鎮守府に勤めてるんだが、俺はもうダメかもしれない   作:108036

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本編の前に、とある体験談を1つ。

〜ある日の朝〜


俺(....ん?ケツのあたりがネチョってる?まさかこの歳になって...)さわさわ


手「血でべっちょべちょやで」


俺「エ?」


時計「バイトまであと15分だぞオラァン!?」


俺「」



酷い目にあいましたが、こんな朝の日も偶には良いか(?)と思う今日この頃。
どうもお腹へっぽこです。

今回は榛名の回想が主な話です!書くの難しかったし、もっと上手く書けるだろと思う気持ちもありますが....まぁ後々この方が良いと思ったら修正入れます。
ではどうぞ!




10話 憂鬱の榛名

 

〜鎮守府の廊下にて〜

 

 

 

「はぁ.....はぁ....」

 

 

走る。あの部屋から一刻も早く離れる為に。

動け。自らの罪を遠ざける為に。

止まるな。罪悪感に追いつかれるぞ。

 

 

心が嘯く。

 

 

「.....ッ」

 

 

不意に転ぶ。

涙が滲む。

 

 

なんでこんな事になってしまったのだろう?

 

 

榛名は自身へ問いかけた。

 

 

始まりは偶然に起きた事だった。

3人目となる提督が訪れる前の事だ。

 

あの頃、鎮守府を纏める仕事が上手くいっていない提督2人に対して、皆は不満を漏らしていた。

 

 

ならばと。

 

仕事が出来ないならば支えてあげなくてはと。

姉様達がいる鎮守府をもっと良くしようと。

 

不満で溢れる皆の顔を、笑顔に出来たならどんなに素晴らしいだろうと。

 

 

思い立った榛名は第一執務室を訪れ、そして目にしてしまう。

 

 

執務机の上に放り出されたとある記録を。

明らかに数字が改ざんされたそれを。

 

それがどういう意味なのか、気づいてしまった直後、背後に感じる気配。

 

 

言えば姉妹を解体するぞと。

揉み消しは容易な事なのだと。

上層部に繋がりがあるのだと。

 

2人のその脅しは、榛名に対して絶大な効果を持っていた。

 

自分ならそれで構わない。

 

 

だが自分が原因で他の人物に。

それも大好きな姉妹に害が及ぶなど、きっと可能性の話だけでも榛名は躊躇うことだろう。

 

しかし目の前の2人の行動を見ていれば、必ずそれが行われてしまうであろう事が理解できてしまった。

 

榛名に向ける「兵器ごときが」という言動が、時折振るわれる暴力が、艦娘に害を与えることになんの躊躇いもないことを教えてくれたからだ。

 

 

補佐の名目で半ば秘書艦のような立場に置かれても、真実それは監視の為で。

さらには同じように金剛型の解体を餌にして、榛名を悪事に加担させ始めた。

 

不満に、疑問に皆が思い、いずれ正しい「横領」という答えにたどり着くその前に。

やんごとなき行動であるのだと皆に流す、共犯者としての、裏切り者としての役目。

 

始めに皆に笑顔をと思い立った榛名が、この行動に心を痛めぬ筈もなく。

しかし幸か不幸か、バレてしまえば姉妹の命がと必死になっていた榛名の演技は完璧で、それこそ姉妹でさえ気が付かなかった。

 

 

悪事を手伝い、偽の情報をそれとなく仲間達に流し続ける日々。

だが、榛名もただ従っていた訳では無い。

どこか、何かに穴は無いかと模索を続けた。

実際に実行可能なのでは無いかと思う手段も幾らかあった。

 

しかしこの行動が露見して姉妹の誰かを、もしくは皆を失ってしまうのでは無いかと。

 

準備の段階で頭をよぎるその考えを榛名は振り切れず、結局何も出来ずにいた。

 

 

そんな状況に訪れたもう1人の提督。

 

 

この状況に訪れた彼を、2人が邪魔に思わない筈がなかった。

 

 

仲間に引き込む考えは最初から無かったらしく、初日から大量の仕事を押し付けていた。

提出が遅れれば、不満を漏らせばそれを理由に辞めさせるつもりだったのだろう。

 

 

しかし彼は優秀だった。

 

 

「書類仕事は初めてなのだがな」と漏らした彼は、それでも段ボール箱が埋まる程の書類をその日に終わらせ、変わらぬ表情で2人にこう言った。

 

 

「思ったより多いのですね」

 

 

明らかな挑発だ。

 

