この姫君に純愛を!   作:メンダコとスミス

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前回の投稿から結構時間がかかりました。

二者の視点を使うのって二人いるときにどっちに主導権を渡そうか悩みましたが主人公設定ということでカズマにしました。
 
今回もそれぞれの視点の場面があるので楽しめたらと思います。


王女はおてんば

王城

 

 「アイリス様、お食事の準備が整いましたのでお呼びにまいりました。」

 

 「…………………」

 

 「……? アイリス様? 失礼します……!! バカなっ、いないだと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 城下町

 

 

 「はぁ……」

 

 ……私は何をしているのでしょうか?

 

  もしかしたら、お兄様が来ていらっしゃるかも、なんて思っただけで城を抜け出して、こんなところまできてしまうなんて。

 

 「そんな都合のいいことなんてあるわけないですよね……」

 

 ……帰りましょうか、きっとクレアが怒っているでしょうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……俺は今、王都内に突然出没した初心者殺しを追っている。

 

 原因はもちろん、あの駄女神だ。

 

 性懲りもなくまた街中で宴会芸をし始めたと思っていたらこのざまである。

 

 やっぱりアイツはここに捨てていこう。

 

 「……ったく、おいアクア! あいつは今どこら辺にいるんだ?」

 

 「待ってよ! 今探してるの!……あ! いたわ! 向かいの通りよ、女の子に襲い掛かろうとしてるわ!」

 

 「ふっざけんなよ! クソッ! 間に合ってくれ!」

 

 このままじゃアイリスの護衛どころか、今日の宿は牢屋になりかねないぞ!

 

 普通に追っていたら追いつかない。

 

 そこで俺はなるべく高いところに登り、そこから……

 

 「【ソォゲキィ】」

 

 矢は狙い通り、敵の眉間に命中した。

 

 「よし、おーい! 大丈夫か?」

 

 よく見れば、まだ子供じゃないか。

 

 フードを被っているから顔は……よく見えないな。

 

 「は、はい。 大丈夫です、助けて頂いてありがとうございました…………えっ?」

 

 「いいよ別に。 それに、元はと言えば俺たちがげん……い……ん。 ってアイリス!?」

 

 そのとき、二人の時間が一瞬止まったように感じた。

 

 「おっ、お兄様!? どうして王都にいらっしゃるのですか?」

 

 「それはこっちのセリフだ。 どうしてこんなところにいるんだ? 王城にいるのかと思ったぞ」

 

 「そっ、それはですね…………(シュン)」

 

 なるほど、こっそり抜け出してきたのか。 だったら……。

 

 「……アイリス」

 

 「はい? 何でしょうかお兄様」

 

 「俺と一緒に散歩でもしないか?」

 

 おてんばな妹に気を使ってやるのも兄の務めだ。

 

 「良いんですか? ぜひ! ぜひご一緒させてください(パァッ)」

 

 まったく、本当にうれしそうだな。

 

 「よし! じゃあ、さっそく行くか」

 

 「はい!……しかしお兄様。 他の皆さんのことはよろしいのですか?」

 

 「そういえば……まあ、別にいいだろ」

 

 もともと王都に着いたらバラバラに行動する予定だったしな。

 

 「……そうですか、では行きましょうか」

 

 アイリスは後で王城に送ればいいか。

 

 あの白スーツが激怒している姿が目に浮かぶが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして俺たちは王城を観光していった。

 

 「そういえば、アイリスはなんで王城を抜け出してきたんだ?」

 

 「この国にいるのは今日が最後ですから……その、もしかしたらお兄様に……お会いできたらな……と思いまして」

 

 なっ、なんだこの可愛い生き物は?

 

 思わず胸キュンしたぞ!

