はやく、はやくデレを作らねば(使命感)
もういっそのことただカズマとヒロイン達がいちゃいちゃするだけの短編とか作ろーかなー。
ストーリーにするとどうしても……ね。
まあ、それはそれでいいところもあるんだけど。
………………。
「そろそろ幕切れだな」
お父さん、お母さん、俺は今合法的に死刑にされそうです。
「頑張ってくださいお兄様ー」
☯☯☯
俺がエリス様のもとに行く覚悟を決めてた時に。
激昂したクレアをなんとかアイリスがなだめてくれたところまではよかった……。
なかなか納得しないクレアを見ていた野次馬が余計なことを吹き込むまではな……。
「そこの白服の姉ちゃん、そんなにそこの坊主をとっちめてやりたいんだったらぴったりの場所があるぜ」
と言われて案内されたのは闘技場だった。
「なあ、俺たちはまだ話をしてないだろ? どっかの悪魔も言ってたけど話し合おう、人とは会話が成立する生き物だ」
「残念だが私は貴様を人として見てないのでな、話し合いの余地などない」
あかん、もはや話が通じない。
「ア、アイリスはもちろん止めてくれるよな、な?」
「いえ、久々にお兄様の勇姿が見られるのなら、私としてはむしろ歓迎です」
……気持ちは嬉しいんだけどね。
「でもさ、これから王城にも行くわけだしここで目立つのもあれだしさ、いやもちろん俺が本気を出せば白スーツくらい速攻で……」
「……お兄ちゃんのかっこいいとこをみてみたいな……だめ?」
……グハァッ!
アイリス、シュンとしながらの上目遣いは反則だろ。
「……まかせとけ、瞬殺してくる」
☯☯☯
「どうした、随分と余裕そうではないかサトウカズマ」
「おいおい忘れたのか、お前は前に俺と闘ってボロ負けしたことを。今度はこの大衆の面前でスッポンポンになりたいのか、それならとんだ痴女だな?」
「うるさい、過去のことを今更出すな、あと痴女いうな。貴様の小賢しいスティールへの対策は十分している、変な期待はしても無駄だ」
「そう言って瞬殺されたどっかのスカしたイケメンみたいにならないといいな」
「……? 何を言っているのかは知らんが余計な小細工をする前に仕留めればいいだけだ」
仕留めるって……俺はモンスターかよ。
でもアイリスの前であれだけかっこつけた手前だし。
ここは馬鹿にされ続けてきた冒険者クラスの長所を見せつけてやるか。
「いつまでも俺の手札がスティールだけだと思うなよ」
「なに?」
「行くぜ、【擬態】」
「「「「消えた!?」」」
「バカなっ、ここまで近距離となれば擬態は体が透けて見える程度のはず!?」
擬態は文字通り周囲の景色と一体化するスキル。
通常は弓兵の特殊スキル。
本来なら姿が見えづらくなる程度で遠距離戦向きのスキルだが盗賊の特殊スキル【隠密】と組み合わせることにより昼間の近接戦においても絶大な効果をもたらす。
なおこれは温泉に行った時に備えて、覗きのためだけに開発したコンボで、今度はぜひ実践で試してみたいと思って……。
「むっ、こっちから邪な気配が」
クレアの剣は余裕ぶっこいてた俺の頭の上を掠めていった。
……なんでさ。
「お前見えてないくせになんで俺の居場所がわかるんだよ」
「貴様の位置くらい目を閉じてもわかるわ。たとえ隠れようともダスティネス卿から近接にさえ持ち込めばお前はゴミだということは聞いている」
あの野郎帰ったらバインドで吊るしてやる。
続けざまに、今度は確実に俺のいる位置へ剣を振ってくる。
