異世界転生したカズマは召喚師になりました。   作:お前のターン

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タイトルに特に深い意味は無いです。

無敵と思われたデュラハンですが、この度御臨終します。しかもなんとあの方が活躍します…………ぼっち、恐ろしい子!




芸術は…………爆発だ!!!

「では、終わりにしようか…………!」

 

無情にも切り捨てられた仲間達。対するデュラハンは腹に大きな傷を負い、左腕を切られ重傷なのだが、到底俺とめぐみんだけでは勝てる気がしない。

 

「そんな、クリスまで…………!?」

「逃げて、カズマ…………」

「そんな事言ったって…………」

 

目の前にはデュラハン。後ろにはアンデットの大軍が迫っている。仮に爆裂魔法でアンデットは処理出来たとして、目の前のあいつをどうする?逃げれる気すらしない。

 

『魔眼』

 

兜を投げた。

時が濃縮したように思考を回転させる。

あれが発動すれば近接戦闘では絶対に勝てない。攻撃はもちろん、避けることすらままならない。二人を置いて逃げれば辛うじて逃げ切れる可能性はある。だが、それでは何の解決にもならない。

ならば宝具で迎え撃つか、とも考えたが今の自分の技量では必ず競り負ける。ダメージすら望めない。

 

「行くぞ」

 

時が動き出す。

デュラハンは、踏み込むと同時に一瞬で距離を詰めた。剣が振り下ろされる。

 

「はぁ!」

「くっ…………!」

 

二つの剣で迎え撃つ。だが、それでも威力は殺しきれない。骨が軋む。肉がわめく。血が沸き上がる。体の至る所が悲鳴を上げる。

 

(死ぬってのか、ここで?)

 

やはり駄目だった。受け止める事はおろか、ここから一歩も動けない。これ以上抵抗出来ないのだ。

 

「消えろ!!!」

「うっ!?」

 

剣を振り抜かれ、吹き飛ばされた。

 

「…………くそ、やっぱり駄目なのか」

「どうした、先程までの威勢は消えたか?ならば、早々に死ぬがいい。貴様は俺の相手に相応しくないのだから」

 

体は動く。魔力も残っている。けれど、戦う術が無い。

 

「…………ごめん、みんな」

「謝らないで下さい、カズマさん」

「ゆんゆん…………?」

 

振り向けば、そこにはゆんゆんが立っていた。彼女は既にぼろぼろだった。恐らくここに来るまでに相当数のアンデットを倒したのだろう。

 

「あの時の娘か。だが、貴様が来たところでどうなる?」

「あなたを倒します」

死の雷(デス・ライトニング)

 

ゆんゆんがスキルを唱えると、右手に黒い電撃の槍が生成された。

 

「なんだ、それは…………?」

「ちょっとした裏技ですよ。あなたが充満させていた障気を使わせてもらいました」

「…………何?」

 

今更ながらデュラハンの発生させた障気が無くなっている事に気がついた。ゆんゆんの言っている事はつまり…………。

 

「これは、あなたの障気と『ライトニング』の魔法を合わせた物です。残存魔力も少ないので利用させてもらいました」

「貴様、正気か?地獄の障気を取り入れるなど、人体には猛毒のはずだ」

「以前、友達を作るた―――コホン、悪魔を使役する為にそういった系統の魔法に手を出した事があるんです。なので、耐性はあります」

「「…………」」

 

二つの意味で驚愕の事実を淡々と述べるゆんゆん。

この子、友達が作れないからって悪魔を友達にしようとしていたのか…………?

 

「…………友達作りの為に悪魔を?」

「ち、違います!悪魔を使役する為にです!!」

 

あ、やっぱり聞いちゃう?デュラハンさん、そこは触れないであげて。ゆんゆんはガラスのハートだから、触れただけで亀裂が入っちゃうから。

 

「と、とにかく!この裏魔法であなたを倒します!!」

「ほぅ?またけったいな物を使ってくるものだな。どれ、俺の剣技についてこられるか…………」

 

じわりじわりと詰め寄るデュラハン。

そして、兜を空中へと投げた。

 

「試してみようか!!!」

「えい」

「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

剣と槍でぶつかり合うのかと思ったんだが…………ゆんゆんは迷うこと無く兜へと槍を投げた。

案の定、直撃した兜…………もとい、デュラハンの頭は黒焦げで落ちてきた。

 

