異世界転生したカズマは召喚師になりました。 作:お前のターン
相も変わらずデュラハンさんは最強やで!
実際のところ、『そんなんチートや、チーターや!!』なデュラハンは幹部の中でもどれくらい強いのかよくわかりません。
警報の後、俺達はネロと合流し正門へと向かった。
「なんだこれ………?」
そこに居たのは、アクセルの町に住む冒険者達。そして、それと向かい合うアンデットの大軍だった。
「来たか、カズマ」
「御剣。これは一体なんだ?」
「デュラハンだよ。彼が大軍を率いて攻めてきたのさ」
「げっ!?…………マジで?」
「ああ」
千里眼スキルで遠くを見ると、馬に乗ったデュラハンが見えた。それも、以前戦った時と比べ物にならないくらいの禍々しいオーラを身に纏って。
見る限りでは数は数百……いや数千か?とにかく戦力差は明白。駆け出しレベルで手に負えるとは思えない。そんな最悪な状況だった。
「カズマ、こうなったらもう総力戦だ。やるしかない」
「そりゃそうだけど…………誰が指揮を執るんだよ?」
「君がやるんだ」
「ひょ?」
「…………頼む。僕が知る限り、この町に君以上に機転が利く人はいない。だからどうか、君が僕達を指揮して欲しい」
「…………」
以外とこのイケメンからの評価が高かった事に素直に驚いた。
俺何かしたっけ?まるで記憶にないんだが、誉められるのは悪くないので素直に受け取っておこう。
いやしかし、それでこんな土壇場に指揮を任されるのはちょっと…………なぁ?
同意を求める意味で後ろにいる仲間に聞いてみた。
「…………どう思う?」
「いんじゃない?あんたなら問題ないと思うわ」
「私もジャンヌさんと同じです」
「私もです」
「うむ。そなたが余達を導くがよい」
「みんな…………」
あぁ…………マジかー。
感動的な場面なんだろうけど、俺の内心分かってる?
いま超絶帰りたい。帰っておねんねしたい。一人くらい反対していいのよ?てか、してくれ。こんなの任されても迷惑なんですががががが。
「佐藤さん、どうか…………どうかお願いします。この町を救って下さい!」
「…………」
今度は受付嬢が頭を下げてお願いしてきた。
このアマ…………例の噂で散々俺の心を抉ったくせに、こんなときだけ調子良くないですかね?俺、なんでも屋じゃないんだけど?なんでもかんでも俺に厄介事押し付けないでくれません?
「けど…………俺なんかでいいのかな?」
「いいじゃねぇか」
「…………機織り職人のおっさん?」
渋い声で割って入ってきたおじさん。
「お前にしか出来ない。なら…………そうだろ?」
この人、なにいってんの?そもそも冒険者ですらないくせに、なんでこんな危険な所まで出っ張ってるんだよ。
「古い言い伝えだったかもしれん。…………地獄の入り口に光が射す。それは、お前さんの事かも知れないな?」
違いますぅ。買い被りです、それ。
確かに冒険者って地獄の入り口かもしれない。だって稼ぎは少ないし、稼げるのは実力のある奴だけ。当たり前だけど新人教育とか無いし、お手軽な簡単クエストとか無いしほんとせちがらい。
ホントやめて。元の世界じゃ地獄の入り口所か部屋の入り口から出ることすらままならなかった俺に言うなよ。
「…………お前さんにしか出来ねぇってんなら、やるしかねぇだろ?」
「俺に…………しか」
「カズマさん、お願いします。私達を導いて下さい」
「…………ゆんゆん」
あっ、何か今の台詞は胸に響いたわ。
やっぱりむさ苦しいおっさんより、可愛い女の子から上目遣いで頼まれる方が断然いい。やる気になるかも…………しれない。
「…………しょうがねぇな。やってやるよ!」
「カズマさん…………!」
「ふっ、魅せてもらおうじゃねぇか」
なんか上手く乗せられた感があるが、とりあえず冒険者達の先陣に立ち、指示を伝える。
「お前ら!相手は魔王軍幹部、それと取り巻きだ!!駆け出し冒険者で真っ向勝負は辛いだろうから、四人一組程度のパーティを作れ、絶対に一人で戦うな!!!」
