ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第6話 戦場での出会い

「よっし!モノリス発見!」

周囲のガンプラを撃破し、月面を調べていた2機のマラサイのうちの1機がモノリスを見つめる。

ライフルを温存するため、ビームサーベルで破壊しようという魂胆だ。

しかし、それが誤りだということをすぐに気づくことになる。

マラサイの足元に違和感を感じたパイロットがメインカメラをそこへ向けようとした瞬間、右からバズーカの弾丸が飛んできた。

「うわあ!?ワイヤートラップか!?」

右足に弾丸が直撃、破壊されたことでその場にゆっくりと転倒する。

「ジェリドぉ!」

罠にはまった相方を助けるため、バズーカの弾道から場所を探知し、ビームライフルで破壊しようとするが、上からピンクの戦艦レベルのビームが降ってきて、それに自ら直撃する格好で撃墜された。

「カクリコーン!!ちくしょう!!」

どうにか右手のライフルをバズーカのある方向に向けるが、時すでに遅し。

背後から接近したエコーズジェガンにダガーナイフでとどめを刺された。

なお、ジェリドとカクリコンはコードネームであり、原作のあの方々とは全く関係がないのであしからず。

2機のマラサイの撃墜が確認された後、上空からZガンダムのハイパーメガランチャーを装備したジェガン、そして罠のバズーカがある方向からはバズーカとビームガンを装備したジェガンが出てくる。

3機は互いにワイヤーを利用した接触回線で連絡を済ませると、モノリスをバズーカで破壊して別の場所へ移動した。

 

「くっそぉ!どこから、どこから撃ってきやがる!?!?」

一方、いまだ月面に上陸できていないサンダーボルト版のジムが四方から撃ってくるビームをよけながら、必死に相手の位置を探っている。

仲間のジム・キャノンとハイブースト・ジムはすでに撃破されており、残った自分が倒されると、その時点で予選敗退が決まってしまう。

そのことへの焦りが操作精度を鈍くし、再び発射された赤いビームに貫かれて爆散した。

「敵モビルスーツ1機撃墜」

「この場所なら地表のモノリスも狙撃できる!あとは…」

周囲の安全を確認し終えた2機のハイザック・カスタムはモノリスを狙おうとする。

だが、急に背後の現れたEW版のガンダムデスサイズヘルに同時に機体を両断された。

 

「うおりゃあああ!」

右手でバルバトスにつかんだままのアザレアが左手でマシンガンを連射し、シュツルム・ガルスやゲルググ、ルナ・タンクなどにダメージを与えていく。

また、前方にいる2機のリゼルはバルバトスがサブアームで制御しているバズーカで撃墜される。

それでも油断することなく、次のターゲットを調べつつ、ロケットブースターの推進剤の残量を調べる。

「ミサちゃん、そろそろ推進剤は限界だ。降りるよ!」

「了解!じゃあそのままロケットブースターを分離して!」

バルバトスから離れたのを確認した後、勇太は2基のロケットブースターを分離させる。

ロケットブースターはそのまま直進していき、地表のモノリスを撃破し油断しているザムザザーに直撃する。

そして、ミサがダメ押しとマシンガンでロケットブースターを攻撃。

陽電子リフレクターの展開が遅れたザムザザーはマシンガンの銃弾を浴びて大爆発するロケットブースターと運命を共にした。

月面への着地を終えたアザレアはマシンガンのマガジンを、バルバトスは弾切れとなったバズーカのカートリッジをそれぞれ交換する。

「一番近いモノリスは!」

勇太から聞かれたミサは急いで周囲をセンサーで調べる。

遠距離戦を主体としているアザレアはバルバトスよりも長距離の敵や目標を調べることができる。

「ええっと、ここから西へ10キロ進んだところだよ!けど、もう2チームくらいそこへ行ってる!」

「距離と機動性ならこちらに分がある。行こう!」

2機はモノリスへ向けて機体を進めていった。

7キロ進んだところで、両者のコックピットに警報音が鳴る。

「敵機!?しかも、5機同時ってことは…!」

後方に突如、5機のモックが出現し、2人に向けてビームライフルで攻撃する。

わずかに反応が早かったバルバトスはよけるのに成功し、アザレアは避けられなかったものの、シールドでしのいだ。

「モック!?」

「乱入といったところかな…!」

モックはガンプラバトルで初心者が最初に戦うCPU機体として用意されたものだ。

普段はプレイヤー側が調整し、接近戦仕様や遠距離戦仕様、もしくは大型機にしたうえで仮想敵として戦うものの、このような大会ではまれではあるものの、突如乱入して参加チームを攻撃することがある。

なお、そのときのモックの戦闘レベルは15段階のうちの6以上でランダムに設定されており、最高レベルになると世界大会で戦うガンプラレベルとなり、普通のプレイヤーでは充てるのさえ困難になる。

