3ヶ月目はダキア国防軍はボトシャニ-ヤシ-ガラツラインに防衛線が張られ、散発的な攻勢に対する防衛のみが続いていた。
「・・・キシナウ奪還の為に装甲車はどれぐらい必要だ?」
アンチョビはダキア国防軍の上官面々に問いかける。
大規模実戦経験の皆無なダキア国防軍は防衛戦術の確立だけで不眠不休のデスマーチだっただけに真っ青な顔が今では土気色になっている。
「すぐにとは言わないが、ここまで食い込んだから敵の増援が来るらしい。2個軍団6師団だと。・・・このままだと喰われるぞ。」
アンチョビの予想は当たっていた。
ブルシロフ将軍は初戦の成功を正確に解析し、ブルシロフ攻勢計画を作成し、ダキアという国で戦術実験をしようとしていた。
連邦の高官はこの計画を全面的に賛成し、実際には12師団が援軍として送られていた。
(縦深突撃なんてされたらダキアだけの問題ではすまなくなる。くそ、友人と手を組んだのは失敗だったか。)
その友人は戦時を理由に兵担や事務関係で権力を掌握しつつあった。
連邦のトップの1人が脳挫傷で死亡した混乱もあり実にスムーズな権力奪取である。
(縦深突撃・・・!?)
「装甲車を第3塹壕まで下げろ。そして前線部分を薄くするぞ。」
「「「!?」」」
「今回だけは強権を使わせてもらうぞ。常識はずれの予感がする。」
・・・あれを出すか。
「第二世代戦車ティアⅡの解放を通達する。50両しかないからな。大切に使えよ。」
純ダキア産となる戦車計画第二段のティアⅡ計画は若干の傾斜装甲があるホチキスを私は選び、エンジンを100馬力のにしたせた戦車である。
選んだ理由は他にもあり内装を少し弄ればシャーマンまで進化させる時間が短縮できる点である。
口車戦車はシャーマンの車体を使ってヘッツァー擬きを作る計画に変更しているので問題なく、戦時によって現在125馬力エンジンもできている。
「・・・こちらも突破の準備を始めるか。・・・エレミア大佐。特殊兵科の準備を始める。3ヶ月でものにさせろ。作戦開始時には少将まで星の数を上げるようにしておく。」
「は!!」
「期待しているよ。」
アンチョビの予想は的中した。
実験とはいえ戦争を終わらせるための攻勢・・・ブルシロフ攻勢はアンチョビの戦術的再配置により空振りし、第二防衛線上にある重機関銃と新型戦車の防衛を突破することはできず、6万人の死者を出して頓挫。
第三防衛線にて待機されていた装甲車の反撃により第一防衛線も奪還に成功する。
が、名将のフルコース状態の連邦は反転攻撃を開始し、1000両の装甲車が破壊され、再び第二防衛線まで後退させられることとなる。
しかし戦車や重装備、歩兵の大半は無事であり、反撃に備える。