異世界転生したカズマは召喚師になりました。 作:お前のターン
そろそろ敵キャラの一人や二人出すべきと思いつつ、中々行き着かない……。
案の定、またゆんゆんが壊れます。
「さてと、そろそろこのスキルを試さなきゃな……」
『憑依』というスキルを手にいれた俺だが、ジャンヌから説明を受けていまに至るまで一度も試していなかった。試さなかった事に理由はある。けれど、それは保身を考えてのことである。仮に得体の知れないサーヴァントを見に宿し、意識を乗っ取られでもしたら大変だ。
「そんなわけで、頼んだぞ。ジャンヌ」
「了解。あんたが狂って襲いかかって来たら、遠慮なくやらせてもらうわ」
「こ、怖いこと言うなよ……!」
定番のレベル上げエリアで、なるべく街に近いところで実践する。周りにはジャンヌ、ゆんゆんが待機しており、離れたところにめぐみんがいる。この二人なら俺が乗っ取られても即座に鎮圧できるだろうという判断のもと、託したのだが……。
「カズマさん、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫、心配いらないって」
「でもでも、カズマさんはたまに調子に乗って痛い目に合うことがありますし、この前だって雨降らないから大丈夫だって言っておいてずぶ濡れでクエストからかえるはめになっーーー」
「うるさいな!お前は俺のお母さんか!?」
「あっ…………すいません。私なんかが図々しい事言ってしまって……すいません。責任とって死にますので許してください」
「卑屈過ぎるだろ!?べ、別にそこまでしなくてもいいから……!」
なんだろう、あの一件からゆんゆんがだいぶ病んだ気がする。俺に対する反応が過敏っていうか、とにかく怖い。俺とめぐみんが話してるときのあの目と言ったらもう…………恐ろしい程に無の境地で見てくる。目に光が無く、口が閉ざされ、両手をフリーにして、臨戦態勢になる。
俺は、このゆんゆんの状態を、揺るがなき境地『クリアマインド』と命名した。
「カズマカズマ、ちゃんと成功させてくださいね?」
「おう、安心しろめぐみん。こう見えて、俺は運がいいらしいぞ」
「ふふふ、では楽しみにしておきます。カズマが、一体どのような力を宿すのか……ふっ、我が右目が疼きますね」
あっ、痛い痛い。主に俺の心が。
「………………カズマさん、やけにめぐみんと仲が良いですね?」
「えっ?いやいや、仲間なんだからこれくらい普通だろ……?」
「へー……そうですか。そうなんですか」
「…………何?どうした、ゆんゆん?何か今日はやたら暗くね?」
「いえ、別に。カズマさんに私の恥ずかしい所を見られて自暴自棄になっているとかじゃないですから……」
「「うわぁ……」」
「ちょ、ちょちょっと待てよ!!?確かに言っている事は合ってるけども!?そもそもはゆんゆんが俺の部屋でオナーーー」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!言わないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ねぇ、あんたら実は似た者同士なの?カズマもよくゆんゆんをおかずにオナーーー」
「やめろおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?お前、俺を精神的に殺す気か!!?」
せっかくスキル試しに来たのに、何故か開始前から精神的に疲労感が半端ない。つーか、普通に始めさせてくれよ。ゆんゆんが変に突っかかるから、ジャンヌもめぐみんも軽く引いてるぞ。
「よ、よし……それじゃ、そろそろ始めるぞ」
「先ずはクラスを念じなさい」
クラスとは?
セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、ルーラー、アヴェンジャーというのがある。
俺は、スキル発動時に以下のクラスから一つ選択し念じるのだ。
「スキル『憑依』発動……対象……ランサー」
「次に、力を思い描く。ランダムとは言っても、その思念や概念に沿って英霊は召喚、または降霊するのよ。だから、あんたが使いたいと思う武器を思い描きなさい」
ランサーならば槍だ。槍で有名な物って言えば…………あれか?あれしかないよな?
漫画やアニメでよく見るゲイ・ボルグという槍だ。
「槍か……ゲイ・ボルグとか?」
「ゲイ…………あんた、ホモなの?」
「お前っ!!?わざとだよな、知っててわざと言ってるんだよな!!?」
ええい!まどろっこしい!!さっきからまったく進まん!!!