 

 はっ! 落ち着けオレッ! 落ち着くんだ。

 

 「そ、そうか。 アイリスはお兄ちゃん思いで俺はうれしいぞ」

 

 「はい、私はお兄様の……妹ですから当然です(シュン)」

 

 なんか、すごくアイリスが落ち着いてるんですけど。

 

 あり得ないが、もしかして……。

 

 「あのさ、アイリス!」

 

 「何でしょうかお兄様?」

 

 「もしかしてお「見つけたぞカズマ! 一体どこをほっつき歩いていたんだ!」

 

 「ダッ、ダクネス? どうしたんだよ!」

 

 「どうしたじゃないだろう! 初心者殺しを追いかけていったと思ったら、そのまま帰ってこないから心配していたんだぞ!」

 

 「やめなさいララティーナ!」

 

 「アッ、アッアイリス様ぁ!!?? なぜこのようなところに!? おいカズマ! 一体どういうことだ? まさか、お前また何かを……」

 

 「何もしてねぇよ! 今回は全面的に無罪だよ!」

 

 「むっ、それは悪かったな。 それではアイリス様、今日はどのようなご用事で護衛も連れずにいらしたのですか?」

 

 やけに護衛の部分を強く言ったな。

 

 でもアイリスもお忍びで来たなんて言えばさすがのダクネスも怒るだろう。

 

 アイリスもすごく困ったような顔をしてるし……。

 

 「ダクネス、実はさっき王城に一足先に行ったらアイリスが一緒に外に出たいって言いだしてな、俺が護衛として白スー……クレアに頼まれたんだよ」

 

 「……お兄様(パァッ)」

 

 「クレア殿がお前にアイリス様を任せるとは到底思えんのだが……」

 

 確かに……アイツのことだからアイリスを俺に任せるどころか、なるべく遠ざけそうだ。

 

 「わ、私からお願いしたんです。 お兄様はあの魔王を討ったお方なのですからお兄様以上の人などいないはずです!」

 

 ナイスアシストだアイリス!

 

 「そ、そうですね。 疑ってしまい、申し訳ありませんでした。ですが、今日はもう遅いので王城に帰りましょう」

 

 「もうそんな時間なのか、じゃあ城に帰るかアイリス」

 

 「えっ、えっと……はい」

 

 「…………カズマ、お前一人でアイリス様をお送りしてくれないか」

 

 「ララティーナ……」

 

 「別にいいけど、なんでだ?」

 

 「ほっ、ほらっ、王都に着いたばかりでまだ荷物の整理ができていないのでな。私はアクアとめぐみんを連れて先に宿に帰っているぞ」

 

 なんか、やけに態度が白々しいんだが……。

 

 「おっ、おう。じゃあ行くかアイリス」

 

 まあ、いいか。

 

 「はい! お兄様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「しかし、お兄様はなぜ、王都にまでお越しくださったのですか?」

 

 さっきダクネスに今回の依頼の事は明日まで秘密にしておくように言われたしな。

 

 「今回はただの観光にな、ここ最近は忙しかったから」

 

 「まあ、流石はお兄様です。魔王討伐後もだらけることなく日々、研鑽を欠かさないなんて……ステキです///」

 

 普段からニート生活送ってたんだが……。

 

 素直すぎる妹からの羨望のまなざしが痛い……。

 

 それにしても今日は、やけに積極的な言葉に聞こえるぞ。

 

 「アイリスも将来はべっぴんさんになると思うぞ。すでに美人だけどな」

 

 「もう、お兄様ったら、あまりからかわないでください////」

 

 と言いつつアイリスは、俺の腕に抱き着いてきた。

 

 「しかしどうしたんだ? 今日はいつになく甘えん坊だな」

 

 そういうと、アイリスはまた哀しそうな表情になった。

 

 「お兄様……実はお話ししたいことがあります」

 

 そして今度は真面目な顔になって。

 

 「ん? どうしたんだ?」

 

 「私がお兄様とお会いできるのは今夜が……最後なんです」

 

 いやでも、明日護衛に行くんだけど……

 

 「今日は本当にありがとうございました。私の我儘をかなえてくださって」

 

 「いいんだよ、それに、俺も何気に王都の観光をしたことがなかったから楽しかったしな」

 

 明日の事は言わなくていいのか?

