異世界転生したカズマは召喚師になりました。   作:お前のターン

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少し時間が空きましたが、続きです。
当面は仲間内集めかな~?と、書きながら思ったので今回は新しい英霊は出ません。
そしてやはりめぐみんは必須級のヒロインだと思う今日この頃。
ジャンヌも可愛いくていじりがいがありますし、書いてて飽きないです、はい。
ゆんゆん?…………可愛いね(小並感)


頭のおかしな紅魔の子

こんちには。カズマです。お父さん、お母さん、お元気ですか?僕は元気にやってます。最近では冒険者という職業につき、頼もしい仲間と荒稼ぎしています。危険が伴う職業ですが、不満はありません。だって、昔夢見ていた理想の世界にいるのです、これ以上は我が儘というものです。

さて、不満は無いといいましたが、問題はあります。実力はあるが性格のきつい元聖女様。孤高であることをとても気にする可哀想なぼっち少女。

一癖も二癖もある問題児、僕はこのパーティーいの行く末が不安でたまりません。

…………多くは望まないので、普通のヒロインをください。

 

 

 

「さて……今日はどうする?」

 

冒険者生活を初めて早1ヶ月。俺達は手軽なクエストで生計を立てていた。クエスト報酬を貰ってもその日の晩の酒代に充てるジャンヌ。友達がいないせいか、毎日それに付き合うゆんゆん。まるで会社帰りのサラリーマンのような毎日だ。

かくいう俺も、飲み明かす日が多く、大変自堕落な生活を送っています。

 

「今日ねぇ……………………宴会?」

「連日10日やってんだろ!!?」

 

懲り性もなくそんな事を述べるジャンヌ。流石の俺もまずいと思う。あれだけ憧れた冒険者ライフに行き着いた結果がこれだ。…………おかしくね?

 

「あのさ、クエストは楽勝なんだからもっと節約か貯金とかしようぜ?俺達毎日飲み明かしてるから常に金欠なんだぞ?」

「何お利口ぶってんのよ?あんたも同類でしょうが」

「だからなんだよ!このままのこの生活を続けてたら、いつか借金まみれになるぞ!?」

「ああ、はいはい。お金が必要な時は金融に行くかローンすればいいでしょ?それで駄目なら破産宣告してーーー」

「阿呆か?おい、お前マジでサラリーマンなの?何でこんなファンタジーな世界でリアリティー高いこと言い出してんだよ。お前、あれか?実は生前サラリーマンで、干物女だったのか?」

 

この聖女様ことジャンヌは何故か働くことに消極的で、酒とつまみを何よりも好む駄目な振る舞いばかりみせる。

流石にこうも適当に流されると困る。雰囲気をつくるべく、テーブルをバンッと強く叩く。そして、朝からシュワシュワをゴクゴク飲んでいる干物女に一言申す。

 

「ジャンヌ、お前は危機感が足りない。いいか?ゆんゆんをみてみろ」

「な、なんですか……?」

「なによ……?」

「あれだけソロで稼いでいたにも関わらず、ゆんゆんは全然懐が潤っていない。何故だかわかるか?……それはな、お前がこれ見よがしにお姉さん風を吹かして奢らせてるからだ!ただでさえ、ゆんゆんは友達がいないくて日頃から植物を話し相手に時間潰してるのに、その友達の植物を買うお金までなくなったらどうすんだ!?最終的にはエア友達とか言い出すかもしれないだろうが!!?」

「あ、あの……!?カズマさん、一体いつからその事を知って……えっと、大丈夫ですから。私、エア友達もいけますし、それに野良猫のクロちゃんとか野良犬のタロちゃんっていう友達がいますから」

 

うっ……目から塩水が。可哀想を通り越して哀れに見えてきた。というか、エア友達もいけるのか……。

 

「なによ……もう、分かったわよ。そこのほっち娘が可愛がってるお友達人形を買うお金まで無くなったら本格的に病みそうだし、少しは考えてあげるわよ」

 

おいおい、人形も友達なのか……。もう、何が友達なのか分からなくなってきたよ。友達ってなんだ?馬鹿言い合ったり一緒にはしゃいで楽しめるそんな間柄のことだよな?ゆんゆんを見てると、友達の定義が分からなくなる。

