「よし、ここに色を塗って…いや、この赤じゃないな。もっと鮮やかで、炎みたいな…」
ミサの家の機材を借りて、勇太は新しく作ったバルバトスルプスのパーツに色を塗る。
リージョンカップまで使用していたバルバトスのパーツはバルバトスルプスの物を除くと、自分が即席で作ったものをミサの手で完成させたものだ。
単独で作ったわけではなく、おまけに破砕砲や覚醒などの従来の物とは異なる要素もあるため、ここに来て、新規で作ることとなった。
せっかく作るのならと思い、色彩などに自分のこだわりを加えている。
特に、バルバトスルプスが白・赤・青のトリコロールなのに対し、今作っているそれはシンプルに白と炎のような赤だ。
また、頭部の後ろには放熱ユニットを取り付け、覚醒によって発生する熱の逃げ道を増やした。
色塗りを終え、組み立てた後で近くに置いてあるタオルで額の汗をぬぐう。
「暑いなぁ…6月なのに」
6月にもかかわらず、気温は28度を超えている。
ガンプラづくりに集中していたこともあり、彼自身もかなり熱が入っていて、あと少し暑かったら、クーラーをつけていたところだ。
出来上がった自分の新たなガンプラを見つめていると、机の上に置いてあるスマホが振動する。
それを手にした勇太は相手を確認した後で、電話に出る。
「はい、沢村です」
「おお、勇太か。ミサはそっちにいるか?」
「ミサちゃんはサクラさんと一緒にゲームセンターで特訓してます」
あの日から、ミサはサクラのもとでガンプラづくりやバトルの修行を受けることになった。
そのせいか、疲れた様子を学校などで見せることが多いものの、どこか充実しているような雰囲気を見せており、修行の成果も出始めている。
昨日の勇太との練習試合では、破砕砲やソードメイスを破壊して攻撃手段を封じ、足場を崩したり攻撃の反動を利用して回避するなど、戦略の幅を広げ始めている。
その時の戦闘は覚醒を使うことでぎりぎり勝つことができたが、ミサのレベルアップに驚かされた。
なお、カドマツにもサクラについては勇太が伝えている。
「それで…カドマツさん、何か御用ですか?」
「ああ。これからジャパンカップがあるから、ロボ太用の機体をどうにかしないとって思ってな」
「ああ…そうですね」
ジャパンカップとなると、リージョンカップと比較してかなりファイターとガンプラのレベルが変化する。
自分とミサが自らのガンプラを強化していることもあり、ロボ太の強化の必要性も増した。
勇太と同様フロントアタッカーになることが多い分、なおさらだ。
「俺の方で、いろいろ用意した。お前が前に作ってくれたパーツも役に立ったよ」
「え…?それって、どういう…」
数日前、勇太はカドマツからよくわからない設計図をもらい、それをミサの店の機材を借りてスクラッチビルドで
「それは見てからのお楽しみだな。ミサやそのサクラって女の子があっちにいるなら、好都合だ。そっちで落ち合うぞ。時間の方は大丈夫か?」
「そうですね…1時間後くらいなら」
「了解だ」
電話が切れると、勇太はスマホを置き、武器の調整を始める。
「バルバトス第5形態…いや、バルバトス・レーヴァテイン…かな?」
1時間後、約束通り勇太はイラトのゲームセンターに入る。
「イラトばあさん、この筐体コイン入れてもクレジット増えねーぞ!」
「もう1枚入れてみな!」
「なんだよ、1プレイ2コインだったらそう書いとけよな!?って、やっぱりクレジット増えねーじゃねーか!!」
「くく…アンタはゲーム開始前から呑まれているのさ。その筐体と、このアタシにね!!」
「アハハハ…」
金の亡者であるイラトのどこかのRPGの大魔王のようなセリフに勇太は力なく笑うしかなく、金だけとられることになったあの哀れな少年に同情する。
「あ、勇太君、カドマツ、ロボ太!!」
ちょうどプレイし終えたミサがシミュレーターの外に出て、勇太とカドマツ、ロボ太に向けて手を振る。
また、灰色のジャンバーを着たサクラもシミュレーターから出てきた。
(サクラさん、暑くないのかな?)