もういい。俺は、からかうジャンヌを無視し、槍を思い描いた。
「よし、なんか来てる…………こう、力がみなぎってきた」
「そう。なら、後は真名を口にするだけでいいわ」
俺は、呼吸を整え、真名を告げた。
『憑依完了ークーフーリンー』
紅く鋭い槍が顕現した。そして、姿には変化はないが、俺は一瞬のうちにその槍の使い方を熟知した。更に、魔力限界値が少し増え、俊敏性がかなり上がった。
「こ、これが…………」
「成功ね。クーフーリンねぇ…………なんかあんたには似合わないわね」
「な、なにおぅ!!?」
なんか反応がイマイチだ。え?何?そんなに地味なのか?
「カズマさん、何か変化はありますか?」
「そうだな~…………うん、なんか早く動ける気がする」
「わぁ、凄いですね!大成功ですね!!」
「いや、まだ戦ってすらないんだけど。冒険者だからって低く見すぎだろ……」
「なに、あんた。もしかして憑依ごときで強くなった気でいるの?」
「…………試してみるか?」
「…………面白い事を言うのね。いいわ、勝負しましょう」
俺は、何も挑発に乗ったわけでもした訳でもない。ただ単に気になったのだ。
いまの俺が、英霊であるジャンヌに何処まで戦えるのか。仮にも俺は、憑依で英霊を纏っている状態なのだ。戦える可能性はあると踏んでいる。
「言っておくけど、サーヴァントを宿した以上手加減はしないわよ?」
「構わないぜ?俺も、手加減出来そうにないからな」
「あの……カズマさん、何もジャンヌさんと戦わなくても、モンスターで腕試しすれば良いのでは?それに、仲間同士で争うのはちょっと……」
おどおどしながら俺とジャンヌの間を取り持つゆんゆん。心配になる気持ちもわかるけど、今は好奇心の方が勝る。だから、イケボで諭してやった。
「ゆんゆん。心配するな、俺は絶対に勝つ」
「カズマさん…………………………そんなに見つめられると照れます」
「…………………………ごめん 」
う~ん、どうにも絞まらないな……。やっぱり照れがあると駄目だな。
「ゆんゆん、残念だけどそいつは私には勝てないわ。サーヴァントとしての格の違いを見せてあげる」
ジャンヌは祖国の旗に龍紋を刻んだ旗を靡かせ、魔力を高める。いつも以上に感じる闘気。これが強者のみ感じると言うオーラというやつか…………やばくね?
何となくだが、いまの俺にはジャンヌのステータスが見える。魔力値、攻防力共に異常な数値が表示されているのだ。それこそ、並大抵のチーターでは敵うまい。
『竜の魔女EX』
『自己改造EX』
重ねがけでバフを盛る。ヤバい…………ひと突きで死にそう。こちとら憑依だぞ?んなスキルまで使えねぇよ。
「では、始めましょうか…………先手はどうぞ」
「ぐっ……余裕ぶりやがって。見てろよ、俺の槍でその鎧削いでやるからな」
「うわぁ、あんたが言うとエロく聞こえるわね……」
「せっかく人が雰囲気作ってるんだから乗れよ!!?本当に絞まらねぇな~……ったく。んじゃ……いくぜ?」
俺は両手で槍を握り、ジャンヌへと矛先を向け突進した。対するジャンヌは旗を振り回し、タイミングを合わせ、槍の横腹へと当ててきた。
「うおっ!?いってぇ……振動も半端ねぇ」
「甘いわね。次はこれでどう?」
容赦なく連続で突いてくる。俊敏性が上がった今の俺は、この攻撃を寸でのところでかわす。そして、槍を短く持ち、速攻に備える。
「へぇ、槍の使い方が様になってるじゃない?」
「そりゃどうも。なら、ついでにこいつを食らいやがれ!」
ジャンヌとの距離を詰め、横凪ぎへと繋げる。当然防がれる事は承知している。狙いはその後だ。
…………俺をただのサーヴァントもどきだと思うなよ?
