秘奥義しか使えない?・・・って、オーバーキルすぎるだろう!!   作:神谷秋光
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銀髪美少女との邂逅。チンピラ?知らないっすねー

結論を言えば、スバルと翔は黒い装丁の本・・・攻略本(仮)と翔が名付けた。それに書かれた通り、銀髪ハーフエルフを探していたが、見つからないでいた。

「見つからないね〜」

「くっそー!エルフたん、見つかんねえ!」

「まあ、こんだけ人が多くて広いところを探すとなると、今日1日だけで探せるかな?何だったら、数日かけて探せるか・・・そもそも、この国にいるわけ?」

「そんな後ろ向きなこと、言わないでもらえますかねえ」

「そう言えば、探すついでに色々と見たけど、やっぱりここは異世界だよね。日本のお金なんて見たことないって言われたよね。これで、俺たち完全無一文の召喚者だね」

「やめろよ!って、目のハイライトが消えてる!?」

「もう、ダメなんだよ。たぶん、帰れないしゲームもできない。ベルセリアをクリアすることができないんだ。こうして、何も考えることができなくなって俺たちは犬の餌になるんだ・・・」

「怖!ゲームができないぐらいで、病みすぎだろ!」

「ゲームぐらいとはなんだ!あーあ、昔のテイルズもう二度とできないのかな・・・」

翔は、これからの未来を想像すると絶望する。

それも、仕方がないことなのかもしれない。

攻略本(仮)に書かれた通りにスバルと翔は行動したが、意気揚々とした気分とは裏腹にこの国が広いということだ。

しかも、広さと比例して人も多い。その中から、たった1人を探すということは、難しい。

翔の言った通り、1日で探し出すことが出来るのだろうかとスバルは不安になる。

さきほど、八百屋のような店で果物を買おうとしたが、スバルと翔の持っていた日本円では、買い物ができなかった。

お金が使えないなら、食料を買うこともできない。夜を過ごすための宿に泊まることもできない。

加えて、うっかりスバルが元の世界に帰れるのか?と言ったところ、趣味のゲームがしばらくできなくなったと理解した瞬間に翔はこうなった。

正直いうと、コミュ障であるスバルに翔の接し方がわからずにいた。自分だって、元の世界にいた趣味ができなくなるが、それよりも未知の世界の冒険という存在が心を震わせた。

解決には、ならないが「元気出せよ」や「いいことあるって!」とスバルは、翔を励ます。

すると、翔は深いため息をはく。

「そうだよね。こうして、落ち込んでもしょうがないよね。起こった事を嘆いてもしょうがないし」

「そうそう!俺だって、受けを狙おうとしてクラスで調子乗ったら、白い目で見られたことあるし、そんときにメッチャ落ち込んだけどこうして元気だぜ!」

ニカっと笑って親指を立てる。

「な、なかなかの自虐ネタだね・・・。よし!元の世界に帰るため頑張るぞ!」

「あ、ああ。そうだな・・・」

「?」

スバルは気まずそうに目をそらす。その意図に、翔は気づかない。翔は、スバルにどういう意味かと問おうとするが逃げるようにスバルは大通りの道を外れ、人気のない路地裏にはいる。