「き、貴様!?空気を読まんか!!ここは普通剣でつばずりあう場面だろうが!!?」

「以前、カズマさんが言ってました。『弱点は容赦無く攻めろ。空気を読むのは二の次だ』って」

「お前…………!?」

 

いやいやいや!?確かに言ったけど、そこまで邪険にしなくてもいいじゃん!?馬鹿みたいに空気読んで相手を待つ必要なんて無いじゃん?なら、情け容赦なく攻めるだろ、普通。

 

「くっ、『魔眼』を封じた所で―――」

闇炎渦(ダークネス・インフェルノ)

「ひぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

恐ろしいまでの熱気と色を帯びた豪炎がデュラハンを襲った。本来ならば、赤と黄色の超高温なのだが、黒と少しばかりの紫色の炎が発生した。焼ける、というよりも内から溶かす様な感じで肉体を焦がしていた。

 

「馬鹿な!?何故このような低レベルのアークウィザードこどきに!!?」

「いえ、これはほとんどあなたの魔力ですよ?自分自身の魔力にやられているんです」

「くっ、そういうことか…………!」

「すっげぇ…………!」

 

ゆんゆんが圧倒している。本来ならば、魔力は枯渇しまともに戦えないだけじゃなく、レベル差でダメージすら通りづらい筈なのに、それを敵の力を利用して覆した。

 

「だが、何発も打てる訳が無い!その内貴様の肉体を侵食するはずだ!!」

「…………バレてましたか。確かに限度はあります、ですが―――」

「私がいるという事を忘れないでもらおうか!」

「めぐみん…………!」

「何をする気だ…………!?」

 

めぐみんが詠唱を始めると共に、ゆんゆんは後ろへと回り魔力を流し始めた。

 

「私は紅魔族随一の天才!この程度の魔力、我が糧として従えて見せましょう!!!」

「まさか…………!!?」

 

いまのめぐみんの言葉で直感的にわかった。

二人がやろうとしている事。それは、ゆんゆんをゲートとして障気を魔力として消化した物をめぐみんへと送り込み、その力で爆裂魔法を撃つという事だ。

 

「させん、させんぞぉ!!!」

「ふひっ!」

「ぬっ!?離せ、離さんかこの変態が!!!?」

「なんという罵倒…………!」

 

まさかの瀕死と思われたダクネスがデュラハンの足にしがみついている。ここに来てあの愉悦に浸る顔は流石変態と言う他あるまい。

 

「よし、俺も…………!」

『スティール!』

 

奴の剣を奪えば上出来、兜でもと……思ったのだが。

 

「なんだこれ…………?」

「うっ…………カズマ、流石にこの状況で私の下着を取るのはちょっと」

 

変態のブラだった。

 

「ち、違うわざとじゃない!!!くそ、もう一回だ!!!」

「ぬぅ…………!?」

「よし、成功―――って、重っ!!!」

 

今度こそは成功した。一瞬だけ持とうとしたが重さで地面に突き刺さった。危うく腕とか脚とか持っていかれるところだった。

 

「貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

最後の悪足掻きか、障気を全開で放出し始めた。だが、それも少し遅かった。

 

「準備完了です!」

「よし、いまだクリス!」

『疾風迅雷』

「何ぃ!?」

 

最後の魔力を振り絞り、ダクネスと共に瞬間移動した。

 

「我が力、思いしるがいい!!!」

「めぐみん、私も力を貸してる―――」

 

『エクスプロージョン!!!』

 

ゆんゆんが何か言いかけたが、それを無視してめぐみんは爆裂魔法を発動した。

今度の爆裂魔法はレベルが違った。今までも広範囲だったが、今回のそれは天を衝く様に遥か上空まで抉った。一瞬、巻き込まれて死ぬかもと思ったが、ゆんゆんが俺達の前で障壁みたいな防御スキルを使ってくれたので助かった。まぁ、元々めぐみんが機転を利かして範囲を絞っていたらしいが。

 

「こほっ、こほっ…………!」

「凄っ…………地形が変わってる」

 

煙が晴れると、そこにはデュラハンの姿はなく、大地は抉られ地形が変わっていた。

 

「はぁ…………満足、でぇす」

 

そう言うと、めぐみんはぶっ倒れた。

 

