どうぞ
「それじゃあ比企谷くん。明日の放課後もここに集合ね」
「はい」
俺はめぐり先輩と明日も会う約束を取り付ける。あれ?うまく行き過ぎじゃね?まぁ、すげぇ嬉しいんだけど。
「あっ、でも比企谷くん、奉仕部あるよね?どうしよっか?」
「全然平気ですよ。最近は全然依頼とかありませんし。これも依頼と言えば依頼ですしね。あ、でも明日いったん部室に行って、理由を話してから来るんで、少し遅れると思います」
「それならわたしも一緒に行くよっ。わたしが依頼人だしねっ」
つまり、めぐり先輩と一緒に部室に行くのか?っべー、それマジっべー。
「帰りのHRが終わったら部室に行けばいいかな?」
あ、一緒に行くわけではないのね。OKOK。八幡わかってたし、勘違いとかしてねーし。
「そうですね。それでいいと思いますよ」
「そのあと一緒に図書室に行って、今日の続きねっ」
っ!そうか!図書室に行くときは一緒に行けるのか!っべー!マジっべー!
「わかりました。ではそれで」
めぐり先輩とは図書室の前で別れた。どうやら、めぐり先輩はもう1度職員室に寄るようだ。
別れ際のまたねーで、寿命が10年伸びたのは言うまでもないだろう。
やはり、毎朝見送ってもらって仕事に行きたい。
俺はまた奉仕部の部室に戻る気にもなれず、そのまま少し早い帰宅をすることにした。
自転車を押して校門に向かうと、テニスバッグを背負ったジャージ姿が見えた。
「……と、戸塚ぁ!」
「っ!」
戸塚はいきなり呼ばれて驚いたのか、ビックリした顔で振り向いた。しかし、その声の主が俺だとわかると前を向き直し、歩いていってしまう。
うっ、いや、ビビるな。
「っ……待ってくれっ」
走って戸塚に追い付き、戸塚の右腕を掴む。
「……何?ぼく、これからスクールがあるんだけど」
と、戸塚の視線が冷たい。もう泣きそう。
「すまん。ならこれだけ聞いてくれ。明日の昼休み、俺が飯を食ってる、あー、戸塚と初めて話した場所に来てくれないか?」
「……何で?」
「話がある。大事な」
「……わかった」
その返事を聞くと、俺は戸塚の腕を離した。
戸塚はそのまま歩いて行ってしまった。
やっぱり戸塚怒ってたー。
「たでーまー」
家に着くと、明日めぐり先輩と一緒に答辞を考えるという作業ができるというウキウキの気分と、戸塚とちゃんと話さなきゃという重たい気分がごっちゃになって襲ってくる。
俺はマッカンでも飲もうとリビングの扉を開けると、ちょうど小町も上から下りてくる。
「あ、お兄ちゃん。おかえりー」
「おう」
小町はさむさむと言いながら炬燵に入り、単語帳を開く。
「小町。前も言ったが、炬燵で勉強はやめとけ。絶対寝ちまう。しかも、翌日風邪を引くというオマケ付きだ」
「わかってるよぉ。ただ休憩してるだけだって。この単語帳も一応持ってきただけ」
「ん。そうか。まぁとにかく寝るなよ」
俺はそう言いながら、冷蔵庫を開けマッカンを取る。
「そういえばお兄ちゃん。戸塚さんとケンカしたんだって?」
「……誰から聞いたんだ?」
「結衣さん」
ちっ、あのアホビッチ。明日デコピンしてやろうか。
「どおりで、昨日は帰ってきてから様子が変だったんだね」
「……心配はいらねぇよ」
「別にしてないよ。戸塚さん相手なら、絶対にお兄ちゃんは謝るだろうし」
流石は俺の妹。わかってらっしゃる。
「ああ。今回は完璧に俺が悪いしな。明日謝って、ちゃんと話すつもりだ。その約束もさっきしてきた」
「ん。それならよし。戸塚さんはお兄ちゃんの最初で最後の男友達なんだから、大事にしなよ」
「最初は認めるけど、最後なの?もう俺は男友達できないの?………まぁ、戸塚がいればいらねーか」
「うわ、お兄ちゃん。流石の小町もそれは引くよ」
え、ひどくね?まぁ、男友達は戸塚1人で充分という考えは変わらんがな。え?材木座?誰それ?
「……じゃ、休憩もこの辺にして、小町は勉強戻るね」
「お、おう、程々にな」
小町はそう言うと、部屋に戻っていった。
「……休憩短くね?……あっ」
アイツもしかして、俺が戸塚と喧嘩したって聞いて、元気づけるために俺を待ってたのか?
「ったく。どんだけできた妹なんだか」
俺は一気にマッカンを飲み干すと、明日の戸塚との会話シミュレーションをするために部屋に戻ることにした。
明日、戸塚と仲直りできますように。そしてそのままいい気分でめぐり先輩との作業に入れますように。
にしても、たとえ戸塚でも小町を嫁にやるのは当分先だな。まだまだ小町は俺だけの妹でいてもらうことにしよう。
次回、戸塚との話し合いです。
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