やはり俺の将来設計は完璧過ぎる。   作:U.G.N

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 第23話です

 どうぞ




天使が悪魔に化けるとき

「まさか、これほどとは……」

 

「うっ」

 

 今俺の前には高校1年生の数Ⅰの教科書が開かれている。

 

「初めの方はできてるけど、あるページを境にいきなりできなくなってるね。つまり、1度ここで躓いて、そこから完全に数学を捨てたわけだ」

 

「うっ、……はい」

 

 ふえぇ、嫌だよぉ、怖いよぉ。今俺は初めてできた彼女と自分の部屋で2人っきりなんだよ!?字だけ見れば青春真っ只中のリア充展開なはずなのに、今この空間を埋め尽くしている言葉は勉強の2文字のみ。

 

 そしてなんといっても、俺の彼女。こう見えてかなりのスパルタ。全く、それほどまでに俺と同じ大学に通いたいとは。どれだけ俺のこと好きなんだよ。

 

「八幡くん?」

 

「は、はいぃぃ」

 

 すんません。調子こきました。ていうか、やめて!心読まないで!その笑顔怖いから!

 

 そして、この人のさらに質の悪いのはその鬼教官、いや、悪魔教官っぷりである。

 

「や、やっぱり止めませんか?もう俺に数学とか無理ですって。間に合いませんよ」

 

「……八幡くんは、わたしと同じ大学、嫌なの?」

 

 はいでたぁ!涙目上目使い!これが悪魔教官、いや小悪魔教官と呼ばれる所以。

 

 こんな風にこんなこと言われたらさぁ

 

「……いえ、頑張ります」

 

 って言うしかないじゃん!無理じゃん!断れないじゃん!

 

「それで、ここはね……」

 

「はあ……こうですか?」

 

「そうそう。できてるよ」

 

 うっ、2人っきりなのに。密室なのに。家に誰もいないのに。

 

 ま、未だにキスすらできていないヘタレの俺に何かできるとは思ってませんがね。な、なんだよ。別にいいだろ。俺たちはプラトニックっな関係なんだよ!

 

 仕方がない。この状況を打破するには、奴を召喚するしかない。

 

 天使には、天使をだ!

 

 

 

 

 

 

 

 ピンポーン

 

 来た。ようやく、勝利の女神が俺に微笑んだ。いや、勝利の天使だな、この場合。

 

「ん?お客さん?」

 

「みたいっすね。ちょっと行ってきますわ」

 

 俺は部屋から出て急いで玄関に向かう。

 

 ガチャ

 

「待ってたぜ、親友」

 

「もう。せっかく彼女が勉強を教えてくれるって言ってるんだから、素直に受けられないの?」

 

 そこには、はぁ~と呆れたようなため息をつく、戸塚彩加が立っていた。

 

「とは言っても、何だかんだで来てくれると思ってたぜ」

 

「ああ。八幡には悪いんだけどさ……」

 

「戸塚くんは、わたしのお願いで来てくれたんだよ。八幡くん」

 

「………………………………………え」

 

 後ろから声がする。俺が愛してやまない、しかし、今はあまり聞きたくない声が。

 

「め、めぐり、先輩?それは、どういう……」

 

「戸塚くんにメールを打っていることに気が付かないと思った?悪いけど、内容まで丸見えだったよ?」

 

「え?」

 

「なのでわたしからメールで戸塚くんに、わたしに協力してくれるようお願いしました」

 

 そんな……。

 

「やっぱり八幡くん、君は最低です」

 

「な、なんで……」

 

「まず、わたしとの勉強から逃げようとしたこと」

 

「うっ」

 

「次に、それに友達である戸塚くんを利用しようとしたこと」

 

「ぐっ」

 

「そして、なにより……」

 

「……なにより?」

 

「っ///」

 

「……?」

 

 あれ?めぐり先輩が俯いてしまった。

 

 すると後ろからはぁとため息が聞こえる。

 

「八幡。せっかく大好きな彼氏と彼氏の家で2人っきりだったのに、そこに友達を呼ばれたんだよ?もし女友達を呼んだとしたら張り倒してたけど、呼んだのがぼくでも十分最低だよ」

 

 それを聞いて俺はハッとなる。

 

 そして、もう1度めぐり先輩の方を向き、めぐり先輩に質問をする

 

「めぐり先輩。今戸塚が言ったことは本当ですか?」

 

「……うっ、まぁ、そんな感じ、なんじゃないかな?」

 

「つまり、……めぐり先輩は俺のことが大好きだってことでいいんですね?」

 

「へ?……え?」

 

「いや、え?じゃなくて。今戸塚は大好きな彼氏とって言ってたじゃないですか」

 

「いやいや、そこじゃないよね!?今重要なのは!タシカニダイスキダケド」

 

「いーえ、そこが1番重要です」

 

 うむ。間違いない。

 

「はぁ。城廻先輩。八幡と付き合うのは、結構面倒くさいですよ」

 

「……うん。わかってる」

 

 あれ、何か呆れられてるんだが。

 

「とにかく!罰として今日はわたしはこの家に泊まっていきます!」

 

「は?え、いや、俺は構いませんが、それ全然罰になってませんよ?」

 

 夜まで一緒とかむしろご褒美である。

 

「でも明日学校ありますよ?」

 

 戸塚が質問する。確かにそうだな。

 

「わたしは行かないので関係ありません」

 

 そうだった。いや、俺は行くんだが。

 

「まだわかってないみたいだね八幡くん。戸塚の言った通り明日は学校があるので、戸塚くんは遅くなる前には帰りますが、それまではわたしと戸塚の2人で。そこからは朝までわたしが数学を徹底的に八幡くんに教え込みます」

 

「は?朝?」

 

「戸塚くんも自分用の勉強道具持ってきたよね?」

 

「はい」

 

「戸塚!裏切ったのか!?」

 

「何を言ってるのさ八幡。さっき城廻先輩が言ってたでしょ?ぼくは城廻先輩に頼まれて来たんだよ?」

 

 なん、だと。

 

 

 

 

「さ、理解できたかな八幡くん。……今日は寝かさないよ?」

 

「」

 

 

 

 その台詞、もっと違うシチュエーションで聞きたかった……

 

 

 

 

 

 




 というわけで、八幡脱出失敗。罰として朝まで数学のお勉強、めぐりんのお泊まり付き。あれ?やっぱりどう考えてもご褒美だなこれw

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