まだギリギリ二週間すぎたくらいだよね?
集合時間は五分遅刻するスタイルだからセーフだよね?
えっ、サブタイトルがハ〇ター×ハ〇ターだって!?
気のせいさ~~
クレアの説明を受けて一悶着したあと……。
「いい加減そろそろ機嫌を直して下さいよ」
「うるさいな、俺は絶対に納得しないからな!」
「なあ、カズマ。お前はさっきから何に怒っているんだ?」
「そんなん当たり前だろ、相手の年齢だよ!」
「……年齢がどうかしたのか?」
「お前らは何も思わないのか? まだせいぜい中3くらいのアイリスと三十近くのおっさんが結婚するんだぞ!」
そんな俺に全員が不思議そうな顔をして。
「確かに歳の差はありますが貴族などの上流階級では特別珍しいことではありませんよ」
「めぐみんの言う通りだ。思い出したくないが私もアルダープと結婚させられそうになったくらいだからな」
「いや、籍は入れたはず「何か言いたいことがあるのかカズマ?」」
「だってお前はバツネいだだだだだだだ、分かった、分かったから無言でアイアンクローはやめてくれ!」
「まったく、次に口にしたらエリス様の元に送ってやるからな」
「とりあえずダクネスのバツイチの話は置いといて、さっき言った通り珍しいことではないのです」
「めぐみんっ!?」
さすが文明が中世レベル、政略結婚に歳は関係ないのか。
「……そう言えばアイリスはどこに行ったんだ?」
「アイリス様ならさっきクレア殿が連れて行ったぞ、これ以上お前から悪影響を受けないようにとのことだ」
白スーツの奴、出発の時のあの言葉はなんだったんだよ。
「目的地にも着きましたし護衛の依頼は終わりとも言ってましたよ」
「そうか……じゃあ聞くけど、ここどこ?」
「「「さあ?」」」
「さあ?……じゃねえだろー! 俺まだアイリスとお別れの挨拶すらしてないんだぞ、これじゃあ、もうあいつらがどこにいるのかわかんねーだろ!」
だって昨日あんなことがあった手前挨拶もできないってひど過ぎるだろ。
「八つ当たりしないで下さいよ、そもそも護衛の人の話を聞いてから一人ブツブツと何か言いながら周りを見てないカズマのせいで置いてかれたんですよ」
「それなら一声かけてくれたって……とりあえず揉めても仕方ないし、追うぞ」
「原因から何から何までカズマの自業自得なんだが……いや、分かった、アイリス様達はこの方向に向かっていたぞ」
「了解、おいアクア、ぼうっとしてないで早く行くぞ」
「わかったわ、じゃあ私はこの国のお酒を飲んでくるわね!」
「了解……って、どこ行くんだよー……行っちまった」
「どうしますか、カズマ?」
「どっちみちあいつがいるとロクなことにならなそうだから後で回収すればいいだろ」
「アクアには悪いですが、確かにそうですね」
「それで、どっちに進めばいいんだっけ?」
「あっちだ」
ダクネスのさした指はさっきとは別の方向をさしていた。
「……おい」
「…………」
「……あのさ、これ以上お前に変な属性はいらないからな、方向音痴とか勘弁してくれよ」
「わっ、私だってわざとやっているわけではないんだ、もしかしたらこっちだったかもと思っただけで……」
「わかんないなら最初からそう言えよ!」
これじゃあ本当に迷子なんだが。
「カズマ様ー、はぁ、はぁ、探しましたよ」
アイリスのもう一人の教育係であるレインが迎えに来てくれたらしい。
「いやいや、すいませんわざわざ迎えに来てもらって」
「本当ですよ、どうすれば私たちの進行方向の逆に進めるんですか!?」
「ははっ……すいません」
チラッと見るとダクネスはプイッと反対側を向いてしまった。
「とにかく見つかってよかったです。では、アイリス様が待ちくたびれているので早く来てください。というか最後にカズマ様に挨拶するまで相手の王城には入らないとまで言っているのです。後生ですから早く!」
そう言ってクレアは涙目になりながら訴えかけてきた。
俺も大概だけどアイリスもなかなかワガママになったな。
初めて会った時の無垢で従順なアイリスはどこに言ってしまったのやら。
そんな感慨に浸りながら俺は急かすレインを後ろに、アイリスの元へ向かっていった。
☯☯☯
「もう、一体どこで遊んでいたんですか」
「ごめんな、アイリスのことを考えてぼうっとしててな」
「むぅ、なんだか乗せられてる気もしますが私をギュウ~っとしてくれたら許してあげます」
「そんなことならお安い御用だ」
「…………です」
「……何か言ったのかめぐみん?」
