やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。   作:U.G.N

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 突然ですが、本当の最終回です。
 
 では、どうぞ



《最終回》
最終回: やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。


「えへへ、えへへへ」

 

「ふふっ、小町ちゃんずっとご機嫌だねぇ」

 

 姿見の前で自分の姿を映し、その姿にだらしなく頬を緩める小町。

 

「そりゃそうですよ、何て言ったって人生最大の晴れ舞台ですからね」

 

「うんうん。小町ちゃんよく似合ってるよ」

 

「ありがとうございます。お義姉ちゃんも似合ってますよ!」

 

「ありがと。でもお義姉ちゃんはちょっと恥ずかしいかな……」

 

 小町の呼び方に顔を紅くするめぐり。全身が真っ白な分、それが余計に目立ってしまう。

 

「…………それにしても、いよいよですね」

 

「そうだねぇ。よしっ、今日は泣かないぞ!」

 

「兄に聞きましたよ。そう言って卒業式の答辞のとき号泣してたって」

 

「わーわー! 今はそれ関係ないでしょ! あれ結構黒歴史なんだから!」

 

「大丈夫ですよ、黒歴史の一つや二つ。この世に黒歴史の数で兄の右に出るものはいないんですから」

 

「そ、そんなことないと思うんだけどなぁ」

 

 めぐりは、は、ははは、と何か誤魔化すように苦笑いを浮かべる。

 

 コンコンコン

 

 そんな会話をしていると、扉をノックする音が部屋に響く。

 

「どうぞぉ」

 

 めぐりが返事をすると、扉がゆっくりと開く。開いた扉の先には二人がよく知る者たちが立っていた。

 

「雪乃さんに結衣さん、いろは先輩も!」

 

「やっはろー、城廻先輩に小町ちゃん。ってうわぁ、すごーい! 二人とも超キレイ!」

 

「由比ヶ浜さん、彼女はもう城廻先輩ではないわよ。ですよね、比企谷先輩?」

 

「ちょっ、雪ノ下さん!? 名字で呼ぶのはやめてよぉ。めぐりでいいからさぁ」

 

「それにしても、本当に超綺麗ですね二人とも。あ、でもでも~、城廻先輩が今そのドレスを着れてるのって、高校のとき誰かが背中を押してあげたからですよね? えっと~、誰でしたっけ~?」

 

 いろはがここぞとばかりにニヤニヤしながらめぐりに上目遣いを発動する。

 

「うぐっ、わ、わかってるよぉ、一色さんには感謝してるんだから」

 

 昔の、あの夕暮れの空中廊下での出来事を思い出し、冷や汗を流す。実はめぐりがいろはに受けたあの説教のことは、めぐりといろは、そして八幡しか知らないことなのだ。

 

 つまり、ここにはその事を知らない人間が三人もいる。めぐりとしては、後輩に説教をくらい、そのおかげで八幡と付き合えたなんて格好悪くて知られたくないのだ。

 

「そ、それよりもっ、三人は八幡たちの方にはいったの?」

 

 必死に話題を変えようとするめぐり。そのめぐりの様子に事情を知らない三人は不思議に思いながら、いろははこれ以上ないといわんばかりのニヤケ顔でその話に乗る。

 

「これから行くつもりです。戸塚くんにはちゃんと挨拶しないといけないので」

 

「ゆ、ゆきのん。ヒッキーにも一応挨拶してあげよ?」

 

 結衣が苦笑いを浮かべながら雪乃にツッコむ。

 

「ひょっとしたらここにいるかもって思ったんですけどね~、一回も来てないんですか?」

 

 いろはが質問するとそれに答えたのはめぐりでも小町でもなかった。

 

「比企谷と戸塚はこっちには来ないそうだ」

 

「平塚先生!」

 

 扉がいきなり開かれ、いろはの質問に答えながら入ってきた平塚静に小町が反応する

 

「平塚先生、ノックを……」

 

「すまんすまん、君たちの会話が外にまで聞こえてきたからついな」

 

 いつぞやしたような雪乃と平塚先生のやり取りに、お互い懐かしい気持ちになる二人。

 

「あ、佐藤先生。お久しぶりです~」

 

「あ? あー、お前一色か。…………老けたな」

 

「ああ!? もういっぺん言ってみろ! こちとらまだ社会人一年目のピチピチ二十三歳だぞこら! そっちの若妻(笑)と一緒にするんじゃねぇ!」

 

