「チスク、そろそろ動く。この計画書を持ってダキアに戻れ。」
10ヵ年計画と書かれた書物には外交、内政、国家戦略が多岐にわたり書かれており、合衆国で稼いだ金をトゥルチャに投資し、増えた海外の企業を上手く活用してダキア経済の飛躍と来るべき戦争の為の国力を増大させるための計画だった。
「私もここを離れ、海外を飛び回る。・・・ジョジョと協力し、ダキアを頼むぞ。」
「はい。ドゥーチェもお気をつけて。」
「統一歴1913年9月24日・・・か。」
「手が止まっているぞミス・アンチョビ。」
「失礼チャーブル。ダキアとアルビオン連合王国の関係を考えてね。」
「そうか。」
このチャーブルは史実のチャーチルで現在は海軍相の地位にいる大物政治家であり、私の友人である。
「しかし・・・連邦の革命はチャーブルにとっては嫌だったか?」
「あぁ、やだね。だが、その親玉を上手く操り、国益にしようとする政治家は尊敬できるよ。」
「あら、上手いこと言うじゃないか。・・・合衆国から離れてはや2年。そろそろ私もダキアに行かなくてはならなくてな。」
「最後のチェスになるか。・・・悲しいものだな。どれ、お気に入りのワインを開けよう。」
「チャーブルの選ぶワインは旨いから好きだ。ありがとう。」
「それで、ダキアの軍部は掌握したのか?」
「元々裏の組織としてダキア青年将校研究会と鉄衛団がある。こいつらは私のシンパだ。代表はコルネ・コドレアとホリア・シマ、参謀内部には切れ者のイオン・アントネスクもいる。」
最初の2人は使える政治家で、私と実際に共和国で交流したこともある。
イオン・アントネスクは史実と同じ名前で、史実より階級は低い。(私が事前に農民の蜂起を経済の力で抑えたため活躍していないから)
しかし、手紙でラブコールを送り続け、なんとか協力関係を築いた。
だが、ダキアの経済が好転しているとはいえ、貴族社会は様々な弊害があるため、血の粛清を行おうとしている。
「しかし、共産主義者まで支配しているとはな。アンチョビ、貴女のカリスマはどうなっているのだ?」
既に合衆国にいた頃、私の手により極右政党ファシスト党、右翼政党国民戦線、中道右派民主党を組織させ、地下組織として中道左派共和党、中道寄り左翼社会主義党、左翼共産主義党もチスクを経由させ組織させた。
極左の革命戦線は流石に制御できてないが、革命時には協力するように手はずしてある。
「まぁ社会主義にも良いものは取り入れなければならないほどこちらは小国だからな。・・・はぁ、貧乏とはやだよ。まったく。」
「海外資本は連邦の革命の時のように摂取しないだろうな。」
「あの時は知られてないが、革命政府に対価を支払ったんだぞ。文句を言ったら機密情報や白軍支援等もちらつかせて抑えたがな。」
「ふん、今回ダキアの革命に5ヵ国も協力させてよく言うわ。」
「共和国は正直協力を取り付けられるとは思わなかったが、選挙や革命本場のあの国らしいと言えばそうだがな。」
「で、帝国は。」
「戦争準備に入ったな。まったく。覇権国家なんて地政学的に無理だろ。できるとしたら海洋国家か連邦くらいだろう。」
「秋津島皇国もか?」
「あれは政治で、覇権は無理だ。どんなに科学力や国力が増加しようとも政治で自壊する。経済界はどうかはわからんがな。」
「となると、あの植民地人達が覇権争いに来るか。」
「戦争で旧大陸が疲弊すれば野心を剥き出しにするだろうな。私はその覇権争いを綱渡りで行き長らえなければいけない祖国を思うと泣けてくる。」
数日後、アルトゥール帝国(正式名称)・・・ライヒ帝国にて参謀総長モルトケと会話後、革命に移る。