その場所は、表の大通りとは違いほとんど光が入らず、薄暗い場所だった。

「ちょっと、スバル先に行かないでよ」

遅れて、翔が追いつと、路地に入った瞬間、翔は目を細めた。

「・・・スバルここを離れよう。ここは、危険だ」

瞬時にこの場に漂う不穏な空気を翔は感じると、スバルに促す。

「あ、ああ・・・」

2人は、元来た道を引き返そうとしたが、目の前に三人組の男たちが立ちふさがる。

大きい男にガリガリの痩せた男。最後に2人よりも小さいチビな男。

翔は、まずいと本能が警告した。

「おい、お前ら痛い目見たくなければ、金目のものを置いていけ」

ギラついた目で、大きな男が言う。痩せた男は、獲物を見つけたと狂った目で見て、チビは馬鹿にしたようにニヤついている。

翔は、逃げようと思ったが、3人が元来た道を塞いで逃げることができない。

浮かれていた。この世界の犯罪状況が、どう言う風になっているのかは知らないが、人気のない道にはいれば、こうなる事は分かっていたはずだと翔は思った。

まずい、まずいと考えを巡らせ解決策を見つけようとするが、そのどれもが現状を打開できるものではない。

相手が、3人に対してこちらは2人。戦おうにも、こちらは武器もなければ相手の武装や能力も知らない。ましてや、異世界だ。下手な行動が、自分たちの首を絞める。

「強制的イベント始まったぜ。相手は、チンピラ三人組。チュートリアルの定番だな」

「言っている場合じゃないでしょ!と、とにかく逃げないと!」

「逃げるたって、あいつらがいれば無理だろ。大丈夫だって、翔が召喚特典をもらえたんだったら、きっと俺にだって特典があるはずだぜ!スバル行きまーす!」

「スバル!やめて、なんかフラグ立ってるから!」

すると、スバルは男3人組に突撃する。

「ちっ、こいつ!」

スバルがいきなり飛び込んできたせいか、男たちが3人が反応できずにいた。

スバルはまず、3人の中で大きな男の顔を思いっきり殴る。男は、防ぐこともできず、殴り飛ばされる。

次に、スバルはチビの男の側頭部を思いっきり蹴り上げる。そのまま、壁に叩きつけられ倒れる。

「か、かっこいいぞ。スバル!」

「だろ!俺だって召喚されたんだから、これぐらいは余裕だぜ!」

その言葉の割には、大きな男を殴った手を押さえているが、翔は気にしない。それよりも、想像とは違い、早くも2人をダウンさせたことに素直に翔はスバルがすごいと思った。

「あんたらには、悪いが俺の人生の経験値になれや!」

最後のガリガリの痩せた男に殴りかかる。

「ヒャッハー!!」

だが、男が奇声をあげたと同時に取り出したものをスバルが理解した瞬間、その勢いのまま、スライディング土下座をした。

「すみませんでしたー!!」

「す、スバルーーーーーー!!」

思わず翔が突っ込んでしまったのもしょうがない。

男が取り出したのは、2本のナイフだ。さすがに、2人を倒したスバルだが刃物はダメらしい。

すると、倒れていた2人はスバルから打撃を受けた場所を押さえながら、ノロノロと立ち上がった。

「こいつ、調子に乗り上がって!!」

明らかに、怒りの表情を浮かべ3人はスバルを囲むと土下座して身動きの取れない、スバルを蹴り初める。

「す、スバルーーーーーー!!」

「ちょ、お前らやめろって!や、やめ・・・す、すんません調子に乗っていました!だからやめて!」

だが、3人のスバルへの暴行は緩められない。

「・・・はっ!見ている場合じゃない!何とか、しないと!」

そして、召喚の特典を思い出す。

「そ、そうだ攻略本(仮)だ!」

ポケットから取り出すが、果たしてこれが役に立つのかはわからない。

翔自身、鍛えているわけでもなく武術を会得しているわけでもない。

だが、この状況を打開できる一抹の望みをかけ本を開く。

そこには、最初に書かれていた銀髪ハーフエルフを探せと、新たな文章が書かれていた。

『秘められし奥義に全てを委ねろ』

「こ、これは・・・」

新たな文章。その意味を理解するのには、時間がかからなかった。

「秘められし奥義・・・秘奥義」

それは、テイルズオブシリーズで聞いた言葉だった。

秘奥義とは、テイルズオブシリーズの登場人物ごとが使える固有の必殺技のようなものだ。

発動条件には、作品ごとに違うが、威力は通常攻撃の何十倍と通常攻撃に攻撃力がとても高い。

普通ならボスとなどの体力や防御力の高い敵キャラには戦闘の時に、使用すると有利になるが、逆にそこらへんの雑魚キャラに使えば明らかなオーバーキルになるのだ。

攻略本(仮)に書かれた通り、その秘奥義の行使は難しくないと、なぜだか直感的に翔はわかった。

そんなことを考えて翔は、苦笑いする。どこか、翔は期待していたのかもしれない。ファンタジーな世界で、子供の頃から夢見た不思議な力を使えると少なからず、思ったのかもしれない。

