「うおおおおおお!!!」
「あああああああああ!!!」
2人の叫びがコックピットに響き渡り、対艦刀とビームサーベルがぶつかり合う。
満身創痍でありながら、鬼気迫る勢いで攻めてくるバルバトスにG4Sが押され気味になる。
「くっ…!」
出力では互角であるにもかかわらず、押されていることにさすがのロクトも冷や汗を流す。
このまま相手に付き合う必要はないと言わんばかりに、バルカンを発射する。
ナノラミネートアーマーがズタズタなバルバトスの頭部にバルカンの弾丸が容赦なく遅い、当たるたびにコックピットのモニターがブラックアウトしていく。
「たかが、メインカメラをやられただけで!!」
やせ我慢のセリフを吐くが、それでも視界の大半を失った状況では圧倒的に不利な状況だ。
その間にG4Sが離脱し、ライフルを撃ってくる。
対艦刀を盾替わりにして防御するが、ものの2発程度で対艦刀が折れて使い物にならなくなる。
「くっ…!なら、もう!!」
コックピットハッチを全開にし、肉眼で見えるようにした状態で飛び回る。
警告音が響き、残り時間が短いことを感じながら、阿頼耶識で疑似的に再現された空間認識能力を活用してG4Sの位置や距離を確かめる。
正確な数値までが出てくるわけではないが、直感でどの程度距離があるのかはわかる。
それが分かれば、もう十分だ。
ハッチが開いたままバルバトスが一気にG4Sに接近していく。
「正面!?自殺行為を!!」
スラスター全開で突っ込むバルバトスの装甲の表面にひびが入り、剥離していくのがモニターではっきり見えており、壊れていく敵機に動揺を抱きながらもそれをおくびに出さずにライフルを撃ちながらサーベルを抜いて接近する。
それに対し、バルバトスは撃ってくるG4SめがけてGNピストルを投げつけてくる。
ビームがそれを撃ち抜くと同時に、GNピストル内に貯蓄されていたビームのエネルギーが爆発し、強い光がG4Sのモニターを真っ白に焼いていく。
「目くらまし…!」
光のせいで、無意識にG4Sのスラスターが弱まる。
その瞬間、コックピットの後方から激しい衝撃が遅い、前のめりとなったロクトを守るように透明なエアバックが展開され、彼の頭を守る。
「一体、何が…!!」
正面にはハッチが開いたままのバルバトスの姿があり、衝撃からの時間を考えると目の前の彼が犯人の可能性が低い。
だが、もう味方機がいない以上、そうした死角からの攻撃ができる手段はファンネルやドラグーンなど、限られている。
「まさか…テイル、ブレード…かな??」
背後ゼロ距離からの熱源をセンサーが感じ取ったことで、ロクトはその正体に気付く。
サテライトキャノンを受けて消滅したと思われたテイルブレード。
それ以外にこの状況が生まれる理由は考えづらい。
「…隕石の陰に隠していたんです。ギリギリまで、動かさずに…。あなたに、必殺の一撃を与えるために」
勇太のバルバトスのテイルブレードなら、ファンネルのように遠隔操作でき、ビーム砲まである。
ゼロ距離からのビームを後ろから受け斬るだけの力はG4Sにはない。
ビームを受けた瞬間、推進剤に引火し、爆発する。
「君の…執念の、勝利だ。おめでとう、悪魔君…そして、綾渡商店街ガンプラチーム…」
敗北を認めたロクトとそのつぶやきはビームの光の中へ消えていった。
「決まったーーーーー!!!激しい猛攻の中、勝利をおさめ、ジャパンカップ優勝の栄光をつかんだのは…彩渡商店街ガンプラチームーーーーー!!」
ハルの試合終了宣言と同時に、モニターには半壊状態のバルバトスだけが映り、会場は歓声に包まれていく。
「勇太君…」
「あいつ、やりやがったな…」
シミュレーターの中から勇太が出て来て、フラフラとミサ達の元へ歩いていく。
「ミサ、ちゃん…カドマツ、さん…ロボ太…やったよ…」
汗だくで疲れ果てた状態でサムズアップする。
左手にはモニターで映っていたのと同じようにすっかりボロボロになってしまったバルバトスが握られていた。
そして、ついに限界を迎えたのか、フラリと前のめりに倒れていく。
「勇太君!!」
駆けだしたミサが倒れる勇太を抱きとめられる。
腕の中で、勇太は無防備な姿をさらしていて、歓声の中にも関わらず眠っている。