 

「ようし、ジャンヌもようやく理解してーー」

「あの、カズマさん」

「ん?なんだよ、ゆんゆん」

 

珍しくゆんゆんが俺に意見があるそうだ。これは聞かざるを得まい。

 

「私にも友達いますよ?」

「……………………大丈夫だ、ゆんゆん。友達の定義は人それぞれだもんな?俺達はとやかく言わないさ。何もサボテンに話しかけるのはやめろだなんて言わない。野良犬に友達相談するなとか言わないさ。だから、な?……気に病むことないぞ?」

「相当痛い娘として見られてるって事ですよね!!?そうじゃなくて、私にもちゃんと人の友達がいますから!!」

「「えっ……!!?」」

 

驚愕の事実に、俺とジャンヌは言葉を失った。

 

「えっと……私と同い年で、同じ里の出身の子なんですよ。同じギルドに所属していますし、たまに話したりするんですよ?」

「…………ジャンヌ」

「…………分かったわ」

 

俺とジャンヌの間に言葉はいらなかった。俺は、すぐさまシュワシュワを大量に注文し、ジャンヌは本物の聖女らしくゆんゆんに寄り添い、慈悲深い言葉で慰めていた。

 

「貴女は本当によく頑張ったわ。私は、あなたのその頑張りを心から尊敬します」

「え?あの、いつもみたく砕けた感じで話してもらっていいんですよ?それに、私は何もしてーー」

「良いのです。例えあなたに自覚はなくとも、主はあなたを祝福するでしょう。哀れな少女に、魂の救済を」

「あ、哀れ!!?ジャンヌさん、慰めているのか哀れんでいるのか分からないんですが!!?」

「ああ、主よ。私は今だけは貴方に救いを求めます。どうか、この哀れで可哀想な乙女に救いがあらんことを」

「さっきよりも酷くなってる!!?」

 

あの傍若無人で情け容赦の無いジャンヌさんが綺麗な言葉を使っている。それほどまでに、ゆんゆんの在りようが見るに耐えなかったのだろう。俺も、今日はもうゆんゆんを慰める名目で1日宴会をしていい気がしてきた。

 

「……苦労してきたんだな、ぐすっ」

「やめてください、カズマさん!そんな哀れなものを見る目で……ジャンヌさんもです!!」

 

その後、ギルド連中を交えてゆんゆんを慰める会が行われたのであった…………。

 

 

 

「まったく、皆さん過剰に反応しすぎです……」

 

嫌だったのか、それとも大勢の人と話せて嬉しかったのか喜怒哀楽がごっちゃになりながらぼやくゆんゆん。ギルドを出た後もにやけていてずっとこの調子だ。

 

(苦労の多い娘だな……)

 

件の事もあり、現在クエストに出ている俺達。面倒きらいなジャンヌも連れて討伐クエストに向かう。

基本的に前衛をジャンヌが勤め、中盤に俺が待機しつつ、状況を見て援護&指示出しを行っている。ゆんゆんは後方で魔法による援護射撃だ。

 

「ねぇ、あんたがあの娘もらってあげなさいよ?」

「待て。その発想は何処から出た?」

 

唐突にジャンヌの意味不発言。何故そうなる?

 

「生前、色々な人を見てきたけどあんなタイプは初めてよ。あれはもう手遅れ。友達作りは諦めて恋に生きた方が楽よ」

「もっと頑張れよ~……仮にも聖女だろ?」

「その聖女が無理だって悟るレベルなのよ。だから、口説きなさいよ」

「無理だ。俺にはレベルが高すぎる。まともに話してるだけで涙で前が見えなくなる 」

 

人間何事も諦めが肝心だ。そう、無理に合わせる必要も友達を作る必要もない。きっと、大丈夫。いつか理想の友達に出会えるはずた…………来世辺りに。

 

