女難な赤い弓兵の日常inカルデア   作:お茶マニア

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時間が取れないので、こっちを先に投稿します。
漫画とアニメを足して二で割った展開です。


シャドウアーチャーと炎上汚染都市(微ネタバレ含む)

 高台に立ち周辺を見渡すのは、セイバーの手に堕ち、汚染されたシャドウアーチャー──エミヤ。イレギュラーが紛れ込んだ、というセイバーオルタの言に従い、閑散とした街へ偵察に来ていた。

 今なお雲隠れしてしぶとく生き残っているキャスターを討ち、それを以って完遂するはずだったセイバーオルタの計画に狂いが生じていることは、彼女から詳細の語られていないエミヤにも理解できていた。

 黒き騎士王の予言を証明するかのように、鷹の目で捉えた光景が物語っている。

 ライダー、今はシャドウランサーとなったメドゥーサによって、街の人間は全て石化したはずだった。だが、かつての記憶を刺激する髪を持つ、二人の少女がそこに居た。

 どこかに隠れていたのかどうかは定かではないが、やることは変わらない。

 二人の内一人は、何の変哲もない一般人のように思えたが、これまでの経験則は二人の少女を異分子と断定し、エミヤはそれに従って排除を行う。

 エミヤは慣れ親しんだ黒弓と捻じれた剣を投影し、いつものように構える。

 ────何もなければこれで片が付くはずだが、さてどうなるか。

 相手の力は未知数であるが、万一のことを考えながら、エミヤは剣を放つ。

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

 

 驚く結果になった。エミヤの放った剣は、盾を持った薄紫の髪を持つ少女に止められた。手を変え品を変え、様々な剣を矢にして放ったが、全て止められた。

 やはり英霊か、エミヤがそう思うのも無理はなかった。

 最大まで威力を上げることなく放ったとはいえ、仮にも宝具による弾幕攻撃だ。しかも、壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)を併用しても、盾の少女が守る者はおろか、あの一枚の盾すら突破できなかった。

 この結果が突き付ける事実は、厄介なイレギュラーのマスターとサーヴァントが、一人と一騎増えたことである。

 それにしても、エミヤの腑に落ちないのは、あの盾だ。

 弾幕を張る間、じっくりと解析していたが、例外を除いて大体の宝具を解析できるエミヤを以てしても、盾の使い方が分からない。

 盾の使用に何らかの特殊な条件があるのか、それとも盾の本来の用途ではないか。そう予想したが、どちらでも構うことではなかった。

 使い方は兎も角、エミヤにはその正体が分かっている。大方、花の魔術師(マーリン)が裏で手を引いているのだろう。()の魔術師はどこまで把握しているのか、全くもって見当がつかないが。

 盾が突破できないことは、エミヤによって実証された。ならば、盾を狙わなければいい。

 どんなに強固でも、守ることのできる範囲には限りがある。

 例えば、建物を狙撃して一斉に瓦礫を落としたら、果たして守り切れるものだろうか。

 照準を建物に合わせようとした時、エミヤは身の危険を感じて本能的に回避する。

 エミヤが立っていた場所には火球が襲来し、あわや焼き尽くされるところだった。

 飛来してきた方向にエミヤがゆっくりと目を向ければ、雲隠れしていたはずのキャスターがニヤリと笑っていた。

 交戦してキャスターを討伐したいところだが、エミヤは得た情報をセイバーオルタの元に持ち帰るべきだと判断した。

 一度鼻で笑うと、キャスターが追撃してくる前にエミヤは戦場から離脱した。

 

 セイバーオルタにエミヤが粗方の情報を伝えると、沈痛な面持ちのセイバーオルタは洞窟前の警護をエミヤに命じた。

 汚染されても、そこそこ付き合いの長いエミヤには、セイバーオルタが断腸の思いで決断したと察することができた。

 それほどまでに、あの少女達は難敵なのだろう。そして予想が正しければ、キャスターはあの少女達と接触を図るだろう。いや、図ったのだろう。

 エミヤの目の前には、その答えが在ったのだから。

 洞窟前の崖、その茂みで待ち伏せていたエミヤの視界は、キャスターと少女達を捉えている。

 崖の上という地の利を生かし、これ幸いにと背後から先制攻撃を仕掛けたが、警戒していたキャスターに阻まれる。

『へっ、信奉者のお出ましか。相変わらずセイバーのお守りをしてんのか、アーチャー?』

『生憎、信奉者になったつもりはないがね。まあ、門番程度の仕事は果たすさ』

 飽きるほど顔を見合わせた、槍無しのキャスターと軽口を叩きあうが、エミヤはそこで初めてマスターであろう何の変哲もない少女と顔を合わせる。

 盾の少女に守られていた時は、その陰に隠れていたためはっきりと見えなかったが、少女の瞳は強い意志を持っていた。彼女が何の変哲もないなんてとんでもない。こういう瞳を持った人間は強い。

 エミヤの意識に断片的に浮かぶ、強い意志を持った少女と共に戦い抜いた記憶、かつて強い意志を以って鞘を投影した記憶。

 その記憶があるからこそ、エミヤは油断しない。目の前の少女は、全力を尽くして戦うべき相手である、そう理解している。

 エミヤは黒白の双剣を投影し、崖から飛び降りた。

 

 エミヤの予想以上だった。無論エミヤは一切の油断なく戦った。しかし、その結果が敗北だ。

 キャスターと盾の少女を指示していたマスターの少女は、エミヤの戦力を上回った。

 固有結界を発動する間もない連携攻撃に、初見であるキャスターの魔術が決まり手となった。

 練度の高さから、ここに来るまでに作戦を練ってきたのだろう。

 やはり、あの時無理をしてでもキャスターを討っておくべきだった。そう後悔しても遅い。

『すまんな、セイバー』

 セイバーオルタに謝罪をすると同時に、やはりあのタイプは敵に回したくない、とエミヤは心の中で思った。

 

 そしてエミヤは、カルデアでマスターの少女──藤丸立香と再会することになる。

 

 




 はあ、最悪よ。
 突然レイシフトしたと思ったら、藤丸立香っていう一般公募のマスター候補生とデミ・サーヴァントになったマシュしか居ないし、カルデアにはロマニ・アーキマンしか指揮の執れる人間が居ないなんて。
 レフはどこに行ったの? はやくあなたに会いたい……レフ。

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