俺が指揮すると、以外にも皆動揺せず従ってくれた。なんだよ、こんな非常事態なら素直に聞いてくれるのか。あんだけ軽蔑してきた女連中も有無も言わず動いてくれている。
「よし…………出来たな。作戦は至ってシンプルだ。お前達はアンデットの相手を頼む、その隙に俺とジャンヌ、ネロがデュラハンを叩く!それまでの時間稼ぎを頼む!!」
「おう!任せとけ!!」
「へっ!美味しいところはもっていけ!!後ろは任せろ!!!」
「頼んだぜ、カズマ!」
「…………みんな、頼んだぜ」
ああ、これが俺の思い描いていた冒険者ライフなのかも。今まさに、俺は勇者の役割を担っている訳だ。
…………やっぱ、嫌だ。怖い、アニメや漫画で見るだけで十分だわ。
しかし、今更後に引けない。
「と言うわけだ。御剣、お前はアンデットの中で強そうなのがいたら率先して叩け。出来るだろ?」
「もちろん。君こそ、相手はあのデュラハンだよ?大丈夫なのか?」
「…………へっ、見くびんなよ。俺の護衛は最強なんだぞ」
「他力本願なのか…………」
いや、別にいいだろ。俺は前に闘って負けたじゃん?でも、ネロはアイツよりも強そうだし、ジャンヌだって同じ英霊だ。頼らない方が嘘だ。
「…………ゆんゆん、絶対に無理するなよ?」
「はい。カズマさんこそ、絶対に生きて戻って来て下さいね」
「当たり前だろ。こんな頼もしい仲間がいるんだ、死んでたまるかよ」
「カズマにしてはえらく正直じゃない?」
「うむ。存分に頼るがよい。余は全霊を持って応えよう」
「頼んだぜ、みんな!」
そして、俺達は走り出した。
先ずは冒険者達に手前のアンデット達を掃いてもらう。
『ファイアボール』
『ライトニング』
後衛からの援護射撃。それと盾持ちや近接型が白兵戦を挑む。その隙に俺達は親玉の元へと切り進む。
「ふっ!はぁ!どくがよい!!何人たりとも余の疾走を妨げることは許さん!!!」
「ちょっと、鬱陶しいわね。もう少し数減らせないのかしら?」
「後ろの冒険者達も精一杯なんだ、我慢しろ。ていうか、お前からして見ればこんなの雑魚だろ?」
流石は英霊というべきだろう。群がってくるアンデット共を難なく退けている。彼女達が一太刀振るうだけで吹き飛び、断ち切られ、道が開かれていく。
俺は潜伏スキルを使いつつ、二人の後ろをついて回る。たまに打ち損じた奴がいれば倒す程度だ。
「カズマさんの邪魔はさせません!」
「ゆんゆん…………!」
後ろからアンデットの悲鳴となんか凄い音が聞こえる。見なくても分かるが、ゆんゆんのスキル『ライトオブセイバー』だ。ビームサーベルみたいにブゥンと音を鳴らしながら鞭のようにしならせ敵を一掃していた。
いつもより張り切っているのだろう、心なしかライトオブセイバーが大きく見える。
「凄いわね、あの子」
「うむ。キャスターとてあのような攻撃魔法は中々使えんだろうな」
「そうなのか?やっぱりゆんゆんは凄いな」
「後で抱き締めてあげなさいな。それぐらいのご褒美があの子にあってもいいんじゃない?」
「恥ずかしいし、それ死亡フラグだから。後、俺にはご褒美はないのかよ?」
「踏んであげる。喜びなさい」
「いらんわ!!!」
俺達が作戦を開始して10分が経過した頃、敵に動きが見られた。
以前みたくアンデットは盾と片手剣で戦うものかと思っていたが、中には槍で投擲を行う奴まで現れた。
「うわっ!?危なっ…………!」
「カズマ、余が全て弾き落とす。後ろに隠れておるのだぞ!」
「頼むぜネロ!」
「全く鬱陶しいったらありゃしないわね……!」
とりあえず俺達に問題はない。むしろ、問題なのは前衛と中衛だ。この大軍に槍の投擲だ。しかもアンデットだから味方に当たることなんて気にせず投げてくる。
「ぐわぁ!!」
「痛てぇ!!!」
「くそ……!被弾してる、早くなんとかしないと!!」
「カズマ!振り返るな!!君は大将を討ち取るんだ!!!」