「はあぁ!!」
「ぐっ!?」
そのまま勢いよく槍でぶっ飛ばす。そして、すぐさま盗賊スキルの『潜伏』と『暗歩』を発動させる。
「はぁ!?…………あんた、ランサーのくせしてアサシンの保有スキル使うとか……ないわぁ」
ふっ、何とでも言え。俺は策士なのだ。真っ向から化け物ステータスのお前とぶつかると思うなよ?
俊敏性を活かし、草むらを駆け巡る。どうにか木や背の高い雑草に身を隠しながら攻撃の機会を探る。
「ふっ…………流石はカズマだと言っておきましょう」
「そりゃどうも!」
一瞬のうちに背後へと回り込み、槍を振り下ろす。
だが、ジャンヌは振り返ることもせず、笑みを浮かべていた。
『うたかたの夢』
「なっ……!?」
スキルを唱えたのだろう。一瞬でよく分からなかったが、槍による攻撃が無効化され、威力を殺されたのだ。
通るはずの攻撃がすり抜け、勢いを失う。その隙をジャンヌは見逃さなかった。
「終わり」
「させるかよぉ!」
どうにか槍でいなす。振り下ろされた旗は、思いの外力強く、一瞬だが槍がぐにゃっと曲がりそうになった、
「お、お前…………本当に容赦ないな」
「それをご所望なんでしょ?いいから、さっさと倒されて踏まれなさい!」
「一言多いな、おい!?」
今度は俺の方が腕力だけで旗で槍ごと吹っ飛ばされた。
うまい具合に着地するが、そこを見越していたかのように間髪いれず突いてくる。
パキィンと高い金属音が響き渡る。本来ならば武器として作られている槍の方が頑丈なはずなのだが、ゲイ・ボルグの方がミシミシと悲鳴をあげている。
「な、なぁ……もしかして、まだ手加減してる?」
「どうしてそう思うの?わたし、こう見えて結構魔力使ってるわよ?」
「そ、そうか……なら、そのまま炎系のスキルとか黒剣を出さないでくれると助かる……!」
「ああ…………バレてたのね。なら、お望み通りに」
ジャンヌは俺を弾き飛ばすと、後方へと下がった。そして、いつものSっ気な嘲笑いを浮かべながら腕を振り上げた。
「燃えろ、灰塵へ帰しなさい」
凄まじい豪炎が追尾してくる。
「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!?アリか!?そんなのアリか!!?」
「あははははは!!!逃げなさい、逃げ惑いなさい!!弾圧される民の躍りほど愉快な物はないわね!!? 」
「あ、あいつぅ…………本気だな。こりゃ少しでも手を抜いたら殺されるな」
カッコ悪い悲鳴をあげたが、実は肉体的には余裕がある。普段なら絶対かわせない攻撃に思わず条件反射でビックリしたのだ。
しかし、こうして逃げ回っていても状況は好転しない。策を練らなければ……。
「終わり!?終わりなの!!?少しは反撃したらどうなの!!?そしたら褒美として串刺しにしてあげるから!!!」
嫌に決まってんだろ……。
「はぁ……あんまり体力ばっか消費してもしょうがないし、ここは知的戦術で行くか」
『クリエイトウォーター』
「からの……」
『フリーズ』
そう、初級魔法によるコンボ攻撃だ。
適当に水をばらまき、それを凍らせる。これで、素早く動けまい。
「あははははは!!!馬鹿じゃないの!!?燃えなさい!!!」
あ~……そうだった。あんだけ高火力で燃えたぎってたら溶けるわ。……ああ、もういいや。こうしよう。
『クリエイトウォーター』
「あっ!!?ちょっと、あんた何濡らしてんのよ!?そういう趣味でもあんの!?」
「うるせぇ!?こうするんだよ!!」
『フリーズ』
ジャンヌ本人にフリーズをかけてやった。そう、いくら火が出せようとも自分にはかけれまい。