それを、存分に振るうことのできる世界なのであれば目の前で傷ついている友人を助けるためなら、その本に書かれている通り、全てを委ね、力を振るうのも仕方がないことなのかもしれない。

翔は目を閉じ、イメージする。スバルに、暴行を加えている3人の男たちを倒す能力を行使するためだ。

倒す?違うのかもしれない。翔は自問自答をして答えを導く。そしてわかった。3人の目は、すでに金品を狙う盗賊の目ではなく、自分たちに刃向かったスバルを殺そうと、殺意に満ちた目だ。

だったら、倒すとか幼稚な言葉ではなく、殺意は殺意で返すべきだと翔は思った。だから、殺す。スバルを傷つける彼らを殺す。

手加減なんていらない。翔はこの時冷めた頭で目の前の男たちをどうやって殺そうか考えていた。なら、下劣なやつらに裁きを与えればいい。

イメージは、簡単にできる。それは、神の雷だ。いくつものテイルズオブシリーズに受け継がれた技を、今ここで翔は行使しようとした。

言葉は紡がれる。

『天光満つる処に我は在り ・・・』

ゆっくりと、一つ一つの言葉に意味を持つように、彼らの罪状を読み上げるかのように、翔は淡々と口を動かす。そこに、慈悲はない。

「っ!?」

「何しやがった!お前!」

不穏な空気を感じ取り、男たちはスバルを蹴るのをやめ、翔を睨む。

知らず、知らずのうちに口では男達は強がっているが、足は震えていた。

『黄泉の門開く処に汝在り・・・』

次に翔の言葉に紡がれた瞬間、大気がビリビリと震え3人の男たちの体に言い表せない恐怖が駆け抜ける。

そして、最後の言葉を言おうと口を開こうとした時だ。

「どけどけー!そこのやつら、邪魔だ!」

金髪セミロングの小柄な少女が、路地裏に駆け込んできた。

「すげえ、状況だな!アタシ急いでいるんだよ!まあ、強く生きてくれ!」

そう言うと、少女は翔たちの間をぬって建物の上へと駆け上っていった。

「スバル!!」

突然のことに、呆けている男たちの隙をついて、翔はすかさず、スバルに駆け寄る。意識を失っているが、呼吸が落ち着いていたのに安心し、回収する。

「おも!」

ジャージでわからなかったが、スバルは筋肉質でそのせいか想像していたより重い。

翔はそれに手こずり、男たちに捕まると思って顔を上げたが、その場から全く動いていないことに気づく。

いくら何でも、驚き過ぎだと思って顔を見てそれを理解した。

男たちの表情は恐怖で染まっていた。

すると、男たちはいきなり膝をつきこうべを垂れ、まるで罪を許してもらうように両手をだして懇願し始める。

「・・・」

あまりの、死のイメージにチンピラといえども、耐えられなかったのだろう。今更ながらに、自分が行使しようとした力の絶大さに翔は気づいた。

翔は男たちを無言で一瞥すると、翔は男達の間を通り過ぎようとした。

「そこまでよ!」

その凛とした声を聞いた瞬間。また、関係のない人が来たのだとそちらに首を向ける。

そこにいたのは、銀髪の美少女だった。雪のように白い肌と触れただけで壊れてしまいそうな儚く幻想的な印象を翔は抱いた。あえて他の人と違うのは長い耳だけだ。そんな、あまりの美しさに翔は言葉を失った。