「御剣…………!?」
「僕の仲間を傷つける奴は許さない!はあぁぁぁぁぁ!!!」
魔剣が光を放ち、敵を一掃した。
だが、そこを狙い打つように雨のように槍が降り注ぐ。
「くっ!はぁ!ぐっ……!?」
「御剣、無理するな!一旦下がれ!!」
「僕に構うな!!!」
「っ…………!!?」
「…………行くんだ。奴を、倒すんだ」
「…………馬鹿野郎、かっこつけやがって!」
俺は再び前へ向き走り出した。
その刹那に見えた御剣が血に染まる姿を、必死に振り払った。その光景を思い出すだけで、足が止まってしまいそうになるから。
「カズマ、頼んだよ…………」
――――――――――――――――――――――――――――
後衛
『インフェルノ!』
炎の渦が舞い上がり、アンデットの群れへと襲いくる。そして、その身を焼き焦がし、蒸発させた。
「はぁ……はぁ……まだたくさんいるの……?」
「ゆんゆんさん、上級魔法を連発し過ぎです。少し休まれては…………?」
「い、いえ……!このくらい平気です。それに、カズマさんが一番危険なところで頑張っているのに、こんなところで私が休んでなんかいられません!!」
「ゆんゆんさん…………!」
再び上級魔法を発動させる。
だが、無理が体にきたのか威力は先程より弱まっていた。
「はぁ…………はぁ…………ま、まだまだ!」
「…………カズマさんの事、本当にお好きなんですね」
「はい!!?あ、あああああああのお姉さん!!!?こんな時にいきなり何を言ってるんですか!!?」
「ふふ、いえ。ゆんゆんさんが頑張るのはきっとその為なんだなと思いまして」
「うぅ~…………」
「すみません。急に変なことを言ってしまって」
「い、いえ…………」
「ですが、頑張りすぎるのもいいですけど、もっと他の人に頼ってもいいんですよ?」
「え?」
受付嬢の言葉の意味が分からなかった。
彼女の指す方を見ると、いかにも初心者なパーティがアンデットの群れと対峙していた。
「は、早く助けなきゃ…………!」
「待ってください」
「ど、とうしてですか!?早くしないと……!」
「よく見てください。彼等も、ゆんゆんさんのように自分に出来る精一杯をしようと頑張っているんです」
「…………え?」
見るからにボロボロで、いつやられてもおかしくない状態だった。それなのに、助ける必要は無いと言う。
やはり、言葉の意味が分からないでいた。
「きっとカズマがデュラハンを倒してくれる!」
「ああ!それまでの辛抱だ!!絶対に持ちこたえるぞ!!!」
「こんな奴等に、負けてたまるかよ!」
「ええ!それに、あんなに小さな女の子が頑張ってるのに、私達大人がへばってられる訳ないわ!!」
明らかに満身創痍な状態なのに、彼等は諦めず戦っていた。
「本当に危険だと思ったときは助けてあげてください。ですが、それまでは手を出さないで、あなたはあなたの役割を担って下さい」
「役割…………?」
「はい。総指揮はカズマさんですが、ここを担っているのはゆんゆんさんなんですよ?」
「えっ!?わ、私が!!?」
「後ろにゆんゆんさんがいる、こんなにも強い人が支えてくれる、それだけでいいんです。それだけで戦う人からすれば頼もしいんですよ?佐藤さんだって、そう思ってゆんゆんさんに後衛を託したに決まってます」
「そう、だったんですか…………」
「だがら、一人で抱え込まないで皆で戦いましょう!」
「…………はい!」
―――――――――――――――――――――――――――
前衛
「お、おいおい…………数多過ぎだろ!?」
あれから俺達はだいぶ進軍した…………はずだ。
正門は既に遠く、人なんて形がうっすらとしか見えない。なのに、アンデットの大軍はまだ山のようにいた。
「ぶさけてるわね…………!」
「うむ。よもやこれほどいようとは…………」
ここまで魔力消費を最小限に抑えてきたおかげでまだ魔法は全然使える。だが、先に体力の方が尽きそうな勢いだ。
