やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。   作:U.G.N

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 第8話です

 どうぞ



そうは言っても戸塚彩加も意外と……

 とある木曜日

 

「戸塚戸塚戸塚ぁ」

 

「1回で聞こえるよー」

 

 最近は日課になっている戸塚とのベストプレイスでの昼食。

 

「この間のは失敗だったよな?」

 

「そうだね。どうしようもできないもんね。彼氏にって言われると」

 

 この間の好きなシチュエーションはというめぐり先輩への質問は、「彼氏に耳掃除をする」という答えで実行不可ということになってしまった。

 

「……他に何かないか?」

 

「うーん。じゃあシンプルに名前呼びでもしてみたら?」

 

「む、うーん。それはなー……。恥ずくね?」

 

「……いまさら?」

 

 いや、そこは大事なところだと思う。恥ずかしいものは恥ずかしい。

 

「じゃあ今日さっそく呼んでみよっか」

 

「戸塚?ねぇ戸塚君?最近キツくない?俺の話聞いてる?」

 

「……気付いたんだけど、最近の八幡の話は半分聞き流すくらいでいいかなって」

 

 ひどいっ。あの俺に優しかった戸塚は一体どこへいってしまったのか……。いや違うよ?こういう戸塚もいいかもとか思ってないよ?本当だよ?

 

「まぁとにかく、城廻先輩を名前で呼んできなよ」

 

「うっ、マジで?」

 

「マジで」

 

 それなら……

 

「ならその代わりと言っては何だか、俺の夢のことを真剣に考えてくれないか?」

 

「……?どういう意味?」

 

「……実際のところ、小町のことどう思ってる?」

 

 可愛いと思うとは聞いた。だが、小町が可愛いのはわかりきっていることである。俺が聞きたいのはその先にあるものだ。

 

「……どう、というのは?」

 

「好きか、嫌いか……」

 

「……」

 

 すると戸塚が黙り込んでしまう。

 しかし、微かに戸塚の頬が赤くなっている気がしなくもない。これは……。

 

「……こ、小町ちゃんにはその話したの?」

 

「ん?ああ、そういやしてねーな。何だかんだ言ってもう受験間近だしな」

 

「そ、そうだよね。今大事な時期だし、そんなことしてる場合じゃないよ」

 

「だから小町には、受験が終わったら全て話そうと思ってる。まぁ小町も戸塚のことは悪い奴とは全く思ってないしな。むしろ、俺の唯一の男友達だって言ってたし。小町の中ではかなり評価が高いと思う」

 

「え!?そ、そうなのっ!?」

 

 ん?かなり食い付きが良いな。

 

「……戸塚。お前、実は小町のことちょっと気になってるだろ?」

 

 俺の問いに戸塚の肩がピクリと動く。

 

「……は?いやいや、何を根拠にそんなこと言ってるの?まぁそれは小町ちゃんは可愛いと思ってるよ?でもそれと好きは別物だし、まぁ好きか嫌いかで聞かれたら好きの部類にカテゴライズされるかもしれないけど、それは決して恋愛的なアレじゃなくてあくまでも八幡の妹としてって意味だし、ぼくにも小町ちゃんにもまだそういうのは早いと思うし、大体さっきの話だって八幡の予想でしかないわけで、実際小町ちゃんがぼくのことどう思ってるかなんて誰にもわかることじゃないんだから、まずはしっかりと小町ちゃんの気持ちを聞いてからにしてくださいごめんなさい」

 

「お、おう……」

 

 え?急にどしたの?まるでどっかのあざとい生徒会長だったんですけど。すげー早口。しかし、これは焦っているということか?だとしたら何故?いや、理由は簡単だな、さっきの俺の質問だ。あの質問で焦るってことは……

 

 戸塚は早口に疲れたのか、はぁはぁ言いながら顔を赤くし、俺と目を合わせようとしない。

 

「……まぁ、戸塚が小町のこと気になり始めてるってのもわかったし、今日の放課後は俺も頑張るかな。戸塚も頑張れよ」

 

 俺は残りのマッカンを飲み干し、立ち上がる。

 