「もう我慢の限界です! ちょっと気を利かせて一日自由にしただけでどうしたらここまで二人の距離が近くんですか!?」
「そうか、いつもこんなもんだろ?」
「そうですよねお兄様」
そう言いながらさらっと俺の腕に自分の腕を絡めてくるアイリス。
「「ああーー!!」」
「なんなんですか、それは私に対する挑戦ですか!?」
「アイリス様、そ、その、昨日までとカズマへの接し方が違うように感じるのですが……何かあったのですか?」
「そっ、それは……お、大人の階段を……////」
「「…………」」
げ、原子爆弾落としやがった。
「ちょーっとまて、アイリスその言い方はマズイ」
「カズマと下っ端が……」
「大人の……階段……」
「お前らもすぐに変なそう……ぞう……を……」
突然、背後から放たれた強い殺気に言葉を詰まらせながら振り返ってみると。
「サッ、ササ、サトウカズマーーーー!!モウ……オマエヲイカシテオクコトハデキナイ。ころす殺すコロスコロスコロスコロス!」
「踏みとどまってくださいクレア様!」
……あ、はい。
目の前には魔王ばりの迫力と殺意を纏ったクレアが剣を抜いて今にも俺に飛びかかろうとするのを必死にレインが食い止めていた。
……うん、これは死ぬな、確実に殺される。
今のうちにエリス様に話す言い訳でも考えておくか。
俺がもうすでに天に召される覚悟を決めていると。
「落ち着きなさいクレア」
「はい、アイリス様」
……犬か?
「あなたが考えているような事は一切していません。そっ、それはまあ……いつかはそういうことも……」
頼むからこれ以上の爆弾発言はやめてくれ。
「アイリス冷静になって下さい、それと他の皆様も話を聞いてください。今日の夕方ごろに相手方の王城に入城することになったので、それまでアイリス様はカズマ様一行と僅かではございますが散策などしてはいかがでしょうか」
「行きます! 良い提案をありがとうございますレイン」
「そんなっ、これ以上この男とアイリス様を一緒にさせたら今度こそ……あ、あの……レイン? 分かったからそんなに怖い目で見ないでくれ」
「それでは、あとはよろしくお願いしますカズマ様」
「すみません、一つ聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「予定ではこちらに着き次第王城に入城するはずではありませんでしたか?」
「それが、つい今しがたあちらの方から入城は夕方ごろにしてくれとの連絡が入りまして、理由は伝えられておりません」
「それはまた随分横暴で一方的だな」
「「お前が言うな!」」
「がはっ、っておい、二人そろって殴ることはねえだろ」
「身の程をわきまえない発言は制裁するのが世の常だ」
「アイリス様に手を出したら地獄の悪魔と契約してでもお前を始末するからな」
「後半やつに限ってはもはやただの脅迫だろ」
「何バカやってるんですか、早く行きますよ」
めぐみんもさっきのやりとりの後でなんだかあたりがきついし。
「大丈夫ですかお兄様、さあ、わたしと、観光に行きましょう」
「そこ、聞こえてないとでも思っているんですか、何が[わたしと……]ですか」
「何も聞こえません、ほらお兄様早く行きますよ」
「うおっと、分かったから引っ張るなって」
はしゃぐアイリスに引かれながら俺は城下町に走っていった。
「……それではあとはお任せしますね」
「……うむ、了解した。行くぞめぐみん……めぐみん?」
「……カズマのあんな顔は初めて見ました」
「めぐみん……そうだな、あいつが私たちにあのような顔を向けたことは一度も無かったな」
「本当ですね、あの男ときたら普段は私達がちょっとからかっただけですぐ鼻を伸ばすくせに……」
「……それでも私は誇らしいと思う、カズマもそうだがアイリス様のあんなに幸せそうな顔を見たのも初めてだからな、幼き時からの教育係としてこれ以上の喜びはない……」
「……はは、その言葉も今にも泣きそうな顔で言っていなかったらキマっていましたけどね」
「それほどあいつのことを想い続けていた……ということだろうよ。なんたって私の初恋だからな……」
「私だってそうですよ。もう、泣きたかったら泣けばいいのに……ほんと、不器用ですね、ダクネスも……私も」
「……飲むか」
「そうですね、今日ばっかりは飲まないとやってられません……」
「……酒は許さないからな」
「…………」
