やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。   作:U.G.N

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 どうぞ



壁にある耳はシスコンの耳なのでご注意を

 

「……」

 

「……」

 

 えーと、こういうときは素数を数えるんだよな。素数、素数……。

 

「……めぐり先輩。素数って何でしたっけ」

 

「……1とその数自身以外では割りきれない数のことだよ」

 

「……それって1は入るんですか?」

 

「……入らないね」

 

「……」

 

「……」

 

「「2,3,5,7,11,13,17,19,23………」」

 

 だって仕方ないじゃないか!隣の部屋からいきなり大きな声で言い争ってる声が聞こえたら、何事かと壁に耳を当てるだろ!2人で!そしたら急に静かになって、そしたらファーストキスがどうのこうの聞こえたんだぞ。そりゃあ気まずくなるに決まってんだろ!

 

 こちとら付き合って3週間経つけど、キスのキの字も出ていない。というか気まずい。待って、超気まずい。

 

「もうっ!八幡くんがちょっと聞いてみようとか言うから!プライバシーの侵害だよっ!」

 

「めぐり先輩だってノリノリで聞いてたじゃないですかっ!」

 

「だ、だだだって、何か言い争ってたし、心配になっちゃって……」

 

「俺だってそうですよ!」

 

「嘘だ!八幡くんは言い争う前から壁に耳を当ててたじゃんっ」

 

「だって気になるじゃないですかっ!妹と親友の色恋沙汰ですよ!?」

 

「はい認めた!今認めた!プライバシーの侵害だっ。悪い子だー!」

 

「めぐり先輩も同罪ですよっ!」

 

「「うぅ~。………はぁ~」」

 

 集中しよう。数学だ。数学をやろう。えーと、この場合はxが2で、えーと……。

 

「……めぐり先輩、これであってます?……?先輩?」

 

「……」

 

「おいぃぃぃ!!」

 

 めぐり先輩がまた壁に耳を当ててた……。

 

「ひゃあっ!だ、だってぇ……」

 

「とにかく、おそらく2人は無事付き合えたはずですから、問題ないですって。詳しいことは俺が後で戸塚から根掘り葉掘り聞き出すんで、安心してください」

 

「そ、そうだよね。わたしも後で小町ちゃんに根掘り葉掘り聞くことにするよっ」

 

 俺らはお互い頷き、再び勉強に戻った。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、今大丈夫?」

 

 突然扉が開き、小町が声をかけてくる。

 

「ん?どした?」

 

「戸塚さん、帰るって」

 

「!そうか。……めぐり先輩」

 

「許可します」

 

「……許可?」

 

 っし。行くぜ!

 

 

 階段を下りると、玄関で戸塚が靴を履いていた。

 

「戸塚」

 

「あ、八幡。勉強はいいの?」

 

「ああ。ちょっとした休憩だ。それより戸塚。どうだった?」

 

 戸塚の動きが止まる。

 

「……何のことかな?」

 

「何か言い争ってなかったか?大きな声が聞こえてきたんだが?」

 

「あ、あはは、ごめんね。聞こえちゃってたかな?」

 

「まぁ、内容はあんまり聞こえなかったがな」

 

「そ、そっか……」

 

 ホッと、ひと息。戸塚くん。

 

「で?ファーストキスがどうしたって?」

 

「」

 

 彩ちゃんが固まっちゃった。

 

「今後のためにも聞かせてほしいなぁ。なぁなぁ、どこまでいった?俺の予想では、2回はキスしてるとみた!」

 

「……あ、その、」

 

 俺は動揺している戸塚と肩を組むように、首に腕を回す。

 

「俺の妹とのキスはどんな感じだった?」

 

「う、あうぅ~……」

 

「あ、でも1つだけ言っておきたいことがあるんだが……」

 

「……な、なに、かな?ていうか、首が絞まってきてる気がするんだけど……」

 

「小町はまだ卒業前の、中学3年生だってことを忘れないでほしいなってこと」

 

「も、もちろん、わかってるよっ。ちょっ、首っ、首がっ」

 

「……キスまではギリギリ認める。だが、もしそれ以上のことをしたら……」

 

「ぐぅぅぅ!!首がぁ!苦しいよ!八幡!」

 

「俺とめぐり先輩からのキツーいお仕置きが待ってるからな……」

 

「やってない!やってないのに、もうお仕置きくらってる!わかってるからぁ!」

 

 その言葉を聞いて、俺は腕を首からはずしてやる。

 

「そうか!なら、よかった!」

 

「……はぁはぁ。もうっ、安心してよ。ぼくは小町ちゃんを絶対に大事にするから」

 

「……ああ。よろしく頼む」

 

「……うん」

 

 そう言って、戸塚は自分の家に帰っていった。

 やはり、戸塚になら任せられるな。

 

 

 

 

 一方、八幡の部屋では

 

「小町ちゃん。お姉さん、いろいろ聞きたいかなぁ」

 

「な、何をでしょう……」

 

「ふふふ。……ファーストキス」

 

 ビクリと小町ちゃんの肩が震える。あ、顔も赤くしちゃって。可愛いな。

 

「き、聞いてたんですか?」

 

「聞こえてきた、かな?大きな声で言い争ってたよね?」

 

「うっ」

 

「まぁ内容はいいや。わたしが聞きたいのは1つだけ」

 

「……?」

 

 う、うぅ~。年下に聞くのは恥ずかしいなぁ。それも妹ちゃんに。

 

「そ、その、き、キスってどんな風にすればいいのかな?」

 

「……へ?」

 

「あ、いやね、年下のしかも妹の小町ちゃんに聞くのは変だとは思うんだけど。参考に、あくまでも参考によ?参考にできたらいいかな、と」

 

「別にその場の雰囲気とかは人それぞれだと思いますし、兄とめぐりさんがいつもしているやり方でいいと思いますよ?」

 

「……」

 

「……?」

 

「……あの、でもね?その……」

 

「……もしかして、まだしたことないんですか?」

 

「……うっ、………はい」

 

 キャアーー!!え?普通はしてるものなの!?だってまだ3週間だよ?キスどころか手を繋いで歩いたことも……。まぁ前に映画を観に行ったときに何故か手を繋いで走ったことはあるけど。

 でもあれはまだ付き合ってなかったし。

 

 ていうか、今はキスの話だよね?でも3週間なんて普通はまだしてないものなんじゃ……。あ、いやでも、八幡くんによると小町ちゃんと戸塚くんは今日正式に付き合ったはず。それでそのままファーストキスしたってことだよね?あれ?もしかして、わたしたちがおかしいの!?

 

「……はぁ。まったく、ゴミぃちゃんめ。相変わらずヘタレだなぁ」

 

「べ、別に八幡くんがヘタレとか、そんなのじゃないと思うんだけど……」

 

「甘い!甘いですよめぐりさん!」

 

 小町ちゃんがビシッと指差してくる。

 

「めぐりさんは兄とキスがしたくないのですか!?」

 

「うっ。…………シタイデス」

 

「しかし、あの兄が自分から何かしてくるとは到底思えません!なら、めぐりさん!あなたから仕掛けないとダメなのです!」

 

「で、でも、そんなのどうやって……?」

 

「幸い、今日はお泊まりですよね?なら、チャンスはいくらでもあります!」

 

「チャンス……」

 

 

 

「めぐりさん。今日中に兄とキスしましょう!」

 

「え、ええぇぇぇぇ!!??」

 

 

 

 

 

 





 まだ、この1日が終わりません。
 多分あと1、2話続くと思います。
 我慢して読んでいただけたらと思います。

 感想、評価、お待ちしております

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