 

この時点で、榛名は内心喜んでいた。

彼が正しい提督たらんとするならば、きっとこの現状を打開してくれるだろう。

冷や汗が出る威圧感も、恐ろしいその目もむしろ頼もしく思えた程だ。

 

 

しかし助けを求めようとした榛名に突き刺さる宣告。

苛立った様子の彼らは榛名を引きずるように隠し部屋へと連れ込み、こう言った。

 

 

「お前をいつも見ているぞ」

 

 

言い訳をする榛名に、2人が見せた鎮守府内のあらゆる場所の映像。

 

艦娘の行動は逐一鎮守府内のカメラで補足され、誰が何処で何をしているのかが完全に把握されている。

抜け穴など存在しないと得意げに2人は語り、それが証拠にとこれまで榛名がしようとして断念した計画をつらつらと並べ立てた。

 

 

「対艦娘の反乱防止の為の機能がこの鎮守府にはあるのだよ。次はない」

 

 

そう言われ、念押すように金剛姉妹の解体をチラつかされ、榛名の心は折れた。

 

 

もう、今はどうしようもない。

そう言って自分を納得させた。

 

 

榛名の行動が従順になったことをきっかけに、目下邪魔な存在である彼に対して2人の行動はエスカレートしていく。

 

 

提督として管理しなくても良い仕事まで彼に押し付け、

ただでさえ多い提督としての仕事も二重に書かなければならない手間をかけさせ、

さらには運営予定を出撃予定から資材の数値、資金の出入りまでを書類に算出させ

そしてそのズレが出るたびに予測を1から手書きでやり直させるというこじつけじみた苦行を課した。

とても個人にやらせる物では無い。

 

 

それでも彼は黙々とそれをこなし続けた。

 

 

疑問に思わない筈は無いのに。

こんな事、しなくても良いとわかっている筈なのに。

 

 

なぜ?どうしてこんな事を?

 

 

今の自分の状況も、提督2人の行動も、彼の考えも、全てが榛名にはわからなかった。

 

 

しかし、そんな状態がただ続くだけだったならば、榛名はまだ報われぬ自身に向ける感情だけで、ここまで強い罪悪感など抱かずに済んでいたであろう。

 

そうだ。

あの出来事がなければ。

彼を、理解してしまわなければ....

 

 

彼がそんな状況になり、まだ間を置かぬある日。

 

いつものように2人に呼び出された榛名は憂鬱な気分のまま、扉を開けようとして聞いてしまう。

 

内側から聞こえるその声を。

 

 

 

「....どうにかならないのでしょうか。彼女らは海上で日常的に命をかけて戦っているのです。鎮守府内での肉体的、精神的療養のためにも必要な事だと愚考いたしますが」

 

 

「愚考だと自身でわかっているなら案を取り下げ給え!現に今問題が起きている訳ではないだろう。資金の節制が第一だと言ったばかりだが?」

 

 

「理解しております。しかし、ここの鎮守府の特性上、練度の高い艦娘が多い今は例え1人でも轟沈などすれば戦線維持に支障をきたします。日頃のストレスや疲れが些細なミスに繋がり、戦場ではそれが致命傷の元となるのです。どうか、どうかもう一度考え直しては頂けないでしょうか」

 

 

「知った風な口をきくな。予測の域を出ない案に出す金は無い」

 

 

「ですが」

 

 

「黙りたまえ。そこまで言うなら自分の資産から出せば良いのではないかね?」

 

 

「それは....」

 

 

「真に奴らの為に必要だと論じるのなら、捻出できて当然だろう?その為に君の資金を運用すると言うなら、許可を出そうじゃないか」

 

 

「....」

 

 

「ふん。もういいだろう。君と違って私達はやる事が多いのでね。さっさと下がりたまえ」

 

 

 

この会話を聞いた榛名は血が出るほど手を握りしめていた。

 

それは何故か?

 

 

きっとこの状況に置かれる前の榛名ならば、おそらく予想は簡単だ。

自分たち艦娘の為に上官へと意見した彼に感謝の念を抱き、力になれない自分が悔しかったからだろうと簡単に言い当てる事が出来る。

 

その怒りは自らへ向けられ、それをバネに問題解決へと邁進したことだろう。

 

 

だが、今。

仲間たちに嘘を突き続け、理不尽な境遇に置かれ、心が摩耗した榛名では、その予想は正解とは言い難い。

 

いや、榛名は怒りを抱いていたという一点においては正解と言えるのだろう。

 

 

その向けられる先が、感謝される筈だった彼だという点を除けば。

 

 

 

(そんなに、そんなにお金が大事ですか!?)