 

 なんか完全にお別れを言ってきてるんだが……。

 

 「ですので、そのお礼に…………」

 

 (ちゅっ)

 

 そうアイリスがいった瞬間、何かほおに温かい感触が……。

 

 「アッ、アイリス!?」

 

 「ふふっ、これは私の事を忘れないようにする……おまじないです」

 

 そう言って、小悪魔のような表情をするアイリスに俺はすっかり目を奪われていた。

 

 「では、さようならです。お元気で……お兄様…………」

 

 そうして、アイリスは顔を真っ赤にして城の中に走って帰っていった。

 

 

 

 

 

 「……妹ルートでトゥルーエンドもあり……か」

 

 じゃねぇだろおおおおおおおおおおおお!!

 

 どうすんのこれ!?

 

 アイリスは知らなかったっぽいが明日会いますよ俺たち!

 

 絶対お互いに顔合わせられないだろ。

 

 

 

 ……しかし、まだめぐみんとダクネスですら踏み込んでない一線を軽々しく超えてきたよ。

 

 これがシチュエーションの力なのか?

 

 あのおとなしいアイリスがあんなに大胆に……。

 

 

 とりあえず、今日は宿に帰って寝るか。

 

 偉大な先人がこんなことを言っていた。

 

 [明日の事は、明日になって考えよう]と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私ったらお兄様になんてことを……」

 

 しかもあんなに、だっ、大胆に……。

 

 恥ずかしすぎて頭から湯気がでそうです。

 

 ……でも、これでもう悔いはないです。

 

 だってもう二度と会えないと思っていたお兄様にまた会うことが出来ましたし……お別れも言えました。

 

 きっとエリス様に毎日お祈りしたのが届いたんですね。

 

 そっ、それに、これでめぐみんさんやララティーナに大きくリードしたはずです。

 

 しばらくはお兄様の中での一番は私なんです。

 

 ……最後くらい、いいですよね。

 

 

 

 

 「もう会えないんですね……」

 

 言葉では言い表せないような喪失感を感じた。

 

 「もう……二度と……(ぽろぽろ)」

 

 「ひぐっ……うっ……っ(ぽろぽろぽろぽろ)」

 

 その日の夜は、静かな寝室で細かな泣き声が一晩中続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日

 

 

 

 「アイリス様、ご出立の準備が整いましたのでお呼びに参りました」

 

 「分かりました。あの、昨日はごめんなさいクレア」

 

 「本当に心配しました。ですので次からは必ず護衛を連れてください」

 

 「昨日は最高の護衛がついていましたけどね(クスッ)」

 

 「はぁ、では本日から祝儀までの間、アイリス様の専属護衛を務めるものを呼んでまいります」

 

 

 

 

 ……後悔は昨日の涙と一緒に流しました。

 

 これ以上みっともない姿は見せられません。

 

 これくらい耐えて見せます。

 

 だって王族は強いんですから。

 

 

 

 

 それにしても、なんだか前回のエルロードへの遠征を思い出しますね。

 

 あの時はお兄様達と一緒で楽しかったですね。

 

 「おーい、アイリス!」

 

 そう、このようにお兄様が私の事を呼んでいて…………。

 

 「えっ? おっ、おにい……様?」

 

 「えっと……昨日ぶり……」

 

 「………………」

 

 エリス様……こんなのひどすぎます……。

 

 




遂にカズマとメインヒロインが会ってくれました。

次回からは基本視点はカズマで別々の時にはアイリス視点での展開も検討しています。

少し不定期になりがちですが長くても二週間以内早くて三日くらいのスピードで投稿していこうと思っています。

次回作にこうご期待ください。

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