「そんな事言って、本当は可愛いから狙ってるんじゃないの?ほら、胸でかいし」

「ば、ばばばばか野郎!!?何いってんだよ、それとこれは別だろ。可愛いからって何でも許容できると思ったら大間違いだぞ!!?」

「へぇ~……日頃は寝る前にあの娘をおかずにぬいてーーー」

「あああああああああああああああ!!!聞こえない、聞きたくない!!!つーか、何で知ってるんだよ!!?」

「私、英霊だから。霊体になれば余裕でもぐりこめるわよ」

 

なんというプライベートブレイカー!!?こいつ、仮にもサラリーマンまがいな事を言っておいて個人情報保護法も知らないのか。人の恥ずかしい所を見やがって…………は、恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 

「何を楽しそうに話してるんですか?」

「カズマがあんたをおかずにーーー」

「やめろよぉぉぉぉぉぉ!!?お前な、そればれたらパーティー解散するレベルだぞ!!?」

「なによ、年頃の男が発情してるってだけでしょう?」

「お前本当に聖女か!?確か聖処女とか言われてなかったけか!!?」

「オルタの私に言われてもねぇ。ところで、ゆ……ゆんゆん、あんたはどうなのよ?」

「えっ?何がですか?」

「夜な夜なベットで初めて知り合った近しい年頃の男であるカズマに迫られる妄想で抜いてるあんたなら、カズマとーーー」

「わあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!知りません!!!わたし、そんな事してませんから!!!な、何を根拠に言ってるんですか!!!?」

「あんなにもはっきりと……あ、ダメ。私たちまだそんなっ……ああん!!……とか言いながら股押さえてたじゃない?」

「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!聞こえない!!!聞きたくない!!!」

 

ゆんゆんが壊れてしまった。意外とエロいんだな、この子。不覚にも少し喜んでしまった自分がいる。

ごめん、ゆんゆん。俺の妄想の中のゆんゆんはもっとあれだから、口に出すのも憚れるぐらいアレな目に合ってる。

 

「さっきカズマにも説明したけど、霊体になって色々と探りいれてたの。だから、誤魔化しは通じないわよ?」

「な、なんなんですかこの人!!?カズマさん、カズマさんは私の事を信じてくれますよね!!?」

「あ、当たり前だーーー」

「そういえば昨日、カズマがあそこ押さえてゆんゆんの名前を言ってたような気がしないでもないような、そうだったような……」

「いや~、ゆんゆん。溜めるのはよくないぞ。ちゃんと人様に迷惑がかからない程度に発散するんだぞ」

「まさかの裏切りですか!!?……というか、カズマさんもですか?」

「………………クエスト、早く終わらせようぜ」

「………………そうですね」

 

無言のカエル狩りが行われたのであった。

ジャンヌというKY女のせいで、俺とゆんゆんは暫くの間、まともに話すことが出来なかった。

 

 

 

クエストも終わり、報酬を受け取った俺達は、晩飯を食べ終え風呂に入っていた。風呂場では話す相手もいない俺は、さっさと上がり、テーブル席で2人を待っていた。……きっと、女子風呂では恋ばなで盛り上がってんだろうな。ジャンヌが平気で猥談するやつだと分かったし、ゆんゆんも可愛そうな目に合っているに違いない。

 

「はぁ……何処かにまともで強くて可愛い娘いないかな~」

 

テーブルにもたれ掛かりながら周りの冒険者を見る。どこを見ても男、男、男……まぁ当然か。この世界で冒険者なんてやるやつは世紀末の格闘家みたいな実力に自信があるやつらだ。お洒落な可愛い娘なんているはずもない。

 

「ふっふっふっ、私をお呼びですか?」

 

振り向くと背丈の小さい黒髪の魔女っぽいロリッ娘が立っていた。服装は丈が短くていかにもパンツが見えそうな赤い服に、魔法使いの象徴とも言えるとんがり帽子をかぶっている。

 

「はぁ~……何処かに美人で常識のあるお姉さんはいないかな~……」

「おい、何故私を無視した挙げ句、要望が変わっているのか聞こうじゃないか?」

 

見るからに頭のおかしそうなロリッ娘が胸ぐらを掴んできた。おい、やめろ。俺に少女趣味はないんだよ。

 