「よぉ、あんたがサクラって子か。俺はカドマツ、ハイムロボティクスのメカニックで、今はこいつらの世話をしてる」
「凛音桜です。2人がお世話になっています」
「んじゃあ、せっかくだから、4人でプレイしてもらうか」
「ん…?それはどういう…」
勇太の質問に答えることなく、カドマツはシミュレーターとノートパソコンをケーブルで接続する。
そして、カタカタとキーボードを数分操作すると、シミュレーターに新しいステージが追加された。
なお、自分で作ったステージを読み込み、プレイすることができるシステムは最近のアップデートで追加された新しいシステムだ。
「よし、お前ら。今追加したステージでボスを倒して来い」
「え…?その…ロボ太のことは…?」
ロボ太のパワーアップとそのステージのボスに何の関係があるのか?
もしかして未完成で、そのボスを倒すことで完成させることができるのか?
何も答えないカドマツに首をかしげながら、勇太はロボ太、ミサ、サクラと共にシミュレーターに入った。
「うわぁ、勇太君のバルバトス、すっごくイメチェンしてるー!」
RPGで出るような、中世ヨーロッパの城内を模したフィールドに出たミサは勇太のバルバトスを見て、目を丸くする。
熱血とは程遠いイメージの強い勇太に反して、今のバルバトスが闘志を宿した紅蓮の炎を宿しているように見えた。
「赤はエースの色だしね」
超大型メイスを手にし、これから現れる相手に備える。
ミサのアザレア・パワードとサクラのブリッツ・ヘルシザース、ロボ太の騎士ガンダムも勇太にならうように構えた。
「では、いくぞ。戦士ガンキャノン、僧侶ガンタンク、妖精ジムスナイパーカスタム!」
「誰がだ」
(ん…まさか、カドマツさん。ロボ太のプログラムに何か細工でも…)
いつもなら主殿、ミサと呼ぶはずの彼がまるでラクロアの勇者の主人公、騎士ガンダムになりきり、自分たちを旅の仲間の名前で呼んでいる。
おまけに今回のステージも、それに合わせた環境となっており、更にゴブリンザク数機と騎士サザビー、騎士ゲルググ、モンスタージャイアントジオングまで登場する始末。
「ま、まあ…いいか。前へ出るよ!ロボ太!」
超大型メイスで接近してくるゴブリンザク数機を弾き飛ばす。
初代メイスの倍以上の大きさのこのメイスは一撃で彼らをバラバラに粉砕していた。
しかし、ロボ太は前に出ないばかりか、勇太の言葉に一切返事をしない。
「あ、あれ…?」
「勇太、多分…今のロボ太君はロボ太君じゃないみたい」
「え…?じゃ、じゃあ…行こう、騎士ガンダム!」
「心得た、戦士ガンキャノン!」
勇太にうなずき、前に出た騎士ガンダムが電磁スピアを手にし、ビームガンで騎士サザビーをけん制する。
「うう…サイズ差のせいで狙いにくい…!!」
アザレア・パワードはミサイルやビームマシンガンで攻撃するが、小型なSDガンダム達はゆうゆうと攻撃をかわし続ける。
小型の目標を攻撃するのはミサイルの迎撃くらいしかやったことがなく、おまけに火力を重視しているアザレア・パワードではこういうタイプのものには対処しづらい。
「ミサ、相手の動きをよく見て。SDガンダムはいずれもコンピュータ制御。モビルドールと同じで、動きがわかればただの人形よ。それに…」
「逆に言うと、当たったらどうにかなっちゃうってこと、だね!」
ビームマシンガンの発射を辞め、アザレア・パワードは周囲の敵SDガンダムの動きを確認する。
バルバトスはさすがに超大型メイスで小型機との戦闘は無理と判断し、バックパックにマウントされているビームショットガンを散弾モードで発射している。
騎士サザビーは右へブーストステップして回避しようとするが、散弾になったことで攻撃範囲が拡大し、左足と左腕にビームがかする。
そして、このまま正面から攻撃は無理と判断し、背後へまわろうとした。
「今よ!」
「とぉりゃあ!!」
