SAO:time   作:窓風

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そこまで激闘してないかも。


EPISODE14 「コロシアムでの激闘」

2024年 10月20日 a.m.10:20

アインクラッド第75層主街区『コリニア』闘技場

 

 

 

ソーマ「スゲェ人だな……っと、いたいた。」

フィリア「あっ、ソーマ!こっちこっち!」

シリカ「ソーマさーん!」

リズベット「やっと来たわね。」

ソーマ「でかい声を出すな恥ずかしい…久しぶり。」

 

昨日、74層ボス『ザ・グリームアイズ』を倒して75層が解放された。そして今日、おそらく今までにないくらいの大イベントがそこにある、いかにもコ○ッセオな建物で行われようとしている。

 

ソーマ「『血盟騎士団団長と黒の剣士の決闘(デュエル)」ね……」

 

『神聖剣』『二刀流』のユニークスキルを持つ2人の決闘なんてそうそう見られるものじゃない。俺のユニークスキル?一応新聞に載ってたぞ。1行だけ。

 

「あれ疾風じゃね?」「本物だ…」等ひそひそと聞こえてくる中を進み、リズ達がいる座席に行く。俺は攻略組の中では結構中下層に出没する方だからそんな珍しいモンでもないような気がするがとりあえず無視。

 

リズベット「でもなんで急にこんなことをしたのかしら?」

ソーマ「たぶんアスナ絡みだろうよ。」

リズベット「え?」

ソーマ「昨日のボス戦が少しキタんだろうな。少し休みをくれって言ったらうんたらかんたらで、キリトと決闘して勝ったらそれを認めよう、的な感じじゃね?」

フィリア「うんたらかんたらって……」

シリカ「それでもこんな大規模にはなりませんよね?」

ソーマ「血盟騎士団の誰かしらが情報回したんだろ。商人はこういうときに結構稼げるからな。」

リズベット「ところであんた、その右目と髪どうしたのよ?」

ソーマ「あーと、目は諸事情、髪は朝イチで切ってきた。っと、そろそろかな。」

 

前髪は正直、もういらないと思った。右目のことがアインクラッド中に広まることを予想すると、隠したままにするのも無意味と判断したからだ。結果、右目を覆っていた前髪は殆どなくなって碧色の右目が露わになっている。

 

コロシアム中央を見ると黒衣の剣士と紅鎧の聖騎士が出てきたところだった。2人の入場に会場は湧き、時折物騒なことを交えて声援が送られる。少し前の座席を見るとクラインやエギルもいた。

 

さて、どんな面白い決闘を見せてくれる?

 

少し待つと2人は互いに距離をとり、各々の剣を抜く。2人の間にはカウントダウンの数字。それが0になった瞬間、黒と紅の影が動きはじめる。

 

ソーマ「攻めの二刀流と守りの神聖剣か……どっちが勝つかね。」

リズベット「そりゃあキリトに決まってるでしょ!」

ソーマ「決めつけんのもねぇ……ヒースクリフの耐久力はバケモノだぞ?スキルの補正もあるだろうが、それ抜きでもあいつは強い。」

 

実際、50層のボス攻略時にはその耐久力に助けられた。ボスのタゲを1人でとり、数十分ボスの猛攻をあの盾ひとつで防いでいたのだから、その硬さはバカにできない。

 

2つの影が何度も打ち合い、剣と盾がぶつかる金属音がコロシアム中に響く。それに乗じて観客が湧き上がる。

 

ソーマ「……!いや、いけるかもしれない。」

フィリア「ホント⁉︎」

ソーマ「ああ。ヒースクリフの反応がごく僅かだが遅れてきた。このまま速さで押せば……!」

 

キリトの二刀流による隙の少ない猛攻により、ヒースクリフが盾で捌ききれなくなってきていた。ほんの僅かなこと故、リズ達一般プレイヤーにはわからないだろうが。ともかく、これなら……!

 

ソーマ「……決めに行った‼︎」

シリカ「あれは……」

ソーマ「二刀流の上位ソードスキルだ。行けぇ‼︎」

 

二刀流16連撃ソードスキル『スターバースト・ストリーム』を放ち、咆哮するキリト。その一撃一撃を盾で受け止めるも、反応が追いつかなくなってきたヒースクリフ。

 

そして、その時が来た。

 

「「「‼︎‼︎‼︎」」」

ヒースクリフ「⁉︎」

キリト「‼︎」

 

15連撃目でヒースクリフの盾と身体は大きく左に弾かれた。それに観客はどよめき、キリトや俺でさえこれで勝負がつくと思った。

 

キリトがトドメの16連撃目を振ってヒースクリフの頭にヒットする。

 

 

その時、世界が一瞬。ほんの一瞬だけ、止まった。ただ一人を除いて。

 