 

 

もう2人に対しての反抗心が折れてしまった榛名には、感情を向ける先が彼しかおらず。

自分の資金でやれと言われ、言い淀んだ彼にこそ、榛名は憤ってしまった。

 

 

自らの境遇の原因である金、何故自分だけがという感情。

その矛先を、強引に彼女は見つけてしまったのだ。

 

 

結局そうか。

人間というものは何よりもお金が大切なのか。

その為には、他人がどうなろうと構わないというのか。

 

それはすぐに消えゆく一時の感情だった筈だった。

 

そのような人ばかりでは無い。

頭ではしっかりわかっていて、だがそう思わなければやっていられないような。

そんなどうしようもない怒りの感情。

 

 

そしてその行動も、一時の物の筈だった。

 

鎮守府内の改善希望の案を今集めているのだと、皆に流して一斉に提出する....仲間想いの皆々は、嬉々として皆の為にと大掛かりな回想案を描いてくれた。

 

ドックを拡張すれば痛みに耐えながら入渠の順番待ちをする仲間が減る。

空調設備を充実させれば、せめて出撃していない間は皆快適に過ごせる。

装備が充実すればまだ練度の低い艦娘が沈む確率も減らせる。

 

もちろんどれも決してはした金では叶えられるものではない。

嫌味な行動だとわかってはいた。

だが止まれはしなかった。

 

 

どうせ出来ないんだろう。

どうせ自分を優先するんだろう。

どうせ人間なんてそんなものなんだ。

 

ただその思考の肯定の為、行った一計。

 

しかし知っての通り。

 

彼は自費で叶えたのだ。

艦娘達が提出した希望を。

 

 

そんな訳は無い。

何故だ何故だと問う内に、次こそはと躍起になって。

 

いつしか榛名は率先して彼を貶めるようになった。

 

 

彼の手柄は全て伝わらぬよう隠蔽を行った。

きっとこれ以上叶えられないであろうとわかっていても希望案を持って行った。

彼の話は何もかも、悪い方向へと捻じ曲げて噂として流した。

提督2人に命じられるがまま、今度はそれを自ら望んで実行し続けた。

 

 

だが.....それでも。

それでも彼は正しくあり続けた。

 

皆に罵倒され。

体は瘦せ細り。

寝る時間も無いほどの書類に忙殺されて。

 

 

それでも。

 

辞めることも、不満を漏らす事もせず。

誰に当たり散らす事もなく。

怒りを抱くそぶりさえ見えない。

むしろ汚名を自ら被りながら、あの2人の無茶な作戦指揮のフォローに回るようにさえなっていった。

 

 

姿形は変わり果て、その身に纏う威圧感すら消え去って。

何故何故と未だわからぬ榛名にこそ、彼はある日に言ったのだ。

 

 

「大丈夫か?」と。

 

 

「顔色が悪いぞ」と。

 

 

「辛いなら休め」.....と。

 

 

入渠により体調に関係なく健康状態を維持できる艦娘に、病気なんて概念は無い。

肉体的な疲れはないに等しいそんな状況で、あるとすれば精神的な消耗のみだ。

 

それすらも休みたいと思うだけ、顔色が悪くなる以外に影響が出ようはずもない。

 

 

そんな私を、今にも倒れそうな彼が。

私よりもずっと酷い状況にある彼が。

 

 

私を「心配した」のだ。

 

 

何故?

 

食べるものにさえ困っているのだろう。

寝る時間さえ無いことも知っている。

 

そこまで追い詰められた状況で、何故?

 

 

 

わからず、榛名は自室で泣いた。

 

小さく、押し殺すように泣く。

ぶつける感情の先まで無くしかけて、誰にも相談など出来ず。

壊れかけた榛名の心は、しかし直ぐに救われる。

 

 

 

震える背中を抱きしめた、長女金剛によって。

 

 

 

 

「大丈夫。大丈夫デスからネ....」

 

 

 

泣き出してはいけない。

怪しまれる素振りを見せてはいけない。

頭ではわかっているのに。

優しく頭を撫でる金剛に、榛名が耐えられる訳もなく。

 

 

わんわん泣いた。

金剛に縋り付き、声を枯らして涙を流した。

 

 

そして、やっと思い出したのだ。

何も聞かず、ただ寄り添ってくれる姉に。

 

 

それが「優しさ」であるという事に。

 

 

きっと、彼も同じなのだ。

きっと、彼も優しいだけで。

 

 

 

だから自分だけならと耐えているのだ。

自分が頑張れば良い話なのだからと。

 

 

結局、自分はそれを、認めたく無かっただけなのだと。

人間に絶望できていれば、彼らはそういうものなのだと、そう思えれば彼への行為も正当化できた筈だったから。

 

 

そうやって、そこまで来て。

やっと榛名は理解して。

 

やっと、自分のしたことの重さに気付く。

 

 

追い詰められた自分を差し置いて、私を心配してくれるような相手に対し、いったい私は何をした?

