「野分、起きなさい」
優しく体を揺すられると同時にけたたましく鳴る野分の携帯の音が頭に響きました。
音のなる方を手を伸ばし、それを掴むとディスプレイに表示されているアラームの画面を指でなぞりました。
「二度寝しないで」
加賀さんの厳しい指摘に野分は嫌がる体に鞭を打って状態をあげました。
「……おはようございます」
「おはよう。頭がすごいことになってるわよ」
加賀さんに指摘され、頭に手をやるとあっちこっちに跳ねているのがわかります。
「顔を洗いに行ってきます」
野分はそう言いベッドから立ち上がるジャラッという音と共にグイッと引っ張られ、後頭部からベッドにダイブしてしまいました。
「……大丈夫? まだ寝ぼけているの?」
目の前にはひっくり返った加賀さんの顔がこちらを覗き込んでいます。加賀さんは野分の目の前に自分の手首を持ってくると、手錠を指差しました。
「外してくれる? このままじゃ顔洗えないでしょ?」
「すっかり忘れてました」
野分はポケットから鍵を取り出すと、手錠を外しました。加賀さんは解放された手首を摩ると、意地悪そうに野分を見ました。
「まさか手錠で繋がれたままあなたと一夜を共にするなんてね」
「たった三時間です。誤解を招くような言い方をしないでください」
ーーーー
身支度を整え、オフィスに加賀さんを案内すると、加賀さんは日向さんの席に座りました。野分は自分の椅子を日向さんのデスクの対面まで運ぶと、加賀さんは腕を組み、こちらを見ました。
「それで、どういうことか説明してもらえるかしら?」
「……今回の加賀さんの誤認逮捕は日向さんに変わって野分が謝ります」
野分が深々と頭を下げると、頭の上から不満げな加賀さんの声が聞こえました。
「二十点ね。まず自分の組織の人間に敬称はいらないわ」
「すいません」
「それに、私は説明を求めているのよ」
野分はゆっくり顔をあげると、片眉を吊り上げた加賀さんが野分のことを見ていました。
「まず、日向さん……日向の別の捜査ですが、これは無関係ではなさそうです。むしろ確信に迫っているものだと思います」
「確信? 意味がわからないのだけど」
「加賀さんも仰っていたじゃないですか。日向はリアリストだと。そんな人が無関係な捜査に乗り出すとは思えません」
「それで、どういう捜査をしているのかしら?」
「海軍関係者OBの不当な天下りについて……です。加賀さん、何か知っていますか? 例えば、空港の関連会社の上に海軍関係者OBがいる……とか」
加賀さんは少し驚いたような顔をすると、満足げな顔に変わりました。
「そこまで調べがついていたのね」
「これはあくまでも野分の勘です。そして日向の捜査内容については野分達は一切知りません」
「それで、私をダシに使ったと」
「すいません」
「いえ、構わないわ。むしろそういう話はよく聞くわ。それで?」
「この続きは現地でしましょう」
野分は足柄さんのデスクからヘルメットを取り出すと加賀さんに渡しました。
「……私の運転はそれなりだと思うのだけど?」
「下手な人がそう言うんです。それに、時間も車も無いんで……少し怖いかもしれないですけど、我慢してください」
野分も自分のデスクからメットを取り出しました。
「……なんでもいいわ。はやく行きましょう」
ーーーー
以前、足柄さんがどんなに高い高級スポーツカーも都会の渋滞の前では自分には敵わない、と自慢していましたが、それを実感する日が来るとは思いませんでした。
「速いわね……それに楽しいわ」
空港の正面に足柄さんのバイクを止め、先に降りた加賀さんが興味深そうにバイクを眺めていました。
「楽しいかどうかはわかりませんが、速いのは確かですね」
バイクを降り、ヘルメットを外して脇に抱えると、警備員が声をかけてきました。
「お姉さん達。ここは駐車スペースじゃないよ」
