無情にもそれは叶う気配すら見せない。

幾度となく打ち込むが、全て受け流されているのだ。

 

「くそおおおぉぉぉぉ!!!」

「どうした、その程度か!!?」

「まだだっ―――」

 

『体は剣で出来ている』

 

「っ…………!?」

 

突如として、頭にその言葉が浮かび上がった。そして、同時に抗いようのない痛みが全身を襲う。

 

「うっ……ぐっ、あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

「か、カズマさん!!!?」

「カズマ!!!一体、どうしたというんだ!!!?」

「ほう、魔力がオーバーフローでもしたか?身に余る力を宿したせいで体が耐えきれなくなったか?だが、そんな事はどうでもいい」

 

無情にもデュラハンは、剣を振り上げる。

 

「これで、終わりだ」

 

激痛のなか、カズマの頭にあるのは痛みにたいする悲鳴とその痛みに対する問いだけ。どうしてこんな痛みが襲ってくるのか皆目検討がつかない。魔力は正常……なのだろうか?分からない。痛みが、全ての感覚をもぎ取っていた。

故に、カズマは気づかなかった。地に刻まれた紋様が、手のひらに刻んだ紋章が光っていることに。

 

「死ね」

 

大剣がカズマを両断する……はずだった。

高い金属音と共にそれは弾かれた。

 

「何者だ、貴様!!?」

「ふむ…………そなたではないな」

「えっ……な、何が起こってるの?」

「彼女は一体……?」

 

知らない女の声。驚くゆんゆんと御剣、そして敵意を強めるデュラハン。三者の反応はほとんど同じものだ。何者かが、デュラハンの攻撃を防いだのだ。

 

「な、なにが…………起こって……?」

 

激痛で薄れ行く意識のなか、カズマが見たのは……。

 

「問おう。そなたが余の、マスターか?」

 

赤いドレスを身に纏った美少女だった。

 

 

 

 




どうも、この度も読んでいただきありがとうございます!
某ソシャゲのRPGゲームがこのすばとコラボしており、そっちに夢中になっていたので続きが遅くなりました。
しかしというか、やはりというかめぐみんが随一の魔法使いというのはあながち嘘ではないかもですね。ゲームでも超強いです。

さて、真面目に後書きを書きますか……。

カズマの『憑依』ですが、基本スペックは冒険者であるカズマでそれに上乗せする形で部分的に英霊の能力を得るだけで、いきなり魔王軍幹部を倒せるほどは強くなりません。
俺TUEEEEEEEでも良かったのですが、それはあまりにカズマの理想の姿と掛け離れていると思ったので調整しました。

追記
めぐみんもいつかは活躍する……予定。

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