「んじゃ、そういうことで」
バタン
「……」
「……」
……は、八幡!!!!??
くっ、やられた。これは確実にさっきの仕返しだ。
「……あ、あの、とりあえず小町は着替えてくるので、小町の部屋の前で待っててもらってもいいですか?小町の部屋はそこです」
「あ、うん。わかった。待ってるよ」
小町ちゃんはそういうと、早足で自分の部屋に入ってしまった。
ポツーン
待て待て待て。この後小町ちゃんの部屋で2人っきりなの?
確かにあの日以降も、部活やスクールがない日はこの家に来て勉強を教えたりはしてたけど、いつもリビングで小町ちゃんの部屋には入ったことがないのに!
これは、腹を括るしかないのか?
そんなことを考えているうちに、小町ちゃんの部屋の扉が開く。
「と、戸塚さん。……どうぞ」
「う、うん。し、失礼します」
っ!入った瞬間良い匂いが全身を包むようなこの感じ。なにこれ、すごい良い匂い。
はっ!ダメダメ!これじゃあまるで、ぼくが変態みたいじゃないか!
「とりあえず、座布団にでも座っていてください。何か飲みものでも持ってきますので」
「う、うん」
バタン
ガチャ
「あ、あの、引き出しの中とか勝手に見たりしないでくださいね?」
「み、見ないよ!」
「フリとかじゃないですからね」
「わかってるよ!見ないから!」
バタン
ふぅ~。緊張する。それにしても、この後何の話をすればいいのかな?今日の試験のこと?うーん。
「……」
ドキドキ
「……」
ドキドキ
……はっ、いかんいかん。落ち着け、落ち着くんだぼく!あくまでここは八幡の妹の部屋。相手は中学3年生の女の子で、初めて入る女の子の部屋で、ぼくの初恋の女の子の部屋。
……うわあああぁぁぁぁぁ!!
落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け。
こんなときは深呼吸だ。
スーハー。スーハー。スーハー。
「………あの、あまり部屋匂いとか、嗅がないでもらえると、助かるのですが……」
そんな声が聞こえたため深呼吸を止め、ゆっくりと扉の方を見ると、そこにはお茶の乗ったお盆を持った小町ちゃんが真っ赤になりながらふるふると震えていた。
「……ち、ちちちちがっ、違うんだよ!小町ちゃん!今のは決して匂いを嗅いでたとかじゃなくて!少し落ち着こうとしただけで!」
「わ、わかりました。わかりましたから!いったんお茶を飲んで落ち着いてください!」
ぼくが身振り手振りで説明していると、小町ちゃんがぼくが座っている前にあるミニテーブルの上にお盆を置く。
ズズッ。ふぅ~。
「落ち着きましたか?」
「う、うん。ごめんね。初めて女の子の部屋に入ったもんだから、緊張しちゃって」
「ああ。それで深呼吸……」
「うん。あはは、ちょっと恥ずかしいとこ見せちゃったな」
「い、いえ、そんなことは」
「……」
「……」
ズズッ。ふぅ~。
「「あのっ……」」
はい、被ったぁ~!勇気を振り絞った矢先、この仕打ちですよ!もう嫌だ。恥ずかし過ぎること、山の如しだよ!もう自分で何言ってるかもわかんないよ!
「あ、あの、戸塚さん。お先にどうぞ……」
「いやいやっ。小町ちゃんこそ、先にどうぞっ」
「いや、でも……」
「いや本当に。ぼくが言おうとしたことなんて、ホントどうでもいいことだから!」
今日の試験どうだった?とか本当どうでもいい。だってさっき玄関で聞いたもん。よくできたって言ってたもん。
「え、じ、じゃあ、本当に小町からでいいんですか?」
「うん!本当にどうぞどうぞっ」
むしろ、小町ちゃんからじゃないと永遠にどうでもいいことを話しそうなまである。
「で、では……。あ、あの!あのときの、返事、なのですが……」
「ちょっと待った。ごめん。やっぱりぼくからでいいかな!?」
それがあったぁーー!!!しまったぁーー!ヤバい!そうだよね。受験が終わったらって、そういうことだよね!すっかり忘れてた!いや、忘れてはないんだけど、頭の中で勝手にもっと先の話だと決めつけてた。でもそうだよね!今日受験終わったんだもんね!つまりそういうことだよね!
「ご、ごめんね。何というか、それが来るとは全く思ってなかったから、心の準備が全然というか、まずは違う話からしないかな?そうだ、今日の試験、よくできたって言ってたよね?」
「そ、そうですねっ。はい。戸塚さんが重要って言ってくれたとこが、どの教科もたくさん出てですね、正直小町もびっくりしたほどです」
「へ、へぇ。そっかぁ。それはお役に立てたようでよかったよ」
「まったくですよ。本当にありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして」
「あと、小町も戸塚さんが好きです」
「へぇ。そっかぁ。…………………っ!!!!!!???????」
「///」
どうやら八幡の目の次はぼくの耳が腐ってきたらしい。
「ち、ちょっと、聞き間違えた気がしたんだけど……」
「小町も戸塚さんが好きです」
聞き間違ってなかったぁーーー!!!
「何で!?待ってって言ったよねぇ!?何でそんな感じで言うの!?心の準備がぁ!!」
「だってせっかく小町も凄い覚悟して言おうとしたのに、戸塚さんが待てとか言うんですもん!!せっかくの言うチャンスだったのに、逃しちゃったんですもん!!もう、あんな感じで言うしかないじゃないですか!!!」
「それは確かにぼくも悪いと思うけどさぁ!!それでももう少しさぁ!!」
「小町なんて、今日学校出たときから返事はいつにすればいいんだろうって考えてたんですよ!?まぁ明日も学校だし、会えるのは今週末かな?とか思ってたのに、戸塚さん何故かうちにいるし!何とか切り替えて、恥ずかしいけど何とか勇気を振り絞ったらいきなり被るし!それでも頑張って返事をしようとしたら、何ですか心の準備がまだって!あんな辱しめを受けたら、もうあんな感じにするしかないじゃないですか!!!」
「うっ」
確かに今回はぼくが悪いかも。
「ていうか、何ですか心の準備って!女の子みたいでs……んっ!!」
でもそれはダメだよ、小町ちゃん。
「……ん、んん!ぷはっ!な、なななな……!」
「いきなりごめんね小町ちゃん。確かにぼくはよく女の子みたいって言われるよ。でもさ、今日からぼくは小町ちゃんの彼氏だよね?」
「……そ、そうなると思いますけど……」
「ぼくは好きな女の子にだけは、女の子みたい何て言われたくも思われたくもないんだ」
「ご、ごめんなさい」
「ん。わかってくれればいいよ」
ぼくはそう言い、小町ちゃんの頭を撫でながらお茶を飲む。
すると、小町ちゃんがぼくの服を軽く摘まんでくる。
「どうしたの?」
「……それは、わかりました。でも、さっきのは小町のファーストキスでした。あれこそ、心の準備も何もない状態でいきなりなんて、酷いです」
「うっ、ごめんね。それは本当にぼくが悪かったよ。ぼくも初めてだったから、それで許してくれないかな?」
「駄目です」
ですよね~。
「な、なら、どうすればいいかな?」
「……もう1回。さっきのよりも長く、してください」
……か、可愛い。
「……ふふっ。了解」
八幡×めぐりは真剣だったので、こっちはちょっとだけギャグっぽくしてみました。
でもやっとこれで、4人とも結ばれましたね。
次回からもよろしくお願いいたします
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