「緊急事態よ。これぐらい多めに見なさい」
野分が身分証を見せようとすると、加賀さんが被っていたヘルメットを外し、その警備員を見ました。
「か……加賀さんッ?! 大丈夫だったんですか?」
「大丈夫も何も、私は何もしていないわ」
「だから心配だったんですよ。上からは何も言うなって圧かけられて何も言えませんでしたから……」
「みんな薄情ね」
「そういうわけじゃないですって!」
「なんでもいいわ。邪魔なら、邪魔にならない場所に動かしておいてちょうだい。野分、鍵を彼に渡して」
少し不安もありましたが野分は鍵を警備員の方に渡しました。
「ロクダボですか……なかなかいい趣味してらっしゃるようで」
「これは野分のじゃありません。先に来ている人のやつです」
「……もしかして、長い茶髪のお姉さん?」
「そうですが……何故それを?」
「そのお姉さんにも、非常事態だから車動かしといてって言われましたから」
「……ご迷惑をおかけします」
「いいのよ。迷惑をかけているのはこっちなんだから」
加賀さんは冷たくそう言うと、警備員の方を見ました。
「だから、上から何も言うなって……」
「いえ、そうじゃないわ。あなた、バイク詳しそうね。後で話を聞かせてちょうだい」
「えっ……加賀さん、運転出来な……」
「何か?」
「いえ、なんでも無いです」
「そう」
加賀さんはそう言うと、空港の中に入って行きました。野分は警備員の方に一礼し、加賀さんの後を追いました。
ーーーー
加賀さんの姿を見かけた従業員の方は皆一様に驚いた表情をしていました。加賀さんはそれを無視し、関係者しか入れない扉を両手で開けはなちました。
「何をしているの? はやく来なさい」
あまりにも横柄な態度に野分も呆気に取られていました。慌てて加賀さんの後を追いかけると、やはり警備員に止められました。
「ここは関係者以外……」
「その子は私の関係者なのだけど?」
加賀さんに睨まれた警備員は言葉を詰まらせました。加賀さんはそれだけ言うと、無視して歩き出してしまいました。
「海軍特別犯罪捜査局の野分です……あの」
「あぁ……そういうこと。さっき茶髪のお姉ちゃんも強引に通っていったよ」
「ご迷惑をおかけします……」
「いや、いいんだ。あのお姉ちゃんに同僚一人守れない軟弱者って言われて目が覚めたよ。加賀さんのことよろしく頼む」
「わかりました。失礼します」
野分はその方に一礼し、小走りで加賀さんの後を追いかけました。
「加賀さん、どこに向かっているのですか?」
「瑞鶴のところよ。この時間ならいつもの場所にいるはずだわ」
加賀さんは早歩きで動いていますが歩幅が違います。野分は小走りじゃないと追いつけません。途中で、加賀さんをしる方から「妹さん?」と声をかけられましたが、「娘さん?」と言われた時には驚きました。加賀さんはそれに答えることもなく、野分がペコペコ頭を下げながら後を一生懸命ついていきました。きっと後で、加賀さんの娘として話題になるでしょうが、野分にはあまり関係がありません。
「瑞鶴!」
第三休憩室と書かれた部屋の扉を加賀さんは勢いよく開けました。
「あら? のわっちじゃない。どうしたの?」
瑞鶴さんに胸元を掴まれている足柄さんが呑気な声をあげました。
「加賀さんッ!!」
瑞鶴さんは足柄さんから手を離すと、加賀さんに駆け寄りました。
「どうしてセクハラにあっていることを話してくれなかったの?! そんなに私は頼りない?!」
泣き出しそうな目で加賀さんを睨む瑞鶴さんはいじらしいと思います。そんな瑞鶴さんに加賀さんは顔を赤面させました。
「落ち着きなさい……野分、扉を閉めて」
加賀さんに言われた通り、扉を閉めようとすると、通りすがりの人たちが聞き耳を立てていました。中にはヒソヒソと話している人もいます。野分はそんな人たちに一礼すると、扉をゆっくりと閉めました。