「なんだよ、俺は迷子センターじゃないぞ?子供はお家にかえーー」

「なんなんですかこの人!?初対面のレディーに対して失礼じゃないですか!!?」

「その失礼な人に何のようだよ?」

「うっ……その返し方はいまいち腑に落ちないのですが。コホン、良かったら私とパーティーをーー」

「お姉さん、シュワシュワ一杯!」

「なっ!?」

 

華麗にスルーし、お姉さんの方へと向きやる。だが、それで完全に火が着いたのか今度は後ろから羽交い締めしてきやがった。

 

「いててててて!!!?おい、やめろ!ロリッ娘に襲われるぅぅぅ!!!」

「そのロリッ娘というのをやめてもらおうか!私はこう見えて14歳で立派な大人のレディーですよ!!」

「何が大人のレディーだ、ただ背伸びしてるロリじゃねぇか!?あ、やめろ!!絞まってるぅぅぅ!!!」

 

やばい、本格的にやばぁい!酸素が足りなくなってきた。慎ましやかな胸部の感触に浸る間など無く、秒単位で俺の意識が消えかけてる。

 

「さぁ、認めるのです!立派なレディーだと!!」

「うぐっ……ペッタンコロリ」

「むんっ!!!」

「ひでぶ!!!」

 

更に力込めやがった。おい、マジでやめろよ。ロリのくせしてどんだけ力強いんだよ。

 

「あんた、幼女趣味でもあるの?」

 

と、そこに風呂上がりの干物女……じゃなくて、ジャンヌが戻ってきた。

よし、この際誰でもいい。助けてくれ、頼むから。後で柿ピー奢るから。

 

「む?お仲間ですか……?」

「そうそう。もうお仲間は間に合ってますぅ。どうしてもというなら、そこのドS聖女とぼっち少女を説得するんだな」

「いんじゃない?」

「即答!?なんでだよ、お前だって色物だらけなパーティーとか嫌だろ?」

「カズマ、あんたは私のことをまだ分かっていないようだから教えてあげる。……楽して稼いだお金で飲み明かす、これこそ干物女である秘訣なのよ」

「お前……つまり仲間増やして楽したいだけだろ。困るぞ、お前はウチの主戦力だ。いわば企業の中枢を担っているんだぞ」

「そして使い潰された社員は日に日に病んでいき、果ては鬱になり、結局駄目になる。つまり、最初から頑張るだけ損なのよ。適度に部下を使って楽をする。これこそが長寿の秘訣なのよ」

 

こいつ、真面目になに語りだしてんの?なに、干物妹う◯るちゃん?あの兄妹で足して割った感じの性格してんな。社畜精神を兼ね備えた干物女とか……そんなキャラじゃねぇだろ。そもそも長寿もなにも前世は19歳で亡くなってたろ。永遠の19歳、見た目は聖女、頭脳は社畜、その名はキャラ崩壊ジャンヌちゃん。

 

「め、めぐみん……?」

「ん?ゆんゆん、知り合いか?」

「はい。あの……今朝言っていた友達です」

「「「友達?」」」

「って、おい。なんでお前まで反応するんだよ」

「いえ、一体誰のことを指して友達と言ったのか疑問に思いまして」

「え?私達、友達……だよね?」

 

何故か目線をそらすめぐみん。やめてくれ、ゆんゆんが涙目になってるから。肩が震えてるから。

 

「自称ライバル……の間違いでは?」

「うわああああぁぁぁぁぁん!!!ひどい、ひどいよぉぉぉぉぉ!!!友達と思ってたのは私だけなの!!?」

「あ……えっと、あ、はい。そういえば友達でしたね、私達」

「そういえば!!?もはや投げやりじゃない!!?」

 

ついに号泣会見を始めたゆんゆん。誰一人として彼女に助け船を出してやれないのだ、どうしようもない。ぼっちに下手な同情や情けは逆効果だ。ここは、思いっきり泣かせてあげよう。そして、そのあとは安定の宴会タイムだ。