相手はアンデット、死を恐れず絶え間なく突っ込んでくる。しかも、それらを操っているデュラハンはいまだ遠くで高みの見物ときた。
はっきり言ってきつい。
「カズマ、このままだと押しきられるわよ…………」
「やっぱり数が多いか…………」
相変わらずテキパキとアンデットを倒しているジャンヌだが、その表情からは余裕が消えていた。同じくネロも疲れが見え始めていた。
(…………くそっ、ここで使うわけにもいかないし。でも、ジャンヌ達はどんどん消耗していく)
あちらが立てばこちらが立たないといった状況だ。ここを切り抜けたとして、続く第2第3の集団をどう捌くか?これが問題なのだ。
「くそっ、とりあえず俺も憑依で――」
「ならん!マスターであるお主が倒れれば余達は全力で戦えぬ、魔力供給がままならなければ現界することすら叶わんのだぞ」
「えっ!?で、でも俺が倒れた後ネロはデュラハンと戦っていただろ?」
「あれは余の残存魔力で戦っていただけに過ぎぬ。あそこで奴が本気を出していれば負けていたのは余の方だった」
「…………マジかよ」
とにかくまずい。
今ここで俺が魔力切れを起こしたり、殺されでもすれば二人は全力で戦えなくなるという。それだけはあってはならない。
辺りを見渡す。相変わらず俺達が先陣を突っ走り、それに続く形で少数精鋭のパーティが幾つか後ろにいる。しかし、数が違いすぎる。一体一体は大したことは無いが、それが群れをなして一人をリンチすればひとたまりもない。
「…………はぁ」
「ジャンヌ?どうした?」
「私が道を開くわ。その隙にあんた達だけでも進みなさい」
「は!?お前…………何言って、何をする気だよ!?」
「大声で叫ばないで。別にたいした事はしないわよ」
「…………なら何をする気だよ?」
「最大火力で宝具を解放する」
「宝具…………それでいけるのか?」
「一直線に道は作れるでしょう」
「…………その後は?」
「さぁ?…………ま、私が後続を引き留めてあげるわよ」
「お前一人でか?…………死ぬ気か?」
「はっ。馬鹿言わないで、死ぬ気なんて一ミリも無いわよ」
「…………絶対に死ぬなよ」
「…………了解よ、マスター」
俺は、ネロの手を掴み『潜伏』スキルを発動させ、ジャンヌから離れた。
「…………ったく、社畜の気分になるわね」
旗を地に突き立て、魔力を込めた。
アンデットの群れは、それを察知しジャンヌへと狙いを定めた。
「あぁ…………シュワシュワ飲みたい」
一体のアンデットが槍を構え、ジャンヌへと狙いを定めた。
「…………あ、でも金が無かったわ。帰っても飲めないじゃない。テンション下がるわー…………」
そして、距離を詰めたアンデットが剣を構えた。
「…………決めた。この戦いで貰える賞金で飲み明かす。そんで、今日の鬱憤をカズマとゆんゆんで晴らさせてもらうわ。だがら―――」
剣がジャンヌへと振り下ろされる――瞬間。
「あんた達には盛大に散ってもらうわ」
ジャンヌ・ダルク(オルタ)の宝具が発動した。
数多の黒剣が顕現し、炎と共に降り注ぎ、地からも突き抜く。炎は亡者を焼き、地を焼き、一直線に進む火炎となってアンデットを消滅させた。
「消えなさい、亡者共。私の怒りに触れた罪は重いわよ?…………ぐっ!?」
宝具を使い、体が悲鳴をあげていた。
「ったく…………宝具一回の為に結構魔力込めちゃったじゃない。どうすんのよ、後にも控えてるってのに…………って、あいつらはもう行ったわよね。聞こえてるわけないか」
辺り一面は焼け野はら。
そして、そこを埋め尽くすさんばかりのアンデット達が群がってくる。
「ははは…………もう、ふざけんじゃないわよ。働いたんだから有休くらい寄越しなさいっての」
それでも彼女は退かずに立ち塞がる。
残存魔力は少なく、体力も段々と削られ、立っていることすら億劫だった。
「…………さてと、もうひと踏ん張りしてやろうかしらね」
そして彼女は再びアンデットの群れへと飛び込んだ。
