過去1番長いかもです。
どうぞ
どうも。一色いろはです。わたしは今図書室の前でとある人物を待っています。
あっ、どうやら目的の人物が来たようです。
「あれ?一色さん?」
「城廻先輩、こんにちは。少しお時間よろしいでしょうか?」
「……ここって最近流行りなのかな?」
わたしたちは空中廊下に来ました。流石にこの時間は寒いなぁ。
「まぁ、放課後にわざわざここに来る人は滅多にいませんからね」
「なるほどねぇ」
城廻先輩がうんうんと頷いている。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
「……城廻先輩。昨日、先輩から告白されましたよね?」
「あれ?一色さん知ってるんだ」
「ええ。先輩から聞きました。……わたしが何を言いに来たかわかりますよね?」
「まぁ、大体はねぇ」
城廻先輩がわたしから視線を外す。その外した視線の先にはサッカー部やら陸上部がグラウンドを走り回っている。
「……何で、先輩の告白をなかったことにしたんですか?」
そう。この人は先輩からの告白をYESともNOとも、ましてや保留にさえせずに、告白そのものが初めからなかったかのように振る舞ったのだ。
「先輩、言ってました。振られたのかどうかもわかんねーから正直戸惑ってるって」
「……そっか」
そっかじゃねーだろ。
わたしの中の何かが、熱くなっていくのがわかる。冷静さが失われていくのが手に取るようにわかる。
「告白っていうのはすごく勇気がいるものなんですよ。それが本気なら本気なほど。告白を受けた人間にはその告白に対して何かしら答える義務がある!あなたはその責任を放棄したんです!これは絶対にやってはいけない重罪だ!」
つい声が大きくなる。感情的になってしまう。だってあんな弱った先輩は初めて見たから。
「何て答えるか、その内容は城廻先輩にしかわかりません。そこはわたしが踏み込んで良い領域じゃない。でも、勇気を出してした告白をなかったことにされるのはきっと相手を振ることよりも残酷ですよ」
「……」
何で何も言わないんだ。
「……先輩のこと、嫌いなんですか?」
「…………そんなことないよ」
「じゃあ、好きなんですか?」
「……好きか嫌いかでいうなら、好きかな」
「なら何で!?」
好きならそれでいいではないか。
「……わかんない」
「……は?」
「だってわかんないんだもんっ!」
「っ」
城廻先輩が突然大声を出す。
「わたしにはね、18年間生きてきて尊敬する人が2人いるんだ」
尊敬?一体何の話をしているんだろう?
「1人ははるさん。あの人はわたしが初めてあんな風になりたいと思えた人。綺麗で、かっこよくて、何でもできちゃって」
確かにあの人はすごい人だ。でも今はそんなこと……
「そして、もう1人が八幡くん。彼はわたしにできないことを簡単にやってのけちゃう。しかも、わたしにもはるさんにもできないやり方で」
「……」
「……ねぇ一色さん。尊敬と恋愛って結構似てるんだよ?」
「……え?」
「わたしはね、はるさんが大好き。でもそれは尊敬から来る好きであって、決して恋愛の好きじゃない。何故なら、はるさんはわたしと同性だから」
「……」
「なら八幡くんは?わたしは八幡くんのことも好き。それは本当。でも彼は異性。この好きが尊敬から来る好きなのか、恋愛から来る好きなのかわからないんだよ」
ほうほう。
「こんな気持ちで告白なんて受ける方が相手に失礼なんだよ。もし彼と付き合ったとして、その後に尊敬の好きだとわかったら、わたしは八幡くんを彼氏として好きであり続ける自信がないし、そもそも八幡くんに失望されて嫌われるに決まってる」
ふむふむ。
「じゃあ振る?でも振ったら二度と会えないと思う。現に今までわたしに告白してくれた男子とはそれ以降1度も話してない。そんなの嫌だ。だってわたしは彼を尊敬しているんだから。尊敬している人に会えないなんて辛いよね?」
うんうん。
「でも保留するなんて意味はない。だってそれはただの先伸ばしでしかない。いずれYESかNOを出さなければいけないのなら同じことだ」
なるほどなるほど。
「だから、初めからなかったことにしたんだよ。そうすれば今の距離感を保てるでしょ?一色さん、さっき言ったよね?告白された人間にはその告白に対して何かしら答える義務があるって、これも答えの1つだよ」
……こいつは何を言っているんだ?