「それで、パーティーに入りたいとか言ってたけど……真面目に?」

「ええ、もちろんです!自慢ではないですが、私はこの街随一のアークウィザード。火力において私の右に出るものなどいません!!」

「マジで!!?よし、じゃあ頼む。是非とも入ってくれ。ゆんゆんとも知り合いみたいだし、上手くやってくれるとなお助かる」

「何か押し付けられた気がするのですが……いいでしょう!泥舟にのったつもりでいると良いでしょう」

 

泥舟?沈没しそうだな、おい。

めぐみんをパーティーに迎えた俺達。実力は本人いわく俺TUEEEEEEE!!!状態らしいので心配は要らんだろう…………たぶん。

 

 

 

翌日、めぐみんを交えてクエストへと向かった。

クエスト内容は初心者殺しの討伐という、駆け出し冒険者連中には少々荷が重い相手だ。しかし、仮にも俺達はアクセルでは名が売れだした期待のルーキーズだ。負けてはいられない。

 

「ようし、作戦を伝えるぞ」

「作戦プラン何て考えても無駄よ。出てきたら突き殺す。離れた場所で発見したら炎で焼き殺す。二者択一じゃない」

「おい、お前働きたくないみたいなこと言っておいて一番危険なポジ独占してるけど大丈夫か?なに、ツンデレ?」

「能率の問題よ。……べ、別にあんたらに危害が及ばないようにとかじゃないから。全然関係ないから」

 

おや?ジャンヌがデレた。

 

「ジャンヌさん、私達の身を案じて……。ありがとうございます。私もジャンヌさんの足手まといにならないよう頑張ります!」

「……は?馬鹿じゃないの。誰もそんなこと言ってないわよ。能率の問題って言ったでしょ?自分の身の保身のためよ」

「そんな事言って…………本当は日頃ゆんゆんに奢って貰ってるからちょっとは貸し借りとか罪悪感とか感じてるんだろ?」

「ば、馬鹿じゃないの!?別にあんた達の為じゃないんだからね!!?これは……そう、あれよ。ケジメよ」

 

おやおや、ジャンヌさん?確実にデレてますよ?実は素直に好意を向けられることに弱いのか?なんだよ、冗談でも誉め続ければ言うこときいてくれそうじゃん。

顔真っ赤なジャンヌを筆頭に森を突き進む。やたらと嬉しそうなゆんゆん。ことある事に俺とジャンヌに交互に「頑張りましょうね」と、会話を持ちかけてくる。

めぐみんはと言えば……。

 

「悪いな、ジャンヌが無双してるから何にもする事なさそうだ」

「いえ、構いませんよ。私は最高のシチュエーションで戦いたいのです。ふふふ、紅魔の血がたぎります」

(ああ、ちょっと頭の痛い娘なんだな……)

 

よく分からんが、平常運転らしい。

 

「なぁ、ゆんゆん。めぐみんって、どんな娘なんだ?」

「えっ?えっと……えっと、とてもいい娘ですよ?」

「OK、よくわかった」

 

どうやらこのぼっち、生まれてこのかたまともな友達に巡り会えず、精神まで拗らせたようだ。友達紹介しようにも言葉が思い付かず、こんなあからさまにやばそうな娘をとてもいい娘だと言う。

世界って広いな~。と、不覚にもそう思った。

 

「カズマ、あんたやっぱり幼女趣味でもあるの?」

「……は?いや、なんでだよ?」

「端から見たら両手に少女を侍らせてるようにしか見えないわよ」

「べ、別にそんなんじゃねぇから!?」

「う、うん……そうですよ。ジャンヌさん?」

「よ、幼女…………!?」

 

お二方も揃って反応するが、めぐみんは幼女という単語にショックを受けてるようだ。まぁ、体系的にそう見えなくもないが……ダイレクト過ぎるだろ。相変わらず容赦無いな。

「……ん?おい、敵感知に反応した。近くにいるぞ」

「そう」

 

ジャンヌは手短に応えると、小さな声でスキルを唱えた。

 

『竜の魔女EX』

 

パーティー全体の攻撃力を底上げするバフスキルだ。あくまでも使用するのはジャンヌ、マスターである俺は魔力消費はない。だが、ジャンヌの魔力が極端に減ったり、損傷を受けた場合は一部俺の魔力が気力ごと持っていかれるらしい。