それでも、持っているバルバトスを手放すことはないのはさすがとしか言いようがない。
「お疲れさま、勇太君…」
自分の夢をかなえてくれた勇太への感謝の言葉を口にするとともに、いたわるように勇太の頬に触れる。
今のミサも勇太と同じように、周囲に歓声には意識が向いておらず、今は腕の中の勇太のことだけを意識している。
「んんーー!!ゴホン!あーー、お前ら、ちょっといいか??」
わざとらしい咳払いと共に声をかけるが、やはりミサは聞いていない。
セクハラなどと言われるかもしれないが、それでも今の状況を説明しないとまずいと思い、ミサの肩を叩く。
「んもう!!何!?カドマツ!!今、勇太君が…」
「ああーー、それなんだが、モニター…見てみろよ」
首をわずかにひねらせたカドマツはいつの間にか持っていたブラックコーヒーを口にする。
正気に戻ったミサは嫌な予感がし、視線をモニターに向ける。
そこにはミサとミサの腕の中で眠る勇太の姿がばっちり映っていた。
つまり、この甘々な光景がばっちり会場の人々に見られているということだろう。
そのことを察すると同時に、一気に沸騰間近なまでに体温が上がっていく。
見えているわけではないが、顔もばっちり真っ赤になっているだろう。
「多分だと思うが、ネットで中継もされてるぞ」
「ええええええええええええ!!!!!!!!」
「うん、ん…」
「ふう、やっと起きたか、この寝坊助」
目を覚まし、ゆっくりとベッドの中から体を起こす勇太を見たカドマツはにやけ面で彼を見る。
状況が飲み込めない勇太は周囲を見渡し、自分がどこにいるのかと時間をなんとなく感じた。
「さっきまでのバトルは…夢…?」
「んなわけねえだろ?勝ったんだよ、お前らは。優勝したんだよ、ジャパンカップで」
「優勝…」
眠ってしまってからここで目覚めるまではほんの一瞬の時間に感じられたためか、勇太は夢だと錯覚していた。
だが、机の目を向けるとそこには夢と思われる光景の中で見たバルバトスの最後の姿がそのままであり、それが夢ではなく現実であることを教えてくれる。
「本当に、僕たちが…」
「信じられないってか。言ってくれるな、あれだけ暴れたのにな。それに…ちゃんとお前のガンプラにも礼を言っておけよ。お前の無茶に付き合って、こうなったんだからな」
まぁ、許してくれるだろうがと付け加えた後で、勇太の夕食を買いに部屋を出ていき、ロボ太もついていく。
1人になった勇太はベッドから出て、スリッパを履いてからテーブルの上のバルバトスの元まで歩いていく。
時刻はもう深夜にさしかかっており、長い時間眠っていたにもかかわらず、疲れが抜けていないのを感じた。
勇太はボロボロになったバルバトスを撫でる。
ジャパンカップに出場し、強敵と戦うことになる以上はこうなることは分かっており、他の参加者のボロボロになったガンプラも見ている。
覚悟はしていたつもりだったが、それでも目の前のボロボロになった相棒を見ると、やはりやりきれないものを感じずにはいられない。
「ごめん、バルバトス…そして、ありがとう…」
謝罪と感謝を口にした後で、勇太はその隣に置いてあるスマホを手に取る。
中には眠っている間に届いたミサからのメールがあり、それを開く。
『勇太君、ありがとう。勇太君がいてくれたから、勇太君が頑張ってくれたから、ジャパンカップで優勝できたんだよ。きっと、天国にいる勇太君のお兄さんも喜んでると思うよ。それと、ミスターガンプラとのバトルだけど、明日の朝11時にやるって決まったよ。こうなったらきっちり修理をして、バトルしないとね。このメールを見たら、電話してね。すぐに行くから!』
「ミサちゃん…ああ、そうか。ミスターガンプラとのバトル…」
白熱の決勝を戦っていたことで、そのことをすっかり忘れていた。
これから修理をしなければ間に合わないが、今手元に残っているパーツだけではバルバトスの修理は終わらない。
急いでミサに電話をし、協力を仰いだ。
「ったくよー、なんでこんな真夜中に俺が買い物にいかないといけねーわけ?おまけにそんなに商品もねーなんてな」
コンビニで勇太が食べそうなものを適当に見繕い、帰るカドマツは今のこの状況に愚痴をこぼす。