「はぁ~~~~~~~~~」
わたしは大きなため息をつく。
「え?なに?」
「……城廻先輩。これから少々失礼なことをいくつか言います。ですので先に謝っておきます。ごめんなさい」
え?え?と戸惑ってる城廻先輩を前にわたしは1度大きく息を吸う。そして……
「アンタはアホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ええ!?」
大声でかましてやった。
「正直なところ、ここには最悪あなたを殴る覚悟で来ました。それがなんですか、くだらないことをベラベラと。怒りを通り越して呆れ果てましたよ」
「な、なんで?」
「まず第1に、もし付き合った後に尊敬の好きだとわかったら、好きでい続ける自信がなくて、先輩にもきっと嫌われる?それは好きでい続ける努力を城廻先輩が怠っているだけだし、先輩が城廻先輩を嫌いになんてなるはずないじゃないですか。あなた先輩舐めてんですか?あの人がどんだけあなたのこと好きだと思ってるんですか」
あー、これはもう止められないかな。
「それにそれが1つの答え?ふざけんじゃないですよ。それは答えでも何でもない。ただの逃げですよ。どこのラノベ主人公だっての。隣人部にでも入るつもりですか?」
「い、一色さん、恐いよぉ」
「城廻先輩は雪ノ下先輩と結衣先輩、あー、由比ヶ浜先輩のことどう思ってますか?」
「雪ノ下さんと由比ヶ浜さん?えっと、雪ノ下さんは綺麗で頭が良くて、仕事もそつなくこなしちゃう、流石はるさんの妹って感じの素敵な女の子。由比ヶ浜さんは元気で明るくて、そしてとても可愛い、魅力的な女の子って感じかな?」
なるほど、さすが高評価ですね。
「今日の昼休み、そんな素敵な2人から先輩告白されてましたよ」
「ふぇ!?」
「わたしもその場にいたんですが、先輩は2人の気持ちをしっかりと受け止めて、ちゃんと断ってましたよ。俺はめぐり先輩が好きだから2人とは付き合えないって。誰かとは違って正直に」
「うっ」
「あんな素敵な2人からの告白を断るくらい先輩は城廻先輩のことが好きなんですよ。ちょっとやそっとで簡単に嫌いになるわけないじゃないですか」
「……で、でもぉ、わたし自身がわたしの気持ち、わかんないんだもん」
まったくっ、うじうじと!
「は~、仕方ありませんね。なら、自分の気持ちが簡単にわかるとっておきの方法を教えますよ」
「そ、そんなのあるの!?」
「ええ。それは……」
「ハァ、ハァ……」
『実は先輩って目だけではなく、性根が腐っていまして。本当につい最近まで将来は専業主夫になって、奥さんに養ってもらうって思ってたんですよ。わりと本気で。職場体験の希望調査に自宅って書いて提出するくらい』
「ハァ、ハァ……」
図書室、遠い。
『でもこの前、いきなりこんなことを言い出したんです。《城廻先輩が笑顔でおかえりって言ってくれるなら、俺は喜んで社畜にでも何でもなれる》って』
速く。もっと速く走って!
『休日は基本外には出ず、自らは働かずに、専業主夫が夢だったあの先輩がですよ?』
あと、ちょっと。
『城廻先輩はそれほど先輩に想われているんです』
見えた、図書室。
『さて、城廻先輩。今あなたは一体どれ程自分が先輩に想われているかを知りました。今の話を聞いて、あなたの乙女心は動いたでしょうか?』
早く、会いたい!
『……もし、少しでも動いたのなら、それがあなたの答えですよ』
「八幡くんっ!!」
わたしは図書室の扉を勢いよく開ける。彼はいつもわたしたちが座っている席で、本を読んでいた。
「……?めぐり先輩?ずいぶん遅かったですね。どこか寄ってたんですか?」
確かに結構遅くなってしまったため、いつもなら何人か勉強してる人がいるのだが、今は八幡くんしかいないようだ。
わたしは息を切らしながら八幡くんに向かって歩いていく。
「めぐり先輩?」
はや歩きで向かってくるわたしに困惑しながら彼は立ち上がる。
わたしはそんな彼に思いっきり抱きついた。
真正面から
力強く
彼の胸に顔を埋めて。
「ちょ、ちょっと!え?め、めぐり先輩!?」
戸惑った声がすぐ上から聞こえる。
顔を上げると八幡くんの顔が目と鼻の先にある。
胸がドキドキする。すごい高鳴り。こんなの初めて。
一色さんの言う通りだ。こんなに勇気がいるんだね。
……でも、言える。今なら言える。
「わたしも八幡くんが好きです。わたしと付き合ってください」
これがわたしの答え……
21話にしてようやく結ばれました。
いろはす大活躍!な感じでしたね。
まだまだ続くのでこれからもよろしくですっ☆(いろはす風)
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