「くっ……!?屈辱だわ、元聖女たる私がこんな下卑た男に濡らされるなんて……!?」
「だからやめろよ、その言い方!?」
一応は命のやり取りをしているのだが、相変わらずの調子である。……戦いづらいなぁ。
「これで避けれないだろ!?これでもくらえ!!」
「宝具解放ねぇ…………どうやら、本気のようね。だったら……」
俺は、最大火力の魔力を槍に込め、滑走する。そして、勢いよくジャンヌ目掛けて必殺の槍を放つ。
『
因果をねじ曲げ、必ず命中するという能力を持つ。だが、カズマが放つと同時にジャンヌもまた反撃を試みた。
「手加減してあげるから、存分にその身に味わうがいいわ」
「なっ……!?」
ジャンヌは、刹那の一瞬のうちに内包する魔力を解き放つ。それは、普段の戦闘で感じる魔力量とは桁が違うものだった。
『
突如顕現した黒剣を振り上げ、こちらへと向きやる。すると、無数の黒剣が現れ、豪炎と共に襲いくる。
渾身の魔力を込めた一撃は、数多の黒剣に触れ、炎と共に吹き飛んでいった。そして、尚も威力を落とさないそれは、カズマの喉元まで食らい付き、切っ先を立てていた。
「チェックメイト。私の勝ちね」
「あ、ああ…………」
思わず膝を着いてしまった。寸でのところで止めてくれるとは思っていたけども、やはり死の恐怖を感じられずにはいられなかった。
「まぁカズマにしては上出来ね。初めての憑依でそこまで戦えれば問題ないわ」
「お、おう……。でも、やっぱりジャンヌって凄いんだな」
「当然よ。そして、その凄いサーヴァントを呼び寄せたのはあなたなのよ?もっと自分に自信を持ちなさいな」
「……だな。ありがとう、ジャンヌ」
やはりジャンヌにはまだ余裕があったのだろうと思う。彼女の屈託のない笑みがその証拠だ。
差し伸べられた手を取り、立ち上がる…………つもりだった。
「…………どうしたの?立たないの?」
「……………………すまん、ジャンヌ。非常に言いづらいんだが…………………………」
「……何?」
「………………………………全身の筋肉が痛くて立てない」
「…………………………カッコつかないわね」
その後、俺はジャンヌに肩を貸してもらい、どうにか宿まで帰った。
憑依スキルを用いて戦闘したこの俺、佐藤和馬は現在療養中である。
どうにもジャンヌが言う限りでは、器となった俺の体の方が負荷に耐えきれず、肉体が悲鳴を上げたらしい。そのせいで、俺は冒険に出ることも叶わず部屋のベッドでただ天井を眺めているだけという苦行を強いられている。
「はぁ……体中痛い」
「あまり無理しないでくださいね」
「ありがとうな、ゆんゆん。こうして俺の看病に来てくれる何て……アタシャ嬉しいよぉ、しくしく」
「もう、カズマさんったら……お婆さんみたいですよ?」
まともに生活出来ない俺のために、ゆんゆんは毎日俺の宿まで看病しにきてくれている。正直最初はドキドキしまくって大変だった。だって俺、童貞だもん。ちょっとしたスキンシップにすら動揺しちゃうお年頃なのだ……。
「まったく、やはりカズマは私がいないと駄目なようですね?」
「んん?いや、全く。ゆんゆんが世話してくれるし」
「こ、この男……仮にも看病の手伝いをしている私に向かって平然と言いますね」
「めぐみん、カズマさんには私が着いてるから大丈夫だよ?」
「いえ、ゆんゆん一人だとこの男が血迷って襲いに来るかもしれませんので」
こ、こいつ……!?俺を変質者の如く言いやがって……。
「大丈夫だよ?だってカズマさんは優しいもん」
ああ……天使の囀ずりが聞こえる。誰だ、巷でクズマさんやカスマさんと揶揄される俺を優しいと言ってくれるエンジェルは……?