その姿はさながらサービス残業よろしく社畜ちゃん…………ではなく、一人の英霊のそれだった。
――――――――――――――――――――――――――――
「ネロ、先手必勝だ。潜伏スキルを掛けてデュラハンに奇襲をかけるぞ!」
「うむ。本来ならそのような手は好かないのだが、今はそのような事を言ってる場合ではない。その一刀で仕留めよう」
ジャンヌが切り開いた道を突き進んでいた。
火を放った事で煙が立ち、幸いと視界が悪く視認しづらい。だが、カズマには敵感知スキルがある。それが奇襲を容易にした。
「はぁ!」
「ぬっ!?させはせん!」
完全に隙をついたはずの一撃はあえなく大剣で弾かれた。
「ほう、この俺のところまで辿り着くとは…………流石だ。だが、不意打ちとは些か騎士として疑問に思うがな」
「余の剣には大勢の民の命が懸かっている。その方に合わせる気はない。次で終わらせてもらうぞ?」
「ふん。強がりを…………分かっているのだろう?今の俺に小細工など通用せん事は」
馬から降り、剣を構えるデュラハン。そして、大魔力を放ち、大気を震わせる。
(なんて魔力だ…………ピリピリきやがる)
「カズマ、打ち合わせ通りにゆくぞ」
「ああ」
「ほう?そこの小僧も戦うのか。では…………お手並み拝見といこうか?」
その言葉を合図にネロが切り込む。
一歩遅れてカズマが『潜伏』を発動させ、後ろに回る。
対するデュラハンは動かず、ただネロだけを捉えていた。
「覚悟」
「甘い!」
「っ…………!?」
ネロが剣を振り上げる前にデュラハンは剣を振り降ろした。だが、明らかに当てる目的に撃った一撃ではなかった。ネロの剣の間合いが一太刀分のところで剣を振り、一瞬の間を作った。
「止まって見えるぞ!」
「な、なにを…………!」
そして、剣ではなく体術で攻めてきた。剣を一瞬だけ手放したと思うと回し蹴りを入れた。
「ぐっ……!?」
「ほう、剣で受け止めるか。だが――」
更に再び剣を取り横凪ぎの一撃を放つ。
「軽い!軽すぎるぞ!!」
「くはっ…………!」
剣で受けるが、それはいとも容易くネロを吹き飛ばした。
(嘘だろ!?前は本気じゃなかったてのか!!?…………くそ、でもそんな事言ってる場合じゃない!)
『クリエイトアース』
「ぬ…………?貴様、何を――」
『バインド!』
「ぐぅ!?ぬかった…………!」
上半身を縛り、剣を封じた。
「よし!いまだ、ネロ!!」
「うむ!この一撃で終わらせる!!」
「甘い!」
だが、デュラハンは肉体の力だけでそれを振り切った。
(あれを一瞬でほどくか!?だが、今なら―――)
剣で防ぐ間を与えず距離を詰める。
そして、内に秘めた魔力を解放する。
『
「なんだ…………!?辺りの景色が―――」
「刮目するがいい。そこは余の世界!余の独壇場!!余の一撃、くらうがいい!!!」
「させん!この程度で―――」
美しき演舞場が顕現し、ネロの剣に炎が宿る。
ネロから放たれる殺気を直に感じ、すぐさま剣を構えた。
だが―――
「そら、何処を見ておる?…………余は既にお主を斬ったぞ?」
「なっ―――」
刹那、デュラハンの鎧に亀裂が走る。
そして、大炎舞が起こった。爆発と共に、炎の渦がデュラハンを襲い、身を切り、焦がした。
「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
「ふっ、余の独壇場だったな!…………だったな!!」
締めのどや顔を決め、演舞場が消え去った。
だが、今もなおデュラハンは身を焼かれていた。
「や、やったのか…………?」
「ふむ、以外にも硬い男よの。余の一撃をくらって尚、 生きておるとは…………こやつ、本当に強いな」
「はぁ……はぁ…………」
「だけど、もう満身創痍だろ?早くとどめを――」
「させんわ!!!」
「なっ―――」
デュラハンが叫ぶと同時に魔力を爆発的に放ち、炎を散らす。そして、瞬間的に肉体を強化し、剣を取る。
(まずい…………!)