今度はそれを刀で受け止めるが、流石に冒険者のステータスでは必然的に力で押し負ける。
「これでもう逃げることはできんぞ、ここまでだサトウカズマ、私の勝ちだアババババ!!」
どういうわけか、攻め続けているはずのクレアが逆に苦しみだした。
「一体いつどこで俺が近接で弱いなんて言った?」
「き……さま……一体何をしたっ!?」
「簡単なことだよ、【エンチャントウェポン】」
中級以下の魔法を使用してその効果を武器に付与する。
武道家の特殊スキル【蓄積《チャージ》】の応用。
本来は放出するだけの魔法もこれにより形あるものにその属性と威力を留めることが出来る。
「ちなみに今回使ったのは【ライトニング】。金属器同士の戦闘ならこれを食らった相手はもれなく感電するってわけだ」
「おい、あのチビすけ見たこともねえ技を使ってやがるぞ」
「金髪の姉ちゃんも負けんなよー」
「はいはいー、現在小僧が四倍で相手の姉さんが二倍だよー」
異国人同士の決闘ということもありかなりの数の観客が集まってるみたいだ。
「ほらどうした、さっきまでの勢いはどこに行ったんだ、これならまだダクネスの方がマシだな」
調子に乗って散々煽っていると。
「……もう止めだ」
するとクレアは持っていた剣を地面に置いた。
「まさか降参ってわけじゃないよな、でも降参ならまずは土下座をしてごめんなさいカズマ様と言ってから……」
突然、言葉攻めにしびれを切らしたのか、白スーツは俺の元まで疾走、そして持っていたちゅんちゅん丸を弾き飛ばした。
「どうだ、武器がなくては何も出来だろう? ああっ!? くっ、これがダスティネス卿の言っていたドレインタッチか……だが、私の魔力が尽きる前に貴様を葬ればいいだけのことだ」
……言っとくけど、一応これ試合だからな。
貴族としての誇りはどこに行ったのか、まるで切れたときのダクネスのように俺を組み伏せようとする。
てかどんだけアイツに俺の個人情報漏らしてんだよダクネスのやつ。
「くそっ、どんだけ馬鹿力なんだ」
おまけに組まれた瞬間からドレインタッチを発動させてるのに聞いてる気配が一向にない、大貴族ってのは皆魔族並みのタフネスなのか!?
っていうかこのままだとマジでヤバい。
「もうお終いか、どんどん力が弱くなっているぞ? ふふっ、これに勝てばアイリス様も私のことを……」
もう……そろそろ限……界。
「アイリス様、見ていてくれていますか? 今すぐ私がこのケダモノを土に還して一一」
「負けないでくださいお兄様ー!!」
「…………」
……ん?
なんか急に白スーツの力が弱まって……。
拘束から抜け出して一度離れてから様子を見てみると……。
こいつ……もしかしてショックで固まってるのか?
試しにポンッと押してみたら白スーツはなんの抵抗もなくそのまま倒れた。
「……うん、まあ、勝ちは勝ちだよな」
「「「「「ワアアアアーーー!!」」」」
「あの小僧、絶体絶命のピンチを跳ね返しやがった、一体何をしたっていうんだ!?」
……スミマセン、何もしてません。
「あれはきっと精神系の魔法を使ったのかもしれん」
……スミマセン、使ってません。
「クソッタレ、俺は白服の姉ちゃんに手持ち全部かけたってのに」
それは俺を信じなかったお前が悪い。
通貨のないこの国でどうやって賭け事をしてるのかは若干気になるが。
「兄ちゃん兄ちゃん、今回の戦利品はもしかしてその嬢ちゃんだったりするのかい?」
……ん?