「ねぇ、めぐみん?最後の台詞、あえて私の事を除外しなかった?あの魔法はあくまで私とめぐみんの合体魔法なのよ?」

「なにを細かいことを言っているのですか?これだからぼっちは」

「それは関係ないでしょ!?」

 

この二人は相変わらずのようだ。戦いが終わった直後に口喧嘩を始めるなんて…………本当に仲が良い。やっぱり百合かも。

 

「それにしても、本当に助かったよ。二人とも」

「い、いえ……!カズマさんが指揮しながら戦ってくれたおかげです!」

「いや、皆のおかげさ」

 

俺がそう言うと、皆が笑みを溢した。

流石俺、ヒーローみたいな存在感を放ってる…………気がする。正直言うと、ちょっと恥ずかしい。

 

「と、ところで…………カズマさん」

「ん?どうした、ゆんゆん?」

 

なにやらもぞもぞしている。言葉も詰まり詰まりだし、何か言いにくい事でも?

 

「ジャンヌさんから『この戦いが終わったらカズマが抱きたいって言ってた』と聞いたのですが…………」

「ふぁ!?」

「へぇ~。キミもすみにおけないな」

 

なんかとんでもない事になってた。

あいつ、なんつー嘘を吹いてくれてんの?それを間に受けるゆんゆんもどうかと思うが…………ていうか、俺の知らない所で死亡フラグが建てられていたとは。

 

「それ、ジャンヌが勝手に言ってるだけだぞ?」

「え!?そうだったんですか…………」

「もしかして、本気にしてたのか……?」

「べ、べべべべつにそんな事ありませんから!!?」

(わかりやすいなぁ~……)

 

ああ、可愛い。周りに誰も居なければ本当に抱きしめてしまいたい。しかし、そんな事をしている場合でもなく、皆の所へ戻って仲間の安否確認しなければならない。怪我人もいることだしな。

その後、町に戻った俺達は戦勝を報告した。その過程で失った命は幸いにも無かったそうだ。受付嬢曰く、どこぞのクソイケメンが後衛で頑張ってくれたおかげだったらしい。まぁ、当然敵将を討ち取った俺達の方が手柄は大きかった訳で…………皆から大袈裟なくらいに褒められた。

そして翌日、俺達はギルドへと召集がかかった。

 

「一体、何の用だ…………?」

 

昨日の疲れでほとんど寝て過ごしていた為に意識が完全に覚醒していない。正直、夜までだらだら寝ていたい。

 

「あ、カズマさん」

「おう、ゆんゆんとめぐみんか。早いな」

「カズマが寝過ごしただけでしょう。私は特別早いわけではありませんよ。ゆんゆんはカズマが早く来ないかそわそわしていた様でしたが」

「め、めぐみん!?どうしてサラッとばらしてほしくない事を言うの!?」

「おや、図星でしたか」

「お前ら、百合はほどほどにしておけよ」

「「違います!!!」」

 

二人の声が頭に響く。思わず耳を塞いでしまう。しかしながらその後もガヤガヤ言ってくる。正直うるさいからやめて欲しいし言い訳がましい。今日からこいつらを『百ん百ん』と『百合みん』と命名してやろうか。

 

「聞いているのですか!?」

「ん?あー、聞きたくない。んじゃ、ギルドに入るか」

「ぐぬぬ……!何と腹立つ態度なのでしょう!」

 

ちなみに、ジャンヌとネロは現在、現界していない。重傷を負った事や魔力が枯渇していたこともあり、しばらくは出てこれそうにない。

仕方なく、この五月蝿い二人の幼女を宥めながらもどーどーと接待してやる。すると、それが逆に勘に触ったのか左右に服を引っ張り始めた。

 

「カズマ、そろそろ私達の関係について認識を改めるべきです!」

「そうだな~。仲の良い友達から恋人へ、禁断の愛ってやつか…………ふっ」

「むっか…………!!!」

「カズマさん。私達はライバル同士なんですよ?そういう関係じゃありませんよ」

「いえ、それも違いますが?」

「酷い!!?」

「うんうん、お前ら結婚しちまえよ」

「「嫌です!!!」」

 

ほらみろ、やっぱり息ぴったし仲良し百合良しだ。

流石にこれ以上からかうと収集がつかなくなりそうなので、適度な無視と曖昧な返事を返しながらギルドの扉を開いた。

 

