鎮守府に勤めてるんだが、俺はもうダメかもしれない   作:108036

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2話 解放

 

 

只今3時20分

仕上げた案件を先輩方の部屋へ持っていく。

 

今日はちっと遅くなっちゃったな。

ここ最近は出撃が増えて、大本営への報告書も書かなきゃだからなぁ...

 

 

自分の背丈より高くなった書類の山を自分でも器用だなと思えるくらいのバランスで歩く。

 

ともすればコミカルなギャグ漫画でありそうな光景だ。

 

身体的能力の強化はこんな所でも役に立つ。

 

 

部屋の扉を足で開けると、珍しく明かりが点いており、先輩方2人が此方を見つめる。

 

おっとこりゃまずったか?

足で開ける所見られちったよ。

 

.....ま、これでクビにされるなら願ったりかなったりなんですけどね。

 

それにしても、起きてるなんて珍しい...

先輩方も今日は時間かかったのかな?

 

なんせ俺の倍だもんなぁ...

俺ならとっくに死んでるっつーのに、スゲぇよ、ほんとに。

 

「夜分遅くにすみません。

...失礼、既にお休みになられたものだと

朝方に出直した方が良いでしょうか?」

 

 

「....良い、そこに置きたまえ」

 

おお寛大、流石先輩。

 

 

今にも崩れそうな書類の山を先輩の机に起き、安定させる。

 

「では、失礼しました...」

 

(今日は掃除をサボって寝よう)

 

そう考えて部屋を出ようとすると、先輩方に声をかけられる。

 

「待ちたまえ」

 

「はっ!」

 

1、2、3と軍隊仕込みの回れ右をして振り返り、休めのポーズ。

 

 

 

こういう時は大体重要な作戦やら案件やらを任せられる。

あはは、楽しみだなぁ。

 

次失敗したらどれだけ退職に近づくだろう?

 

 

いや、できる限り手は尽くすよ?

でもまぁ、俺の力不足ってーのは仕方ないよね(ゲス顏)

 

今の俺は退却するしか頭に無い。

 

 

まぁ進撃命令も俺に出せって言われれるんだけれどもね。

 

まぁそんな時は別回線で物分りのいい艦娘個人にそれらしい理由をつけてバレるバレないのギリギリの命令を飛ばしてる。

 

ちょっとわざと被弾してくんね?とか、ちょいと航路ズラしてちょうだい?とか...ね

 

ふふふ...ばれたら免職だろうなぁ!

あはは!早く気づいてくれよ!!

 

心の中でニヤニヤしつつ、顔には出さずに待っていたが雰囲気が伝わったのか、いつもより強目の口調で怒鳴る様に言われる。

 

 

「ッ!次の海域攻略戦にて、貴様を指揮官として命ずる!

海軍将校としての誇りを持って確実に任務を遂行せよ!」

 

おお!つまり全責任が俺にあるわけですね?やったーー!!

 

たーいきゃく!たーいきゃく!

俺の頭の中で退却コールが反響する。

 

 

「作戦区域の書類だ!

当日までに作戦と準備を整えておけ」

 

もう片方の先輩が紙切れを渡してくれる。

 

んー....こ、これは!

 

いい...とてもいいものだよこれは!

 

 

全力投入なら戦力は五分五分、いや、普通にやれば成功は確実なラインだ。

 

下手をしなければ、ねぇ...ヒヒヒ

 

いやぁ...2週間後が楽しみですねぇ

 

「現地には君も同行して指揮してもらうことになる。」

 

前言撤回、全力でやる。

俺だって仕事はやめたいけど、死にたい訳じゃない。

 

 

俺も出るってんならここまで痩せた体の調子も戻さなきゃだし、作戦も考えなければいけないし、これらに加えて通常の業務も。

 

嬉しくて血ぃ吐きそう。

 

 

いっそ通常業務サボるか...?

 

いいや、それは出来ないな

誰かに手伝って貰うとか...いや、手伝ってくれそうなやつが....

 

あ、んんー...いるっちゃいるけど、うー.....

 

 

どうだろ、手伝えんのかな?

 

って、いやいや出撃で疲れてる艦娘に書類の整理で追い討ちって、悪魔の所業じゃねーかよ。

 

ありえねぇよ、俺だって深海棲艦との戦闘から帰ってきてさらにこれとか耐えらんねぇもん。

 

 

くっそー....やるっきゃねーか。

 

 

「どうしたのかね?

顔色が悪そうじゃないか?」

 

 

おおう、心配して下さるんですか先輩。

 

でも大丈夫っすよ、あれを2倍こなすあんたほど苦労しちゃいないですから。

 

 

「いえ、全身全霊でお受けします」

 

 

「よろしい!

だが君も出撃に向けての準備もあるだろう。

通常業務の書類などは私達が受け持とう」

 

 

「は?」

 

え?今なんて....?

 

 

「君の仕事を私達が君の出撃までの間受け持つ、と言っているのだよ。」

 

 

「........」

 

 

ウソ、マジ...で?

 

「ふん、わかったらさっさと行きたまえ。

私達にもやる事があるのでな」

 

 

「了解...致しました....」

 

 

促されるままに外に出る。

足取りは自室に向かってはいるが、俺の頭はただ先ほど言われた言葉の意味に理解が追いつかず、反復し続けていた。

 

「受け持つ受け持つ受け持つ受け持つ受け持つ受け持つ受け持つ受け持つ受け持つ、受け持つ.....?」

 

ボソボソとなんども繰り返し、やっと通常の思考回路であれば一瞬で出せたはずの答えに辿り着く。

 

 

「あの書類の山を見なくていい?

5時間きっちり寝れる?

普通にご飯を食べられる?

お外に出られる?」

 

 

普段抱いていた渇望が、とめどなく溢れ、それを実行できるのだという実感から、歓喜に変わる。

 

「仕事をしなくてもいい!!?

ヤッタァァアァアアアアアアウワァぁァアアああああ!!!」

 

 

自然と足は駆け出し、早速人間離れした跳躍力で自室へと突撃し、先ずは人間の三大欲求の一つ、睡眠を思う存分貪ることにした。

 

 




主人公は気づいていませんが、作戦開始が2週間後に迫った状態なのに白紙の状態から主人公のような部下に丸投げする鎮守府はこの世界でも一般的ではないです。

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