「それで、瑞鶴。あなた、そういう被害にはあっていないの?」
「加賀さんはどうなの?!」
「あったといえばあったし、ないといえばないわ」
「どういうこと?」
「だから、落ち着いて話を聞いてと言ったじゃない」
足柄さんは瑞鶴さんに掴まれた胸元を直すと呆れたようにため息をつきました。
「どういうことなの? 何にもわからないよ!」
「だ、か、ら! あなた何か脅迫めいたことされてないかって聞いてるのよッ?!」
足柄さんがついにキレました。寝不足なのもあるでしょうけど、瑞鶴さんが興奮して話を聞かなかったのでしょう。足柄さんがここに来てからはだいぶ経つと思います。それで話が進んでいないとは思いもしませんでした。
「脅迫めいたこと? そういえば、グランドキャビンアテンダントに出向すれば加賀さんが戻ってくるって言われたわね」
「それよ! それであなたはなんて答えたの?」
「えっ? 確証もなかったし普通に断ったけど」
「あなたは私に戻ってきて欲しくなかったのね」
「そういう事じゃなくて! 加賀さんと同じ仕事じゃないと嫌だって言ったの! でもそうしたら加賀さんも同じならいいのかって言われたわ」
「その話はいつしましたか?!」
野分が唐突に声を荒げたことで、瑞鶴さんはビクッと肩を震わせました。
「いつって……昨日だけど……」
足柄さんの方を見ると、足柄さんは黙って頷きました。
「ならまだ間に合いますね……足柄さん、行きましょう! 向こうに動かれたからじゃ面倒です!」
「そうね。急ぎましょう」
「私達も手伝うわ。職員一人一人に聞いて回ったんじゃ二人じゃ足りないでしょう?」
加賀さんはそう言うと、扉をバッと開けました。黒い警備服を着た男性陣がバランスを崩して雪崩れ込んできました。
「話は聞いていたでしょう? これから女性職員がセクハラ、パワハラ被害にあっていないか調べてちょうだい」
「いや……俺たちには仕事が……」
「女の会話を盗み聞くのが仕事なのかしら? 薄情なだけじゃなくて、趣味も悪いわね」
「……あぁ! もう! わかったよ!」
警備員達はゾロゾロと立ち上がると、指示を飛ばし合いました。
「警備区画の女性職員全員から話を聞くぞ。持ち場に戻れ!」
「ほら、走れ! 他の奴には無線で伝えろ! 時間がないんだとさ!」
駆け足で出て行く人や、無線で連絡を取る人を尻目に、加賀さんは瑞鶴さんを連れて部屋を出て行きました。野分と足柄さんも後に続こうとすると、一人の警備員に呼び止められました。
「……本当に今回の件。ご迷惑をおかけしています」
「あら? 加賀にはいなくなってほしいんじゃないの?」
足柄さんが素っ頓狂なことを言うと、警備員はとんでもないと首を横に振りました。
「あの人に抜けられたら警備に大きな穴があきます。いなくなられたら困りますよ」
「なら、今出来ることに全力を尽くしなさい。後は私達がなんとかするわ」
「わかりました!」
「だったらあなたもこんなところで口説いてないで、さっさと話を聞いてきなさい!」
「これは手厳しい」
足柄さんの檄に、警備員は返礼をすると走ってどこかに行きました。
「足柄さん、意外とこういうところではモテそうですね」
「……陸奥のところでもそれなりにモテたけどね。私の趣味じゃないのよ」
それは高望みしすぎじゃないでしょうか。そう思いましたが、口には出しませんでした。
ーーーー
警備員の方が走り回ってくれたおかげで被害にあっていた職員の証言をたくさんかき集めることができました。野分の予想では、ここまで多くの証言が集まるとは思っていませんでしたが、どうも権力を持つと人は大きくなるのか、そんなところまで、と驚くような証言まで得られました。