GNバズーカが発射され、騎士サザビーが自分から射線上に入る形でGN圧縮粒子の光に包まれていく。
ビームが消えたときには、射線上にいたはずの騎士サザビーは消滅しており、アザレア・パワードのモニターからも反応がロストしていた。
「当たった!!」
「見事だ、僧侶ガンタンク!」
「誰がガンタンクだ!?」
褒めてもらっているということは分かっているが、やはりおかしな呼び方に不満を覚え、文句を言ってしまう。
その間に、騎士サザビーが倒されて動揺を見せるゴブリンザクをブリッツ・ヘルシザースがビームライフルを連射して次々と撃破していき、目の前のモンスタージャイアントジオングに向けて左腕のギガンティックシザースを展開し、挟み込む。
モンスタージャイアントジオングは両手でギガンティックシザースの左右をつかみ、そのまま自慢の怪力で開こうとしている。
実際に、モンスタージャイアントジオングに握られている部分にはひびが入り始めている。
「すごい怪力ね。でも、一度挟まれたら最後…あなたは終わりよ」
ギガンティックシザースに内蔵された砲からビームが何度も発射される。
胴体を何度も撃ち抜かれたモンスタージャイアントジオングの力が弱まり、そのまま挟みつぶされる形で撃破される。
「全員、飛んで!!」
全員に通信を送った勇太は超大型メイスを床に突き刺し、破砕砲をバルバトスに持たせ、上空へ飛ぶ。
背中に天井を張り付け、両腕のワイヤークローを突き刺し、破砕砲の照準をステージ中央の床に向ける。
ミサ達が上空へ飛んだのを確認すると、破砕砲から一発の弾丸が発射される。
着弾と同時に床に大きなクレーターができ、それによる衝撃波で騎士ゲルググと生き残ったゴブリンザクが吹き飛ばされる。
「はああああ!!」
吹き飛ばされた敵機に向けて、ナイトソードを手にした騎士ガンダムが突っ込んでいく。
苦しまぬようにという情けか、それらの敵に一撃ずつ剣を叩き込み、攻撃を受けた機体は爆発した。
下へ降りたバルバトスは無傷で残っている超大型メイスを手にする。
「よし、先へ進むぞ」
破砕砲の余波でボロボロになった螺旋階段を騎士ガンダムが先に上っていく。
いつもならありえないようなロボ太の動きにきょとんとしながら、バルバトス達はスラスターを利かせて上昇する。
さすがにロボ太のように螺旋階段を上るのはサイズ的にも、階段そのものが受けたダメージを考えても、無理な相談だった。
「…誰だ、お前は?」
血が塗られているかのような赤い三日月が照らす広間の中、赤い玉座に座るサタンガンダムが正面のドアを切り裂いて入ってきた騎士ガンダムと3機のモビルスーツを見て、彼らに尋ねる。
SDガンダムであるにもかかわらず、ディビニダドクラスのサイズで、ロボ太達を見下ろすように見ている。
「私の名はガンダム!」
「ガンダム…?」
(いや、ロボ太でしょ?カドマツさん、後で直せますよね…?というより、まさかさっき戦ったのとサタンガンダムがロボ太の新しい機体として使えるようになるってじゃ…)
その場のノリについていけていない勇太はカドマツが言っていたことについて考える。
空気を読んで、口に出さないだけは立派かもしれないが、超大型メイスは自分のそばに突き刺しておいている。
「そうだ、貴様と同じ名前!私は自分の名前以外、何も知らない。なぜ、貴様と同じ名前なのかも知らぬ」
設定として、記憶喪失ということになっているロボ太がナイトソードの剣先をサタンガンダムに向ける。
「しかし貴様のやっていることは許せん!」
「なにこれ…」
(まぁ、考えるのはあとにしよう。あとは集中して…)
ミサがポカンとする中、何かの準備を終えた勇太は深呼吸をし、集中し始める。
「小賢しい…ッ!!雑魚は引っ込んでいろッ!!」
「キャア!」
サタンガンダムが持つ髑髏付きの杖が光り、そこから発生する稲妻がアザレアを襲う。