 

『激流火葬』

 

ジャンヌがそう唱えると、離れたところにいた初心者殺しという虎みたいな獣に灼熱の炎が襲いかかった。暫くの間悶えると、倒れてピクリとも動かなくなった。

ちなみに、先のスキルも攻撃タイプの固有スキルで、俺の様な冒険者みたく、同じようにスキルポイントで覚えれるようになるらしい。

 

「流石だなジャンヌ。とても干物女とは思えないぞ。社畜も顔負けの働きようだ」

「はぁ?倒さなきゃ金が貰えないでしょうが。あんたも盗賊スキルの敵感知ばっかりじゃなくて、攻撃スキルも使いなさいよ。冒険者といよりもアサシンの方が似合ってるカズマさん?」

「よ、余計なお世話だ!おまえ~、ちょっと顔が美人でスタイルよくて強いからって調子のんなよ~!?」

「別に調子のってないわよ。というか、あんた、私のことスタイルがいい美人って…………へ、へぇ~。そういう風に見てたの?ま、まぁ……別にいいけど。……………………美人、か」

 

あ、やばい。ちょっと、いやかなり恥ずかしくなってきた!!!何で言葉の弾みであんなこと言っちゃったかな、何か気まずい。ジャンヌが綺麗なジャンヌになってる。誰だよお前、本当にオルタか?

 

「へぇ~……カズマさんって、ジャンヌさんみたいなドS美人が好みなんですね。へぇー」

 

怖い。ちょっと怖いぞこの娘。何でいきなり無表情になってんの?何で最後棒読みなんだ?俺がなんか悪いことした?せいぜい酒の席で間違ってゆんゆんのシュワシュワ飲んで間接キスぐらいしかしてな……おっと、相当悪いですねこれ。普通の女子なら「キモッ」とか「ないわー」とか言われてそう。

 

「あの、仲睦まじい所悪いのですが……囲まれてますよ?」

「えっ?」

 

2人の会話に気をとられていて全く気づかなかったが、めぐみんの言うとおり前後左右に囲まれていた。……は?やばくね?

 

「一人、二人、三人…………一人囮がたりな~い」

「なっ!?この人囮の数合わせしてますよ!!?」

「くっ、妖怪イチタリナイ……!!?」

「なんの話ですか!!?」

 

と、冗談はさておき。ここからが俺達スーパールーキーズの本領発揮だ。

 

『ライトオブセイバー!』

 

まずはゆんゆんが先陣を切る。まるで鞭のように伸びる光の剣で正面から真っ二つに切り裂く。赤い鮮血を撒き散らしながら崩れ落ちる初心者殺し……おえ、グロすぎ。やばいんだけど、内蔵とか丸見え。

 

『自己改造EX』

 

再びジャンヌがスキルを発動した。これは自分単体に攻撃補正をかけるものだ。すぐさま距離を詰め、旗の先端で突き殺す。……おい、マジでグロいって。急所狙う必要はあるけど、だからって眼球から脳を貫かなくてもいいだろうが。夢に出そう……。

さて、次は俺だな……

 

『…………潜伏』

「「「っ!!!?」」」

 

盗賊用スキル、潜伏。気配を絶つことで身を潜める。何でここで発動させたかって?…………だって、危ないじゃん?なんだかんだ言って俺だけ最弱職の冒険者だし。ここは、仲間が倒し終わるまで隠れるに限る。

 

「あんたねぇ、男なんだからもう少しシャキッとしなさいよ!隠れてこそこそするなんて、いよいよアサシンに身をやつしたって訳!?」

「カズマさん、サイテーです……」

「あの、どうせなら私も一緒に潜伏を発動させてほしかっーーって、だ、だれかー!?こっちに着てます!やばいです、殺されます!!」

 

みんな好き放題言ってくれやがって……って、うん?なんでめぐみんは反撃しないんだ?仮にもゆんゆんと同じアークウィザードだろ?