「まってまって!誰もそんなこと言ってないっ!」

 

 戸塚は俺に終始掴みかかろうとしていたが、俺はそれを避けながら仲良く教室へ戻った。

 

 

 

 

 放課後の図書室

 

「ねぇねぇ比企谷くん」

 

「何ですか?め、城廻先輩」

 

「答辞の入りは一応出来たんだけど、こんな感じでいいよね?」

 

 めぐり先輩は俺に原稿用紙を見せてくる。めぐり先輩の字は良い意味でめぐり先輩っぽくなくて、丸々とした可愛い文字だと思いきや、しっかりとしたとても綺麗な字だった。

 

 原稿用紙には桜の蕾が少し膨らみ始めた……とか、まぁよくある答辞の入りが書かれていた。

 

「まぁ、始めはこれでいいでしょ。問題はここからですから」

 

「そうなんだよねぇ。どんな感じが良いと思う?」

 

 めぐり先輩が俺の顔を覗き込んでくる。だからその上目遣いはズルい。

 

「そ、そっすね。……まぁ答辞なんてのは2種類に分けれるんじゃないですか?」

 

「2種類?」

 

「自分のことを話すか、生徒や先生に向けて話すか」

 

 卒業式には送辞と答辞がある。送辞は在校生が卒業生に向けてするものであるため、まぁいわば、卒業生との思い出などを語ることくらいしかできない。

 

 しかし、答辞となると、自分の3年間の思い出を語り続けるのが1つ。もう1つは先生への感謝の気持ちや同じ卒業生へのお疲れ様的な言葉、在校生への頑張れよ的な言葉といった語りかけである。

 

 そして、卒業生や在校生がちゃんと聞くのは間違いなく後者である。

 

「……正直に言います。答辞で自分のことばかり喋る人の話は特に在校生はほとんどちゃんと聞いてません」

 

「えぇ!?そうなのぉ!?」

 

 俺の言葉に素直に驚くめぐり先輩。あぁ確かにこの人は答辞とか真面目に聴いてそうだもんな。俺?もちろんソッコー寝ますけど?

 

「それに他人の自慢話ほど退屈なものはないってどっかのマスクの先生も言っていましたし、自慢話じゃなくても他人の3年間の思い出を10分近く聞かされても困るだけですから」

 

「そっかぁ、うーん……。あっ!そうだっ!ねぇ比企谷くん。今って何か学園ものの映画やってたよね?」

 

「あぁ。確かにやってましたね。絶対泣けるとかテレビで言ってましたけど」

 

「よしっ。今週の土曜日、一緒に観に行こう!」

 

「……は?」

 

「その映画だよっ。感動するなら、何か参考になるかもしれないし」

 

「いや、それなら1人で観に行った方が……」

 

「比企谷くんはわたしと一緒だと、いや?」

「行きましょう。是非行きましょう。明後日の土曜日でいいんですね?」

 

 うん。めぐり先輩の上目遣いは最強。もうこれは絶対。多分これが1国の上層部に1つあれば、世界から戦争は消える。

 

 

 

 

 

 

 

「戸塚戸塚戸塚ぁ!」

 

「1回で聞こえるよー」

 

「城廻先輩と映画観に行くことになった!」

 

「そうなの?すごいじゃん。何の映画?」

 

「今流行りの学園もののやつ」

 

「あれ?八幡って恋愛もの嫌いじゃなかった?」

 

「え?アレって恋愛ものなのか?」

 

「確かそうだよ?ぼくも観てないからよくわからないけど」

 

「まぁ城廻先輩と観れるなら何でもいいけどな」

 

「ていうか八幡、城廻先輩の呼び方変わってないね」

 

「あ」

 

「……八幡、すっかり忘れてたでしょ?」

 

「で、でもっ、メアドと番号は交換したから」

 

「まだしてなかったんだ」

 

「うっ」

 

「じゃあその映画の日、名前呼びをすること」

 

「……はい。頑張ります」

 

 最近の戸塚は、俺を褒める割合と責める割合が以前の逆になってる気がするのはきっと俺だけじゃないはず。

 

 

 

 




 次回デート編
 お楽しみに

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