稲妻の直撃を受けたアザレアは後方の壁に吹き飛んでいく。
電撃を受けたことで、電子回路へのダメージの懸念があったものの、幸いなことにダメージは軽微で、戦闘続行可能となっている。
「ミサ(ちゃん)!!」
「僧侶ガンタンク!」
「誰がガンタンクだ!」
やはり納得できないのか、床に座り込むアザレアは右腕を上に掲げて抗議する。
「防御力が低い僧侶ガンタンクは敵に第一に狙われる…と…」
「サクラ!冷静に分析しないで!!」
「身の程知らずが…」
サクラに冷静に観察されるミサに対して、サタンガンダムが吐き捨てる。
仲間をバカにされたことで、ついに勇者の怒りが爆発する。
「っ…貴様は勇者の名を汚す者!消えて無くなれーーー!!」
「馬鹿め!消えてなくなるのはきさ…」
ズドォン、と大きな銃声が響き渡り、サタンガンダムの胸部に大穴が開く。
何が起こったのかわからず、サタンガンダムは胸の穴に手を当て、あおむけで倒れる。
「ありがとう、騎士ガンダム。おかげで準備ができたよ」
ロボ太を除く2人の目線がバルバトスに向けられる。
その手には破砕砲が装備されていて、銃口からは白い煙が出ている。
また、覚醒しているため、青いオーラに包まれており、展開された両肩と頭部後方の排熱ユニットから熱が放出されている。
頭の排熱ユニットからはポニーテール状の放熱索が出ており、余剰エネルギーがあるためか、光の粒子が発生している。
「…何、やってるの?」
「何って…名乗り終わったみたいだから、そのままズドンと撃っていいん…だよね?」
「当たり前…なわけないじゃん!!こういう前振りの時は遠慮するのがお約束でしょ!?」
「いや…だって僕、こういうの、よくわからないから…」
「言い訳じゃん、それ!!ちょっと空気を読んだらそれくらい…」
「ちょっと、2人とも。まだステージクリアになっていないわよ。ミサの言うお約束が…もう1つあるわ」
サクラの言葉で我に返ったミサと勇太は倒れたサタンガンダムを見る。
黒いオーラに包まれ、上空を浮遊しながら起き上がったサタンガンダムのマントが開き、それが巨大な悪魔の翼へと変化する。
「フハハハハハ、愚か者!そのような豆鉄砲で死ぬ魔王ではないわ!!」
「貴様…生きていたか!」
「これこそがわれの真の姿、その名は…モンスターブラックドラゴン!ガンダムを超えた存在だ!!」
高らかに自分の新たな名前を宣言し、杖を天にかざす。
すると、上空に黒い雷雲が出現し、それから次々と雷が天井を突き破って降り注ぐ。
「くっ…!!」
破砕砲を手放し、超大型メイスを抜いたバルバトスがその場を離れ、落雷は破砕砲を粉々に粉砕する。
「わわわ…こんな攻撃、見たことも聞いたこともないよ!!」
「さすがはファンタジー系RPGね…。そういう設定だと、この攻撃もありになる!」
モンスターブラックドラゴンに向けてビームライフルを撃つが、黒いオーラに阻まれ、霧散する。
「あのオーラ、バリアになってるの!?」
「ふん…あの戦士の戦士にあるまじき奇襲攻撃には驚いたが、この黒いオーラがあれば、いかなる攻撃も効かん!」
杖から放たれた黒いビームが騎士ガンダムのナイトソードの刀身を焼き尽くす。
「く…ならば、そのオーラが消えるまで攻撃を続けるだけだ!!」
「そういうことなら私も!!」
ナイトソードを捨て、電磁スピアを手にした騎士ガンダムが突撃し、アザレアがGNバズーカを最大出力で発射する。
騎士サザビーを消滅させたそのビームがモンスターブラックドラゴンに直撃する。
そして、ビームが消えると同時にその場所めがけて騎士ガンダムが電磁スピアで貫こうとするが、投げる直前にモンスターブラックドラゴンに胴体をわしづかみにされる。
「何…!?」
「馬鹿め…その程度の火力で我がオーラを払えると思ったか!?」
無傷のモンスターブラックドラゴンが笑いながら手に力を入れていく。