「スケベというか、男尊女卑というか……怒るのも呆れるのも通り越して感心するわ」
「私も同じ気持ちよ。逆にされてなかった私に自信が持てなくなるわ」
「いやいや、そんな痴女じゃあるまいし……」
先ほどの部屋で集まった証言をメモした紙の小山を眺めていると、急に扉が開きました。みんなの視線が急に現れた人物に集まります。
「すまない。遅くなった」
目の下に大きなクマを作り、髪の毛もボサボサな日向さんがそこにいました。
「……日向?」
まるで別人のような日向さんに、久し振りに会った瑞鶴さんは驚きを隠せていませんでした。
「いかにも日向だ……足柄、状況は?」
「セクハラ、パワハラ被害の証言は集めたわ。ただ、向こうも何か動いてる。そんなに時間はないわね」
「それなら心配しなくてもいい。向こうは今頃加賀が起こした事故の火消しでてんてこ舞いだ」
「……私がやったのではないのだけど?」
加賀さんが不満そうに言うと、日向さんは不敵に笑いました。
「わざと陸運局伝いで捜査して、実行犯を炙り出したんだが……私も寝不足でな。それとほぼ同時のタイミングで加賀が脅迫されて自白したと適当なことを言ってしまってな。夢でも見ていたのだろうな」
「それに意味があるとは思えないのだけど?」
加賀さんは不機嫌そうに日向さんを見ました。
「いえ……効果的ですよ。向こうは加賀さんが釈放されたことを知りません。切ったトカゲの尻尾をどう処理するか。間違えた処理の仕方をすれば、今度は自分たちが切られますから」
「それに、その尻尾はよく燃えそうでな。もっとも、元艦娘を跳ねたんだ。そんなことを請け負う奴も、それを指示した人間も、ろくなもんじゃない」
「なら、これは無意味になりそうね……」
足柄さんが疲れ切った様子で目の前の紙切れを見ました。ですが、日向さんは声をあげて笑いました。
「足柄よ。火を起こしたら薪をくべなきゃならん」
「あなた、なかなか趣味が悪いわね」
加賀さんが呆れたように日向さんを見ていました。日向さんは笑いを堪えきれていませんでした。
「趣味が悪いか。だったらこんなところで作戦会議をしているお前らも人のことは言えんだろう。あれだけ騒ぎ回ったんだ。もうすぐここに来るかもしれん……ほらな」
日向さんがそう言うと、外からドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきました。バンッと扉が開くと、そこには息を切らし、肩で呼吸をするスーツ姿の男性がいました。
「お前ら……なんてことをしてくれたんだ……アァッ?」
ドスの効いた声とでもいうのでしょうか。凄むように話す男性をみんなは白けた目で見ていました。それも当然、この場にはその男性を除いて女性しかいません。野分達の目の前には彼が行ってきた蛮行が記された山があります。
「騒ぐなら後にしてくれ。私も働き詰めなんだ。少し休んだら相手をしてやる。そうだな……明日の昼過ぎなんてどうだ? 二人きりで話し合おうじゃないか。お昼ぐらいご馳走してやるさ」
「何ナメたことを……」
男性が日向さんに掴みかかろうとした途端、加賀さんが逆に男性の胸ぐらを掴み締め上げました。
「ナメたことをしているのはあなたです。赤城さんに手を出したこと、私が許すとでもお思いですか? 本当なら、あなたにも同じ目にあってもらいたい。縛り付けて離陸する飛行機の目の前に突き出してやりたい気持ちですよ」
「加賀さんッ!」
瑞鶴さんが加賀さんを止めようとしましたが、加賀さんの腕はビクとも動きませんでした。
「瑞鶴。安心しなさい。こんなやつを轢く飛行機の方がかわいそうです」
加賀さんはパッと手を離すと、男性はしゃがみこみ咽せてしまいました。
「さて……野分、後のことは任せていいか? 私も足柄もそろそろ限界だ」
大きな欠伸をもらした日向さんは大きく伸びをしました。