スーパーではもはや定番なチキン2つとカップのサラダ1つ、そしてホテルのレンジで温めることのできるご飯1つ。
カドマツも研究で深夜まで残業になる際にはよくこのメニューの世話になる。
味は悪くないが、慰め程度の野菜では大した栄養バランスにはならない。
年に一度の健康診断で、医者からもうすぐ大きく体が悪い意味で変化する年齢になっていくから、食生活に気を付けろ、運動をしろと言われているが、そのための休暇ぐらい月に2回くらいは許してほしいものだ。
これだと、一人暮らしで極力自分で炊事をやっている勇太の方が健康的な生活をしていると言わざるを得ないだろう。
コンビニからホテルまでは歩いて5分くらいなため、それで少しは歩数を稼げることを願い、大通りの歩道を歩く。
「うん?あの車…」
向かいの車線でホテル方面へ走るストレッチ・リムジンにカドマツの目が留まる。
街灯はそこかしこにあるとはいえ、暗がりなうえに薄暗い色の窓ガラスをしており、誰が乗っているのかは確認することができない。
だが、この通りを通っても、あるのはジャパンカップやガンプラ関連の施設のみ。
リムジンに乗るようなお偉いさんが来るには場違いで、そのことがカドマツにとって疑問だった。
「こんな時間に誰がここへ…?」
「助かった…ポリキャップを統一しておいたから、アザレアのパーツも組み込むことができる」
机の上には修理を終えたばかりのバルバトスが立っており、その双眸を青く光らせる。
欠損した右足パーツは膝から先がアザレアのものになっており、失った破砕砲の替わりとして右手にはリゼルのEパック方式のビームライフルが握られていて、バルバトスのものに戻したバックパックには太刀と滑空砲をマウントし、失った超大型メイスの替わりとして再びソードメイスが握られる。
塗り直しはしたものの、その裏側の破損したりひび割れた装甲やフレームはそのままになっており、リミッター解除をしたうえで見せたあの動きをミスターガンプラに魅せるのは不可能に近く、カモフラージュのためにABCマントを装備している。
「でも、いいの?勇太君。ずっと準備していたあれ、もう出来上がったんでしょ?それに、バルバトスは…」
「だからこそだよ。僕がバトルに復帰してから付き合ってくれたんだ。そのバルバトスで最後まで戦い抜きたい。彼の出番はその後だ」
予想以上に時間がかかったが、あのガンプラは第一形態が完成して、既に出番を待つように箱の中に封印している。
箱の中にはほかにも、そのガンプラを作るために作ったストーリーや設定を書いたノートも入っている。
勇太が作っているのが見え、彼が眠っている間にこっそりその中身を見たが、想像以上に凝った設定やガンプラそのものの出来栄えには驚きを感じるしかなかった。
ガンプラは出来栄えやそれそのものの設定そのものも性能を左右する。
いずれもこれまでミサが見てきたガンプラの中でも、それは最高傑作としか言えない。
それがあまりにも衝撃的で、あまりにも悔しかった。
(全然釣り合ってないな…私って…)
確かにジャパンカップで優勝し、夢だった日本一となった。
今やネット番組では彩渡商店街ガンプラチームが一番の話題となっており、同時に彩渡商店街そのものも紹介され、SNSでもその名前が時折出てきている。
充分ミサの本来の目的である彩渡商店街復活の大きな一歩となったと言ってもいい。
だが、その願いを果たすことができたというものの、どこか満たされないものを抱いていた。
このチームで最も活躍したのは誰か?
誰が言ってもそれは勇太だと、バルバトス・レーヴァテインだというだろう。
決して、ミサとアザレアではない。
だから、そんな勇太にあこがれを抱くとともに嫉妬心を抱いてしまう。
「ミサちゃん、いいの?君もミスターガンプラと戦う資格があるのに…」
「1VS1じゃないとフェアじゃないでしょ?それに、もし私のパーツがなかったら、バルバトスが直せなかったじゃん」
「けど…」
「んもう!!勇太君は何も考えないで、ミスターガンプラとのデュエルを楽しんで!!じゃあ、私は寝るから!お休み!」
「ちょっと待ってよ、ミサちゃ…ん…」
駆け足で部屋を出ていったミサの後姿を見つめる。
(ミサちゃん…泣いていた…?)