その一瞬をネロは見逃さず、剣を構えた。
「俺を舐めるな!!!」
「しまっ―――」
デュラハンが狙ったのはネロ、ではなくカズマだった。その事を本人は理解することすら叶わず、一瞬だが命を諦めた。
だが、ネロは―――
「………………え?何が起こって…………」
「…………カズマ、無事…………か?」
「ああ……無事―――ネロ!!!?」
デュラハンの狙いを悟り、身を犠牲にカズマを庇った。
「ほう、その男を庇ったか」
デュラハンが剣を引くと同時に赤い鮮血が溢れだし、その場に崩れた。
「あ、ああ…………どう、して。どうして俺を庇って…………」
「…………言ったであろう?そなたが…………いな、ければ…………余は…………」
「でも!!!それでも…………だからって…………!?」
「安心しろ、貴様もすぐに同じになる」
「「っ!!?」」
無情にもデュラハンは猶予を与える事なく剣を振り下ろした。もはやそれに抗う術はなく、今度こそカズマは終わりだと思った。
(くそっ!こんなところで俺は…………!)
「カズマ、逃げ―――」
「遅い!!!」
魔力を込めた一撃は確実にカズマを捉えた…………はずだった。
「…………なんだと?」
「……………………え?」
だが、それがカズマに触れることは無かった。
「ふぅ、どうにか間に合ったな…………!」
「貴様…………何者だ!!?」
「お前…………どうして!?」
「質問の多い奴等だ。…………ふっ、だかこうして質問責めに合うのも悪くない、ああ悪くない。…………ふひっ」
デュラハンの一刀は剣で受け止められていた。
「こいつ…………!?」
いまの発言に若干寒気を感じたデュラハン。ひとまず距離を取り、体勢を整える。
「カズマ、大丈夫か?…………それと、その少女も…………」
「――はっ、ネロ!おい、大丈夫か!?いますぐプリーストのところに連れて行ってやるからな!!」
「案ずるでない。余は…………カズマの中に還るだけ。魔力を回復し傷が癒えれば…………大丈夫だ」
「本当か!?…………は、ははは。本当に良かった」
そういい終えると、ネロは光の粒子となって消えていった。
「…………さて、私の仲間を傷つけたお前には叱るべき酬いを受けてもらおう」
「ほう…………きさま、名は?」
「ダクネスだ。…………黄泉の手向けに覚えて逝くがいい」
「ふっ、貴様一人増えたところで―――」
「一人ではありませんよ」
「お、お前ら…………!?」
声のする方を向くと、そこにはめぐみんとクリスがいた。
「我が名はめぐみん!紅魔族随一の天才にして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者!!」
「あっはは…………私も名乗りをあげた方がいいのかな?」
「お前ら…………ったく、遅いんだよ!」
「すみません、カズマ。例の物を準備するのに手間取ってしまいました。ですが、真打ちである私達が来たからにはもう安心です」
「はは…………ヒヤヒヤさせやがって。そうだな、まるで実家のような安心感だ」
屈した足を奮い立たせ、立ち上がる。
そして、デュラハンと再び向かい合う。
「貴様ら駆け出し風情、最弱共が群がろうと俺の敵ではない!!!」
「そうか…………んじゃ、あえてこう言わせてもらおうか?」
腰に据えた短剣、そしてダガーを抜き、構える。
デュラハンを睨み付け、剣を向けいい放つ。
「俺達の最弱を持って、お前の最強を打ち負かす!!!」
そして再び、戦いの火蓋が切っておとされた。
次回はめぐみんが活躍する!…………予定。
そして、原作無視のまさかのクリスが魔王軍幹部と戦います。
たしか、女神は統治するその世界に深く関わってはいけない設定があったよな……無かったような。
よくわかりません。
とりあえず、次回もシリアス多目で続きます、まる