「ようやく来たかカズマ!!!」

「よし帰ろう今すぐ帰ろう直ちに帰ろう」

 

何と扉の先に待っていたのは変態だった。しかも何故か興奮してた。

 

「なっ!?ま、待て!!今回はそういう要件ではない!!!」

「…………今回、は?」

「ああ、そうだ」

 

今回だけか…………はぁ。

 

「ようやくいらっしゃいましたね、カズマさん」

「えっと、急な呼び出しって…………?」

 

受付嬢が一枚の小切手を渡してきた。

 

「ん?……………………こ、これは!!!?」

「え?ど、どうしたんですか!?」

「ゆ、ゆゆゆゆゆんんゆんんんん!!お、落ち、落ち着いてこれを見てみろ!!!」

「とりあえずカズマさんから落ち着いて下さい!」

 

俺は抑えきれない振れを感じながら、ゆんゆんへと渡した。

 

「……………………これは、夢ですか?」

「いいえ、夢ではありませんよ」

 

にっこりと微笑む受付嬢。

 

「冒険者佐藤カズマ一行に、魔王軍幹部討伐の報償金として3億エリスを与えます!」

「いよっ…………しゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

俺の魂の叫びが木霊した。

 

「マジかよ!?奢れよカズマ!!」

「カズマ様~、おごって!」

「カズマ!一杯やろうぜ!」

 

やりました、やりましたわこれ。

魔王軍幹部討伐、からの莫大な富獲得。王道ファンタジー世界らしいベタかつ面倒くさい展開を乗り越え、ついに自由の羽を手にいれた。

 

「…………もう、楽に生きようかな」

「え?何を言っているのですか?これからも数多の強敵や他の魔王軍幹部も倒していき、魔王をも討伐するに決まっているではないですか?」

「うん?お前が何いってんの?俺に死ににいけと?嫌だよ、俺は適当なクエストで小遣い稼ぎながら生きていくんだよ」

 

血気盛んな野郎共のもとへと行き、高らかに酒瓶をイッキ飲みする。

 

「お前ら!今日は俺の奢りだ!!飲め飲め、飲めや~い!!!」

「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

それに呼応したかのように皆酒を頼み始める。そして、俺を胴上げし始めた。

 

「いやっほぅー!今日から俺は、金持ちだぜ!!」

「カ・ズ・マ!!!カ・ズ・マ!!!カ・ズ・マ!!!」

 

カズマコール入りました。

もはや完全に宴会ムードに入ったギルド。以前の俺の噂も何処へやらと、みんなと笑いあいながら飲み明かした。あの美人受付嬢すら俺に微笑んでくれていた。

 

(ああ、これが讃えられると言うことか…………!)

 

望んでいた展開だったとは言えないが、これはこれで良かったのかもしれない。何度か危ない場面もあったが、頼もしい仲間達に支えられここまでこれた。

よし、なので今日から楽に生きよう!

 

「カズマ!例の一発芸やってくれよ!!」

「え~?しょうがねぇなぁ!!」

 

手をわきわきと動かしながら用意されたハンカチへとスキルを放つ。

 

『スティール!』

 

すると、俺の手のひらにはハンカチ…………ではなく、ゆんゆんのパンツが納められた。

 

「「「ひやっはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

同時にむさ苦しい男共から歓声が上がった。

 

「ぬふふ、また可愛いもんとっちまった―――って、どうしたゆんゆん?」

「…………」

 

何故か俯いて黙ってらっしゃる。泣いているのかとも思ったがそうでもないみたいだ。

 

「あの~、ゆんゆんさん?聞いてます?」

「…………して」

「え?」

「どうしてカズマさんはいつまでも私に振り向いてくれないんですか~~~!!!!!」

「うおっ!?や、やめっ、やめろゆんゆん!揺らすな、苦しい!!絞まってる、絞まってるから!!!」

 

突如発狂して襲いかかってきた。

 

「どうしていつも他の人ばかりにセクハラするんですか!!?どうしてこういう時だけ私にして人前で晒すんですか!!?するならいっそ最後までしてくださいよ!!!めぐみんにと言わず、私に聖剣エクスカリバー射れて下さいよ!!!!」