「……ダスティネス卿もめぐみん様もあのように乗り越えているのですよ。なのでクレア様もそろそろ機嫌を直して……あらっ、さっきまでここにいたのに。……はぁ、お二方の代わりにそちらの監視と護衛は頼みましたよ」
☯☯☯
「何処か行ってみたい場所は何かあるか?」
「そうですね、確かハチベエが初めて訪ねる街では冒険者ギルドに行くと大体のことが分かると言っていました」
「ハチベエ?この世界にそんな変わった名前のやついるのか?」
「アクセルで暮らしているカッコイイ仮面を着けたお調子者の私のハチベエです」
「……そうか、まあ大体の察しはつくがとりあえずギルドに行ってみるか」
「はい!」
☯☯☯
「金がない!?」
「はい、この国では基本的に通貨として機能している物は何もありません」
「それじゃあ何かを手に入れたい時はどうすればいいんだよ」
「簡単ですよ、闘って勝てばいいんです」
「はい?」
「だから、その所有者と何か勝負をして勝てば目的の物を入手できます」
「そんなん爺さんとかだったらすぐに負けて取られるぞ」
「先ほども言いましたが《勝負》と言ってもい戦闘力に限ったことではありません、時に知力や特殊技能といったいろいろな手段があるので一概には言えません。そもそも全国民に食料の配給がされているので餓死するなんて事はありませんよ」
「それならそこでネロイドが飲みたいってなったらそこのおっちゃんと勝負をしないとならないのか?」
「そうなりますね」
そんな俺たちの会話が聞こえたのか、ネロイドのオヤジが話しかけてきた。
「おうそこの兄ちゃん、うちの最高級ネロイドが飲みたいのかい、なら俺と勝負をしな。お前さんが俺に勝てたら好きなだけ飲んでいいぞ」
「ああわかった、ただし……やるのは俺じゃなくてこの子だけどな」
「「……えっ?」」
「あのー、そこのお嬢ちゃんがか?」
「そうだ、このみるからにか弱そうで美しい俺の妹が相手になるぜ」
「お兄様、これはその……」
「頼んだぞアイリス」
「は、はい!お兄様のお願いとあらば私はなんでもします」
「よし分かった、じゃあそっちは何を賭けてくれるんだい?」
「賭ける?」
「おいおい、こっちがネロイドをかけてるんだからそっちも相応のものベットしてもらうぜ」
「マジか……じゃあアイリスの肩たたき券でどうだ?」
「がんばります」
「ふざけんな……と言ってやりたいところだが、お嬢ちゃんの可愛さとか弱さに免じて許してやらぁ」
「話がわかるなオヤジ、それじゃあ」
「よ、よろしくお願いします」
「特別に両手を使ってもいいぞお嬢ちゃん」
「おっ、酒場のオヤジがいたいけな少女をいじめてるぞ!」
「うるせー、これは対等な勝負だっての」
「勝負は腕相撲で、レディファイッ!」
「えいっ」
その瞬間、アイリスの可愛い声とは裏腹にオヤジが宙を舞いながらリングの机が真っ二つに割れた。
「……マジで?」
「お兄様やりました、褒めてください」
「おっ、おう、よくやったなアイリス」
俺が若干引きながら期待の目で見てくるアイリスの頭を撫でると満足そう抱きついてきた。
「えへへへへへ〜♪」
……ていうか素手でこんなに強かったらあの時初心者殺しも一人で倒せたんじゃないか、なんて。
あまりの暴力に酒場の連中も全員がきっと引いてるだろうし……。
「「「「うおーーー!!」」」」
……へっ?
「嬢ちゃんすごく強いんだな」
「強いやつは大歓迎よ、困ったことがあれば協力するぜ」
「いててて、少しはこっちの心配もしてくれよ、とまあ、驚いたぜ。勝負には負けたがいいもんを見してもらったよ」
さすがは国風が脳筋思考なだけはある。
アイリスはすでに英雄みたいな扱いを受けていた。
……まてよ?
この後も勝負をどんどんアイリスに任せていけばなんでも手に入るんじゃ。
「アイリス、どんどん他のやつと勝負しに行くぞ!」
「はい、お兄様」
よし、まずはこの街で一番の豪邸を……。
…………。
背後にさっき感じたものと同じ殺気を感じるんだが……。
「……言い残す事はあるか?」
白スーツの死神が剣構えて立ってた……。
……今度こそ死ぬよねこれ?
そろそろ季節ネタをまたやりたくなる気分ですね。
最近のイベントだとかなり過ぎちゃったけどおひな様とかですかね。
読者の皆さんもなにか良い案とかあったらドシドシ意見頂けると非常に助かります。
なにせ作者は大変想像力と応用力が乏しいですから。
それはそうとついこの間めぐみん盗賊団の巻を見たんですがやっぱりアイリスはかわいい。
それに尽きるということが判明いたしました。