ドゥーチェ異世界にて戦うようです   作:ゆっくり霊沙

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路上の軍隊

戦場での戦闘は私に戦車道の未練を絶ちきる決意を固めさせてくれた。

 

どこかでフェアプレイのスポーツマンシップに乗っ取った行動という感情があったが、仲間の死、自国民の死、敵の死、敵の殺意を感じたら、そんなものはどこかに飛んでいってしまった。

 

戦争は3週間で終わり、国土の25%を失い講和が結ばれた。

 

事実上の敗戦を新聞で読んだ時、私が本格的に動く時が来たと感じた。

 

手始めに、戦争によって退役した元軍人を集め、教師陣を補強した。

 

私の腹心のチスクとジョジョ、それに17名となった魔導師、140名の第一期生を纏め、防衛隊という組織を編成した。

 

ナチスドイツの親衛隊に近いが、基本的にはイタリアの黒シャツ隊のような組織にしようと考えている。

 

まぁ、規模が規模だから私兵の粋からでないがな。

 

 

 

 

 

 

 

戦争は人を不幸にする。

 

家を焼かれた者、家族が殺された者様々だ。

 

私は貴族の地位を持つ者としてそんな彼らを守る義務があり、隣人愛の精神が不幸な者を助けようと動く。

 

「チスク、あなたに戦争孤児や退役軍人を集めてほしい。私のサインが入った書類を持ってな。」

 

「わかりました。しかしドゥーチェ、それだけでは説得しづらいかと。」

 

「わかっている。この袋に金が入っている。これで何とかしてくれ。」

 

「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

「チスクでよろしかったのですか?」

 

「ジョジョ、人にはそれぞれ役割がある。私は他の組織との関係強化をしなければならないし、希望を与えられるような演説も考えなければならない。ジョジョ、君は来月に行う新しい行進曲を仕上げなければならないのじゃないのか?」

 

「そうですが・・・。」

 

「チスクは今の私の組織としての役割を任せるような人物にしたい。だからその下準備をさせている。ジョジョ、君は今のように気持ちを届ける演奏をしてくれ。」

 

「わかった。」

 

 

 

トゥルチャの人口が最近増えてきている。

 

チスクに言わなくても自力で移動できる者は職を求めてこちらに来たようだ。

 

そんな中就活支援や生活保護にて活動する防衛隊や、訓練中の2期生(500名 魔導師13名)、3期生(500名 魔導師20名)は彼らから見て救世主に見えるのだろう。

 

4期募集は万を超える応募者が殺到した

 

最初のトゥルチャ人口が1万ちょっとの小さな町だったことを考えると凄まじい数である

 

やり過ぎたな。

 

ここまで大規模になると王も黙っていないだろう。

 

その予感は的中する

 

「トゥルチャ町長、アンチョビ・サン・ホテロに登城命令が王より下された。2日以内に来るように。」

 

来た。

 

普通なら詰みだろう。

 

この時点で・・・だが、私はまだやれる。

 

即座に処刑は無いだろう。

 

国家転覆を狙っているわけでもないからな。

 

まぁその前に仕込みが終わってよかった。

 

 

 

 

 

 

玉座・・・王が座り、周りには賢者を自称する老害、民から富を吸い上げる悪徳貴族、各種大臣が立っていた。

 

父親がいないところを見るに、切り捨てたな。

 

私のことを。

 

それか、私なら大丈夫だと思っているのか。

 

「貴様は国家反逆罪の容疑がかけられている。王の前で弁明できる最後の機会だ。述べよ。」

 

「・・・。」

 

「沈黙は認めたと取るぞ。」

 

「まぁまて。朕はアンチョビ、貴女に聞いておる。」

 

「祖国ダキアはカイロ(エジプト)だ。私はこの緊迫した状況下で祖国を生き残らせるには、現在あるような軍では太刀打ちできないと考えている。ライヒにある参謀のような組織が必要不可欠であり、国家=民族主義的な面からもこの動きは内外どちらかの動きで進められなければならない。ダキアは外からの圧力を受けやすい。始めに言ったカイロはアケメネス朝ペルシャや今なお存在するメフメット帝国はカイロを取ったことによりギリシャに進攻した。ギリシャは今のメフメット帝国であり、大王国であり、ライヒ帝国です。カイロはダキア。つまりどこかがこの地を取ればそこに進攻しやすくなる。そんな絶妙なパワーバランスの上にいる国が愚民政策や、騎士道精神の中での作戦立案・・・時代錯誤も甚だしい。」

 

「公王陛下を侮辱するのか!!」

 

「侮辱もなにも・・・私は祖国に忠誠を誓っているのであって公王陛下に忠誠を誓っているわけではない。」

 

「ぶ、無礼者が!!」

 

「・・・それで全てか?」

 

「私にも隠したいことは有ります。まぁそれだけと言えばそれだけですね。」

 

「獄に連れて行け。」

 

「「「は!!」」」

 

兵士に連れて行かれる。

 

私は抵抗することなく獄に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンチョビ様、アンチョビ様。」

 

夜中、獄で寝ていた私を起こす声が聞こえてくる。

 

「夜中に何か用でも看守長殿?」

 

「アンチョビ様の精神に感銘した者であります。トゥルチャ町長として書かれた本を読みました。」

 

「そうか・・・で、君はどうする?」

 

「国外に逃げてください。ここから出します。」

 

暗くて見えなかったが、周りには数人の看守と囚人が立っているようだ

 

「なるほど君達は私に付いてきてくれるか・・・強国ダキアを見るために。」

 

細身の囚人の1人が前に出る

 

「私は共産主義者ですが、この国が好きだ。その矛盾点をアンチョビ先生は本で記してくれた。1国社会主義説・・・先生ならこの国を変えてくれる。」

 

「トゥルチャに戻る。それから船で新大陸に向かう。」

 

「新大陸。」

 

「付いてこれるか。」

 

「「「ノークォーク、アンチョビ。」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいアンチョビ様。」

 

「チスク、ただいま。戻ってくるの早かったね。」

 

「ドゥーチェの一大事です。飛んできますよ。」

 

「今いる防衛隊のメンバーとジョジョを集めてくれ。」

 

「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「防衛隊をジョジョの指揮下に置く。今まで通りの活動をしてくれ。新町長予定者は私のシンパだ。そこから君達に指示を出す。期を見てこちらに戻る。待っていてくれ。」

 

「ドゥーチェ、予算は。」

 

「新しく私が作った国際銀行に予算は振り込んでいる。そこから引き出すと良い。防衛隊は3期までの人員でなるべく回してくれ。増やしても300名までだ。良いな。」

 

「わかりました。」

 

「魔導師は私に付いてきてくれないか。この国を変えるために必要な技術を一緒に集めたい。」

 

「喜んで!!」

 

「歩兵隊の皆はすまない。だが、君達は私の居ないところで国民に訓練をしてもらいたい。些細な事で良い。それが国を変える。頼んだ。」

 

私は旅立つ。

 

新しい土地に。


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