最近リアルが忙しすぎてですね。
また結構不定期になっちゃうんですけどお願いします。
いやいや
もちろん完結まではしっかり持ってきますよ!
あと、前回告知してた番外編はまた別の機会にでもやります。
一応半分くらいは出来てるので。
「おいおい、何か文句があるなら聞こうじゃないか」
「文句しかないわ、貴様が勝ったという事以外全部デタラメだろうが」
「おっと、妙な言いがかりはやめてもらおうか、確かに所々脳内美化したところはあったかも知れないが勝ったという事実さえあれば中身なんて自然とついてからもんなんだよ、勝てば官軍さ」
「ドヤ顔でいい事言ったみたいな風に言っているがほとんど屁理屈に聞こえるぞ」
「お兄様、先ほどの試合では一体どのようにして勝利なされたのですか?」
「そうだな、アイリスにも分かりやすくもう少し細かく説明するとだなーーーーーー
まず試合開始と共に即潜伏と擬態のチキンプレー。
あんなのと肉弾戦なんてやろうもんなら一撃で仕留められる自信があるからな。
そして見えないところからチクチクと魔法で攻撃をしてたんだがどういうわけかコイツには一切のダメージが入らなかった。
「なんだこの蚊の刺すような攻撃は?特別に教えてやるが俺に魔法の類は無意味だ」
そんなんありかよ、もうチートだろ。
だったら後ろから物理で殴れば……。
「……そこかっ!」
「ぐあっ!」
攻撃の為に潜伏を解除した瞬間に位置がバレて剣で弾き飛ばされた。
「クソ、剣術はベルディア並みか」
「気配がダダ漏れだ、気づかないとでも思ったか?」
……おいおい、強すぎるだろ。
「おいあんた、ただの一般ピーポーじゃないだろ」
「なあにただのしがない武人だ。言いたいことはそれだけか?ここはリングの端、もはや逃げ道はないぞ」
「適当なこと言いやがって、【クリエイトウォーター】!」
「なんだ、ふざけてるのか?」
「こちとら大真面目だよ、【フレイム】」
さっきクリエイトウォーターで出した水と反応してリング全体が霧で包まれた。
「俺に魔法が通用しないことは散々言ったはずだが、これで終いだ!」
「ここだ、【フリーズ】、かはっ!」
剣を持っていない方の手が俺を捉え、体ごとリング外に弾き飛ばしていった。
グレイは完全に勝利を確信して愉悦に浸った……ある事に気付くまでは。
やがて霧は晴れリングが見えるようになると……。
「見ろ、二人揃って場外に出ちまってるぞ!?」
「なにっ!?ここはさっきまで奴が立っていた場所のはず……」
「おうおう、ようやく気づいたか?」
「一体何をした!」
「色々省略するとお前に幻影を見せた」
「バカなっ、俺に魔法は効かないはず……まさか」
「そのまさかだよ、お前自身には魔法が無効化されるなら周りの環境を変化させればいいんだ」
「だが、精神系の魔法を使わずにどうやって幻術を見せた!?」
「言っても分かんないだろうけど[蜃気楼]ってやつだ」
「蜃気楼……だと?」
「ああ、まず水を急激に熱し霧を発生させる。そして次にそれを急速に氷結する事により周囲との空気の密度に不自然な差を作り出す。それによって光が屈折して蜃気楼は完成するわけだ」
「なるほど……何を言っているのか全くわからん。つまりは妖術を使うということだな」
「まあ、科学の力だけどそういうことでいいよ」
「しかし純粋な力ではないにせよ、勝負で勝つことができなかったのはこれが人生で初めてだ。引き分けだがな、次は必ず俺が勝たせてもらうぞ」
そう言いながらグレンは満足そうな顔で手を差し伸べてきた。
「……はぁあ?お前何言ってんだ、俺の足もとをよく見て見ろよ」
「足もと?それがどうかした……の……っ!?」
グレイがカズマの足もとを見てみると、カズマの足は地面から離れて宙に浮いていた。
「おっ、お前……今度は何を……」
グレンは驚きのあまり口をパクパクさせながら聞いてくる。
「【フライ《飛行》】、ま、俺の魔力じゃせいぜい少し浮くのが限界だけどな」
「そっ……」
「そ?」
「そんなんチートだろーーーーーー!!!!」
「……というのが少し細かい説明だ、分かったか?」
「ふむ、なるほど……なわけあるかー!」
クレアのツッコミと共にまたもや一発食らう。
「いってえな、いちいち俺を殴らないと意思疎通ができないのか」
「殴りたくもなるわ、さっき貴様が話してた内容と一致するところが勝敗しか見当ないからな」
「うるせえ、俺だって勇者みたいにたち振る舞いたいんだよ。実際はアレでもせめて話の中でくらいはなってもバチは当たらないだろ」
俺たちが先の見えない言い争いをしていると。
「はっはっはっはっ、喧嘩するほど仲がいいというがそろそろやめとけよ」
豪快な笑い声でグレンが仲裁してくれた。
「「仲良くない!!」」
「そうか? まあいいが、ところでカズマ、お前は本当に面白いやつだな。一見無力に見えるがそのうち妖術の使い手とは」
「そんな大層なもんじゃない、力が無いからその分機転で補ってるだけだよ」
「それは違う、知恵も立派な力だ。俺自身が今日それを身に染みて感じたよ」
「そりゃありがとな」
決闘の後、俺とグレンはすっかり意気投合していた。
「謙遜するなよ、おっと忘れるところだった。俺はお前達にこの後奢らないといけないんだっけか?」
「忘れんなよ、お前には俺たちの財布……いや、金がないから勝負師?」
「まあ小さい事は気にするな。ところで、ここで悲しいニュースなんだが……」
「何かあるのか?」
「それがな、俺はこの後すぐに戻らなくちゃならない用事があるんだ」
「えっ、はぁ?じゃあなんで俺とあんな賭けをしたんだよ」
「いやいや、万一にも負ける事はないだろうな〜と思っていたからな……」
「おまえな、もう少し自分の言葉に責任を持てよ……」
「すまんすまん、代わりと言ってはなんだが今度会った時は必ずお前の助けになろう」
「今度会う時っていってもなぁ、あと数日もすればこの国もででくし……」
「では、またなー」
「切り替え早!……まったく変な奴に会っちまったな、いい奴だったけど」
「彼の方とお兄様はきっと親友になれそうな気がします」
「おっ、気があうなアイリス、実は俺もちょっとそう思ってたところだ」
「ふふっ、お兄様の性格はおおよそ分かってますから」
「あのっ、アイリス様」
「なんですかクレア?」
「その……レインが言っていた集合時間が迫っております」
「そう……ですか、時間が経つのは早いですね」
「ごめんな、観光にもぜんぜん行かせてやらなくて」
「いいんですよ、私はこれからも見る機会が沢山ありますから。それより最後にお兄様の勇姿が見れて良かったです」
最後という言葉を聞いて胸が締め付けられる。
「……アイリス」
「では行きましょうか……あ、あの、お兄様? なんだか急に不安になってきたので……その、手を繋いでくれませんか?」
そう言って差し出してきた綺麗な手は僅かに震えていた。
「……しっかり握っていろよ」
そしてクレアの見守る中、俺たちは道中であまり喋らず集合場所に向かった。