その一瞬の間に、ヒースクリフの盾が、スロー再生のようにトドメを刺そうとするキリトの剣に吸い込まれていく。

 

そして、世界が動き出す。

 

 

金属同士が奏でる甲高い音が響き、技後硬直を課せられたキリトはまともに動けず、ヒースクリフが剣を一振り。それと同時にキリトのHPバーが黄色になり、決闘の終了を知らせるアラームが鳴る。少し遅れて、わあっと観客が盛り上がる。

 

ソーマ「今のは……?」

フィリア「ソーマ?」

ソーマ「ん?あぁなんでもないさ。ただ……」

フィリア「ただ?」

ソーマ「まだ帰るなよ?」

 

そう言って席を立ち階段の通路へ。幸い、この直線上に人はいない。ならば。

 

観客席の一番後ろまで下がり、システムの許す限り助走をつけながら階段を駆け下りる。一番前の席の前には膝くらいの高さの手すりがあり、それを踏み台にしてコロシアムの中央に飛び降りる。

 

盛大に砂埃を巻き上げて着地すると、眼前にはヒースクリフと斬られて仰向けに倒れているキリト。会場も予想外の事態にざわついている。

 

すぅ、と息を吸い込み、大声で会場を再び湧かせる(我ながららしくない)一言を発する。

 

ソーマ「『神聖剣』ヒースクリフ、『二刀流』キリト、貴殿らの決闘、見事であった‼︎我は『神速・抜刀術』ソーマ‼︎先の決闘の勝者ヒースクリフに決闘を申し出たく、ここに降り立った‼︎」

 

耳をつんざくような歓声がコロシアム中に響く。キリトやヒースクリフは驚きの表情を見せている。間もなく、ヒースクリフが口を開く。

 

ヒースクリフ「ソーマ君か。理由を聞いてもいいかな?」

ソーマ「目の前であんだけ熱い闘い見せられて黙って帰れるわけないんだな、これが。」

ヒースクリフ「ふっ。君もなかなかの戦闘狂のようだね。」

ソーマ「俺にとっちゃ褒め言葉だね。」

ヒースクリフ「………いいだろう。15分後にここで、2回戦と行こうじゃないか。」

ソーマ「感謝する。それと、これ。」

 

俺はメニューからハイポーションを取り出し、ヒースクリフに渡す。先の決闘で両者共にイエローになるギリギリまでHPが減らされていた為、ヒースクリフのHPバーも4割程黒く染まっていた。

 

ソーマ「乱入した詫びって言ったらしょっぱいけど。」

ヒースクリフ「ではありがたくいただくとしようか。」

 

ヒースクリフはハイポーションを受け取ると自身の控え室へと向かった。

 

ふと振り返ると既に硬直から解放されたキリトといつのまにかアスナがいた。ハイポーションをもう1つ出してキリトに近づく。

 

 

ソーマ「お疲れさん。ほれ。」

キリト「お、おうサンキュ。」

アスナ「ソーマ君、団長と決闘って本気?」

ソーマ「本気。ヒースクリフと決闘できる機会なんて後にも先にも無いに等しいからな。」

アスナ「『神聖剣』のソードスキルについて軽めにレクチャーする?」

ソーマ「いやいい。折角の機会だから初見で行く。」

キリト「チャレンジャーだな。秒殺されるなよ?」

ソーマ「もちのろんだ。今からちょいとそこらでウォーミングアップするから、2人は戻って休んでてくれ。特にキリトは。」

アスナ「あっ、待って!」

ソーマ「なんだ?」

アスナ「さっきソーマ君のユニークスキル名言ってたよね。聞いてもいいかな?」

ソーマ「さっきも言ったけどな……まぁ別にいいけど。」

 

ふっ、と一拍置いて。

 

ソーマ「俺のユニークスキルは『神速・抜刀術』。速さにおいては自信があるぜ。」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

15分後きっかりにヒースクリフが戻ってきて、胡座をかいて飲んでいたポーションを10秒メシ感覚で一気に流し込む。観客席を見やると、ぞろぞろと席に戻るプレイヤー達。

 

ソーマ「先の決闘で疲れてるはずなのに悪いな。」

ヒースクリフ「なに、実は私個人としても、君とは一度やり合ってみたかったからね。ちょうどいい。」

ソーマ「なら良かった。」

 

ヒースクリフからの決闘メッセージを承諾し、カウントダウンが3m程離れたヒースクリフとの間に表示される。

「君は2本持たなくていいのか」と剣を抜きながら冗談めかして言うヒースクリフ。「俺のユニークスキルは『神速・抜刀術』。速さにゃ自信ありだぜ。」と答えながら、俺も抜刀し、言い終えたと同時に決闘開始のアラームが鳴った。

 

ソーマ「はぁっ‼︎」

 

開幕直後、突進型の『刹那』を放ちヒースクリフの背後5m程で止まり振り返る。

 