「わかりました。連行します。立ってください」
「ねぇ! これどうするの?」
瑞鶴さんがメモの山を指差しました。
「足柄。後でそれのコピーを取って青葉に流してやれ。それで私の仕事も終わりだ」
「結局、あなたは何の捜査をしていたのよ」
「後で話してやる」
日向さんはそう言うと、先に部屋を出ていきました。
ーーーー
日向さんの取り調べはものの一時間で終わりました。
取り調べとは言っても、わかりきった事実を淡々と確認していくだけの作業だったらしく、つまらないと言っていました。
結局、日向さんは航空会社の専務だった彼と実際に指示を出していたその部下、実行した反社会的組織を検挙し、名義を不正に改ざんした陸運局までは検挙しませんでした。
全ての後処理が終わり、短い日数にも関わらず稼働時間が多かった今回の事件を労おうといつもの鳳翔さんのお店で打ち上げが行われることになりました。
「それで、結局日向の目的はなんだったのよ?」
やっとクマが消えたと喜んでいた足柄さんが日向さんに詰め寄りました。
「民間企業の健全化……とでも言おうか」
「わかるように説明を求めます!」
野分がそう言うと、日向さんはつまらなそうに野分を見ました。
「勘が鋭い野分ならこれでわかるかと思ったのだが?」
「わかりません!」
なんとなくはわかるけれど、野分は実際に日向さんの捜査に関わったわけじゃありません。加賀さんと長い時間話していたせいで頭を使いたくないというのが本音ですけど。
「じゃあ私から説明しましょうか?」
向かいに瑞鶴さんと並んで座る加賀さんがこちらを見ていました。野分は頷くと、空になっていた加賀さんのグラスにビールを注ぎました。
「日向は航空会社上層部と外部との不正なやりとりを取り締まろうとしていたのでしょう。空港はその国の玄関口ですから、そんなところで不正をされたら困る……ということでしょう」
「随分と抽象的な言い方をするじゃないか」
「私は捜査機関の人間じゃありませんからね。詳しいことまではわかりません」
「まぁ、それで間違いない。実際、私たちはまだそういった事件には出くわしてないからな」
「あっては困ります。私の仕事の意味が無くなりますから」
加賀さんはグイッとビールを飲み干しました。野分が注ごうとすると、加賀さんはそれを制しました。
「瑞鶴。何をボヤッとしているのですか。スチュワーデスになったんですから、空になったグラスにお酒を注ぐぐらいのことはしなさい」
「えっ?! 瑞鶴スッチーになったの?!」
足柄さんが驚いた様子で食いつきました。野分は加賀さんから話を聞いていたので知ってはいましたけど。
「加賀さんが、無理矢理にね。あなたは警備の仕事に向いてないわ! なんて言われて」
瑞鶴さんが加賀さんのモノマネをしながらいいました。なかなか似ていて面白かったです。
「でも、足柄さん。今時スッチーて……CAと呼んで欲しいわね」
瑞鶴さんがそう言うと、日向さんと足柄さんはポカンと瑞鶴さんを見ていました。
「……えっ?」
「えっと……キャビンアテンダントですよね」
「そうそう。今時スッチーなんておばちゃんからしか聞いたことないよ」
瑞鶴さんが余計な一言を言いました。加賀さんが瑞鶴さんの頭をはたきましたが、日向さんと足柄さんは落ち込んでいました。
「そうか……おばちゃんか……」
日向さんがポツリとそう呟きました。そこにちょうど追加の料理を持ってきた鳳翔さんがボソッと言いました。
「スチュワーデス物語……面白かったですよね」
「あぁ……私もあれを見て航空戦艦になろうと決意したものだ」
「嘘おっしゃい!」
亀の甲より年の功とはよく言ったもので、こういう切り返しが出来るのは羨ましいです。言っている意味はわかりませんけど。加賀さんが笑いを堪えているのを野分ははっきりと見ています。