一瞬だけ見えた、悲しそうに涙を流すミサの顔。
ジャパンカップに優勝したのに、どうしてそんなに悲しそうなのか、今の勇太には理解できなかった。
「はぁーーー!なにやってんだろう。私は…!」
ホテル内の展望台まで走ったミサは袖で涙を拭く。
勇太に今の顔を見せたくなくて飛び出したミサだが、これからどうするのかを何も決めていなかった。
このまま部屋に戻ったとしても、今はどうしても眠る気になれず、外へ出たとしても、この時間はコンビニしか開いていない。
どうしたらいいものかと悩んでいると、展望台に人影が見えた。
今ここにいるミサが言うことではないだろうが、こんな深夜に展望台に人が来るのは珍しい。
今注目なのは彩渡商店街ガンプラチームとミスターガンプラのバトルで、こんな深夜にここで過ごす人は珍しい。
気になったミサは涙を拭くのを忘れ、近づいていく。
そこには涙を拭いているミソラの姿があった。
「ミソラ…ちゃん?」
「ミサ、ちゃん?」
「どう…?落ち着いた?」
近くの自動販売機で缶ジュースを2つ買ってきたミサはミソラの隣に座る。
ミソラは何も言わずにそのうちの1つであるアップルジュースを手にし、ちびちびと呑み始める。
泣いていた理由は決勝戦で勇太たちに負けたことだろう。
勝者となったミサがここにいては余計にミソラを傷つけてしまうかもしれない。
放っておけなかったからジュースをあげたが、どう言葉をかければいいのか分からないミサは静かに自分の部屋へ戻ろうとした。
「待って、ミサちゃん…」
「ミソラちゃん…」
「その、ごめんね?決勝戦で、嫌なことしちゃって…。最低だね、私って…」
「嫌な…こと??」
最初はどういうことかわからなかったミサだが、決勝戦のことを思い出していると、ようやく彼女の言っていたことが分かった。
「ううん、そんなことないよ…といっても、正面から闘ったのって、勇太君だけで、私はまともに戦えなかったけど…あはは…」
「うん…。ツキミ、すごく悔しがってた。どうしてあんなに強いんだろうって」
勇太とバルバトスが脅威となる相手であることは分かっていたが、ロクトと手を組んで戦えば勝てるかもしれないと思っていた。
確かに、それ以前の戦いで消耗しており、サテライトキャノンの一撃もあって、バルバトスを本当に撃墜まであと一歩のところまで追い詰めることができた。
だが、最後は勝利への執念からリミッターを解き放った勇太に軍配が上がった。
あの悪魔のような戦い方に翻弄された。
「きっと、私たちと違って、純粋に優勝したいって思っていたから?」
ミソラ自身、優勝したいという気持ちはあった。
だが、それ以上にツキミと一緒に宇宙飛行士になりたいという夢がある。
そのためにジャパンカップを、ガンプラバトルを利用した。
その罪悪感と負けた悔しさがミソラを苦しめる。
「私には、勝つ資格なんて…」
「そんなことないよ!ミソラちゃん!」
「ミサちゃん…?」
「そんなこと言うなら、私だって、勝つ資格ないよ。だって…私は彩渡商店街を復活させるために戦ってたの。宇宙飛行士になりたくて戦ってたミソラちゃんと同じだよ」
ミソラやミサだけではない。
ジャパンカップに優勝して、何かを手に入れたくて、ファイター達は戦っていた。
その思いを否定することはできない。
「だから…勝つ資格がないなんて言う必要なんか、ないと思うよ」
「ミサちゃん…ごめん、ありがとう」
「さあ、皆さま!たいへん長らくお待たせいたしました!これより、ジャパンカップ最終日、ミスターガンプラと綾渡商店街ガンプラチーム代表、沢村勇太とのガンプラバトルを開始します!!」
予定時刻の2時間前には既に満席となった客席から歓声が上がり、左右の入場口からそれぞれミスターガンプラと勇太たちが入場する。
「さあ、ミスターガンプラ。長らくバトルの表舞台から姿を消していた彼!初のプロファイターとしていくつもの伝説を作り上げた彼はいったいどのようなバトルを見せてくれるのかぁ!!」
ミスターガンプラはシミュレーターに入り、ガンプラをセットする。
シミュレーター内でも彼の姿に変化はなく、艦内に入るとそこには彼が作った、ケンプファーをベースとし、スターゲイザーのヴォワチュール・リュミエールを背中に装備したもので、これはこの日のために作ったものだ。
「久々のバトルだ。一緒に楽しもうじゃないか。ブレイク・ケンプファー」