今の彼の状況は、誰の所為だ?

 

 

そんなこと、もう、分かりきっているだろう。

 

............全部、私の所為ではないか。

 

 

過去は変わらず。

取り返しなど着く筈もない。

 

かつての自分の思考に立ち戻り、元々何よりも優しい榛名だからこそ、その事実は重くのしかかる。

 

 

だが、改めることは出来ない。

その影響を受けるのは我が身ではなく、姉を含めた他の姉妹なのだから。

 

 

姉妹を大切に思うなら、このまま彼を貶めなければならず。

彼に報いろうとするならば、姉妹の誰かを、または全員を切り捨てることになる。

 

 

天秤の針の真ん中で、やはり榛名は踏み出せず。

だが時間が過ぎれば過ぎるほど、『現状維持』と、そういう形で榛名は彼を貶める。

 

 

姉妹に傾く針の上、だが彼の端々に見える優しさが、榛名を掴んで離さない。

 

 

提督2人に呼び出された際、間に入って私を庇うこと。

艦娘において軽視されがちな疲労度を考えた出撃表。

撤退の為に、自らの名を貶めることに躊躇のない指揮。

 

そうした部分にふと見つけ、その度榛名は選択を迫られる。それでもやはり、榛名は選べない。

 

 

ごめんなさいと心の中で呟いて、姉妹の為だと自分を誤魔化す。

 

 

理解できないと逃げて、それで間違った筈なのに。

そうわかっているというのに。

 

 

 

また今日も、心を痛めて逃げ去るばかり。

 

 

 

「榛名は....一体、どうすれば.....」

 

 

もう幾度目かもわからない、そのセリフを呟いて、歩く榛名の様子を見る者はおらず。

 

だがその姿を評する言葉を当てはめるならば、きっと誰もがこう言うだろう。

 

 

もう限界という言葉こそが相応しい、と。

 

 

 

◇◇◇

 

 

〜1時間後の通路にて〜

 

 

あーあ、追加偵察ダメだったかぁ。

通るかどうかは五分五分だと思ったんだが、確証はないって時点でダメだって言われちったよ。

 

まぁ仕方ないか。

 

 

索敵があって、大体の数がわかってるだけまだマシだよな。

深海棲艦が神出鬼没だった昔に比べりゃ、良くなったって思うことにしとこう。

 

 

先輩2人が機嫌悪そうな時に入っちゃったのもちょっと不味かったのかもなぁ。

でも榛名ちゃん、基本的にいい子だし....

何より、いつも顔色悪くて病弱っぽいから庇ってあげなきゃってなっちゃうんだよなー。

 

そりゃ日常的に命のやり取りしてりゃあ俺みたいなチート持ちでないと艦娘でも辛いって事なんだろうな。

 

 

あー、でもいると思うんだけどなー。

あのルート。

 

 

....いや、過ぎたこと言っても仕方ないか。

 

 

それより今は体を動かそう。

何より生存が一番だし、その為には体を慣らしておかないとな。

 

 

んで、それが終わったら今日は.....

 

 

.......艦娘と関わってみるか。

 

命令無視されても困るからな。

いやマジで。

 

 

俺の指揮より上手く立ち回ってくれるならそれで良いんだけど...そこはやっぱり関わってみないとどれだけ考えて動けるかとかわからんし。

 

 

はぁ....憂鬱だわ。

 

 




19日はまだ中旬....セーフ、ですよね.....ダメ?

上記前書きの通り超難産な話でした。
こう思ってるって終着点は決まっているのにキャラの思考を書けば書くほどズレてって....やっぱ他視点って苦手だわい。
いやはや、ままならないもんですな。

どっかで書いた通り追いつかれてからの投稿は不定期な訳ですが、月2から週1くらいで書ければ良いなぁと思ってます。
では次の話でまた!

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