ミシミシと騎士ガンダムの体にひびが入り、更に落雷まで受けたことで電磁スピアが破壊されてしまう。
「ああ…ロボ太の最後の武器が!!」
「ロボ太!!」
もう騎士ガンダムと呼ぶ気がなくなった勇太が超大型メイスを手にモンスターブラックドラゴンに向けて、落雷をよけつつ接近する。
「フハハハハハハ!!」
笑うモンスターブラックドラゴンの目からビームが発射される。
追尾性のない、直線的なビームであったため、あっさりと回避できたが、そのビームは床や天井、更には落雷に当たることで次々と方向を変えていき、バルバトスのバックパックに命中する。
「しまった…!!」
バックパックへの攻撃によりスラスターにダメージが発生し、バルバトスは大きく失速する。
それを逃すまいと、モンスターブラックドラゴンは目から何度もビームを発射する。
何かに接触することで何度でも軌道が変化するそのビームはミサやサクラにとっても脅威で、もはや避けるだけで精一杯になる。
「おのれ…これまで、なのか…フラウ姫ーーー!!」
「覚醒の持続時間はあと1分。使えるのはワイヤー・クロー2基と超大型メイス。ビームショットガンは…無理か…」
バックパックへの攻撃により、サブアームも操作できなくなっており、マウントしているビームショットガンが使用できなくなっていた。
たとえ使えても、最大出力のGNバズーカをしのぐ黒いオーラを吹き飛ばすことはできないが。
破砕砲はすでになく、あとは運を天に任せて超大型メイスを投擲するくらいだ。
「…ノン、戦士ガンキャノン…」
「え…フラウ・ボウ、もしくはフラウ・コバヤシ??」
急に通信で聞こえてきた声にびっくりし、その声の正体と思われる人物を口にする。
「私はフラウ、ラクロアの姫です」
「え…?」
いや、声だけ聞いていたら間違いなくアムロに世話を焼き、ハヤトと結婚したあのフラウでしょ、と思いながらも、勇太は黙って彼女の話を聞く。
「サタンガンダムを包んでいるオーラは絶対防御の闇の力。普通の武器では破壊できません。しかし、ラクロア王国の伝説として語り継がれている三種の神器があれば、それを払うことができます」
「三種の神器…草薙の剣と八尺瓊勾玉、それから八咫鏡のこと!?」
「…今のあなたになら、それを召喚することができます」
「え…無視…?」
「あなたに宿る力のすべてをそのメイスに込めて、上空に投げてください。そうすれば…」
「まぁ…クリアするには、これしかないってことか!!」
通信が切れると同時に、勇太は再び集中し、バルバトスは立ち上がる。
バルバトスを包む青いオーラが超大型メイスにすべて吸収されていき、それが青い炎を宿したかのようなエフェクトを発生させる。
「いっけぇぇぇ!!」
上空の雷雲に向けて、超大型メイスを投げ込む。
雷雲を貫き、霧散させた超大型メイスはグングン高度を上げていき、上空に浮かぶ赤い月に命中する。
そして、月が砕けると同時に太陽が出現した。
「何ぃ…太陽、だとぉ!!?」
太陽の光で目がくらみ、力が緩んだすきに騎士ガンダムは脱出する。
そして、太陽から赤・緑・青の光が彼に向けて振ってくる。
光りを受けた騎士ガンダムはボロボロになった鎧と楯をパージし、炎の剣・力の盾・霞の鎧が新たに装備されていく。
「ば、馬鹿な!?三種の神器だと!?」
「これが…ロボ太の新しい力…??」
三種の神器を装備した騎士ガンダム、フルアーマー騎士ガンダムを見たミサはオオーッと目を輝かせる。
「感じる…フラウ姫の想い、皆の想いが神器に…うおおおおお!!」
紅蓮の炎を宿した炎の剣を抜いたフルアーマー騎士ガンダムがモンスターブラックドラゴンに突撃する。
炎に触れた黒いオーラは炎上し、その炎を突っ切る形で騎士ガンダムは懐にとりつく。
「おのれ…!オーラを破っただけでいい気になるなぁ!!」