そう、純情系ヒロインゆんゆんだ。
「ああ、これが癒されるということか……」
「この男、何故か泣いていますよ……?」
「めぐみんが酷いこと言うからだよ。ほら、カズマさんに謝って」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ……!?」
お?なに?めぐみんが俺に謝ってくれるのか?よ~し、いいだろう。日頃のなめ腐った態度はそれで許してやろう。
「ご、こめんなさい……」
………………え?なにこれ、超可愛い。誰だよお前、可愛いすぎか?
ほほを染めながら上目遣いで見てくるめぐみん。もうなんと言ったらいいのか、とりあえず超絶可愛いですもっと愛でさせてほしいです、はい。
「お、おう……。ま、まぁ気にするなよ。俺も対して気にしてないしな」
「ありがとう……ございます」
う~ん、美少女に看病してもらうというのも悪くないな。よし、ここは思いっきり甘えさせてもらおうかな。
「なぁめぐみん、ちょっと背中拭いてくれよ。流石に風呂に入ってないから汗がな……」
「そ、そういうことでしたら……了解です。では、脱がせますよ?」
「おう、頼む」
ふっふっふ、なんたるご褒美。あの異性に全く縁の無かった俺が年端のいかない少女に背中を拭いてもらうだなんて…………異世界様々だな。
「あの……上着を脱がせますので、ちょっと身を乗り出してもらいませんか?」
「あ、ああ……」
言われた通りに行動した俺だが、無意識に上げた先にめぐみんの顔がすぐそこにあった。あとほんの数センチで唇が触れあうかどうかのすれすれだった。内心ではものすごく焦ってはいたが、動揺を悟られたく無かったので目線はそらした。
だが、そんな俺の動揺を掻き立てるかのような言葉を投げ掛けられた。
「カズマ……その、顔が近っ―――あっ、いえ……このままでいいです」
「お、おう……」
めぐみんは自分からは離れようとはしなかった。それどころかそのままで良いと言った。
俺の心臓は秒針を追い越す勢いでバクバク鳴っていた。だって、こんな可愛い娘にご奉仕してもらいながら、こんなサービスショット見させてもらってるんだ。動揺するなって方がどうにかしてる。
極め細やかでスベスベとした若い肌、整った顔立ちでまだ幼さが抜けていないにも関わらず、頬を染めることで発せられるロリ特有の色気。そんな魔力が俺の目の前で解き放たれているのだ。
ゆんゆんがいなければ抱き締めていたかもしれない。
「脱がせますよ……?」
「んうっ……ふぅ、それじゃあ頼む」
「はい……それにしても、カズマって以外と筋肉ありますね」
「ひゃっ……い、いきなり腹なんて触るなよ。びっくりするだろ?」
何の気なしに言ってくるのだが、その無意識に腹に添えられた手がひんやりとする。しかも腹だ。くすぐったいし、ドキドキする。
「ふふ、カズマにしては可愛い悲鳴ですね?…………もしかして、カズマは童貞なのですか?」
「なっ……なななな……!?いきなりなに言い出してんだよ!?」
ロリッ娘が大胆発言してきた。なに、この子。さっきまでの甘い雰囲気は何処いったの?いきなりエロチックにくるなよ。耳元で囁かれたら勢いで襲っちゃうかも知れないだろ?……ゆんゆんがいなければ、だけど。
「な、なぁ……頼むから普通にしてくれよ?正直言って腹筋死んでるから、そうやって心臓によくないことされると本当に痛いんだよ……」
「つまりカズマは、今は抵抗出来ないからやめてくれ、と?……ふふ、なら尚更からかいたくなりますね」
えっ……?冗談だろ?本当にナニかする気なのか?