「……一色。お前、なかなか良い性格になったな」

 

「あ」

 

 

 

 

 ただいま、皆様にはお見せすることのできないことが起こっています。しばらくお待ちください。

 

 

 

 

「さっき、比企谷と戸塚の控え室に行ってきたんだが、あっちはあっちで盛り上がっていたよ」

 

 平塚先生が手に付着した何かを払いながら先程の発言の説明を始めた。

 

「向こうにも誰かが?」

 

 雪乃が床に転がっている何かを視界に入れないようにしながら平塚先生に質問する。

 

「ああ、陽乃と葉山がいた。陽乃は後でこっちにも来ると言っていたな」

 

「あ、はるさん来てくれてたんですね。よかったぁ、はるさんは絶対行くって言ってくれてたけど、あの二人はすごい忙しいし無理しなくていいよって言ってたんだけど」

 

「ふっ、可愛い後輩の晴れ姿だ。来ないはずがない。あいつはそういう奴だよ」

 

 平塚先生はとても良い笑顔でめぐりにそう伝えた。

 手に付着した赤い何かをハンカチで拭き取りながら……。

 

 

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 

 

 はぁ、やっと帰ったよあの人。何なの? そんなに人をからかうのが好きなの? それともかなり昔、俺とめぐりが二人で映画観に行ったときに映画のネタバレしたのそんなに根に持ってたのん?

 

「ハハハ、そんな心底嫌そうな顔してやらないでくれ。彼女もあれですごく喜んでいるんだよ」

 

「あれでかよ。終始おちょくってからかってただけに見えたんだが。ていうか、お前は行かなくてよかったのかよ」

 

 陽乃さんと一緒に来た葉山は、めぐりたちの控え室に向かった陽乃さんには付いていかず、ここに残っていた。

 

「ああ、正直城廻先輩や君の妹とはあまり接点はないしね。文化祭や千葉村で少し一緒になったくらいだ。行ってもおめでとうくらいしか言うことがない」

 

「そうかよ」

 

 何かコイツ、陽乃さんと一緒に仕事するようになってから色々と正直に言うようになったな。着実に影響を受けていってるな。

 

「でも、葉山君たちってすごく忙しいみたいだったのに、大丈夫だったの?」

 

「俺たちみたいな奴の式のために色々とキャンセルとかしたんじゃねーだろうな? そこまですることねーぞ? 金だけ置いていってくれればこっちとしては何も言わねぇし」

 

「八幡!!」

 

 え、彩加に怒られた。本当のこと言っただけなのに。

 

「ハハ、確かに一、二件キャンセルはしたが、そんな大したことじゃないよ。高校のときの友人が同時に結婚式を挙げるんだ。仕事なんかが来ない理由にはならないよ」

 

「俺はお前と友達だった覚えはないんだが」

 

「そんなこと言って、ちゃんと招待状くれたじゃないか」

 

「ぐっ、べ、別に来てほしくて送ったわけじゃねーし、一応、念のため、招待状が余ったから仕方なく送っただけだし」

 

「男のツンデレほど醜いものはないよね」

 

 彩ちゃんが冷たい!

 

 そんなアホな会話をしていると、コンコンと扉がノックされる。

 

「どうぞー」

 

 彩加が返事をすると、俺のよく知る三人が入ってくる。

 

「やっはろー、おぉー、ヒッキーも彩ちゃんもちゃんとおめかししてるねー!」

 

 いくつになってもやかましい奴だ。

 

 それはそうと……

 

「おい由比ヶ浜、今ノックしたのお前だろう?」

 

「えっ、やばっ、なんでわかったの!? ヒッキーってエスパー!?」

 

 由比ヶ浜は驚いているが、由比ヶ浜以外はどうやらちゃんとわかっているようだ。

 

「はぁ、由比ヶ浜さん。貴女それでよく就職できたわね」

 

「まさか面接のときもそうやって部屋に入ったんですか?」

 

「え、なになに? ちょっと怖いんだけど!?」

 

「結衣、家族や友人みたいな親しい間柄の人の部屋に入るときは基本ノックは三回なんだ。目上の人や正式な場所だと四回になるんだけど、面接などではゆっくり三回が主流かな」

 

 葉山の説明にほえぇという顔になる由比ヶ浜。マジかこいつ。

 

「二回は確かトイレのときだよね」

 