「待てええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!取り敢えず落ち着け!!!!」

「どうしてダクネスさんは犯して私には一切手を出さないんですか!?胸ですか!!?あのおっきな胸がいいんですか!!?」

「お願いだからやめてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!後、俺を勝手に犯罪者にするなぁぁぁぁぁぁぁ!!!確かに胸は大きい方がいいけど!!!」

 

何をとち狂ったか、ゆんゆんは猥談を始めた。それも、俺の風評被害も交えてだ。これは、是が非でも止めねば俺とゆんゆんが社会的に死ぬる。

 

「おまっ、急にどうしたんだよ!?それに何か酒臭い…………って、まさか!?」

 

よくみると、ゆんゆんの表情か少しおかしい。まず顔が赤い。恥ずかしいというのもあるかもしれないが、どちらかというと酒気を帯びている風だ。

何とか止めようとも思ったが、周りは囃し立てる奴らばかりで皆他人事だ。まぁ、野郎共はちょろっと「見せつけやがって……!」とか呟いてる輩もいるが。それはいいとして、めぐみんも飲めないくせして酒に手を出していた。

 

「おい、お前まで飲むなよ!ゆんゆんでさえこの惨状なんだぞ、お前までこうなったら俺は見捨てるぞ!!」

「何を言うんですか。私は酒ごときに負けるわけ―――」

 

俺の忠告を無視してシュワシュワを飲み干すめぐみん。

 

「負ける…………わけ…………………………………………………………………………………………ひっく」

 

おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?何か嫌な予感がするんだが!!?全速力で逃げたいんだが!!!?

 

「だぁいひゃい、かじゅまはわたひの事を子供とみてまふね?それぇが間違いなんでしゅよ」

「…………はぁ?」

「いいでひゅか?かじゅまはもっと、わたひのことをレディとひてせっしゅるべきなんでしゅよ?」

「うん、いい子だから寝ようか!?」

「わたひのはなしきいてまひたかー!?」

 

滑舌が回ってないうえにしょうもないから尚更聞きたくねー。

何でどいつもこいつも酔ってんの?俺の話は無視ですか?帰っていいかな、帰りたい。それで、この金で豪遊したい。

 

「おうおう、カズマの野郎、ロリッ子を侍らせてやがる!ロリコンだあいつ!!」

「ロリコンにカズマ、ロリマだロリマ!!」

「おうロリマ!こんどは誰に手を出すんだ?盗賊の嬢ちゃんか!?」

「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ちょっと表でろやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ついに俺にまで風評被害が来ましたわ。

まったく、これだから世紀末格闘家共は…………下ネタ大好き変態野郎ばっかで困る。しかも、その頂点に君臨するのが俺だと思われているのが尚悪い。俺がいつそんな事をしたって言うんだ。そんな根も葉もない噂を立てた輩にはいつか復讐してやる。公衆でスティールの刑に処す。

 

「カズマ、お前あの姉ちゃん狙ってたんじゃねのか?ほら、あの胸のでかい銀髪の」

「それはない。つうか、狙ってたのはお前だろ?」

「がははは!俺みてぇなおっさんに狙えるたまかよ!?以外とあちらさんはお前に気があるかも知れねぇぞ?」

「お前、男に気があるやつがそいつに向かって『靴なめなさい』って言うと思うか?」

「ご褒美じゃねぇか?」

「お前に聞いた俺が馬鹿だった」

 

こんな調子で皆が好き勝手言い放題だった。特に俺に関する猥談が後を絶たない…………。

 

