漫画とアニメを足して二で割った展開です。
高台に立ち周辺を見渡すのは、セイバーの手に堕ち、汚染されたシャドウアーチャー──エミヤ。イレギュラーが紛れ込んだ、というセイバーオルタの言に従い、閑散とした街へ偵察に来ていた。
今なお雲隠れしてしぶとく生き残っているキャスターを討ち、それを以って完遂するはずだったセイバーオルタの計画に狂いが生じていることは、彼女から詳細の語られていないエミヤにも理解できていた。
黒き騎士王の予言を証明するかのように、鷹の目で捉えた光景が物語っている。
ライダー、今はシャドウランサーとなったメドゥーサによって、街の人間は全て石化したはずだった。だが、かつての記憶を刺激する髪を持つ、二人の少女がそこに居た。
どこかに隠れていたのかどうかは定かではないが、やることは変わらない。
二人の内一人は、何の変哲もない一般人のように思えたが、これまでの経験則は二人の少女を異分子と断定し、エミヤはそれに従って排除を行う。
エミヤは慣れ親しんだ黒弓と捻じれた剣を投影し、いつものように構える。
────何もなければこれで片が付くはずだが、さてどうなるか。
相手の力は未知数であるが、万一のことを考えながら、エミヤは剣を放つ。
『
驚く結果になった。エミヤの放った剣は、盾を持った薄紫の髪を持つ少女に止められた。手を変え品を変え、様々な剣を矢にして放ったが、全て止められた。
やはり英霊か、エミヤがそう思うのも無理はなかった。
最大まで威力を上げることなく放ったとはいえ、仮にも宝具による弾幕攻撃だ。しかも、
この結果が突き付ける事実は、厄介なイレギュラーのマスターとサーヴァントが、一人と一騎増えたことである。
それにしても、エミヤの腑に落ちないのは、あの盾だ。
弾幕を張る間、じっくりと解析していたが、例外を除いて大体の宝具を解析できるエミヤを以てしても、盾の使い方が分からない。
盾の使用に何らかの特殊な条件があるのか、それとも盾の本来の用途ではないか。そう予想したが、どちらでも構うことではなかった。
使い方は兎も角、エミヤにはその正体が分かっている。大方、
盾が突破できないことは、エミヤによって実証された。ならば、盾を狙わなければいい。
どんなに強固でも、守ることのできる範囲には限りがある。
例えば、建物を狙撃して一斉に瓦礫を落としたら、果たして守り切れるものだろうか。
照準を建物に合わせようとした時、エミヤは身の危険を感じて本能的に回避する。
エミヤが立っていた場所には火球が襲来し、あわや焼き尽くされるところだった。
飛来してきた方向にエミヤがゆっくりと目を向ければ、雲隠れしていたはずのキャスターがニヤリと笑っていた。
交戦してキャスターを討伐したいところだが、エミヤは得た情報をセイバーオルタの元に持ち帰るべきだと判断した。
一度鼻で笑うと、キャスターが追撃してくる前にエミヤは戦場から離脱した。
セイバーオルタにエミヤが粗方の情報を伝えると、沈痛な面持ちのセイバーオルタは洞窟前の警護をエミヤに命じた。
汚染されても、そこそこ付き合いの長いエミヤには、セイバーオルタが断腸の思いで決断したと察することができた。
それほどまでに、あの少女達は難敵なのだろう。そして予想が正しければ、キャスターはあの少女達と接触を図るだろう。いや、図ったのだろう。
エミヤの目の前には、その答えが在ったのだから。
洞窟前の崖、その茂みで待ち伏せていたエミヤの視界は、キャスターと少女達を捉えている。
崖の上という地の利を生かし、これ幸いにと背後から先制攻撃を仕掛けたが、警戒していたキャスターに阻まれる。
『へっ、信奉者のお出ましか。相変わらずセイバーのお守りをしてんのか、アーチャー?』
『生憎、信奉者になったつもりはないがね。まあ、門番程度の仕事は果たすさ』
飽きるほど顔を見合わせた、槍無しのキャスターと軽口を叩きあうが、エミヤはそこで初めてマスターであろう何の変哲もない少女と顔を合わせる。
盾の少女に守られていた時は、その陰に隠れていたためはっきりと見えなかったが、少女の瞳は強い意志を持っていた。彼女が何の変哲もないなんてとんでもない。こういう瞳を持った人間は強い。
エミヤの意識に断片的に浮かぶ、強い意志を持った少女と共に戦い抜いた記憶、かつて強い意志を以って鞘を投影した記憶。
その記憶があるからこそ、エミヤは油断しない。目の前の少女は、全力を尽くして戦うべき相手である、そう理解している。
エミヤは黒白の双剣を投影し、崖から飛び降りた。
エミヤの予想以上だった。無論エミヤは一切の油断なく戦った。しかし、その結果が敗北だ。
キャスターと盾の少女を指示していたマスターの少女は、エミヤの戦力を上回った。
固有結界を発動する間もない連携攻撃に、初見であるキャスターの魔術が決まり手となった。
練度の高さから、ここに来るまでに作戦を練ってきたのだろう。
やはり、あの時無理をしてでもキャスターを討っておくべきだった。そう後悔しても遅い。
『すまんな、セイバー』
セイバーオルタに謝罪をすると同時に、やはりあのタイプは敵に回したくない、とエミヤは心の中で思った。
そしてエミヤは、カルデアでマスターの少女──藤丸立香と再会することになる。
はあ、最悪よ。
突然レイシフトしたと思ったら、藤丸立香っていう一般公募のマスター候補生とデミ・サーヴァントになったマシュしか居ないし、カルデアにはロマニ・アーキマンしか指揮の執れる人間が居ないなんて。
レフはどこに行ったの? はやくあなたに会いたい……レフ。