再び握りつぶそうと手を伸ばすが、急にその場からフルアーマー騎士ガンダムは姿を消し、頭上に姿を現して盾で殴りつける。
光りの力が宿った力の盾の一撃を受けたモンスターブラックドラゴンの頭部からは白い煙が発生し、彼自身も激痛を感じている。
「馬鹿な…この私が、ガンダムを超えたこの私がーーー!!」
「貴様は超えたわけじゃない!力におぼれ、ガンダムを捨てただけだぁーーー!!」
炎の剣がモンスターブラックドラゴンを一刀両断する。
真っ二つになった魔王の肉体はそのまま炎で焼かれ、消滅してしまった。
「星降るとき、大いなる地の裂け目から神の坂を持ちて勇者現る。その名は…ガンダム。こうして、ラクロアに平和が訪れたのだ」
シミュレーターから出てきた4人の前で、カドマツがまるでストーリーテラーのようにエンディングのセリフを口にする。
ロボ太の手には三種の神器の換装パーツが握られていて、興味津々に眺めている。
「結局、フルアーマー騎士ガンダムがロボ太の新しいガンプラってこと!?」
「そういうことだ。あと、武者ガンダムとコマンドガンダム、武者ゴッド丸も作っといたから、必要に応じて使ってみてくれ」
「あのさぁ、カドマツ。別に戦う必要なんてなかったよね」
ミサの言う通り、あんなステージを作らなくてもパーツを渡して、それに換装してテストプレイをすれば済む話。
なぜこんなまどろっこしいことをしたのか、彼女には全く理解できなかった。
「ロマン…ね」
「そういうことだ。いやぁー、サクラちゃんは分かってくれてうれしいぜ。んじゃ、帰って寝るわ。徹夜でステージ作って、疲れたからなぁ」
フアアアと大あくびをしながら、カドマツはゲームセンターを出ていく。
ロボ太は勇太の手を引っ張り、シミュレーターへ連れて行こうとしている。
「…わかったよ。新しいパーツに慣れておかないとね」
仕方ないなと思い、勇太はロボ太と一緒に再びシミュレーターに入る。
カドマツが出ていったドアをじっと見ていたミサは大声で叫び出した。
「あれ全部、自作かよーーーー!!!!」
機体名:バルバトス・レーヴァテイン
形式番号:ASGT-00BR
使用プレイヤー:沢村勇太
使用パーツ
射撃武器:500mm破砕砲
格闘武器:超大型メイス
頭部:ガンダムバルバトス(頭部後方に放熱ユニット装備)
胴体:ガンダムバルバトスルプス
バックパック:ガンダムバルバトスルプス(ビームショットガンをマウント)
腕:ガンダムバルバトスルプス(両腕にワイヤークロー装備)
足:ガンダムバルバトスルプス(両腰にガーベラ・ストレートとタイガー・ピアスをマウント)
盾:なし
ジャパンカップに備えて、勇太が作ったガンプラ。
バルバトスそのものは元々、タイガーとの戦いのために即席で作ったものをミサが手直ししたものであり、性能よりも勇太自身の腕と覚醒によって勝ち進めることができた。
しかし、それはある意味ごり押しであり、ジャパンカップとなるとそれで勝ち進めるほど甘くないことから、バルバトスそのものは新規で作ったものを使用している。
覚醒の使用を鑑みて、頭部後方に新たに放熱ユニットを装備し、更に太刀についてはレッドフレームの刀であるガーベラ・ストレートとタイガー・ピアスを腰につけた鞘にマウントし、弾数に問題のあったビームガトリングガンを撤去した。
その代替措置として、バックパックにはビームショットガンがマウントされており、破砕砲とは異なり取り回しを重視して、銃身は短くなっている。
カラーリングは白と赤の2色で構成されており、その赤が炎に近い色になっていることから、炎の魔剣であるレーヴァテインの名前が加わることになった。
なお、超大型メイスの装備に当たりガンダムバルバトスルプスレクスの腕を採用するというプランがあったが、破砕砲がマニピュレーターと適合しなくなること、チーム戦ではミサの武器を借りるケースがあり得ることがあり、見送られた。