そして、気づいた。攻略本に(仮)に書かれていた特徴と合致していた。

堂々とした態度をとる少女にどう声をかけようと、考えるが、少女達は翔は達を見て驚いた。

「え・・・何これ?」

驚くのも無理はない。銀髪の少女の目に映っている光景は、跪いて許しをこう男達と、ボロボロの男を背負った少年だ。

理解しろと言うのが、無理なのかもしれない。

翔はため息をはくと膝ををついている男達に近づき、「ここからいなくなってくれない?」と言うと、翔を怯えながら見ると男達はトボトボと大通りの方に帰っていく。

それを、翔は満足そうに頷くと改めて銀髪少女に向き直った。

「よし・・・初めまして!」

「いやいや!全然わからないわよ!」

心の中で、翔は舌打ちをした。

無かったことにして、始めようとした翔を銀髪少女は、見逃してくれない。

「ちっ、まあ、いいや」

「ねえ、今舌打ちしたわよね!?」

「いやいや、してないよ」

翔は、知らないと言い張るが銀髪少女は納得してないのか「うーっ」と唸る。

「全く、ボクの可愛いリアを傷つけないでくれよ」

すると今度は、別の声が聞こえた。

声の方向に翔は、目を向けるが目の前にいるのは、銀髪の少女。

少女は翔に見つめられていることに首をかしげた。

「ここだよ」

声の後に少女の髪の間から、手のひらに乗るような大きさぐらいの猫が浮遊していた。

「ね、猫が喋っている!?あ、でもこの世界じゃ普通のことか。今更、猫が喋るぐらいじゃな・・・」

「いきなり、驚いた後に急に落胆するのやめてくれる?これでも、ボクは精霊なんだよ?しかも、喋れるからかなり高位な存在だ。少しは敬うとか、感動するとかないの?」

「精霊か〜。悪いんだけど、そこのところの知識は無いんだよね」

「今時、子供でも知ってることなんだけど。まあ、いいや。それよりも、君たちはこんなところでなにしてたのさ?」

「たまたま、入った場所がここで、不穏な空気を感じたから出ようとしたら、チンピラに絡まれたんだよ」

「それは、お気の毒にね。でも、さっきの人達明らかに危害を加えるんじゃなくて逆に加えられた後のような感じだったよ?」

やれやれと、浮遊している猫が首をふる。

「・・・怪しいわね」

「正直、怪しい存在だとはたから見ればそう思うかもしれないけど、違うからね?」

「私、そういう事いう人あんまり、信用できないわ」

「ボクもそれには、同感。それよりも、リア探しものは?」

浮遊している猫の言葉にハッと銀髪の少女はなる。

「そうよ、忘れてたわ!あなた、さっき小さい子がここを通らなかった!?」

その少女の剣幕に翔は、押される。

「あー、わかった、わかった。俺が知っていることは話すから、落ち着こうよ。俺の背中に背負っている人も休ませたいからさ」

「むう・・・いいわ」

翔は、苦笑いしてこの目の前の少女が見た目に反して子供っぽいと印象だと思った。

ふと、ポケットに入っている攻略本(仮)を思い出し、さしあたり、翔は攻略本(仮)に書かれた通りに行動するのであれば、彼女の気を引かなければいけない。

それに、翔自身の能力を知っておかなければいけない。

あの時は、なんとなくできるという確信はあったが、結果が伴わなかったため、確認できずにいた。

召喚特典とわいうが、翔自身、これがなんなのか色々と検証していかなければいけないだろう。

当初の頃よりも、翔は異世界生活に胸を膨らませるが、やはりゲームができない世界なので、再び落胆したのだった。



福音書が攻略本(仮)と名付けられました。

(仮)は、かなり重要です。あるのと、ないのとでは、私の中での価値が変わってきますね。

追記:内容について、訂正の部分について報告があり、それに対して返信しようとしたところ、間違って感想を消してしまいました。申し訳ありません。

内容としては、パックがエミリアの名前を呼ぶ時リーヤと本編で書かれていたので、リアに直しておきました。

よろしくお願いします。