どうぞ
食事中
ずっと無言の
2人かな
どうやら勘違いだったようです。はい。簡単に説明すると、小町ちゃんは八幡が城廻先輩のことが好きだということだけ知っていたようです。つまり夢のことは知らず、八幡と城廻先輩が付き合えたら嬉しいとか、あの2人の仲を取り持つのに積極的に協力するということらしいです。
それをぼくが勘違いしてしまい……、あれって告白になるのかな?だとしたらぼく、人生初の告白があんな感じになっちゃったんだけど。
いや、好きって言葉は使ってないしこれは告白じゃないよね。うん大丈夫なはず。
「……いや、それは無理があると、思います」
小町ちゃんが真っ赤になりながら否定する。うん。地の文読まないでね。
「そ、そうだよね、ははは」
「……」
「……」
はい、黒歴史。
どうも、初の告白で盛大にミスを犯すという黒歴史ができた戸塚彩加です。以後よろしく。
……とりあえず、話を逸らすべきだよね。
「えっと、こ、小町ちゃん」
「は、はいっ」
小町ちゃんがビクリと肩を震わす。
「あー、勉強進んでる?」
「あ、まぁ~、頑張ってはいるんですけどね~。もうホント受験目の前ですし」
うん、流石小町ちゃん。乗ってくれた。
「そうだよね。八幡に教えてもらったりしてるの?」
「ないですないです。お兄ちゃん中学の数学でも微妙ですし、英語とかでも英単語覚えるだけとか言いますし」
「……ははは、八幡らしいね」
「……戸塚さん」
「ん?」
「あの、これから予定ありますか?」
「え?いや、とくにないなけど」
勉強とぼくの予定が何か関係あるのかな?
「えっと、あの、良ければなんですけど、小町の勉強を見てもらえませんか?」
「え、ぼくが?」
「はい。ちょっと数学で止まってるとこがあって……」
「まぁ中学の数学くらいなら大丈夫だと思うけど……」
「お願い、できませんか?」
「よろこんで」
うん。上目使いはずるいね。
比企谷家に向かう道中
「うぅ~。寒いですね~」
「今日寒いよね。小町ちゃんその格好で寒くない?」
小町ちゃんは結構ラフな格好であり、手袋もマフラーもしていない。かなり寒そうである。
「寒いですよ~。お兄ちゃん大丈夫かな」
「映画館は暖かいだろうから大丈夫じゃないかな」
そんな会話をしながらも小町ちゃんは身体をブルリと震わせる。
身体を冷やしちゃいけないと思い、ぼくは自分のマフラーを小町ちゃんの首に巻いてあげる。
「え?あの、戸塚さん?」
「この時期に風邪引いたら困るでしょ?」
「で、でもそれじゃ戸塚さんが寒いんじゃ……」
「大丈夫大丈夫。手袋もあるし、それに、ぼくも男の子だからね」
「………ありがとうございます///」
う~ん。マフラーで口元隠しながら上目使いする小町ちゃん可愛いな。これ、ヤバイかも……。
~比企谷家~
「どうぞどうぞ」
「お、おじゃましまーす」
八幡の家に来たの初めてかも。しかも、小町ちゃんに誘われて……。
「では、リビングへどうぞ。何か温かい飲み物持ってくるので、炬燵で暖まっていてください。あ、あと、マフラーありがとう、ございました」
「う、うん。どういたしまして」
何か恥ずかしい。
このあと小町ちゃんは温かい紅茶と勉強道具を持ってきて、勉強を始めた。
「あ、戸塚さん。早速なんですけど、ここの答えが合わないんですが……」
「ん~?あ、ここの代入が逆になってるよ?先にこの2をxに代入しないと」
「え?あ、ホントだ。何回やっても計算が合わなかったんですけど、こんな最初のところだったとは……」
「まぁ、自分だと間違いに気づくのは難しいよね。他の人に見てもらうのはこういうところで大事だよね」
「ですよね~。でもお兄ちゃんに見せても多分わかんないと思いますよ」
「ははは、かもね」
しかし、たまたまこの問題に引っ掛かっただけで、他はスラスラと解いていく小町ちゃん。
「小町ちゃん、全然大丈夫そうだね」
「え?そうですか?」
「うん。見てる限りは結構スラスラ解けてるし、いけそうだよ」
「そう言ってもらえると自信が出てきますね。あの、他の教科も見てもらっていいですか?」
「うん。もちろん」
小町ちゃんがよかったぁと言いながら、自分の部屋に他の教材を取りに行った。
そのあとは、社会、英語、理科と他の教科も進んでいく。たまに小町ちゃんが聞いてきたり、ぼくがそこ間違ってるよと教えたりはするが基本は無言でシャーペンのカリカリという音だけが部屋に響く。
「……」
「……」
現在の状況を説明すると、ぼくたちは今炬燵に入って向かい合う形で座っています。なので、たまに小町ちゃんの足とぼくの足が当たったりして、恥ずかしかったりもするが、それが少し嬉しかったりもしている。
そのまま時間が過ぎていく。
静かで、穏やかで、それでもどこかドキドキする。そんな心地いい時間が流れていく。
「……………戸塚さん」
「ん?」
突然小町ちゃんがノートに歴史の単語を書きながら、ぼくに話しかける。
「………受験が終わったら」
「……え?」
「……受験が終わったら、ちゃんと返事しますんで……」
「!」
「……それまで、待っていて、くれますか?」
顔がノートを向いているため、前髪が垂れて表情は見えない。でも、声だけで小町ちゃんが真剣かどうかははっきりとわかる。
確かに人生初の告白は格好悪かった。正直、黒歴史である。でも今確信した。ぼくは小町ちゃんが好きだ。別に八幡の夢のためとか、そんなの関係ない。ただただ、比企谷小町という女の子を好きになってしまった。こんな気持ち初めてだ。
……きっとこれがぼくの初恋である。
「待ってるよ。いつまでだって……」
いったん戸塚×小町編終了です。
次回から八幡たちに戻ります。
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