俺は、仕方なく潜伏を解除してめぐみんの方へと向かう。

 

 

「お、お助けをっ!!」

「あ~めっちゃ怖い。でも、ヒロインのピンチに駆け付けるのが主人公の役目だもんな」

 

装備していた短剣を構え、正面から突っ込んでくる初心者殺しに向ける。そして、覚えたてのあるスキルを発動させた。

 

『クリエイトアース、からのバインド!』

 

ゆんゆんのライトオブセイバーみたく、まずはクリエイトアースで鞭状に土を生成して形作る。そして、バインドによりその土に捕縛能力を与えてやるわけだ。本当なら、低レベル冒険者の俺がこんな無駄遣いは良くないのだが、相手が相手だけに仕方ない。

 

「よっし、後は喉を切ってやるだけ……だけど、重いなぁ。嫌だな~、動物愛護法に引っ掛からないかな?」

「さっさと殺りなさいよ!?」

 

それから一悶着あったが、どうにかクエストを達成した。

 

「いや~、俺大活躍だったな?」

「そうですねー、すごかったですねー」

「潜伏しなきゃ素直に誉めてあげて良かったけど。正直いってヒールで踏んでやろうかと思ったわ」

 

うっ、仲間からの辛辣なお言葉が……。

 

「私は助けてもらったので、素直にお礼を言いますよ。ありがとうごさいます、カズマ」

「おお、ロリッ娘は話がわかるな。そうそう、こういう素直なところがお前らに足りないんだぞ?わかるか、ジャンヌ?」

「死ねば?」

「ひどっ!!?」

 

本当に容赦無いな。ちょっとデレたと思ったらこれですわ。ゆんゆんも妙に冷たいし、俺の味方は頭のおかしい娘だけみたいだ。世界はいつだって俺に冷たい。ニートしかり、自宅警備員しかり、冒険者しかり、形見の狭い事だ。

 

「ところで、どうしてあのとき魔法を使わなかったんだ?」

「ああ、その事ですか……」

 

めぐみんは悟った顔でこう語った。

 

「私は爆裂魔法をこよなく愛する者。爆裂魔法だけを愛し、止まない者。爆裂魔法以外の魔法は使えませんし、使う気もありません」

「あ、そう…………なの?ていうか、え?使えないんじゃなく、使う気がないと?」

「はい」

「………………………………ゆんゆん、お前の友達どうなってんの?」

「あの、私に聞かれても困ります……どういうことなの、めぐみん?」

「いった通りですが?」

 

なにこの子、言ってやったぜといわんばかりにどや顔してるんだけど。頭が痛いだけに飽きたらず性能もポンコツとかどうなってんの?

 

「カズマ」

「な、なんだよ……?」

 

めぐみんは、俺と向かい合った。そして、満面の笑みを浮かべた。

 

「これからよろしくお願いしますね?」

 

え?なにこの娘、普通に可愛い。頭のおかしさと痛いところが無ければ普通に美少女かもしれない。

俺は、差しのべられた手に手を重ね、答えを返した。

 

「こっちこそよろしくな?」

「はい!」

「…………で、普通の魔法は覚える気はーーー」

「無いです」

 

くっ、強情な。

なんやかんやで俺達のパーティーにまた一人加わった。使いどころを考えれば十分に戦力にはなると思うが、やはり行く末が不安になる。

「………………他のまーー」

「嫌です」

「……………………」

 

訂正。

不安しかない。

 

 

 




どうにか字数を増やしたいのですが、そうすると投稿が遅くなる…………なので、適当な文字数で、話のキリが良くなったら投稿します。(適当ですみません)

ついでに、次回予告のあれっぽいやつ。書いてみました。


こんにちは、ジャンヌよ。
今日も活躍してやったわ。それはもう、働き潰される社畜のようーーコホン、まぁこの話はいいわ。
仕事終わりの酒は最高ね。この至福の一時を邪魔するやつはヒールで踏んでやるわ。…………は?ご褒美です?ちょ、 なにあんた、被虐趣味でもあるの?カズマっていうニートマスターだけに飽きたらず、私の周りには変態が多いわね。

……え?私も大概ですって?
………………ぶっ殺!!!

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