「おいカズマ!お前、ついにあのダクネスと禁断の遊びをしたって聞いたが、何したんだ?一線越えたのか?」

「馬鹿か?俺があの変態なんかと―――って、待てゆんゆん!?」

「カズマさんカズマさん?今の話は本当ですか?嘘ですよね?まさか私のカズマさんが他の女とイチャコラするだけに飽きたらず手を出すなんて事はしませんよね?ないですよね?もし、仮に、万が一、億が一の可能性でそんな事をしたと分かったならば私はカズマさんを許すことは出来ませんよ?まず間違いなくあれをもぎますから。容赦なく攻めますよ?だって、カズマさんには私がいるんですから。私以外の女は必要無いんです。話す必要も、目を向ける必要も、同じ空気を吸う必要すら無いんです。私だけ見て、感じて、思っていればいいんです。カズマさんは誰にも渡しませんよ?誰にも。以前、キースさんとか言うゴミ物質と顔を近づけて迫ってましたが、あれも駄目ですよ?前までは目の保養としては受け入れてましたが、今となっては例え御剣さんだろうと老若男女許可しません。私だけをみて、私色に染まって下さい。その分私もカズマさんを愛してあげますから。ね?いいですよね?だって、カズマさんは強くて美人で胸の大きい人が好みなんですもんね?全く問題ありませんよね?ふふ、うふふ…………うふふふ腐腐腐腐腐腐腐腐腐腐腐腐。カズマさんは私だけのもの。わたし、だけの。例えめぐみんだろうとジャンヌさんだろうとネロさんだろうと…………渡しません。カズマさんは、私のものなんですから………………………………………………ね?」

 

物凄く長い呪詛を聞かされた挙げ句、かなり…………いや激しく同意しかねる事を言われたのだが、俺はどうすればいいんだろう?隣にいたはずの野郎はいつの間にか逃げてやがるし、めぐみんは相変わらず酔っ払ったまま五月蝿いし、取り敢えず逃げたい。うん、逃げたい。

 

「ゆんゆん、落ち着け」

「落ちつく?えぇ?何でですかぁ?私はとっても落ち着いてますよ?」

(う~む、これはかなり酔ってらっしゃる。酒と自分にな)

 

さりげなく逃げられない様に服の裾を尋常ならざる力で握り締めている。いまにもこの子の右手が真っ赤に燃えてシャイニングゴットフィンガーを放ちそうだ、俺の精神に。

 

「…………はぁ、どうしてこうなった?」

「それは、君のしてきた事の結果なんじゃないか?」

「御つる…………クソイケメンか」

「わざわざ言い直す必要あるかなそれ!?」

 

ある。大いにあるぞこのクソイケメンが。

 

「んで、さっきのはどういう意味だ?」

「聞いたよ。君が今日に至るまでに行ってきた鬼畜の所業の数々を」

「おい待て、誰に聞いた?」

「ん?知り合いの盗賊の子にだけど?」

 

よし、クリスか。今度あいつと会ったときが楽しみだ、ぐへへへ…………絶対に泣かす。

 

「それで、やはりこの状況は自業自得なんだろうね」

「おい、それはつまり。ゆんゆんとダクネスの病み具合は俺の責任で、めぐみんのあの頭のおかしさと行動は俺のせいだと?」

「あと、銀髪の彼女と飲んで騒ぎまくってギルドを荒らして、ギルドから要注意人物に指定されたのもね」

「べっ、べべべつに彼女じゃねぇし!?つか、それブラックリストだろ!?」

 

勘弁してくれよ…………その内、デ○ノートに名前書かれるんじゃねぇのか? ギルドのプラックリストって…………まさか暗殺リストになったりしないよな?

 

「ははは、まぁそれは大した事じゃないからおいといて」

(何?そうなのか、良かった。マジで金目当てに殺されるか心配したぞ)

「そこの女性方に付きまとわれるのは、君が彼女達に自分のカッコいい姿を見せて惚れさせたからじゃないのかな?さっきのは悪い意味も良い意味も含めて言ったんだよ」

「そうか…………いや、待て。さらっと変態を混ぜるな。断固拒否する」

「そうかい?」

 

ああ、絶対だ。あれは危険だ。よく言うだろ?

混ぜるな危険って。

 

「はは。まぁ何はともあれ、君が元気そうでなによりだよ」

 

そう言うと、手を振って去っていった。

 

「………………滅びろ、イケメン」

「おうカズマ!お前、最近モテてるっ聞いたが、何かの間違いだよな?」

「ダスト…………ふっ、それはどうかな?」

「なにっ?」

 

めぐみんとゆんゆんの肩に手を置き、ニヤリと含み笑いを作る。

 

「ほら、いるだろ?ここに」

「か、カズマさん…………!?」

「まったく…………仕方ないですねカズマは」

 

二人とも、俺にそう言われて嬉しかったのかちょっと顔が赤い。言ってる俺も恥ずかしくなってくる。

 

「………………なんだ、お前ロリコンだったのか、ロリマ」

「「「ぶっ殺!!!」」」

 

三者の意気が重なり、ダストというゴミに制裁を下した。

 

「…………て、てめぇ、カズマ…………容赦はねぇのかよ?」

「許せダスト。俺をロリマ呼ばわりするやつは一人残らず潰さないと俺の気が収まらないんだ」

「ぐっ…………」

 

勝者、俺。

去らばダスト、お前の事は忘れない。たぶん。2日位は覚えとく。

 

(随分と楽しそうね?)