『神速・抜刀術』習得時から獲得していた壱の太刀『刹那』は突進技であるが、その場で放つこともできる手軽なソードスキル。加えて技後硬直が途轍もなく短い故、間隙をついたりできる。

 

今のも腹の横を抉る気持ちで放ったのだが、重厚な十字盾に防がれる。剣と盾の激突音が遅れてコロシアムに響き、会場がどよめくがそれを他所に目の前の聖騎士と激しく打ち合う。

 

突き出された盾の縁を空いてる左手で掴み、身体を左回転させてヒースクリフの懐に入り込み斬りかかるも剣に弾かれ、バックステップで再度距離を取る。自身のとヒースクリフのHPバーを見るとイエローゾーンまであと2,3撃程という所で止まっていたが、ヒースクリフの方が若干残量が多い。

 

盾を前に突進してくるヒースクリフに対し、俺は決着をつける為に左腰に剣を置きソードスキルを発動させ剣を薄い緑色に光らせる。

 

2人の距離が2m程になった時、盾の陰からヒースクリフの白い剣が真っ直ぐ心臓目掛けて飛んでくる。そこにソードスキルを当てるのではなく、下から振り上げながら軌道をずらす。

 

ヒースクリフ「何っ⁉︎」

 

本来ならそこでソードスキルは解除され行動不能になるのだが、このタイプだけはそれを無効にして技を継続することができる。つまり、今の斬り上げを『一つの攻撃』と判定して次の攻撃へと移れる。

 

1撃目で剣を弾き、左回転しながら横薙ぎに降り、真紅の鎧に僅かながら傷を入れる2撃目。右下からの斬り上げの3撃目、切り返して斬り下げの4撃目、盾の横から割り込むように5撃目の刺突は鎧を掠る。

 

これら全ての攻撃が決まった型を持たず、その場に合った攻撃を繰り出す。臨機応変ともいえるこれを俺は『不定形』と呼んでいる。『不定形』がこのソードスキルの一番の強みだ。それがユニークスキルなら尚更だ。

 

ソーマ「らぁぁ‼︎」

 

剣道の抜き胴の要領で最後の一撃を放つと同時に、ヒースクリフの剣が俺の頭に振り下ろされ決着の時が。

 

 

 

ー『神速・抜刀術』、

陸の太刀 『花鳥風月』。

 

それがこのソードスキルの名前だ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

同日 p.m.19:00

アインクラッド第62層 レストラン

 

 

クライン「いやぁ、惜しかったなぁ!あと2,3発だったのによぉ!」

ソーマ「正直悔しいさ。『花鳥風月』使っても防がれたし。」

フィリア「突然飛び出してくからこっちは混乱したんだからホント!」

リズベット「喧嘩吹っ掛けたなら勝ちなさいよ!最後の何よ片膝ついて負けって!」

シリカ「あはは……」

 

結局、ヒースクリフとの決闘には負けた。『花鳥風月』の最期の一撃を打つコンマ数秒先にヒースクリフの剣が俺の左腕を斬って決着。

 

ヒースクリフと握手し「良かったら君も血盟騎士団に入らないかね?」と言われ苦笑いしながら拒否した後、今この場にいる4人に捕まり現在に至る。

 

クライン「んでよ、その課長…なんとかってのはユニークスキルか?」

ソーマ「『花鳥風月』だ。俺のユニークスキル『神速・抜刀術』のソードスキルの1つ。その名の通り、速く動ける。」

リズベット「じゃあ試合開始直後のものすごく速かったのも?」

シリカ「ああ!アレは速すぎでした!」

ソーマ「『刹那』もそうだ……っと、これ以上はノーコメントだな。」

リズベット「ちぇー。」

 

そこから2時間程他愛もない会話をして(何故か)俺の奢りで解散。俺はホームの24層に戻り、キリトの入団祝いに何を贈るか考えながら早めの就寝。決闘で結構体力と神経を使い、疲れ果てた俺は眠りについた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

同日 深夜

アインクラッド某所

 

 

左手を振りメニューを出した男は、スキル名が10個並んだ画面を眺めていた。その中の4つは横線が入り、所有者がいることを示している。男は横線の入る2つのスキルを見て、口角を上げ不敵に笑う。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

神聖剣

 

二刀流

 

神速

 

無限槍

 

手裏剣術

 

抜刀術

 

暗黒剣

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

fin

 

 

 

◇◇◇

 

次回

 

15話 「記憶喪失の少女達」




3ヶ月ぶりの更新です。

遅くなってすみません中毒野郎です。

少し(だいぶ)前に言った通り、投稿頻度を変更して近日にこちらの更新をする予定です。待たせてすみませんでした。

執筆に時間がかかった理由?
………しょーもない言い訳しかできねぇ…

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