幸い、今回は6に設定されており、ある程度経験を積んだチームであれば倒せない相手ではない。

「あまり弾は使いたくないから…!」

一度ウェポンラックを分離させ、機体を軽くすると、メイスを握った状態で接近する。

装甲の強度も強くないため、一度振るうだけでモックを粉々に粉砕することができた。

「よし、あと1機…!!」

残りの1機を破壊しようとした瞬間、熱源を上空から感知し、勇太はバルバトスを後ろにわずかに下がらせる。

すると、上空から飛び降りてきたロードアストレイがモックを右こぶしを殴り飛ばした。

「ロードアストレイ…でも、このカラーリングは…!」

灰色と赤を基調とした塗装で、ツインアイが赤と緑のオッドアイという奇妙な色合い。

そして、バックパックに装備されているハイパービームジャベリンと両腰に装備されている2丁の高エネルギービームライフル、全身を包む銀色のABCマント。

胸部に刻まれたドクロのペイント。

「ガンプラバトルから身を引いて長いのに、反応できるとは…鈍り切ってはいないってことだなぁ」

オープン回線でミサと勇太にロードアストレイのパイロットが通信を行う。

通信を聞いた勇太はじっとそのパイロットの顔を見る。

「ほおお、かわいい女の子と一緒にバトルを…。胸はないが、中々いい…」

「オイコラ、あんた…」

貧乳であることが大きなコンプレックスであるミサが怒りを込めて無礼なパイロットをにらむ。

「あなたは…どうしてここへ?」

「なーに、様子を見に来たんだよ。あいつの弟が今、どうしているのかを…」

そういって、バックパックのハイパービームジャベリンを両手で握り、バルバトスに向ける。

「…復帰したばかりで、あなたにだけは当たりたくないって思ってましたよ…」

メイスを構えつつ、じっとパイロットの映像を見る。

逆襲のシャア時代のシャアのノーマルスーツを着用し、両目を黒いグラサンで隠した、茶色いテクノカットの青年だ。

「景浦…武さん…!」

名前を呼ばれた青年はニッと笑い、上段に構えたハイパービームジャベリンを振り下ろす。

ウェポンラックを分離したバルバトスがメイスで受け止めるが、力負けしているのか、だんだん押されはじめる。

「勇太君!!」

「手を出さないで!!」

勇太を助けようとバズーカで攻撃しようとするミサを制止する。

右足でロードアストレイの腹部を蹴り、どうにか距離を開けた勇太だが、そんな彼の腹部をビームライフルの閃光がかすめる。

「ビームライフル!?腰に下げたままで!?」

「サンダーボルト版のジムやザクが装備したサブアームを応用しただけだ。ふーん、弱い。勇太、すっかり弱くなったなぁ」

「く…!!」

分離したウェポンラックからライフルを手にし、そのまま撃とうとするが、今度はそれを左腕に装備されているワイヤークローでメイスごと絡み取られる形で奪われてしまう。

ロードアストレイは丸腰になったバルバトスに向けて、奪ったメイスを投げつける。

メイスは頭部をかすめ、そのまま飛んで行って後方にあるミラージュコロイドで隠されたモノリスを貫く。

「これが数センチずれていたら…どうなっているかわかっているよな?」

「…」

明らかに手を抜かれ、更にそれでもなお自分を上回る力量を見せつけられた勇太は何も言うことができなかった。

「機体のパワーも中途半端で動きも鈍い、周りから見るとほんのちょっとだけ強いだけのただの三流、それが今のお前だ、勇太」

「…」

「おまけに…!!」

ビームライフルを手にしたロードアストレイが自身の背後を見ないまま発射する。

撃たれたのは背後から接近しようとしていたシュツルム・ガルスで、一撃で撃破された。

「感も鈍くなった…。これがあいつの弟のなれの果てかと思うと、がっかりするな…。そんな強さで勝ち抜けるほど、ガンプラバトルは甘くないぞ」

「くそ…!!」

「これ以上、俺をがっかりさせたくなかったら、さっさと覚醒して見せろよ」

そういうと、急にロードアストレイがポリゴン状に分解され、消えていく。

「棄権…!?」

「ああ、今のお前と戦っても面白くない。それだけだ」

そう言い残し、タケルが姿を消す。

勇太の心に残ったのは、何とも言いようのない悔しさだった。

「ゆ、勇太君…あの人は…!?」

メイスを回収したミサはそれを手渡しながら、勇太に尋ねる。

「…彼は、景浦武。兄さんのライバルだった人だよ…。ガンプラの名前はロードアストレイ・グレースカル」

「景浦武…ああ!!」

名前を思い出したミサは大声を上げる。

「前に雑誌で見たことある!!外国を飛び回ってるさすらいのガンプラファイター!!」

「あれが世界の実力ってことだよ…」

リキャプチャービームでウェポンラックを回収し、メイスを受け取りながら、ロードアストレイが消えた方向に目を向ける。

復帰して1週間、必死に昔の実力を取り戻そうと、練習を続けた。

しかし、力を取り戻し、さらにその上へ行くにはまだ長い時間が必要だと感じられた。




機体名:ロードアストレイ・グレースカル
形式番号:MBF-P03GS
使用プレイヤー:景浦武
使用パーツ
射撃武器:高エネルギービームライフル×2(ストライクフリーダム)
格闘武器:ハイパービームジャベリン
頭部:ロードアストレイ
胴体:ロードアストレイ
バックパック:ユニコーンガンダム
腕:ガデッサ(ワイヤークロー装備)
足:ガンダム・バエル
盾:ABCマント

世界を旅するガンプラファイターであり、生前の沢村勇武のライバルである景浦武のガンプラ。
ロードアストレイをベースとしたもので、長い戦いの中で改造を繰り返してきたことから機体性能は勇太のバルバトス(第3形態)を圧倒するほどであると同時に、ワイヤークローで2つの武器を同時に奪うという芸当を見せるほどの精密さを秘めている。
ただし、それでも彼自身本気ではなかったことから、本来どこまで本気の性能を引き出せるのかは不明。
彼の言葉の中にあった覚醒が一つのキーワードであると予想される。
なお、グレースカルは灰色の塗装と胸部のドクロのペイントが由来。

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