「ふふ、余りの色っぽさに動揺するカズマの姿が目に浮かびま―――ん?どうしたのですか、ゆんゆん?」
めぐみんに夢中になっていたせいで全くゆんゆんの方を見ていなかった。俺も、どうしたのだろうと思い、ゆんゆんの方へと向きやる。
「ねぇ、めぐみん」
すると、ゆんゆんはクリアマインドの境地で狂気にも似た無表情で呪詛のごとく話始めた。
「どうしてカズマさんにそんなイタズラをするの?いま、カズマさんは怪我人なんだよ?そんな事したら迷惑がかかるでしょ?それに、どうしていきなりらしくもない色気を使ってカズマさんを誘惑しているの?やめてあげてよ、カズマさんも迷惑しているのが分からないの?見ているこっちも苛立つよ?しかも、あれ半ばわざとやってたよね?半身を起き上がらせるのにそこまで顔を近づける必要性皆無よね?シラけるわ。めぐみんはそういうことはしない子だって思ってたのに。恋愛とかオシャレに全く無頓着で気にもしない。男っ気の一つもなかったあのめぐみんがどういう風の吹き回し?なに?もしかして、カズマさんに惚れた?……だったら、検討違いもいいところね。カズマさんは誰にでも優しいの。だから、日頃めぐみんに向けられた優しさはあくまで公平に振り分けられたものであって意識していたものではないのよ?勝手にその気になって、勝手に誘惑なんてしないであげて。カズマさんが迷惑と思うだけよ。いい?めぐみんはただでさえ人のお世話なんてまともに出来ないのだからこれ以上カズマさんに変なちょっかいかけないでね?そういうの、本当に迷惑だから」
怖っわ!ゆんゆん超怖い……。え?なに?どうしてこの子いきなり呪詛唱え始めてんの?未だに続いてるけど、俺とめぐみんはドン引きだよ……。
「は、はぁ……すいません」
「すいませんじゃないでしょ?本当に謝る気があるの、ねぇ?私だって友達のめぐみんにこういうこと言いたくないけど、めぐみんのために言っているのよ?」
「な、なぁ……もうその辺で、な?」
「カズマさんは黙っててください」
「あ、はい。すいません」
すまん、めぐみん。助け船はだしてやれないようだ。嵐・竜巻・ハリケーンが発生していて近寄れもしない。
「す、すいません……あ、はい。その節は……はい、本当に……はい。誠に……はい、それはその……すいません」
なんだろう、取引先の方に不備で怒られるセールスマンみたいだ。あのやんちゃなめぐみんが敬語使ってる。
…………つーか、いつまでやってんだよ。
「あ、あのさ……俺、半裸のままなんだけど」
「あ、すみません……。私が責任をもって拭きますので……めぐみんは帰っていいよ?」
「え?いえ、流石に中途半端ではーーー」
「いいよ?」
「…………はい」
怖えーーーーーー!!?
え?誰、この子?愛しのマイエンジェルゆんゆんは何処に?…………ヘ、ヘルプ!!!頼む、めぐみん!!!この場を打開しておくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
「…………はぁ」
あっ、完全に諦めてらっしゃる。終わった、終わったな俺!これからヤンデレゆんゆんに付きっきりで看病されるのか!!
………………持つわけねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!え?なに?どうしてこうなった?何がいけなかったの?こんなデレなんか求めてないよ?一歩間違えればバットエンド直結系ヒロインとか嫌だぞ?
「さぁカズマさん、私が背中を拭いてあげますからね?」
「あ、ああ……お願いする」
「ふふ、うふふ…………うふ腐腐腐腐腐腐腐」
(怖い怖い怖い!え?なにこの子?貞子?ふが腐になってるし、目が笑ってないんだけど!?)
「カズマさん、今日は寝るまで看病してあげますからね?」
「え?あ、いや……それはちょっと」
「ん?」
「…………オネガイシマス」
「はい、分かりました!」
ああ……ゆんゆん超怖い。
お母さん、お父さん、俺………………今だけオウチに帰りたいです。
その日、俺は怖くて一睡も出来なかった。
次回予告のネタが思い付かなかったので普通に後書きを書きます……(-.-)
書いてて思ったんですが、実際のところジャンヌオルタはどれ程強いのだろか……。FGOの中では攻撃力においては群を抜いている……らしいのですが。
持ってないから尚わからん!
魔王軍幹部との戦いにおいて、一体どれ程通用するのか……わかりません。そこは、どうにかそれっぽく書こうと思いますが、恐らく、えっ?……てなるかもしれません。
そろそろ新規サーヴァントも出す予定ですので、どうにかこのすばの世界観で表現出来たらなと思います。
追伸
ジャンヌオルタ復刻こないかな~……(;´д`)