やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。   作:U.G.N

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 ちょっと久しぶりですね。

 久しぶりついでに八幡とも4年ぶりに会う子の登場です。

 どうぞ



年頃の女の子の部屋は本の匂い

 

 ピンポーン

 

 チャイムを鳴らすと、中から足音が聞こえる。

 

「はいはーい。あ、小町さん。それにあかりと八城も。ん?うわっ、はーちゃんじゃん!久しぶりー!」

 

 家の中から出てきたのは青みがかった黒髪を高い位置でポニーテールにしている少女。

 

「いい加減その呼び方はやめとけ。京華」

 

 今、平塚先生が陽乃さんの相手をしていたときの気持ちがわかったわ。

 

 俺たちは今日、休日を活かして川崎京華が一人暮らしをしているというアパートに来ていた。メンバーは俺、小町、八城にあかりだ。

 

 この間の同窓会で京華が一人暮らしをしていることを知り、さらに八城とあかりがよく上がり込んでいると知ったため、日頃こいつらが世話になっているお礼も兼ねて久しぶりにかつての教え子に会いに来たといった感じだ。

 

「お前、変わったなー。いや、でも原形は残ってるか。ていうか、その髪型だと姉ちゃんの若い頃そっくりだな。つり目じゃないことを除けば」

 

 高校時代は髪を下ろしていたため、そうでもなかったが、家だとこの髪型なのかほんと昔の川崎そっくりである。目は50倍くらいこっちの方が優しいが。

 まぁ、俺は人のことをとやかく言えるような目をしてないんですけどね。

 

「いやん、何それ口説いてるの?浮気だ不倫だー!」

 

「あ、やっぱ全然姉ちゃんと違ったわ。そして、何も変わってなかったわ」

 

 しかし、目とかそんなものの前に決定的に違う部分がある。そう、性格だ。

 川崎の場合は基本無口で一匹狼のような、謂わば俺側の人間だった。しかし、こいつの場合は常に誰かとつるみ、元気で明るく、しかし、由比ヶ浜とは少しタイプが違う、むしろ一色や陽乃さんタイプの性格だった。

 

 高校のときはかなり手を焼かされたものだ。

 

「ま、立ち話もなんだし、上がらせてもらっていいか?」

 

「それ私の台詞なんだけど……」

 

 そろそろ座りたかったので京華を促すと、何故か京華と小町にまでジト目で見られた。

 

「はぁ、相変わらずゴミぃちゃんは……」

 

「な、なんだよ」

 

「まぁ、どうぞ」

 

 京華の許可を得て、部屋に上がる。

 

「あー、これ。一応手土産ってことでケーキ買ってきた。皆で食おうぜ」

 

「お、いいねー。気が利くね、はーちゃん」

 

「京華ちゃん。洗面台借りていいかな?手洗ってくるから」

 

 小町の言葉に京華が頷いて返す。あかりと八城は迷いなく洗面台のあるだろう場所へ入っていく。お前らどんだけ通ってんだよ。

 

 手を洗い終え、リビング兼寝室のような、ベッドもあり低い丸テーブルもあり、勉強机もある部屋に行く。

 

「ほぉ、女子大生の部屋には見えねぇな。まぁ、京華の部屋と言われれば、納得はしそうだが」

 

 京華の部屋はTHE・女子大生って感じのものではなかった。あえて1つあげるとするなら、ベッドの枕元にあるぬいぐるみくらいだろうか。

 本棚には小説などが大量に並べられ、ジャンルは様々、純文学から推理小説、ライトノベルまで置いてある。

 まさに本だらけ、むしろ本しか置いてないまである。

 

「まぁ、これでも元文芸部部長だからね」

 

「……そういや、出版社に就職決まったんだって?」

 

「うん。まだどこの部に配属かはわからないけど、できれば小説系がいいなぁ」

 

 かなり昔、奉仕部で出版社系の就職はかなり難しいっていうのを調べた記憶がある(何で調べることになったかは忘れたが)。それを難なくクリアするとはな。いや、難なくではないか。本棚には専門書などの分厚い本や問題集的な本もかなりの数並べられている。何の努力もなしに入れるところではない。やはり根っ子の部分では、姉貴と同じで真面目なのだ。高校の時からそれは知っていた。

 

「お兄ちゃん。早くケーキ食べようよ」

 

「おう。そだな」

 

 見るとあかりと八城も持ってきたケーキを早く食べたそうに覗いていた。

 

「あ、じゃあ紅茶淹れるね」

 

「おう。悪いな。おい八城、お前京華を手伝え」

 

「な、ななんで俺が」

 

「八城、お皿出してくれない?」

 

「……ち、ちぇっ、しょうがねぇな!」

 

 京華のお願いですぐに立ち上がる八城。こいつ本当に京華に惚れてんだな。爆笑だわ。

 

「あかりも手伝っておいで」

 

「ん。京華さん。私も紅茶淹れるの手伝う」

 

「サンキュー、あかりん!」

 

 

 

 

「お待たせー。それじゃあ、食べよっか」

 

 京華が紅茶をお盆に乗せ、丸テーブルの真ん中に置く。八城は皿とフォークを先に並べていた。だから何で皿とかフォークの位置を把握してんだよ。どんだけ通ってんだよお前ら。

 

「京華さんはイチゴのショートケーキだよね?」

 

「お、流石あかりん、わかってるね」

 

 いや、だから何で京華の好物まで把握してんだよ。どんだけ通って以下略。

 

「ここに置いてあった本。棚に戻しといた」

 

「おおー!八城ナイス!」

 

 いや、だから何で本の場所まで把握してんだよ。どんだけ以下略。

 

「んじゃ、食べるか」

 

 ケーキがそれぞれに行き渡り、揃っていただきますをする。

 

「ていうか、今日は何しに来たの?はーちゃんまで来るなんて知らなかったし。ていうか、はーちゃん4年ぶりだよね。よく見るとちょっと老けたね」

 

「うるせーよ。何か日頃から八城とかあかりとかたまに夢葉まで世話になってるみたいだからな。そのお礼だよ」

 

「あー、別にいいのに。私もこの子ら好きだし」

 

「っ」

 

「八城、そういう意味じゃないよ」

 

「は、はぁー!?何言ってんの?何のことだよ、意味わかんねえ!」

 

 何かあかりに八城がつっこんでるし。

 

「それに今名前出て来なかったけど、透も結構来てるよ?」

 

「え、そうなの?」

 

 京華の一言に小町とあかりと八城が反応する。

 

「う、うん。よく1人で来て、図鑑とか地図とか読んでる」

 

「マジか。知らなかったわ。小町知ってたか?」

 

「ううん。全然」

 

「まぁ、ここははーちゃん家と学校の間にあるから、別に遠回りにもならないし、透は静かに本読んでるだけだしね」

 

「つーか俺もお前がこんなに近くに住んでるなんて全く知らんかったわ」

 

「確かに、この4年間1回も会わなかったしね」

 

「まぁ、俺は反対方面にしか行かないからな」

 

 うちから小学校に行くのと、高校に行くのでは真逆の方面なのである。つまり俺は小学校方面には滅多に行かない。それこそ、運動会などの特別な行事がない限りは。

 

「まぁ久しぶりに会ったことだし、今日はゆっくりしていきなよ」

 

「んじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ」

 

 今日は特に予定もないしな。

 

 

 

 

 

 





 けーちゃんはもう1話くらい続けようかなって感じです。

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