「ああ。つまり由比ヶ浜はここがトイレだと思って入ってきたということだ」

 

「思ってないし! ただ、ちょっと間違えただけじゃん!」

 

「由比ヶ浜さん。知らないことを間違えたとは言わないわ」

 

「うわーん! 味方がどこにもいない!」

 

 おいおい、二十四にもなってうわーんはないだろ。

 

「んで? 何しに来たのお前ら?」

 

「今ここに来てすることは一つしかないと思うのだけれど。式の前に軽く挨拶をしに来たのよ、戸塚君に」

 

「今その倒置法いるか? ていうか俺も祝えよ」

 

「ふふ、冗談よ。比企谷君、戸塚君。この度はご結婚おめでとう」

 

「ヒッキー、彩ちゃん、おめでとー!」

 

「おめでとうございます!」

 

 雪ノ下、由比ヶ浜、一色がそれぞれおめでとうを口にする。あまりにも普通過ぎたので逆にビックリした。

 

「お、おう。サンキュー」

 

「ありがとう三人とも!」

 

 俺と彩加も一応お礼を言っておく。

 

「ん? いろは? 少し顔色悪くないか?」

 

 すると、葉山がそんなことを言い出す。

 

 確かに、そう言われてみるとそんな気がしないでもない。ていうか、やっぱよく見てるなコイツ。

 

「あははー、いやー、ちょっと貧血気味といいますか、少し血を抜かれたといいますか」

 

「なにお前、式の前に献血でもしてきたのか?」

 

「いえ、自主的にというよりは、強制的にというか……」

 

「なにそれ怖い」

 

 強制的に血を抜かれるとか、どこの吸血鬼の仕業だよ。

 

 

 

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 

 

 式場は静まり返る。

 

 俺と彩加は先に神父の前で待機している。

 

 すると、そこにお馴染みの曲が流れ出す。

 

 その曲と同時に後ろのドアが開き、純白のドレスに身を包んだ二人の女性がその姿を現す。

 

 めぐりの横にはめぐりの親父さん。

 小町の横には親父。

 

 二人とも既に号泣してるんだけど。

 

 どんだけ娘のこと溺愛してんだよこいつら……

 

 四人が並んでレッドカーペットの上を歩いてくる。

 

 そして、途中で親父さんたちと組んでいた腕を離し、それぞれ俺と彩加の横に立つ。

 

 それを確認すると、神父が話し始める。

 

『汝らは彼女らを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しい時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、愛し続けることを誓いますか?』

 

「「誓います」」

 

『汝らは彼らを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しい時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み愛し続けることを誓いますか?』

 

「「誓います」」

 

 四人が愛を誓い、死ぬその瞬間まで、共に歩み続けることを誓った。

 

 

 

 

『それでは、誓いのキスをーーーーーー』

 

 

 

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 

 千葉県のとある街。そこには二つの家族が共に住む一つの家がある。

 

 そこの家からは平日休日問わず、朝から元気な声がよく聞こえてくるとご近所さんでは専らの噂である。

 

 おや、どうやらここがその噂の家のようですね。

 

 なるほど、この表札を見る限り二つの家族が共に住んでいるということは本当のようですね。

 

 

 比企谷 八幡   戸塚 彩加

     めぐり     小町

     八城      あかり

     夢葉      透

 

 

 きっと、とても仲の良い家族が住んでいるんでしょうね。

 

 中の様子は、またいずれ機会があればそのときにでも紹介するとしましょう。

 

 それでは、そろそろお別れのお時間のようです。

 

 再び、この家族のことを皆様にお見せすることができるのを心より願っております。

 

 それでは

 

 

 

 

 

 

 

 

   やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。  完

 




 最後はやっぱり主人公たちの結婚式で終わらなきゃね。
 全53話。気が付けばこんなにも長くなるとは。
 高校生編が終わったのが、もうだいぶ昔に感じますね。
 本当は高校生編の最終回で終わるつもりだったのにグダグダと延ばし延ばし書いていたらすごい長い話になってました。
 だって途中平塚先生編とかあったもんねw
 でも53話どの話も書いていてとても楽しい話ばかりでした。そして、読んでくれた、感想を書いてくれた、評価をつけてくれた読者の皆様、本当にありがとうございました。
 
 現在、他にも執筆しているので、そちらの作品もよければ読んでください。

 それではそろそろこの辺で

『やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。』全53話

 今まで、ありがとうございました。


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