百合ぐだ子   作:百合と百合と百合と

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ネロは出ません


extra放送記念

白野が畳の上に敷いた布団で眠りについていると、玉藻の前はその中にするりと入り込んできた。

まただ、と白野は思った。

白野を消滅の宿命から救い出し、電脳世界の果てで二人きりの生活を送り始めてから、毎晩キャスターはこうした事を繰り返していた。

特に何をするでもなく、ただ玉藻の細長い脚を絡ませ、上半身を優しく抱き寄せる。

彼女は時折白野の頰にそっと触れ、愛おしげにご主人様と囁いた。耳元のこそばゆさが妙に心地良かった。

白野はゆっくりと体の力を抜き、キャスターにその身を預けた。初めてのことにキャスターは少し戸惑った様子だったが、しばらくするとより強く抱きしめた。

ん、と白野の唇から短く声が漏れる。

それは拒絶の意思を示しているというよりはむしろ相手の愛欲を煽るような含みを持たせていた。

「起きて…いますよね……?」

ついに玉藻が問い掛けた。

誤魔化せない。

そう感じた白野は何も言わずに頷いた。

「もしよろしければ」

申し訳なさそうに囁いて。

「私を見つめて貰えませんか?」

白野はすぐさま目を開く。

闇夜に浮かぶ満月が如く大きな黄金色の瞳が、静かに白野を捉えていた。

何となく不安げな彼女を安心させる為、その手を握る。

玉藻は白野を救い出す為、千年もの修行を重ねたという。白野にとっては全てが一瞬の出来事であっが、キャスターには悠久の果てに掴み取った再会である。失うことへの憂いは相当あるはずだった。

「私はここにいる」

玉藻は少しの間目を丸くして、すぐに嬉しげに微笑んだ。

「ご主人様には隠し事が出来ませんね。

不安も、恐れも、全てを見透かされているようです」

「全部じゃない。

でもキャスターのことならきっと」

「分かって下さると?」

白野は頷いた。

「今宵は、甘えてしまっても良いでしょうか?」

細波のような小声に、白野はしっかりと首を縦に振った。

 

玉藻は白野の上半身を起き上がらせ、背中に回り込んだ。慣れた手つきで白野の胸元をはだけさせ、首筋のラインまでを辿る。荒い息遣いによる愛撫は感覚を高揚させ、両者の理性を麻痺させた。

玉藻が胸にその手を伸ばすと、まだ肉の快楽に疎い少女の身体はピクリと跳ねた。そして慎ましくも柔らかな双丘を手の平で包み、痛めつけない程度に責める。

白野は目を固く瞑り、口を両手で塞いだ。

「何故そのようなことをされるのです?

気分を害されましたか?」

心配になって、責めの手を止めて玉藻が尋ねる。しかしそれは杞憂に終わった。

「いや……感じてる声を聞かれるのは流石に恥ずかしいから……」

どこかいじらしい羞らいは玉藻の嗜虐心を煽る結果に終わった。

今度は厚い上唇と下唇で耳たぶを挟み、舌先でそれを舐め、突く。白野が背中を這うような感覚を我慢していると、追撃と言わんばかりに胸を弄んだ。

必死に迫り上がる快楽をコントロールしようとする白野の耳元で、玉藻はこう呟いた。

「ご主人様の可愛らしい声、聞かせて欲しいな」

最後に玉藻の頼みという切り札を前に、白野はあっけなく陥落した。

初めは小さくか細かった喘ぎは白野に快楽に身を委ねているという自覚を植え付けるにつれて大きくなり、二人の情欲を駆り立てた。

数分もすると、玉藻がいい加減胸への責めをやめようとしても「……やめないで」と言い出す始末だった。

「しかしご主人様。

次の楽しみが御座いますれば」

二、三回それを繰り返した所で玉藻は白野を押し倒した。

そして唇が白野のそれに吸い寄せられる。

喘ぎ声を漏らしていた口が塞がり、白野が無抵抗なのを確認してキャスターは舌を中に入れた。唐突な異物感による抵抗から背中が弓なりになるが、目の前の玉藻の瞳が「委ねて」と言っている気がして、力を抜いた。

口の中は少しの空気もない程の圧迫感で、白野の舌はされるがままだった。

玉藻は舌で舌を愛撫し、時折吸い上げることで自分の中に誘導したり、甘嚙みで鋭さを与えた。

ひとしきり楽しんだあと、玉藻は唇を離した。

名残惜しい気持ちもあったが、互いに呼吸を忘れる程であったので、大切な主人を気遣ってのことだった。

「玉藻の、すごい……」

頰を熱で赤く染め、蕩けた眼で見つめながら白野は言った。

「本当に、あなたは私が欲しい言葉を投げ掛けて下さるのですね」

白野は起き上がり、玉藻の前を見つめる。

何を言うわけでもなくただ自然に、キャスターは抑えきれぬ切なさで抱きしめるようかのように両手を白野の頰にあて、再び唇を重ねる。白野の方もキャスターの後頭部に諸手を回して離さなかった。

視界には愛してやまない互いの視線しか映らず、舌が交わる度に相手への愛しさが増していく。それはもう、三千世界の鴉を殺し尽くしても足りない程に。

______あなたしか見えない。

唇で交わされた甘過ぎる言葉を噛み締めて、二人は離れた。

「もう満足しちゃった?」

「いえ、まだ少し足りません」

私もだと白野は微笑み、抱きしめ合いながら布団の上に落ちる。

そうして二人の初夜は三晩続いたのだった。




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