どうぞ
「まずは城廻先輩の好きなタイプとかを知るべきだよね」
「ああ。確かにそれは重要だ。だがな戸塚。戸塚は1つ重大な部分を見落としている」
「え?なに?」
そう、とても大事なこと、それは……
「城廻先輩のタイプを聞いたところで、俺がその理想の男になれると思うか?」
「……なるほど」
あ、普通に納得しちゃうのね。自分で言っといてなんだけど、戸塚にはそんなことないよって言ってほしかったなぁ。
「つまりだ、俺が城廻先輩のタイプになるんじゃなく、城廻先輩のタイプを俺みたいな男になるようにすればいいんじゃないのか?」
流石は俺、超名案。
「……八幡」
どうやら戸塚も俺の意見に賛成のようd
「却下」
わおっ。良い笑顔っ!
「な、何故だ、何がいけない?」
「全部だよ。だいたい城廻先輩が八幡みたいな男の人がタイプなんて、あり得るはずがないし、これからもあり得ないよ。だから、八幡が変わるしかないんだ」
うん。すっごくバッサリいったね。何か仲直りしてから戸塚の遠慮がなくなっている気がする。もうやめてっ、八幡のライフはとっくにゼロよっ!
「でも確かに、好みのタイプを聞いて真逆の答えが返ってきたらキツイよね。ていうか多分返ってくると思うし」
「う、うむ」
ふえぇ~、戸塚が厳しいよぉ。
「なら、好きなシチュエーションとか聞いて、それを実行してみたら?」
「壁ドンとか言われたらどうするんだよ?」
「やれば?」
最近、彩ちゃんが俺に対して投げやり気味な件について。
よし。ラノベにしたらミリオンだな。
「絶対引かれるだろ?」
「そのときはそのときだよ」
「そんな無責任な」
「まだ壁ドンと決まった訳じゃないし、とりあえず今日の放課後聞いてみよう」
放課後
・めぐり先輩に振り向いてもらおう大作戦その1
《めぐり先輩の好きなシチュエーションを聞きだし、実行せよ》
「城廻先輩」
「ん?何か思い付いた?」
期待した目で可愛く俺を見つめるめぐり先輩。
毎朝俺に味噌汁をつくってください。
おっと危ない危ない。
「いえ、城廻先輩が漫画とかで感動するシーンってどんなのかなと思いまして」
「あぁ~、そうだねぇ、偽物の恋人から段々相手のことが好きになってっちゃって、最終的に結ばれる話とか好きかなぁ」
うん?それナニコイ?ていうか……
「あの、城廻先輩?先輩って少女漫画しか読まないんじゃなかったんですか?」
「おっ?何の漫画かわかったみたいだね。うん。基本はそうなんだけどね、これは好きなんだぁ」
俺もめぐり先輩とザクシャイン・ラブしたいなぁ。
「まぁ、10年前に会ってた奴らが同じ高校の同じクラスに集まるなんて漫画の世界だけですけどね」
「それはそうなんだけどねぇ。でも、10年前の約束とか素敵だと思うけどなぁ」
めぐり先輩が手を頬に当て、うっとりとした顔になる。か、可愛えぇっ。
「め、めぐり先輩は好きな漫画のシチュエーションとかあるんですか?」
き、きき聞いちゃったよおいっ。大丈夫だよね?噛んでないし、一応話も繋がってるよね?
「シチュエーションかぁ。うーん、……あっ、わたし実は、彼氏に耳掃除してあげるのが夢なんだぁ。こう、膝枕してあげてねぇ……、まぁ、今まで彼氏なんてできたことないんだけどね」
ウキウキと自分の夢を語り始めたと思ったら、いきなり沈むめぐり先輩。
「へぇ、意外っすね。城廻先輩たくさん告白とかされてそうなのに」
「そ、そそ、そんなことないよぉ。わたし全然モテないし……」
「でも、ゼロではないでしょ?」
「それは、そうなんだけどぉ」
くっ、やはり、ゼロではなかったか。しかし、めぐり先輩に告白してしまう気持ちは痛いほどわかるので、何も言えない。中学の俺だったら、一緒に答辞を考えるって決まったその日に告白して、振られてたまである。結局振られちゃうのかよ。
「まぁ、城廻先輩可愛いですからね。当たり前といえば当たり前なんですが」
ボフッとめぐり先輩の顔が赤くなる。
「ななな、何をっ、ま、また比企谷くんはっ、そんな冗談を、はははっ」
暑いのか、めぐり先輩は手をパタパタと扇ぐ。
「別に冗談じゃありませんよ。城廻先輩は誰がどう見ても、可愛いの部類でしょ」
「も、もうっ、先輩をからかっちゃいけないんだよっ」
「ええ!?本心なんですけど……」
「っ///」
それ以降、めぐり先輩は俯いて黙り込んでしまった。
俺、何か怒らせるようなことしてしまったのだろうか。
「どうだった?」
「可愛かった」
「聞いてないよ」
「あ、はい」
「それで?ちゃんと聞けたの?」
「聞けたには聞けたんだが、前提からして無理だった」
「と、いうと?」
「彼氏に耳掃除する、だとさ」
「あぁ、それは無理だね」
「だろ?」
「うん。次考えよっか」
・めぐり先輩に振り向いてもらおう大作戦その1
《めぐり先輩の好きなシチュエーションを聞きだし、実行せよ》
失敗
感想、評価、よろしくお願いします。