(その声……ジャンヌか?)

(そうよ)

 

体の内から脳に直接響いてきた。これがいわゆる念話というやつか?

 

(それで、どうなのよそっちは)

(デュラハンはめぐみんが倒したから問題なし。まぁ、俺の活躍が以前の所業のせいで揉み消されてるが)

(そう、なら問題無いわね)

 

傷つくなー。サラッと俺の事は流すんだから、少しは心配しろよ。

 

(…………一応聞くけど、今のあんたはどういう心境なの?)

(ん?急に言われてもな…………)

(引きこもりだったあんたが一転、町を救ったパーティのリーダーよ。悪くないんじゃない?)

(そうだな…………悪くない)

 

そう、コレも悪くない。俺の望んだ異世界での生活。

例えるならば…………

 

(ニートが始める異世界労働生活)

(おい!?人の心を読んだ挙げ句変な言い方するなよ!?)

(合ってるじゃない?)

(いや、それでもな?もっといいのがあるだろ?)

(某異世界転生アニメの名前パクる気?)

(すまん。俺が悪かった)

 

ちょっと落ち着こう。こんなしょうもない事で慌てる必要もないだろう。

 

(ぞれで、お前の方はどうなんだよ?)

(ん?あぁ、そうねぇ…………今ようやく6割ってところかしら?)

(そっか…………)

(そうよ)

 

 

どうやらジャンヌが復活する日は遠くは無さそうだ。恐らくネロも。

 

(ところで…………魔王軍幹部討伐の報償金は?)

(ん、ああ、喜べ。3億だとよ?)

(さ、3億!!?3億って言えば、サラリーマンが生涯稼ぐ所得1億6000万のおよそ2倍!!?か、カズマ!絶対にその金には迂闊に手を出さない事よ!いいわね!!?)

(落ち着け!つか、何処情報だよそれ?あと、お前は飲み代が欲しいだけだろ?)

(…………ちっ)

 

こいつも分かりやすいなぁ…………。

 

(と、とにかく!私が戻るまで絶対に荒使いは駄目よ!!いい!!?)

(はいはい…………あ、でも今日はギルドの連中全員に奢りって言ったばかりだ)

(全員火葬しなさい!!!!取り分は減らさせないわよ!!?)

 

こいつの金に対する執着心は一体何処から来るんだ…………?

聖女ジャンヌ、煩悩まるだしなり(笑)

 

(聞こえてるわよ、このロリコン!)

(お前こそ聞いてたのかよ!?)

(べっつにぃ?ロリマとかロリコンとか鬼畜だの聞こえてたっけかしら?)

 

こいつ、全部聞いてやがった……!

よし、こいつにも戻ったらスティールの刑だ。こいつがどんな下着を着けてるか見てやる!そんでもって嗅いでやる。

その後も、俺はジャンヌとワイワイ話していた。はたから見れば一人で考え事しているように見えるだろうが。

 

(…………これだけは一応、言っとくわ)

(……?)

 

最後にジャンヌは、改まった声でこう語った。

 

(私の仲間を守ってくれてありがとう)

(……当然だろ、俺を誰だと思ってるんだ?)

(ふふ、そうね。そうだったわ)

 

思わず微笑が漏れる俺達。

 

(これからもよろしくね、マスター)

 

そう、これが俺の物語。

俺と愉快な仲間達が活躍する物語だ。

 

17歳から始める異世界―――

 

(ニート脱却)

 

生活……………………ふぅ。

 

「いいところで邪魔すんじゃねえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

俺の魂の叫びがギルドに響いた。

 

 

 

 

 

 

 




この度も読んでいただきありがとうございます!

誠に強かったデュラハンさんもカズマ達にかかれば…………という訳で、倒しましたデュラハン。今頃、三途の川でこう言っているでしょう。

『お~い、来いよ!こっち来いよ!!!』

ああ、恐ろしい。

とりあえず一章は終わりという感じですね。
次回からは紅魔の里編に入る予定です…………予定です。
※大事な事なので2回言いました。

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