「そういやこの国はなんでも勝負に賭けがつくんだったか、報酬はお前だ……みたいな」
そんなことを冗談半分で呟いた。
しかも俺以外せいぜい隣にいるクレアに聞こえるくらいの音量で。
その直後、何かが俺の【敵感知】に反応した。
慌ててその方向を見ると、そこにはむすっとした表情のアイリスが立っていた。
「……お兄様」
……おっふ。
「……あの……アイリスさん?」
「……他の女の人にいいよるのはダメですよ」
「じょ、冗談だって、本気にするなよ。俺の経験では貴族は基本的に変態だからいらないよ」
俺が必死に弁解をしていると。
「おい、勝手に私を変態どもの一員にするな」
倒れていたクレアがようやく意識を取り直したようだった。
それより……貴族が変態だってことは認めてるんだな。
「アイリス様、お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」
「そんなことありません、貴女もかっこよかったですよクレア」
「……もったいなきお言葉です」
「しかし、お兄様は次から次へと見たことのない技ばかりを使いますね」
「冒険者のジョブだからこそできる事も沢山あるんだよ」
「決着には納得できないがとりあえず貴様の応用力だけは認めてやろう、今度騎士団への冒険者の募集も実施してみようか検討したいと思ったほどだ」
応用力だけというところは気にくわないがとりあえず褒めてくれてるみたいだな。
「はいはいありがとな、とりあえず決着はついた事だしこれのせいでもう大して時間はないけど観光してみるか」
「そうですね」
「仕方ない、アイリス様におかしなことは吹き込むなよ」
「へいへい、じゃあ行くぞ」
「そこのあんた、ちょっと待ってくれ」
突然背後から大声で誰かから話しかけられた。
「俺たちのことか?」
「そうだ、あんたに頼みたいことがある」
あんたというのはどうやら俺のことを指しているらしい。
声の主はいかにも武闘派な体つきをした俺よりもやや年上くらいの青年。
ちなみに……イケメンだ。
「俺に何か用か?」
イケメンというだけで無愛想な返事になる。
「そんなに警戒するなよ。それで頼みたいことってのは……俺とも決闘をしないか?」
「遠慮させていただきます」
……これだから脳筋国家は。
☯☯☯
……結局、決闘は受けることになった。
理由は俺が了承するまでアイツが散々追いかけてくるから。
「……はぁ、めんどくさ」
「悪いな、俺の勝手な我が儘を聞いてもらって」
「……自覚してんのかよ。ただし、俺が勝ったらこの後の観光は全部お前の奢りだからな、忘れんなよ」
「ああ、分かった、判定はどっちかがリングから落ちて地面に足をつくか、戦闘不能になるかでいいか?」
「おーけー、それでいいぞ」
「そういえば、決闘の時は互いに名乗りをあげることになっているんだったな、一応名乗っておくぜ、俺の名はグレイだ」
「ご丁寧にどうも、冒険者をやっているサトウカズマってもんだ」
正直、連戦のせいでかなりきつい。
だけど俺を好きって言ってくれてる女が見てる前でくらい意地を張りたいが男ってもんだ。
「よし、じゃあ勝負開始だ!」
「……あちらの使い手の方をどう見ますかレイン」
「はい、確かな強者ということはわかりますが……どこか、底が知れないというような気配を感じます……イケメンですし」
「やはりそうですか、かっこよさでは間違いなくお兄様が上ですが果たしてどうなるか……」
「…………」
☯☯☯
……戦闘が始まってから一体何合打ち合ったのだろう。
度重なる攻防によりお互いの体は既にボロボロ……。
しかし最後の一撃を決めるまで両者の意思は折れることはない。
「もう十分です、早く試合を止めてください!これ以上は……」
外からアイリスの悲痛な声も聞こえる。
だけど逃げる訳にはいかない。
なぜかは分からないが、ここで引き下がれば致命的な敗北に繋がる予感がした。
「……そろそろ決着をつけるか」
「そうだなお互いに全力で剣を振るえるのはせいぜいあと一回」
「これで最後だ!」
「はあぁぁぁあ!!」
観衆のとらえることができたのは剣の一閃のみ。
そして僅かな静寂……。
「見事……」
片者が力無く倒れた。
「……まだまだ俺も未熟者だな」
そう呟きながら俺はリングを降りた。
「……という激闘だったぞ」
「ほぼねつ造じゃねえか!!」
次回は番外編予定です。
俺はもうアイリスのデレに飢えてるんじゃ、これじゃバトル小説かよ。
特に作者は戦闘シーンを書くのがほぼ経験がないです。
すいませんまだまだ未熟者なので、もっと勉強が必要ですね。