乗り込むとともにハッチが開き、ケンプファーをカタパルトに乗せる。
発進前の、バトルに赴く直前のこの緊張感は久々で、肌にビリビリと感じるプレッシャーが今ではとても懐かしく思える。
きっと、それを感じるのは目の前の相手が自分が思っているような強敵と思えるからだろう。
「さて…ミスターガンプラ、ブレイク・ケンプファー、出る!!」
カタパルトから射出されたケンプファーがグレートキャニオンの上空を飛ぶ。
ヴォワチュール・リュミエールが起動し、一気にスピードを上げるとともに高度を下げ、山から山へと飛び移り、重力下であるにもかかわらず、青いバーニアの光を残して猛烈なスピードで飛び回る。
「重力下であるにもかかわらず、通常の3倍のスピード!!まさに赤い彗星のごとき動き!!さすがはミスターガンプラ、衰えを見せていません!!」
「ふうう…」
出撃準備を終えたバルバトスのコックピット内で、出撃前にガンプラのスペックの最終確認をする。
武装はいずれも問題ないが、やはりフレームの問題はこのバトルでついて回る。
決勝で見せたリミッター解除したうえでの動きはもう見せることができず、覚醒に耐えられるかも不透明。
だが、今できる最大限の準備はした。
(ミサちゃんの思いも詰まってるんだ。負けるはずがないさ…ミスターガンプラにも)
「勇太君、そろそろ行こう」
「我々は見ていることしかできないが、勝利を願っている」
アザレアとフルアーマー騎士ガンダムも出撃できるものの、今回は1VS1での戦いということから、2人は戦闘に参加することができない。
だが、観客たちとは違ってコックピットの中から直接2人の生の戦いを見ることができる。
「ありがとう、2人とも」
「勇太。せっかく優勝したんだ。後のことは考えず、しっかり暴れて来い」
「はい…ありがとうございます、カドマツさん。沢村勇太、バルバトス・リペアード、出るよ」
全身を包むABCマントをはためかせながら、バルバトスが飛び出し、グレートキャニオンに降り立つ。
向かい合うように2機はそれぞれの山の頂上に降り立ち、ケンプファーは刀を、バルバトスやソードメイスを構え、刃を相手に向ける。
「沢村勇太…君も私も、異なるきっかけがあったとはいえ、今こうして再びバトルの表舞台に出ている。そして、今ここで戦う。私はこの瞬間をとても心待ちにしていた」
「ミスターガンプラ…兄さんがあこがれていた人…」
「沢村勇武…。君のお兄さんは本当にいいファイターだった。いつか戦ってみたいと思っていた分、あの時のことはとても残念だったよ」
「ありがとうございます。でも…僕は兄さんの替わりになるつもりはありません。綾渡商店街ガンプラチームの沢村勇太としての戦いで、あなたに勝ちます!」
「いいだろう!さあ、始めよう!私たちの…バトルを!!」
その宣言と共に、ヴォワチュール・リュミエールの青く光りはじめ、その円盤の中央にその光が収束し、ビームとなってバルバトスに向けて発射される。
バルバトスもビームライフルを撃ち、2つのエネルギーがぶつかり合うと同時にまぶしい光と爆発が生まれた。
2人の戦いのゴングは、今ここで鳴り響く。
機体名:エンハンスドデファンス
形式番号:GAT-X105E+AQM/E-X09SE
使用プレイヤー:神代月見
使用パーツ
射撃武器:ビームライフルショーティー×2(ストライクノワール)
格闘武器:対艦刀
シールド:ガントレッド
頭部:ストライクノワール
胴体:インフィニットジャスティス(角型センサー搭載)
バックパック:ソードストライク
腕:ヴィクトリーガンダム
足:ビルドストライク
沖縄宇宙飛行士訓練学校に所属する神代月見が作った超接近戦型ガンプラ。
一緒にバトルに参加する毛利美空のガンプラであるガンティライユとの連携を想定したもので、アグニによる援護を受けつつ、対艦刀で近接攻撃するというコンセプトとなっている。
頭部カメラが失われたときのため、胴体にも追加でセンサーが搭載されており、両腕に追加装備されているシールド替わりのガントレッドは武装を失った場合には変形させてナックルとしても転用可能になっている。
また、対艦刀には原作では採用されなかったビームライフルの機能も追加されており、ビーム・ジュッテとしても扱えるなど、細部まで改造が施されている。